第三十三週 ボランティアに参加してしまった!(土曜日)
今の一月の時点で「今週のしまったちゃん」こと紺島みどりは十五歳である。
で、こんしまちゃんは二月生まれの高校一年生。一応バイトもできそうだ。
現行の労働基準法第五十六条には次のようにある。「使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない」と。
ようは中学卒業まではダメでも高校一年生になればバイトとかしてもいいよということだ……っ! もちろん例外もあるけどね。
だが、こんしまちゃんの通う高校ではバイトが禁止されている。この場合は校則が優先されるので、こんしまちゃんはバイトをやれない。
とはいえ見返りとしてお金を受け取らない「ボランティア」なら学業に支障をきたさない範囲でやっていいことになっている。
そしてこんしまちゃんは月に一回は地域や学校の主催するボランティアに参加する人間でもある……ッ!
立派な使命感があるわけじゃない。
参加理由は「なんとなく」だ。
※ ※ ※ ※ ※ ♢ ※
土曜日の午前。
こんしまちゃんは高校のグラウンドにトテトテと歩いてやってきた……っ!
格好は制服である。
前面に灰色のボタンがついたダークグレーのパーカーに黒のフレアスカートを着ている。
(※これまでは学校を特定されるのが嫌で制服の描写はしなかったけれど調べてみるとパーカー制服も最近はわりとあるらしいので「まあそれなら特定も無理か」ってことで書いておく)
靴は赤茶色のローファー。黒いタイツもはいている。
一月に入り、高校でボランティアの募集があった。こんしまちゃんは事前に参加を申請していた。
きょうはそのボランティアのために学校へと足を運んだのである……ッ!
ちなみに矢良さんやアヤメ、鵜狩くんといった友達はさそっていない。
完全に一人でやってきたのだ……。
グラウンドには二十名弱の生徒たちが集まっている。
こんしまちゃんの知らない人たちばかりだ。ただし、みんな学校の制服を着ている。
そのなかに一人だけ見知った顔があった。
彼にこんしまちゃんがあいさつする。
「おはよう……伏木くん……」
「……おはよう。こんしまちゃんもボランティアに来ていたのか」
答えたのは、威厳のあるあごひげを蓄えたクラスメイトの男の子……!
その名は伏木守久くん。背もめっちゃ高い。
伏木くんは一か月に三・四回はボランティアに参加する人間だ。
ゴミ拾いといった清掃活動、介護の支援や勉強のお手伝い、果ては点訳(文章を点字に翻訳する作業)のボランティアまでやっている。ときには被災地におもむくこともある。
さまざまな立場にあるいろんな人と話したり遊んだりもする。
え……? それボランティアなの? と思われることもあるようだけど、だれかとただ交流することもまた立派なボランティアである……ッ!
じゃあ、きょう集まったこんしまちゃんたちはなにをやるのか。
ここで、めがねをかけた先生が生徒たちの前に現れた。なおその先生はこんしまちゃんや伏木くんの担任である立合広夢先生ではない。
先生はあいさつしたあとボランティアの内容を確認する。
「きょうはみなさんにゴミ拾いをしてもらいます」
それからゴミ拾い用のトングと使い捨て手袋と透明なゴミ袋を一人一人に渡す。
ハサミの形状のトングでごみをつかみ、袋に入れるわけだ。
トングや手袋を使うのは、落ちているゴミが危険なものかもしれないからだ。だれがどういう意図で捨てたかも分からないし……。
ただしゴミを見つけたらとりあえず袋に入れればいいってもんでもない……っ!
それだときちんと分別できなくなる。たとえば道ばたに乾電池が落ちていた場合、それを「燃やすゴミ」と一緒の袋に詰め込んではダメである。
段ボールや缶、ペットボトルなど資源としてリサイクルできるゴミもある。
ゴミにもそれぞれ個性があるのだ……!
というわけで、きょうボランティアに来たみんなにはそれぞれ担当するゴミが割り当てられている。
こんしまちゃんの担当は「空き缶」である。こんしまちゃんは落ちている空き缶を自分の袋に入れればいい。それ以外のゴミは入れてはいけない。
※ ※ ※ ※ ※ ♢ ※
ボランティアに集まったみんなは手袋をはめた。
トングとゴミ袋を持って高校のグラウンドをあとにする。
ちなみに生徒は一人で行動してはいけないと先生から言われている。よってこんしまちゃんは伏木くんと一緒にゴミ拾いをおこなうこととなった。
まずは高校の敷地の外側を時計回りで一周してみる。
さっそく右前方の低木のそばに白い紙くずが引っかかっているのを見つけた。
こんしまちゃんが車道側の伏木くんに声をかける。
「紙くずは燃やすゴミだよね……」
「だな」
伏木くんの担当するゴミは、まさしく「燃やすゴミ」である。
なお「燃えるゴミ」とは言わない。可燃性のゴミであっても燃やさずに回収するものがあるからだ。
伏木くんは紙くずに近寄り、トングを差し出す。
ピンセットのように紙くずをはさみ、自分のゴミ袋に入れる……っ!
ついで、すぐに車道側に戻る伏木くん。
「この調子でドンドン拾っていこう」
「そうだね……」
こんしまちゃんはうなずき、歩きながら道のすみずみに目を光らせる……ッ!
道を右に曲がったところで、折れた傘を見つけた。
くの字にくにゃっと折れているため、もう使えそうにない。
こんしまちゃんは冷静に傘の残骸を見下ろす……っ!
「傘は空き缶でも燃やすゴミでもない……うちの自治体では包丁やフライパンと同じ『金属類』に分類される……」
だがこんしまちゃんは空き缶担当で、伏木くんは燃やすゴミ担当だ。
金属類を回収することはできない。じゃあスルーするのか……? 否ッ!
こういうときは報告・連絡・相談――すなわち報連相が絶対である……ッ!
こんしまちゃんはスマートフォンを取り出し、とあるアプリをひらいた。
位置情報を参照するアプリ画面に、あたりの地図が表示される。なお、こんしまちゃんたちに支給された手袋は、スマートフォンを操作する際もいちいち取り外さないでいい種類のものだ。
地図を拡大し、現在こんしまちゃんと伏木くんのいる場所をタッチ……!
すると星マークがついた。星マークからフキダシが出た。
そのフキダシに文字列を入力するこんしまちゃん……っ!
(折れた傘あり。金属類担当の応援を頼む)
ちょっと文章は堅苦しいけど、これで報連相は完了……ッ!
このアプリは地図にチェックとコメントを入れて同一のアプリを使用するみんなと情報を共有するものだ。今回のボランティアをおこなうにあたって先生も生徒も同じアプリをスマートフォンにインストールしている。
当アプリはもともと海外のバードウォッチングで使われていた。大きな自然公園で仲間たちと鳥の出現場所を教え合うのに利用されていたのである。
だが集団でゴミ拾いをする際にも、こういうアプリは役立つ。
どこにどんなゴミがあったか仲間内で共有し合えば、ゴミの回収もスムーズかつ適切におこなえるというわけだ……!
地図の情報が更新された場合は通知が届く。
さっそくアプリの情報を見たのか、こんしまちゃんたちの向かって左の小道から二人組の女子がやってきた。
そのうちの一人が金属類のゴミ担当である。
彼女のゴミ袋は丈夫な素材でできている。
折れた傘をトングではさんで袋に入れる。
そんなに大きくない傘なので粗大ゴミに分類されることもない。
一方、二人組のうちのもう一人がスマートフォンをいじる……!
アプリの地図から星マークを削除したのだ。「もうゴミは回収した」というメッセージでもある。
ただしこんしまちゃんの入力した「折れた傘あり」という文字列は残っている。この情報は地域のポイ捨て事情を把握する際のデータとして学校側が自治体に提出することになっている。
このデータ集めもボランティアの一環なのだ……ッ!
さきほど紙くずを拾った伏木くんも、ゴミを拾った場所とその報告をすでにアプリに書き込んでいる。
こんしまちゃんと伏木くんは二人組の女子と別れ、高校の外側の道をまた歩き始めた。
伏木くんは次々と「燃やすゴミ」を袋に放り込んでいく。
バナナの皮やティッシュペーパー、リサイクルマークのないプラスチックなどである。
その都度、どんなゴミをどんな場所で拾ったかアプリの地図に書き込んでいく……っ!
だがこんしまちゃんのゴミ袋は、すっからかん……!
空き缶が一つも落ちていない……ッ!
アプリの地図も確認するけれど、今のところ星マークのついたゴミ報告のなかに空き缶は皆無……ッ!
なんか申し訳ない感じがしたので、こんしまちゃんは伏木くんに申し出て彼の代わりにゴミの情報を地図に入力することにした。
歩きつつ、こんしまちゃんは伏木くんに質問する。
「伏木くんは……どうしてボランティアに参加しているの……」
「おれが小学校の先生になりたいから」
相変わらず車道側を進みながら伏木くんが答える。
「自分がなにもしていなかったら『立派なおとなになれ』って子どもに堂々と言えないだろ?」
「さすがだね……動機がしっかりしてる……」
未使用のトングを握り締めるこんしまちゃん。
伏木くんがそんなこんしまちゃんを横目で見下ろす。
「そう言ってもらえるとうれしいけれど、こんしまちゃんにだってボランティアに参加する理由があるんじゃないのか」
「わたしは全然立派じゃないよ……」
こんしまちゃんが少しだけ目を伏せる。
「わたしは『なんとなく』で参加してる……」
「……いいだろ、それで」
伏木くんは道の左右に視線をやって言葉を続ける。
「ゴミ拾いだけじゃなくてほかのボランティアでも同じだ。参加する人がどういう動機や理由を持っているかは、本人以外にとってたいした意味を持たない。どこまでいっても人の心はブラックボックス――不可思議な箱でしかない。だから立派な目的をもって参加することはないんだ。……言ってしまえばおれの参加目的も『子ども相手にイキりたいから』という不純なもの。でもそのきっかけすらなかったら、おれがボランティアに参加することはなかっただろう。きっかけなんて、なんでもいいと思う。そのあとでなにを見つけるかが重要なんだよ」
「すごい……いいこと言ってる……伏木くん……先生みたい……」
こんしまちゃんがトングを持つ手をゆるめ、感心する。
でも伏木くんはかぶりを振る。
「長々と言葉を連ねて説教じみたことを言っているようじゃ、先生としてはまだまだだ。……ん」
ここで伏木くんが、左側の路肩に目をとめる。
オレンジ色のジュースの缶がそこに転がっていた。
こんしまちゃんが声をはずませる……っ!
「あ、空き缶……やっと見つけた……」
缶に近寄り、トングではさむ……ッ!
でも缶をはさんだトングの動きがちょっと緩慢である。
それに気づいた伏木くんがこんしまちゃんを制止する。
「ちょっと待った、こんしまちゃん。それ、中身が入ったままじゃないか」
「へ……」
指摘を受けたこんしまちゃんが、はさんだ缶を軽くゆすった。
なんか妙に重いし、たっぷんたっぷんと液体の動く音がする。
「しまった……なかにジュースがあるっぽい」
「とりあえず報告だな」
伏木くんがアプリに、中身の入った缶の情報を書き込む。
こんしまちゃんは道のはしに寄り、トングにはさんだ缶を見る。
「確か自治体のルールでは……中身のある缶はそのまま空き缶として捨てちゃダメなんだよね……」
「そうだな」
しゃがんで、缶の状態を観察する伏木くん……っ!
「そもそもこの缶、あけられていないな。といっても口をつける部分がひどくよごれているからもう飲まないほうがいい」
「中身も捨てるしかなさそうだね……」
首をかしげるこんしまちゃん。
「でも液体ってどう捨てればいいんだろ……?」
「ジュースの場合は、紙や不要になった衣類に染み込ませるという手があるな」
伏木くんが冷静に返答する。
「ただし、だれが捨てたかも分からないゴミのなかには危険なものが入っている可能性もゼロじゃない。おれたちだけで処理するのはやめたほうがいいだろうな。……お」
ここで顔を上げる伏木くん。
二人のもとに先生がやってきたのだ。
学校のグラウンドでトングや袋を渡してくれためがねの先生である。その先生が、こんしまちゃんの拾った缶の様子を確かめる。
「なるほど。確かにアプリに書き込んでくれたとおり、中身の入ったジュース缶ですね。そのままにもできませんし、わたしが回収しておきます」
先生も自分のトングを用い、黒い袋のなかにジュース缶をそっと入れた。
続いてスマートフォンを取り出して地図上の星マークを消去する。それから伏木くんとこんしまちゃんにお礼を言い、先生はその場から去った。
こんしまちゃんは再び歩を進めながらつぶやく。
「ちょっと残念……空き缶、拾えるかと思ったのに……」
直後、ハッとして口をつぐむ。
「しまった……ダメだよね……ボランティアなのにゲーム感覚でやっちゃ……」
「逆に」
伏木くんがニヤリとする……っ!
「一個も空き缶を拾えないというのもおもしろいかもな」
「あ、言われてみればそうだね……」
こんしまちゃんが首を小さく縦に振る。
「それ……ポイ捨てする人が少なかったってことだもんね……」
「不可思議だな」
あごひげを制服のえりに当てながら伏木くんが言う。
「ゴミ拾いをしておれは気持ちよくなっている。でも本来は、最初からゴミが落ちていないほうが町にとっても人にとっても『いい』に決まっているわけだ」
※ ※ ※ ※ ※ ♢ ※
そんなこんなで、高校の敷地の外側を一周し終わったこんしまちゃんと伏木くん。
次はアプリのゴミ情報を確認し、「燃やすゴミ」を回収するルートを進む。
なお空き缶の情報はまだ寄せられておらぬ……!
情報のなかには「包丁」や「ハサミ」や「粗大ゴミ」も含まれている。
包丁やハサミは金属類ではあるけど危険なので生徒ではなく先生が回収する。
回収困難な粗大ゴミについてはその詳細と場所を自治体のほうに直接報告することになっている。
こんしまちゃんと伏木くんは、くねくね~っとした細い道を歩いていく。
伏木くんはトングで順調にゴミを回収する。小さくなった鉛筆や使い捨てカイロ、割れたCD、破れた靴下、ヨレヨレの輪ゴムなんかを新たに袋に入れる。
発泡スチロールのカケラやポリ袋もリサイクルマークのないプラスチックとして「燃やすゴミ」に分類する。
こんしまちゃんは発見したすべてのゴミをアプリに記録していく……!
途中で見つけた壊れたドライヤーやゲーム機、ガラスのビン、割れた陶器のお皿、ペットボトル、リサイクルマークのついたプラスチック容器の情報もみんなと共有する。
燃やすゴミでも空き缶でもないものと出会ったときは自分たちだけでなんとかしようとせず、伏木くんもこんしまちゃんもほかのみんなを素直に頼る。
しばらくすると、こんしまちゃん自身のつけた地図上の星マークがどんどん消える。
それぞれのゴミを担当する人がきちんと回収してくれたということだ……ッ!
しかし……なぜか空き缶だけは落ちていない。ジュースやお茶の空き缶どころか、カンヅメの缶すらない。
このままではなにも拾えないままこんしまちゃんのゴミ拾いが終わってしまう……っ!
そのとき、右前方の草むらから銀色の光が目に飛び込んできた。
筒状の缶に見える。
「今度こそ空き缶に違いない……」
トングでつかみ、軽く振る。とても軽い。中身は入っていないようだ。
でもこんしまちゃんは気づいた。その缶はジュース缶やカンヅメとは違う。上部に噴射口がついている。
「しまった……これ、スプレー缶だった……」
自治体によって差はあるが、こんしまちゃんの住んでいるところではゴミに出すときスプレー缶と飲食物の缶とを別々にしなければならぬ……。
肩を落とすこんしまちゃん。
なだめるように伏木くんが言う。
「スプレー缶については、もうアプリに書き込んでおいたから」
「ありがとう……伏木くん……」
トングにスプレー缶をはさんだままこんしまちゃんがお礼を言った。
しばらくして、男子の二人組がやってきてスプレー缶を回収してくれた。
こんしまちゃんの住む自治体はスプレー缶、ライター、バッテリー、乾電池などを「危険物」としている。ヘタするとゴミの収集や処理の際に火災のリスクがあるらしい。だからきっちり分別しなければならない。
みんなは、ゴミとして拾った壊れたゲーム機からもバッテリーを外してその情報をアプリで共有。そのうえで小型家電のゲーム機と危険物のバッテリーを別々の袋に入れている。
なお今回のボランティアにおいてライターなど発火の危険があると思われるゴミを見つけた場合はやはり先生が回収することになっている。
スプレー缶を拾ったあとも、こんしまちゃんは伏木くんと共に町をさまよい続けた。
※ ※ ※ ※ ※ ♢ ※
そして時間は正午になった。
ゴミ拾いは、ここで終わりである……ッ!
アプリを確認するとまだ未回収のゴミがいくつかあるが……こんしまちゃんたちがこれ以上拾う必要はない。その情報は自治体にも共有されるので、それらのゴミが放置される心配はない。
伏木くんとこんしまちゃんは、まっすぐ高校のグラウンドに戻った。
ほかのみんなはすでにグラウンドに来ていた。
めがねの先生はみんなが全員そろっていることを確認したあと、一人一人からトングを回収した。
ここで、古紙類を担当していた生徒が手を挙げる。
「わたしはポイ捨てされていた段ボールや紙パックを拾いましたが、袋に入れたヤツをこれからさらに分別してヒモで縛ったほうがいいですか」
「いえ、そこまでは必要ありません。あとは業者さんに頼んでありますので」
先生はやんわりと答えた。
さらに各自のゴミ袋も集める。
なかでも伏木くんの燃やすゴミの袋はほとんどパンパンだった……っ!
一方、こんしまちゃんのゴミ袋は――。
なんも入っていなかった!
「す、すみません……」
謝りながらこんしまちゃんがゴミ袋を返却する。
透明な袋の上のほうはずっとこんしまちゃんの手に握られていたためか、ややすぼまっている。
「空き缶担当だったのに……一個も拾えませんでした……」
「そうでしたか。ご苦労さまでした」
カラの袋を先生が受け取る。
「ただ、謝ることはないんですよ。紺島さんもきちんとボランティアに参加していましたから」
小さな音と共に袋を丸める。
「紺島さんもほかのみんなと同じように自分の担当ではないゴミを積極的に見つけ、必要な情報をアプリに書き込んでいました。この時点でおおいに助かっているんです。先生のほうでも、ちゃんと把握しています。また、あたりを確認して空き缶がゼロだったとのことですが、この情報は自治体にもしっかり共有されます。この情報こそ、今後のゴミを減らしていくにあたりもっとも有益なんです。今回のボランティアは、ただの清掃活動ではありません。地域のゴミの状況を調査するものでもありました。だから紺島さんもみんなも、よくやったんです。本当に感謝します」
「……そうですね、謝ったのは見当外れでした……」
こんしまちゃんの声が明るくなる。
「ありがとうございます、先生……」
それから、使い捨て手袋を外す。
伏木くんも黙って手袋を取り外し、「燃やすゴミ」の袋に入れる。
実のところこんしまちゃんが先生に謝ったとき、伏木くんはこんしまちゃんをフォローしようとしていた。「ぼくは紺島さんと一緒にゴミ拾いをしていましたが紺島さんはずっと一生懸命でした」と言おうとしたのだ。
しかしめがねの先生は伏木くんのフォローがなくてもこんしまちゃんに先生としての言葉をかけた。
それを聞いた伏木くんは心のなかで「よかった」と安心した。かつ、自分はやっぱり先生としてまだまだだなとも思った。
(ボランティアは……社会貢献とかそれ以前にいろんな人のいろんな側面を発見できる。一緒にがんばった人やそれを見守る人の新たな一面とも不意に出会う。不可思議につつまれていた相手が少しだけクリアになる。だからおもしろい。だからおれも、やめられないんだろうな。そうか……これがきょうのボランティアで、おれが見つけたことなんだ)
伏木くんやこんしまちゃんたちは、そのあと手を洗った。
帰るとき、全員にお茶の缶とお弁当が支給された。高校自体がバイトを禁止しているので生徒がお金を受け取るのはアウトだけど、お礼として飲食物をもらうくらいならセーフである。
グラウンドに残ってお弁当を食べる人も多かった。グラウンドのはしっこに段差になっているところがあって、みんなはそこに座っていた。伏木くんもそうしていた。
でもこんしまちゃんは伏木くんたちと別れ、トテトテと家に帰った。
制服のままリビングでお弁当を食べる。からあげやごはんやレタスの詰まった中身を電子レンジであたためてから、もぐもぐとほおばる……っ!
ところで「なんとなく」ボランティアに参加したこんしまちゃんは、きょうのボランティアでなにを見つけることができたのだろう。
伏木くんのような発見はあったのだろうか……?
少なくともゴミを分別する際の知識は広がった。
食事の途中でお茶の缶のステイオンタブ式のタブを引っ張り、口をつける。
缶を両手で持ち、ごっくごっくと飲む……ッ!
「しまった」
しぶめのお茶を胃に落としたあと、こんしまちゃんがお弁当のレタスに話しかける……!
「学校に残っておけば、みんなの空き缶もまとめて回収できた……」
だけど、もう後の祭り……ッ!
こんしまちゃんはレタスをむしゃむしゃ食べ、ごっくんしてから言葉を続ける。
「よし……また似たようなボランティアがあったら参加しよ……今度は空き缶、のがさない……」
こんしまちゃんのボランティア参加理由に「なんとなく」以外の項目が加わったのは、このときが初めてであった……っ!
そんなんでいいのか……?
うん、そんなんでいいんだ。
ちなみに二月に入ってからもこんしまちゃんはボランティアに参加した。
その内容はもちろん――点訳のボランティアである。
……。
……なんで?
※ ※ ※ ※ ※ ♢ ※
☆今週のしまったカウント:四回(累計百四十一回)
次回「第三十四週 告白をリテイクしてしまった!(水曜日)」に続く!(一月三十日(金)午後七時ごろ更新)
評価やブクマ等も大変励みになります!
それにしても「ボランティア」という言葉は非常に定義が難しい言葉でもありますね。




