第3話 冷静なる特待生
食堂のド真ん中で巻き込まれてる俺を、
どこか冷めた目で見つめる少女が一人。
金髪碧眼の天才少女――アルマ。
ついに見つけたぞ、我が人生最初の宿敵!
俺の「学院七不思議チャレンジ」を開幕前に完封してきた特待生!!
十三歳で飛び級、光魔法の申し子、ノートの端っこすら余白にしない完全無欠の天才。こっちは「学院七不思議全部制覇するぞー!」って張り切って入学したのに、 入学式の前日に「それ、もう終わってるけど?」って冷たく突きつけてきた張本人だ。
いや、恨んでるわけじゃない。
せめて一個くらい残しといてほしかったじゃん!!
七不思議!!
そんな俺の悔しさなんて当然知るわけもなく、アルマは窓際で、差し込む光を背にすらりと立っていた。金色の髪は朝陽にきらめき、碧い瞳は理性の化身。背はちっちゃいけど態度は王者。特待生のローブがバフ全振りで優秀オーラ出しまくってる。
「ナイトロードの封印が揺らいだ?……寝坊じゃないの?」
「門が開かない?……鍵の不具合じゃない?」
……それそれそれそれ!!!!
今この場に必要なのは、その冷静さだよ天才様ぁぁぁ!!!
さすがアルマ!さすが理性担当!!
俺は一生あんたの味方だ!!!マジで!!!
……なのに。
「いや、これはきっと封印の緩みだ!」
「魔王の力が漏れ出してるに違いない!」
「ナイトロード覚醒の兆候……!」
聞けよ!? 天才の言葉を聞けよお前ら!!??
アルマはあからさまにうんざり顔で俺をチラ見。
そのまま、これ以上ないくらい深々とため息。
「……寝坊の件も、寝過ごした、で間違いないのよね?」
そうですとも!!
寝坊が悪いなら俺が全面的に悪い!!!
でも魔王とか封印とか、そういう話じゃねぇからな!!!???
しかし――この学院は理屈が通じない。
今ここにあるのは、ただひとつ――
誤解と幻想と噂の暴走。
そんな空気の中、俺の隣でフフッと笑う声。
「どうやら、お坊ちゃまに理解を示す方が現れましたねぇ」
ティーカップ片手に優雅に笑うのは、黒服の皮肉屋メイド・リリス。
どう見てもこの混乱、楽しんでやがる……!!
「もしかして、もう私は引退ですかねぇ?」
やめてくださいマジで!?
「俺から退いたら、秒速で俺の人生が『英雄叙事詩』になるんだけど!?」
でもリリスは口元に笑みを浮かべたまま、紅茶をすするだけだった。
……絶対に聞いてねぇ。
俺はアルマに縋るような視線を送る。
「なあ……頼むから、このバカ共に現実ってやつを叩きつけてくれ」
アルマはちょっと考えるような素振りを見せてから、淡々と言った。
「……そのうち、ね」
そのうちじゃ遅ぇんだよォォォォ!!!
俺の平穏な学院生活、いつになったら始まるんだ……!?
……てか、まだ始まってすらいない気がするんだけど!?
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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