第8話 特待生の裁定
やっぱりというか、案の定というか、信奉派と秩序派の争いは口論で済むような可愛いもんじゃなかった。
はい、気づけばそこは――学院広場、改め、戦場。
ゼノ率いる信奉派。
ユージン率いる秩序派。
理屈も議論もとっくの昔に投げ捨てられ、飛び交うのは魔法の炸裂音と怒号。
雷が落ち、火の玉が舞い、氷の刃が風を切る。
……おいおいおい、何だこのバトルロワイヤル。
しかも――
「なんで俺がど真ん中にいるんだよぉぉぉぉ!!!??」
魂の絶叫、炸裂。
いや、マジでどこからどう見ても主戦場のど真ん中。
俺、ただの通りすがりの学生だったよな!??
「やめろぉぉぉ!! 俺を巻き込むなってばぁぁ!!」
回避? 無理。
逃げ道? ない。
運命? バッドエンド一直線。
――そのとき。
「……もういいわ。」
少女の声が、空気を一変させた。
戦場を高みから見下ろす、金髪碧眼の少女。
我らが理性の女神、アルマ・デュフォンマル様。
彼女は一歩前へ出て、息を吐いた。
「どっちもいい加減にしなさい!!」
右手を掲げる。
黄金の魔法陣が展開。
「輝ける聖光よ、我が声に応え、此処に降り注ぎ守護の壁となれ──
聖光壁!」
ゼノの火球が光の壁に吸い込まれるように消滅した。
「なっ……!?」
「邪魔するなっ!!」
ゼノ、完全に逆ギレ。
その背後で、闇の刃が唸りを上げる。
「影の深淵に眠る力よ、漆黒の闇より刃を生み出せ。絶望の一閃、我が意志に応えよ──闇影刃!」
鋭利な闇の刃が空を裂く。
だが、アルマは眉一つ動かさず。
「光よ、我が掌に宿れ。その輝きで道を穿ち、闇を貫け!聖光弾!!」
空間が光に包まれる。
数え切れない光球が、ふわっと宙に展開され――
十個、二十個、百個。
「え!? ちょ、おまっ、数多すぎない!?」
俺の驚きなんて誰も気にしない。
そのまま百以上の光球が、ゼノとユージンに一斉ホーミング!
「くっ…! 初級魔法のはずだろ、これ!?」
「なんだこの弾幕!? 防御の隙間を縫ってくるぞ!?」
二人ともガチガチの障壁展開してるのに、まったく意味なし。
軌道読めない、速度おかしい、避けようがない。
「ぐっ……!」
「うああっ……!」
そのまま二人、派手に吹き飛ばされた。
広場に、完全沈黙。
アルマの背後で、残った光球が優雅にくるくると旋回している。
その姿、もう神話か何かに出てくる"奇跡の担い手"にしか見えない。
「当然の対応よ。」
冷静すぎる。
眩しすぎる。
ちょっと惚れるレベルでかっこいい。
いや、ほんと。
ちょっと惚れるって!!(本音)
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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