1. 乙女の祈り
小説を書くのも、投稿も初めてです。
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今日も神々に祈りを捧げる。
私は魔力をほとんど持っていない。
今、私に出来る事は、神々に祈りを捧げることだけだ。
「……多くの人々に安寧を。そして、魔物による被害が、できる限り少なくなりますように」
祈りを終え、礼拝室から出ると、義妹のゼノビアと、義弟のキリロスが待ち構えていた。
「魔力も無いお義姉さまが祈ったところで、何の意味があるのかしら」
「そうだ、この家の皆が思っていることだ。そんなに祈りたいなら、早く家を出て、神殿の巫女にでもなればいいんだ!」
カテリーナはため息をつく。
――ふぅ、またいつものね。
「まあ、お義姉さまでしたら、最下級の巫女のまま、一生を終えるのでしょうけれど」
薄ら笑いを浮かべ、二人の見下した眼差しが私の瞳に向けられる。
一度息を飲み、心を落ち着かせてから、冷静に返事をする。
「私は侯爵家の継承権を持っておりますから、現在の当主であるお兄さまの許可を得ずに、勝手に家を出ることは許されないのです」
キリロスは激昂した。
「そんな事は分かっている! その継承権を放棄して、神殿に入りたいと、お兄さまにお願いしろと言っているんだ!」
私はルクサリス侯爵家の長女として生まれた。
私の母はアナスタシア・ルクサリスといい、侯爵家の女性当主であり、女神ユースティリアの加護を持つ聖騎士だった。
母は神聖騎士団の団長として活躍し、また、その膨大な魔力量から、神聖魔法で多くの人々を救い、国家の英雄となった。そして、聖女の称号まで賜った人だ。
そんな立派な母を持つにも関わらず、私には魔力が全く受け継がれなかった……。
魔法は、自然界に存在する魔素を使うのだが、そのマナを使用するためには、体内にある魔力を使ってマナを燃焼させる。
そのため、個人が有する魔力量が、魔法を使える限界値ともいえる。
仮に、どれだけたくさんの魔法を覚えたとしても、個人の持つ魔力量しか、実質的には使えないということだ。
この体内の魔力量は、遺伝的要素によってほぼ決まると言われている。
多くの場合、父や母の魔力量が、子供にも受け継がれる。
もちろん個人差があるため、まれに父母以上の魔力量を持った子供が生まれることもあるが、逆に魔力量が少ない子供が生まれてしまうこともある。
私の場合は、まさに後者だった。
しかも、少ないどころか、私はほとんど魔力を持っていなかった。
魔力量を正確に数値化することはできないが、基礎魔法の一つである着火魔法が、魔力消費量の基準値とされる事が多い。
その着火魔法の魔力消費量を1とすると、私の魔力量は約1となる。
つまり、着火魔法を1回使用しただけで、魔力切れにより、意識を失ってしまう程度の魔力量しか持っていないということだ。
「魔法を使えない貴族なんて、恥でしかありませんわ」
「そうだ! ご先祖様に申し訳ないと思わないのか!」
私も本当にそう思う…………。
………………。
……………………決めた!
お兄さまにお話しして、この家を出よう。
私の未来は、私自身で切り開いていこう!
今まで蔑ろにされてきたカテリーナだったが、義理の家族からの嫌がらせが、かえってカテリーナを、新しい世界へ羽ばたかせるきっかけとなるのだった。