第4話 魔王と聖女
これは、どう考えてもおかしい。
今、俺は学院の中庭に組まれた特設ステージの上に立っている。本番じゃない、リハーサルだ。なのに、胃が。ずっとキリキリしてるんだが。
目の前には、演劇部が全力で作り上げた“魔王の玉座”。禍々しい黒と金の装飾、浮遊する魔法陣、空気まで重くなるマナ演出付き。
これ、魔法劇だよな?
「では、魔王役のアレクシス・ナイトロードさん、第一幕の台詞お願いします!」
演出係がキラッキラの笑顔で指示してくる。
その目、完全に楽しんでやがる……。
俺は、台本をめくって、読む。
「今こそ我は封印より解き放たれ、再びこの世を闇に染め上げる!!」
いや待て。
これ、俺の誤解そのままじゃねぇか。
「お坊ちゃま、お芝居ですから。多少の誤解は“味”ですよ♪」
横で紅茶を片手に涼しい顔のリリス。意味わからん優雅さで笑ってる。もはや舞台スタッフじゃなくて謎の演出家だろお前。
「味が濃すぎるんだよ!! 俺、舞台で伝説の再現してんじゃねぇか!!」
衣装も容赦なかった。
漆黒のマントにドクロベルト。
禍々しき王剣とか名付けられた重すぎる剣。
誰だよこれデザインした奴!!!
俺を魔王にする気満々じゃねーか!!
でもひとつだけ、救いはあった。
対面に立つ“聖女”役、アルマ。
金髪碧眼、天才特待生。
聖なる衣装で完璧にキメてる。
あの横顔。あの眼差し。
やばい、普通に好きだ。
「なあアルマ……もし俺が本当に魔王になったら……お前、止めてくれるか?」
照明の魔法がふわっと照らす。
俺の演技、けっこうキマってたと思う。
なのに――
「もちろん。即座に討つわ」
即答かよォォォォ!!!
「もっとこう! 王道ヒロインみたいな、信じてる的なヤツは!?」
「だって魔王は討つべきでしょ?」
「いや、台詞としては正しいけど情緒が死んでる!!」
「じゃあ、本番ではこう言うわ」
アルマは静かに構えを取り、凛と告げた。
「アレクシス・ナイトロード。私はあなたを討つために生まれてきた」
「なんで劇の外でラスボス宣告されてんの俺ェェェ!!?」
「光の槍も飛ばすから、避けてね」
「討つ気満々じゃねぇかァァァ!!」
そのやり取りを聞いていた生徒たちがざわつき始める。
「魔王と聖女……完璧すぎる……!」
「本物だ……これは預言の再現……!」
「伝説が、目覚める……!」
待て待て待て!!!
しかも、その時だった。
ステージの上で、俺が玉座に座った瞬間。
なぜか、観客席の一角がひざまずいた。
「ナイトロード様ァァァァ!!!」
「魔王ご降臨にございますぅぅぅ!!!」
「我ら、忠誠を捧げますぅぅぅぅ!!!!」
おい、信仰イベント始まってんぞォォォ!!!??
お前ら、どこまで脳内補完すれば気が済むんだよ!!?
ティーカップを優雅に傾けながら、リリスが微笑む。
「ふふ……魔王、ご誕生ですね」
「認定すんなぁぁぁぁ!!!!」
なのに、玉座の周りに生徒たちが集まり、
何故か俺の足元に“魔王軍”って旗まで立て始めてる。
アルマはアルマで、舞台袖から本気の光魔法構えだすし。
なにこれ、どこのラスボス戦前夜!?!?!?
そうやって演劇練習は、信仰と勘違いの嵐に飲まれいく。
誰か、劇の脚本より先に、俺の人生書き換えてくれ……。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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