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魔法学院の七誤解  作者: チョコレ
第二誤解 偽りの演劇
18/94

第1話 絶望と希望

 学院の図書館は、荘厳な静けさに包まれていた。天井までそびえる巨大な本棚。歴史書に魔法理論、錬金術の研究書。知識の壁。学問の要塞。まさに「ガチ勢専用エリア」である。


 血の騒動も、噂の暴走も、ここには無縁――

 ……と、思っていた。


「ナイトロードの血には天使の因子が含まれている説がある……」

「いや、ここには“闇の深淵より生まれし魔の血族”って……」

「むしろ“光と闇の狭間に生まれし混沌の申し子”では!?」


「やめろぉぉぉぉぉ!!??」


 叫んだ。耐えられなかった。

 なんだよ“混沌の申し子”って!!?

 俺の知らんとこで俺の伝説を創造すんのやめてくれ!!


「ナイトロード様……!」


 図書館中の視線が俺に集中する。

 やめろ、そういう“神を目撃した”みたいな目ッ!!


「ちょうどよかったです! ご自身のルーツについて、どの説が最も真実に近いのか、お答えいただけますか?」

「天使説、魔族説、それとも混血型新概念ですか!?」


「全部ハズレだぁぁぁ!!!」


 頭を抱えた。

 無理。絶対無理。

 俺が何を言おうと、こいつらは“神話”を優先する。


 こんなところで勉強なんてできるか!!


 ……と、思ったが。

 ここにはいるのだ。あの天才が。


 特待生、アルマ・デュフォンマル。

 学院の知識の守護者。図書館の女帝。

 そして今、俺が唯一「勉強を教えてもらう」という名目で接触できる存在。


「なあ、アルマ……俺もちょっと、勉強してみようかなって……」


 言ってみた。勇気を振り絞って。

 彼女は一瞬だけこちらを見ると、小さくうなずいた。


「ちょっと待ってて。」


 そして机の上に置かれたのは――

 俺の腕くらい分厚い魔術理論書。


『魔術理論大全【初級編】』


 表紙からもう心折れそうなんだけど!!??


「はい。これが基礎。とりあえず、この章からね。」


 アルマは淡々と言って、ページを開く。

 そこには魔法陣の理論、古代文字、数式、計算式。


「……文字、多すぎない?」


 つい口から出た。


「この程度が読めないと、学院ではやっていけないわよ。」

「まじかよ、学院って魔法バトルじゃなくて知力バトルだったの!?」

「実践にも理論は必要よ。」


 アルマは当然のように返してくる。

 いや、たしかに正論だけどさ!


「俺は、経験で生きていくタイプなんだよ!」

「でも、あなたは経験もないわよね?」


 ズバァッ!!

 真顔で突き刺さる正論。反論できねぇ!!!


「ぐぬぬ……」

 思わず変な声が漏れた。


「分からないところがあれば、教えてあげるから。」


 そう言って、彼女は本を俺の前にぐいっと押し戻してくる。ページのどこからどう読めばいいのかすら分からない俺に、アルマは知的で冷静な声で説明を始めた。


 だが、内容は全く入ってこない。

 いや、違う。理由はわかってる。

 だって、彼女を見てると──

 心臓のリズムがバグる。


 真剣な表情で本を読み進める横顔。

 光の入る窓辺に佇む姿。

 指先の仕草。丁寧な説明の声。


 あかん。

 この空間、尊い。


「……どうしたの?」


 ふと、アルマが俺を見上げた。

 俺はびくっとして、慌てて目をそらす。


「い、いや、なんでもない!」

「じゃあ、続き。」


 うなずきながらも、俺の中では別の大問題が進行中だった。

 恋も、魔法も、基礎からやり直しですか……!?


 俺は分厚すぎる魔法理論書を前に、遠い目でため息をついた。これ、本当に理解できる日が来るのか?いや、俺のこの片思いの方が、先に爆発しそうなんだが――


「ふふっ、お坊ちゃま、ずいぶんと“気が散って”おられますね?」


 声のする方を振り返ると、そこには優雅にティーカップを傾ける黒衣のメイド、リリスの姿があった。図書館の机に、ティーセットを広げてくつろいでやがる。


「いや待て待て!! 何で図書館で紅茶飲んでんだよ!? ここ飲食禁止だぞ!?」

「ご安心ください、中には液体なぞ入っておりません。」

「見た目が完全に“飲む気満々”なんだよ!!!」

「これは“メイドとしての所作”でして。落ち着いた振る舞いの演出というか、格式というか……つまり“趣”ですね。」

「そんな気取った趣いらねぇよ!! 圧がすごいんだよそのカップ!!」

「お気になさらず、お坊ちゃまもお好きなポーズでどうぞ。」

「ポーズの問題じゃねぇ!!」


 俺が机に突っ伏すと、リリスは満足げに目を細めた。まったく、なんで俺の周りってこう、落ち着かない奴しかいないんだよ……!!

この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。


https://ncode.syosetu.com/n8980jo/


「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、ぜひ【★★★★★】の評価やコメントをいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!


@chocola_carlyle

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