第3話 捕縛寸前
事態は、完全に手がつけられないレベルに突入していた。俺は本当に何もしていない。ただ寝坊しただけなのに、気づけば学園全体が暴走していた。
「封印監視装置のチェックを行います! ヴィクトル教授、ご確認を!」
学園広場に設置された巨大な魔導スクリーン越しに、生徒会長の凛とした声が響く。長い銀髪を翻しながら、彼女は冷静に状況を見極めようとしていた。
俺?
俺はただ"何が起こっているのか"すら理解できないまま茫然としていた。
「……監視装置が過剰反応を起こしている!?」
魔導科学の第一人者と称される教授が、血走った目で魔法陣を解析しながら驚愕する。彼は研究のためなら徹夜どころか学生の爆発事故すら「貴重なデータ」として処理することで有名なヤバい学者だった。
そんな教授が、珍しく焦っている。
「封印魔法が揺らぎ始めている……!?」
待て待て待て、どういうことだ?
俺は自分の手を見つめる。
……普通の手だ。何も変わったところはない。
なんなら、寝起きのせいでまだちょっとぼんやりしてるレベルだ。
なのに――。
「封印が本当に揺らぎ始めているぞ!!」
「まさか…ナイトロードの覚醒は真実だったのか!?」
学園生たちは完全に盛り上がっていた。
いやいや、落ち着け! 俺はただ寝坊しただけだぞ!?
なんでこんな大事になってるんだよ!!!
「ナイトロードの拘束を開始します」
冷静で厳格な声が響く。
は? 拘束? 俺、何もしてないよな?
生徒会長が俺に向かって歩み寄ってくる。
その目は、まるで凶悪犯罪者を捕らえに来た騎士のように鋭い。
「これ以上放置すれば、学園に甚大な影響を及ぼす可能性があります」
もうダメだ。
誰も俺の話を聞いてくれない。
広場に配置された生徒たちが、一斉に魔法陣を展開する。
このままでは、本当に捕まる――!!
その時。
俺の目の前に、静かに影が立った。
「お坊ちゃまを害する者は、敵です。」
――メイド服が翻る。
専属メイドにして最強の戦闘メイド。
彼女の指先には、鋭く研ぎ澄まされたナイフが握られていた。
広場に、ざわめきが走る。
「ナイトロードの従者と生徒会長が対峙!?」
「漆黒の暗殺者と噂のメイド……ついにその力が明かされるのか!?」
「伝説の戦いが、今ここに!!!」
――違う!!!!!!
俺の悲痛な叫びが、学園中に響き渡った。
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