第2話 出場の誤解
魔法劇のドタバタ騒動がやっと落ち着いたと思ったら、
今度は学院最大の伝統と混乱のイベントが、話題のど真ん中に躍り出た。
――その名も、
「最強の魔法使い決定戦」
通称、覇魔戦。
毎年恒例、寮や学科の代表が魔法でガチバトルを繰り広げるトーナメント形式の大会だ。学年別に分かれてるし、戦闘も安全管理ばっちり。建前上はな。
だが、優勝すれば――
「学院の歴史に名を刻む」
とかいう、やたら盛られた称号がついてくる。
貴族にとっては家名を売る大チャンス。
庶民にとっては、シンデレラストーリーの始まり。
つまり、全員が血走ってる状態。
学院全体が“戦モード”に突入してるってわけだ。
……でも。
俺には、関係ない。
絶対に、関係ない!!!!
食堂で覇魔戦のポスターを見た瞬間、俺はそっとパンをかじりながら心に誓った。
「俺は出ない。俺には無関係だ。パンの味だけが真実だ。」
そう、願っていた。
なのに――
「ナイトロードが出場すれば、今年の覇魔戦は伝説になりますよね!?」
「闇の制御を確かめる機会に最適だ!」
「ナイトロード様の実戦データを蓄積せねば!」
誰が火をつけたぁぁぁああああ!?!?!?
明らかにおかしい。今回は“誤解の自然発酵”じゃねぇ。
意図的に仕組まれてる。誰かが裏で煽ってる!!!
その証拠に、やたら広がる“ナイトロード出場”フラグ。
掲示板には「伝説の戦い、開幕近し」とか書かれたポスターまで貼られてたし。
俺、何も承認してねぇぞ!?!???
そんな混乱の中、食堂の隅でパンを咀嚼しながら思った。
「……参加しなければ、ただの噂で終わる。俺が出なきゃ何も始まらない」
「よし、断言しとく。俺は、絶対に出ない!!!」
──と、そこへ。
「アレクシス・ナイトロード」
冷静すぎる声が背後から刺さる。
振り向けば、生徒会長セリーヌがいつもの無表情で立っていた。
「この覇魔戦で、あなたが一般生徒と証明できれば――
学院の動揺も抑えられるはずです」
「……お前もかよおぉぉぉぉぉ!!!!」
なんだその理屈!?
「あなたが勝てば、誤解は晴れます。
負ければ、“力の抑制が必要だ”という話に戻るだけです」
詰んでんじゃねぇか!!!!
しかも、生徒会からの正式推薦って形で書類がもう出来上がってるんだけど!?
サイン欄だけ空白で渡されてるんだけど!?
――結果。
俺は、たったひとつの理不尽に、静かにサインを走らせた。
「……ああもう、どこで人生間違えたんだ……」
こうして、出場しないという誓いは――
静かに粉砕されたのだった。
ああ、俺の平穏よ、いずこへ……。
そんな絶望に頭を抱えていると、どこからともなく漂ってくる紅茶の香り。
――いた。
「お坊ちゃま、ついに公式戦デビューですね」
日傘を差し、紅茶を片手に佇むメイド、リリス。
もちろん、いつものようにどこから現れたのかは謎だ。
「……今、俺がどんな気持ちか分かってて言ってるよな?」
「ええ。とても“平凡な一般生徒”には見えないご様子で」
ふふっと笑いながら、紅茶をくるくる。
「勝手に推薦されて、勝手に伝説扱いされてるんだぞ!?!?」
「それを“運命に愛されし者”と申します」
「俺はただ!平穏に過ごしたいだけなんだよ!!!」
「それを“最も危険な理想”と申します」
「なんだその哲学みたいな皮肉はあああああ!!!」
「ふふ……覇魔戦、楽しみですねぇ。お坊ちゃまが“誤解を晴らすための戦い”で、どれほど誤解を生むのか」
「お前、楽しんでるだろ!!!」
こうしてまた――
俺の“平穏”は、容赦なくトーナメント表に叩き込まれたのであった。
お願いだから、次は勝手に優勝フラグとか立てるなよ……!?
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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