第4話 査問と暴走
誤解に次ぐ誤解。
最近どうも学院の空気がおかしい。
「ナイトロードの封印が……揺らいでいる……?」
「やばくね? これ、やばいやつじゃね?」
「ついに覚醒の時が……!!」
……いや、やばいのはお前らのテンションだろうが。
俺はただ、目立たず静かに過ごしたいだけの、ごく普通の学院生だっつーのに。
でも、そうは問屋が卸さないのが俺の人生。
空気読まない運命は、案の定いつも通り逆風を吹かせてきた。
「風紀委員会、緊急会議を開く!」
……はぁ!? なんで俺のせいで会議が開かれてんの!?
風紀委員会。それは“学院の秩序”を守るために結成された、真面目さと正義感の権化みたいな組織。そしていま、そのど真ん中で話題の中心にされているのが、よりにもよって、俺。
「諸君。我々の役目は混乱を防ぐことだ。しかし、現状、"ナイトロード封印異常説"は無視できないレベルにまで拡散している」
委員長のユージンが、眉間にシワ寄せながら語り始める。
「これを事実無根と切り捨てるのは早計だ。現に、学院の扉の開閉不具合も発生している」
「それ、ただの老朽化じゃないですか?」
「いや、マナの乱れが影響している可能性もある」
意見が二つに割れ、会議室にピリピリとした緊張感が走る。
いやいや、俺、ただの一生徒だからな?
が、次の瞬間。
「よって、ナイトロードへの査問を実施する!」
決まったァァァァ!!!!! 勝手に決定すんな!!!
その日の午後。俺は寮のソファで、リリスが淹れてくれた紅茶を飲みながら、まったりしていた。そう、これこそ俺の求めていた平穏な学院ライフ――
ドンッ!!!
「アレクシス・ナイトロード! 査問会への出頭を命じる!」
扉が吹き飛ばんばかりに開く。
風紀委員たちがずらりと登場。
胸元の“学院秩序の守護者”バッジが、やたら眩しい。
「……は?」
「その紅茶に異常がないとは言い切れまい」
「どんな理屈だよ!!?」
隣で紅茶を啜っていたリリスが、くすくすと笑う。
「お坊ちゃま、大変なことになりましたねぇ」
「主人の危機を笑うメイドって、職業的にどうなんだよ……」
「査問を拒めば、ますます誤解は拡大するばかり。ここは"誠実な姿勢"をアピールするチャンスかと」
「アピールじゃなくて、俺の名誉を守れよ!」
「お気持ちは察します。ただ――」
「……ただ?」
「逃げれば、“魔王覚醒ルート”一直線ですよ?」
「ルートって何!?」
もう無理だ。
リリスがマイペースに茶を啜る中、風紀委員たちは問答無用で近づいてくる。
「暴走の兆候が見られたため、拘束措置を取らせてもらう」
カチャン。
はい、両手、拘束完了。
「いやいやいやいや!!! 紅茶飲んでただけだろ俺ぇぇぇ!!!!!」
リリスはそんな俺を見送りながら、しみじみと呟いた。
「さすがはお坊ちゃま、注目度が違いますねぇ」
いや、皮肉言ってねぇで助けろや!!!
というわけで、俺はいま――
手錠つけられたまま、風紀委員に連行され、審問室の前に立っている。
中から聞こえるざわめき。
「ナイトロードが来た!」
「ついに……!」
「これが歴史の転換点か……」
……うん、これ、もう完全に詰んでる気がする。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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