12.「世界の創造」
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原初、世界は混沌であった。
混沌の名はケイオース。
ケイオースは自ら一人で完成された、全知全能の神であった。
そんなケイオースだったが、あるとき、ふと疑問を持った。
「自分は一体何者なのだろう?」
全知全能であれば、すべてを知っているはずである。
しかしケイオースは、この疑問にだけは、どうしても答えを得ることが出来なかった。
ケイオースはしばらく悩んだが、自らを知り、この矛盾を解決するために、完全無欠である自分自身を、無数の小さな存在へと分けた。
そして、分かれて生まれた存在をあえて不完全にし、自由に、個性豊かに成長できるような余地を残した。
そしていつかは、自らと同じ存在になれるように、惜しむことなくすべての権能を授けた。
こうして、光と闇が生まれた。
光、即ち闇であり、闇、即ち光である。
光は、闇があるから輝くことができる。
闇もまた、光があるから自らが闇として存在しうる。
光と闇は次々に増え、光と闇の交わりから、たくさんの神々が生まれた。
神々は、さまざまなものを創造し、世界を広げていった。
今私たちが住んでいる世界は、光の女神ルクシアによって創造された。
ルクシアにより、大地、空、海が生まれた。
やがてルクシアは、自分が生んだ子供たちに、この世界を任せる事にした。
長女ユースティリアには、白色を与え、やがて、正義や導きを司る女神となった。
次女ミネルーワには、青色を与え、やがて、知識や学びを司る女神となった。
三女ヴォルカーナには、赤色を与え、やがて、火や力を司る女神となった。
四女セルシアには、緑色を与え、やがて、自然や農耕を司る女神となった。
五女フォルトゥリアには、黄色を与え、やがて、幸運や運命を司る女神となった。
六女クピーディアには、桃色を与え、やがて、恋愛や愛情を司る女神となった。
七女アメシスティアには、紫色を与え、やがて、精神と心の安寧を司る女神となった。
この七柱の女神たちは、原初の七神と呼ばれる。
この他にも多くの神々が生まれ、さまざまな色が与えられ、世界は今の形へとなった。
全ての色を与え終えたルクシアは、無色となり、神々を見守る存在となった。
やがて世界は色づき、地上にはさまざまな生命が溢れ、美しい世界が広がっていった。
そして人間を始めとする多くの生命が生まれてくると、七人の女神たちもまた、新たに生まれた生命たちに任せ、見守る存在へとなっていった。
悠久の時が流れ、今、私たち人間は、神々の寵愛を受け、生きている。
神々は、常に私たちの傍にいて、見守っている。
神々の声は、ありとあらゆる形で、私たちのもとへと届けられている。
心の中の声、良心の声こそが、神々からの言葉である。
傲慢にならず、謙虚に生きなければならない。
心の声にいつも耳を傾け、自らの良心の声に沿って行動すれば、いつでも神々の祝福を受けることができる。
それこそが、私たちを真の幸せと安寧へと導いてくれる、唯一の道しるべである。
フィロテオス・ビュレノス著 ー 世界の創造 ー
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私はすぐに、この本に描かれていた、美しい女神たちの絵に心を奪われてしまった。
何度も何度も何度も繰り返して読み、この本に描かれている女神たちを想像し、想いを馳せ、神々に祈ることが、私の日課になった。
小さな出来事が、その後の人生に、決定的な影響を与えてしまうことがある。
カテリーナにとって、本との出会いは、その後に進むべき人生を決定づける、大きな出来事となった。
小説を書くのが初めてです。
感想をいただけると、本当にありがたいです。
m(_ _)m