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魔法学院の七誤解  作者: チョコレ
第七誤解 封印の臨界点
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第3話 破滅の質問

 ここは学院の図書館。

 知識の宝庫であり、魔法理論の殿堂であり――

 そして俺にとっては、精神的ダメージが蓄積される場所でもある。


「……なあ、図書館。お前、もうちょっと俺に優しくできないのか?」


 本棚の隙間から滲み出る魔導知識の気配に向かって、ぼやく。

 ここにある本の大半が、俺の理解力を試すどころか、真っ向から粉砕しにかかってくる代物だ。


 分厚い魔導書たちは、俺が手を伸ばすたびに「お前には無理だ」と言わんばかりの重圧で黙殺してくる。


「アレクシス、何をぶつぶつ言ってるの?」


「いや、ちょっと図書館と和解しようと思ってな……」


「そんな暇があるなら、問題を解いたら?」


 すっと差し出される分厚い魔法理論書。

 表紙の金文字が、謎の威圧感を放っている。


 そして、俺の向かいに座っているのは金髪碧眼の天才少女――アルマ。

 昨夜の騒動でもお世話になった、まさに命の恩人。


 ……だが、この神の審判みたいな書物を差し出された瞬間、

 感謝の気持ちより先に心が折れかけた。


「……俺が魔法理論の本をまともに読めると思ってるのか?」


「思ってないわ。」


 即答だった。


「もうちょっと悩んでくれよ!?」


「悩む必要がないもの。あなた、いつも途中で寝るでしょう?」


「……ぐっ……」


 言い返せない。ぐうの音も出ない。

 これはあれか、魔法理論以前の問題なのか。


 話題を変えよう。


「……それにしても、誤解に誤解が重なってる。

 まともな視点で見てくれてるのは、リリスとお前くらいだ。

 俺の学院生活、一体どこから間違えたと思う?」


「入学した時点じゃないかしら?」


「いやいや、そこ言っちゃダメだろ!?!?」


「でも、事実よね?」


 ぐぅ……。


 今さら根本から否定されたら、俺は何を拠り所に生きていけばいいんだ。


 ――こうして今日も、俺は魔法理論と向き合う“フリ”をする。


 頼むから、せめて一冊くらい俺に優しくしてくれよ、図書館……。


 しばらく沈黙が続いたあと、ふと、俺の中にある疑問がよぎった。


 誤解に誤解を重ねる日々。

 だが、俺の初恋まで“誤解で終わる”なんて、そんなのは嫌だ。


「なあアルマ、お前って……どんな男が好きなんだ?」


 混乱と騒動ばかりの学院生活の中で、ずっと片隅に置いていた問いだった。


 アルマは視線を少し上げて、こちらを見る。


「……また唐突ね。」


 少しだけ考え込む仕草を見せた後、さらりと言った。


「まだ恋をしたことはないけど……強くて、頼れる人かしら。逃げずに、向き合う人。」


 ――その瞬間、俺は悟った。


「あ、俺、詰んだわ……」


 自分で言ってて分かる。絶望の気配が濃すぎる。


 俺は、強くないし、頼られることも少ない。

 逃げ癖に関しては、もはや自他ともに認めるトップレベル。


 魔法劇でも裏方に逃げ、決闘大会でも戦わずして勝ち、

 何なら日々の誤解からも全力で逃げている。


 アルマの言う「理想の人間像」、俺とはまるで真逆だ。


「……ぼっちゃま、これからそうなればよいのです。」


 ふいに、横から聞こえてきた声。

 リリスが、どこからともなく現れて紅茶を差し出してきた。


「いや、俺、今のままでいいんだけど!?」


 慌てて否定したが、リリスの表情は変わらない。

 むしろ、楽しそうに笑っている。


「けれども、変わらなければ願うものは手に入りませんよね?

 お坊ちゃまの成長を、私もお手伝いしなければなりません。

 もっと試練を増やしてあげましょう。」


「おい待て!? 誰が試練受けたいなんて言った!!?」


「当然のことです。お坊ちゃまには、学院の“伝説”としてふさわしい存在になっていただかねば。」


「それ一番いらねえ!!!!!」


 俺の叫びは、またしても誰にも届くことなく、

 学院の静寂へと吸い込まれていった。


 ……いつか、マジで図書館の本が味方してくれる日、来てくれないかな。

この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。


https://ncode.syosetu.com/n8980jo/


「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、ぜひ【★★★★★】の評価やコメントをいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!


@chocola_carlyle

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