八話 夢のような事件
@悟視点@
ふふふふふ!ははははは!
暑さが最大級のこの季節!去年の夏は黒い液体騒動で大変だったが、今年の夏はついに日頃の行いの良さが認められたようだ!
なんと宝くじの特等と半袖コートのセットが当たったのだ!
「コートのセットは五十着!宝くじは百億セル!これはもう笑うしかない!」
しかもこの日に限って他の三人は出かけている!これはもはや独り占め決定!もともと俺が当てたんだから結局は独り占めするけどな!
「ふふふふふ!ははははは!…なんか虚しい」
俺の求めてるのはもっと上なんだよなぁ。三人に自慢した上で百万セルずつ三人に譲ってやるくらいがいいな!というか自慢させろ!
「恐らく寺でスケートでもしてるんだろうな。ならついでに記紀弥たちにも自慢するか!」
そして暇そうならさっさとこれを百億セルにかえて、寺で百億セル取得パーティでも開くかな。一生に一度の無駄遣いくらい別に良いだろう。
「それじゃあさっさと寺に向かうか!」
というわけで毬の寺に到着したのだが、ちょっとした問題が発生してしまった。
「無人?」
幽霊だから人かはわからないのだが、寺には幽霊一人いなかった。ヒトデ型の自縛爆霊とかいたからやっぱり人か。
「一人の間違いよ!自分もカウントしないと駄目じゃない!」
急に背後から話しかけてきたのは不法侵入者の印納さん。
「印納さんも自分自分をカウントしてませんよ」
「あら、私は神より凄いのに。それでも称号は人なのね」
神様の職業の相手でも倒したのだろうか?もしくは異世界の神を本当に倒したのかもしれない。印納さんなら本気でありえるよなぁ。
「まぁいいわ!今回の事件を解決したければ勝負よ!槍魔術、ダークプレート!」
印納さんが槍を掲げると空から低い唸り声のような音が聞こえる。
「なんだ!?」
部屋から外に出ると、なんと空に白い空間が出現している!しかも非常に少しずつだが広がっているぞ!
「ダークプレートは宇宙の黒を白で侵食する技。私を倒すか数ヶ月経つかしないと白い空しか見えないわよ!曇りでなければ日光や月光は通すけどね」
夜寝る時に空が白いなんて最悪じゃないか。朝や昼は光を通すだけまだ良心的だが。
「何でいつも俺の行動には邪魔が入るんだ!空気圧圧縮砲!」
「私の華麗なステップで避けてやるわ!」
空気の魔法弾で攻撃。空気圧圧縮砲は弾の速さが速い方なのに、印納さんは華麗とは言い難い避け方で回避し続ける。
「駄目だ。全然当たらない」
「前から思ったんだけど、悟って水と空気以外に魔法弾は作らないの?」
「作れなくはないです」
特星に来たばかりの頃は様々な魔法弾を作った気がする。大体がろくな結果にならなかったんだけどな。炎の魔法弾は人の家に引火するし、雷の魔法弾は電気を通す銃を使うと自滅する。光の魔法弾は自分の視力を下げかねない。土はかっこよくない。闇や毒は環境に悪そうなど、様々な深い事情があって使わないのだ。
ちなみにエクサバーストは俺の能力で撃っているわけではない。あれはエクサスターガンの力だ。
「そう。ならちょっと見せてみなさい!変身!」
え、変身?印納さん変身とかできるのか?
たとえ美人でも、変人の変身シーンって見たくないんだ。だから目を瞑っておこう。
「ふははは!私の美貌に見惚れなさい!」
その台詞がなければ何人かは見惚れるだろうな。惜しい。
「変身完了!お色気シーンがないのは仕様よ!そう、私は健全!純粋!完璧!まさしくパーフェクト!」
うわー。変身終わったけど目を開けたくない!今日の印納さんはテンションが高くて危険だ!…正直逃げたいが、覚悟を決めるか!
「…あれ。変化ない?」
今まで以上に変な姿の印納さんを想像してたのだが、変身前と大して変わりない。まさか単なる脅しのつもりか?
「適当にやるから本気で来なさい。槍魔術、百重メテオ落とし!」
「メテオ落とし?うぉっ!」
数ヶ月前のように流れ星でも流れるのかと空を見ると、ダークプレートの効果がわかりにくいくらい、空を埋め尽くす数の星が特星に降ってきている!しかも恐らく全てがこちらに向いている気がする!
「これって特星が持たないレベルじゃないですか?」
「住民は避難済みよ!ついでに私はいつもの数倍美しいから隕石くらい大丈夫!」
数倍とか言ってるといつもが美しくないってことだぞ!ってかそれどころじゃない!どんな魔法弾ならあれをどうにかできるんだ!?
…常識的に考えて無理だよなぁ。
「…やる気が見えないわねー。槍魔術、タイムアップ」
印納さんが槍を振りかざす。すると辺りの温度が急上昇し、凄い風が吹き荒れる!そして辺りが赤い!
上を見ると一つの巨大な隕石が結構間近に迫っている!
「いつの間にこんな近くに!?ってか数が減ってる?」
「タイムアップの効果で隕石がぶつかる少し前の状態にしたわ!しかも途中で隕石同士が溶けて合体したようね!」
普通じゃありえない状況じゃないか!しかも本気でどうにもならない!
考えろ。まず力技ではどうにもならない。エクサバーストで穴を開けてそこを通り抜けても熱でやられる。というか特星が崩壊したらどっちみちアウトだ。
「さあ残り数十秒よ」
こうなったら戦略的撤退をするしかない!そんな感じの魔法弾だ!
「えっと。適当転送弾!」
移動用の魔法弾をなんとか作り出す。
でも自分に銃を撃つのって何か嫌だな。銃自体は水鉄砲だけど。
「逃げるつもり?でも逃げたらこれが燃えるわよ!」
印納さんが懐から取り出したのはなんと数百万セルはありそうな札束だった!どうせ燃えるんだったらその前に俺が貰って良いんじゃないか!?
「今だったら私から奪えるかもね」
「確かに札束を貰ってから逃げるのも良いかなぁ」
…いや待て!俺には百億セルの宝くじが!目の前の現金を逃すのは惜しいが、宝くじも現金も燃える可能性が高い!欲張ることがオチに繋がるなんてのはよくある話だ!
「俺は金に飛びつく男じゃないんです!」
印納さんにそういって自分に魔法弾を撃つ。自分の周囲を魔法弾の光が包み、気づいた時には道路の上に居た。
「このくらいか。自分に撃ってよかった」
さっきの適当転送弾の効果範囲を見たところ、あまり効果範囲は広くないようだ。隕石を転送させようとしていたら失敗していただろう。
「それにしてもここは特星だよな?隕石はどうなったんだ?」
時間的にはもうすぐ隕石がさっき居た場所に落ちる筈だが、ここは空が普通の状態である。ダークプレートや百重メテオ落としの効果の影響が見受けられない。
「たっだいまぁ」
空を見ていると印納さんが現れる。しかしその服装はさっきまでとは違って真っ黒だ。隕石が直撃したのだろうか?
「耐久性のないレプリカねー。今度夏休みの工作で作ろうかしら?」
「なにか壊れたんですか?」
「ん?さっきまで居た特星が壊れたのよ。ま、偽の特星なんだけどね」
偽!?じゃあ俺は寝てる間に偽の特星に連れ込まれたのか!そんなものを用意できるなんて犯人は何者なんだ?まさか魅異の協力があったのか?
「じゃあここが本物の特星なんですか?」
辺りを見る限りここは俺の家の近所の公園だ。ただ人が見当たらないので偽の特星かもしれない。
「当然ここは本物の特星よ!しかも運良く隠しステージのほうよ!」
「隠しステージ?」
ただでさえ特星は広すぎて俺的には隠しステージだらけに近い状態なのに、本物の隠しステージまであるのかよ!
「ふふふ!ここは神様の職業になった少女や特殊な地位の人が多く居る場所よ!アミュリーや姫卸もこの隠しステージに住めるのよ!隠しステージは裏ステージと呼ばれることもあるわ」
あぁ。アミュリーが住んでいた場所か。確か異次元にあるとかなんとかって話だった筈だ。そういえば姫卸婆さんが居る海岸は波動でワープしないといけなかったな。
…姫卸婆さんは少女という扱いで良いのだろうか?いや、特殊な人のほうだな。
「そして今回の事件の犯人は隠しステージに居るわ!そう、私のパーフェクトな勘がそれを告げてるわ!」
「そんなこといって。どうせ犯人わかっていたりするんじゃないですか?」
前の時もカセット奪ってたし、今回もいつの間にか犯人側と接点とか持ってそうだ。…さすがにないか。
「そこまで見抜いてくるとはさすがね!」
え、本当に犯人わかってたのか?いやいや、主人公の俺がそこに気づかないわけがないか!とっくの昔に見抜いてたに決まってるじゃないか!
「しかし見抜かれることも予想の範囲内よ!」
「予想の範囲内であることすらも俺の推理どおりですよ!」
主人公の予想と推理は常に相手の上でなければならない!
「キリがないから話を戻すわ。数ヶ月前に凄い流れ星が流れたのは知ってる?」
「それはもちろん!」
数ヶ月前、急に日が沈んで夜になった日があったはずだ。確かそのときに流れ星が長いこと流れてたな。そうそう、あの日は運良く願い事を三回言えたぞ!
「その日に三回願った願いが出来る限り叶ってしまう。それが今回の事件。そして願いが叶う日は今日なのよ」
よっしゃ!俺は三回願い事したから願いが叶うはず!どんな願い事かは忘れたが、今日はこれからなにか良いことがあるはずだ!
宝くじが当たってさらに良いことがあるなんて凄い日じゃないか!
「別に害とかなさそうだから放置で良いんじゃないですか?というか放置しましょう!」
そもそも願い事を三回言うという前提条件があるし、被害者どころか関係者すら少ないだろう。
しかもこのまま事件が解決されたら俺の願い事が叶わなくなる!
「私は当然放置するわよ。でも苦労したくないなら犯人を捜すほうが楽よー」
「ようやく見つけましたよ!犯人!」
急に背後から聞き覚えのあるような声で叫ばれる。後ろを振り向くとそこには久々に会うウィルがいた。
俺が驚いている間に印納さんは手を振ってどこかへ消えてしまった。
「ウィル、どうしてこんなところに?」
さっき犯人って言ってたから大体予想はつくが、とりあえずセオリー通りに聞いておく。
「名前は悟さんでしたよね?実はこの事件の犯人を倒すよう、魅異さんに頼まれてここに来ました」
く、魅異のやつが頼んだのか!
ウィルは元勇者らしいから戦闘経験はそこそこなはず。実力は不明だが現在の勇者の魅異が反則級だから、元勇者のウィルもかなりの実力者だろう。
「何で俺が犯人なんだ?俺は犯人じゃないしまったく怪しくないだろ!」
「ヒントがコートと悟ンジャーと自意識過剰とまともな変人の四つだったんです。これらが当てはまる人は今のところあなたしかいません!」
た、確かに狙ったかのようなヒントだ。特に二番。…だが四番目はおかしい!俺はまともだが変人ではない!よって犯人は恐らく俺ではないはずだ!
だが。変人でないと示すには勝負するのが一番早いはずだ。俺の技って名前が普通だし。
「なら勝負して俺が犯人じゃないことを証明する!空気圧圧縮砲!」
まずは速度やや早めの魔法弾で様子を見る。
「わ!勇者ガード!」
しかしウィルは剣を取り出してガードする。一応岩を砕ける威力の魔法弾のはずだが、それを防いでるウィルはビクともしない。実は重いんじゃないか?剣や装備が。
「あんな普通のガードで防げるのか。なんか凄いな」
「ふふん。現役の時代に魅異さんに鍛えてもらいましたからね!あ、でも技は私のオリジナルですよ!」
てことは昔から魅異とは関係が深かったのか。俺はもっと昔からだけどな。
「いきますよ!幅跳び剣!」
「危なっ!」
飛び掛って斬りにきたがなんとか避ける。あらかじめいきますとか言ってたから避けられたが、なかなか動きが素早いぞ!
「ハエ叩きアタック!」
「高速剣!」
いつだったかにハエ叩きとウィルの剣が衝突する。そしてお互いに後ろに跳んで距離をとる。
「そんな…。ハエ叩きと互角なんて」
「ただのハエ叩きじゃないぞ!多分!」
遠距離は魔法弾で近距離はハエ叩き。この俺に隙などない!
「まだまだですよ!飛ばし剣!」
「へ?いてっ!」
ウィルが剣を投げて攻撃する。予想外の攻撃方法だったので避けれる直撃。少しコートが破れてしまった。新しいコートを着ていなくてよかったー。
「そして勇者二重斬り!」
「ならビー玉弾!」
ガラスの魔法弾を作り出しウィルの手に五発ほど撃つ。
「あ!」
すると剣を落とすウィル。今がチャンス!
「最後はめでたいのを喰らえ!大花火圧縮砲!」
炎の魔法弾でウィルを吹っ飛ばす。圧縮されているので花火の音はしないし、見かけも火の玉みたいな魔法弾だ。
「うぅ。剣を落とされるなんて」
どうやら落ち込んでいる様子のウィル。気絶はしてないけど戦意喪失で俺の勝ちかな。
「で、さっきも言ったが犯人は俺じゃないぞ」
「そうなんですか?なら証拠にそのコートを取ってください」
「それは無理。コートを着てないと体調不良になるから」
なぜかは知らないが本気で調子が悪くなるんだよなぁ。なにかの呪いにでもかかってるのか?まあコートは好きだからいいけどさ。
「…やっぱり変人ですね」
「一般人だ。主人公だけどな」
それにしてもコートに悟ンジャーに自意識過剰にまともな変人か。最初の二つは完全に俺なんだけどなぁ。
実はコートに関しては雷之家の男性陣全員に疑いがあるんだ。なぜか雷之家の男性陣はコートを着用するからな。
だけど悟ンジャーに加入してる奴は居るかどうかも怪しいくらい少ない。加入といっても悟ンジャーと名乗るだけでいいんだけどさ。
「俺みたいなやつか。…あぁ!」
そういえば姿を見たことはないが俺と似たような奴がいるじゃないか!しかもそいつならこの場所に居る可能性が高い!
「じゃあ私は帰りますね」
「ん、そうか?じゃあな」
ウィルが帰ってしまったので犯人の場所へ向かうことにする。どうでもいいけど今回は小学生が居ない気がするな。どうしてだろうか?
俺がやってきたのは自分の部屋の前。隠しステージの構造はほとんど本物の特星と変わりなかったが、俺の部屋の扉は実物とはかなり違っていた。
ちなみに最初は勇者社に向かったがなにもなかった。だから次に犯人の居そうなこの部屋に来たら扉が違っていたというわけだ。
扉には二つのプレートをはめ込む穴があり、足元には一つの数字が書かれたプレートが大量に落ちている。そして扉の横にチャンスは一度という張り紙がある。
「正直、一度相手の居場所を外したからなぁ」
答えは大体予想がつくのだが、さっき間違えて勇者社に行ったため少し自信がない。
「これとこれっと」
プレートの中から三と一のプレートを見つけてはめ込む。すると鍵が開いた。俺はインターホンを押して全力で扉を開け放つ。
「出てこいボケ役ー!」
〔出る前に入ってきた!?〕
中に居たのはボケ役だった。声が同じだから姿も同じだと思っていたが、まさしくその通りだった。しかしよく見るとボケ役のコートには帽子がついていた。
「帽子付き半袖コートか?俺も嫌いじゃないが帽子付きはあんまり着ないぞ」
〔そりゃあレアだし。…それよりよく暗号が解けたな〕
犯人がボケ役だとわかってたからかなり簡単だったな。というか単純すぎるぞ。
「そういえば声の聞こえ方がいつもどおり妙なんだが。幽霊か?」
今まではその場に居ないからこんな聞こえ方だと思ってたが、今ボケ役は目の前にいるのに声の聞こえ方が変だ。
〔勝手に殺すな!俺の体の性質の半分くらいが夢だからこんな声なだけだ!〕
ということは世界中の夢が消えたらこいつを倒せるのか。そっちの方が楽かな?
〔残念ながら今は自給自足してるから意味ないぞ〕
俺の考えたことに返答するボケ役。
って、俺の考えを読めるのか?
〔今更だな。今までも思考で会話してただろ?〕
「さぁ?」
とりあえず適当に受け流しておく。体の性質の半分が夢で自給自足しているならば、もう半分は恐らく借りているだけはず!借りている相手を倒せばボケ役の実力は半分になる!
いや、どう考えても俺から借りてるパターンじゃないか!取り付いてるし!
〔そのとおり。まあ残り半分も自給自足でどうにかなるけどな〕
どうにかなるのに取り付くとは迷惑な奴だ。
〔でも霊に憑かれないんだ!存分に感謝しろ!〕
こいつに付かれるくらいなら霊に憑かれたほうがマシだよなぁ。
「もういいや。とにかく事件を起こした犯人として倒してやろう!」
〔魅異に倒すことを頼まれていないツッコミ役には、残念ながら夢も希望もない!花の多い爽やかな草原風景!〕
ボケ役が叫ぶと同時に部屋がどんどん広くなり、あたりに草や花が咲き始める。
〔俺の能力は非質系の夢を操る能力!夢のあることなら制限や限度ありで願いを叶えたりもできるぞ!ふわふわ空中浮遊散歩!〕
俺とボケ役の体が宙に浮いてゆっくりどこかへ流される。
「動きにくいな!水圧圧縮砲!」
〔のんびり世界の大冒険!〕
水の魔法弾で攻撃するが、ボケ役の使った技によって魔法弾の動きが遅くなる。よくみると辺りの動きも遅くなっているようで、俺とボケ役だけが通常の速さで浮いていた。
〔輝く星の落ちる世界!〕
魔法弾地帯を抜けると同時に辺りの早さが元に戻る。そしてすぐに手裏剣のような星を降らせてくるボケ役。印納さんのように隕石落とすよりはマシだが地味に痛い!
「いたたっ!重ね着コートガード!」
コート一枚では痛いので予備のコートを一枚取り出し重ね着する。正直夏にやりたくなかった技だが仕方ない。ちなみに頭はハエ叩きでガード中だ。
〔おぉ、やるじゃないか〕
「主人公の力を思い知ったか!」
所詮ボケ役は俺のコピーもどき。主人公の素質を持つ俺には遠く及ばない。そう、偽者は本物に敗れる定めなんだっ!
〔考えは全部伝わってるぞ。…でもまあその通りかもしれないな〕
「お、負けを認めるのか?」
ボケ役はまだまだ戦えそうな雰囲気だが俺の意見に同意している。無駄な争いを避けようという考えか?ま、勝負してもどうせ俺が勝つからなぁ。
〔まさか!ただ本編を始めるだけだ!必殺、夢ある悟ンジャーの開幕!〕
ボケ役が技を叫ぶとボケ役のコートがどんどん黒く染まっていく。
「って俺も!?」
俺のコートも黒くなっていくが、俺の場合は体までが黒くなっていく。まさか日光の浴びすぎで日焼けしたんじゃ!?
〔それはない。ところでツッコミ役。テレビでやってた悟ンジャーは知ってるよな?〕
「ファッション番組だっけ?」
〔戦隊ものだろ、どうみても!〕
おぉ、俺としたことがついつい嘘をついてしまった。いやいや悟ンジャーブラックだから天然なんだ。黒って宇宙の色だし天然要素抜群じゃないか!
〔実はその悟ンジャーは第二期なんだ〕
「…へ?」
馬鹿な!俺の見ていた悟ンジャーには第二期なんて表示はなかったぞ!…戦隊ものだからある意味当然かもしれないが。
〔お前は第二期の悟ンジャーブラックの力を使える。だが俺が使うのは初代悟ンジャーブラックの力だ!本物が偽者より強いように、初代の力に第二期の力は通じない!〕
説明長いなー。もう昼食の時間だしそろそろ家でテレビでも見たい。
〔まず浮遊解除!〕
俺とボケ役は地上に着地。下は芝生だったが普通に痛い!
〔更に!…ん?〕
ボケ役の動きが急に止まる。ボケ役が見ているほうを見ると一人の小学生がかなり上空を浮いて移動している。知り合いだろうか?
〔魅異ー、魅異はいるか?〕
「見ての通りだよ~」
ボケ役が呼びかけると急に魅異が現れる。どこにでも現れる奴だ。
「って、何で急に魅異を呼んだんだ?あの小学生の知り合いか?」
〔いやいや、ちょっと確認だ。確認は大事だと思うぞ俺は〕
勝負を中断して確認か。マナー的にどうかと思うけどなぁ。
〔それにしても魅異は今日も可愛いなぁ。付き合おう!〕
「あの浮いてる小学生はボケ役の予想通り。でも私が特星に入れたわけじゃないよ~。入れなかったわけでもないけどね~」
ボケ役の土下座告白を無視して話をする魅異。入れてもないけど入れてなくもない?ってことはなにもしてないのか。
〔いいのか?下手すると俺達の結婚場所がとんでもないことになるぞ〕
「あの子の技はあくまで特殊能力。だから皆で力を合わせればどうにかできるよ~」
さっきから二人で話を進めていて話についていけない。とりあえずあの小学生が滅茶苦茶強いかも知れないって事はわかったぜ。
「悟はあれが誰か分からないよね?あの小学生は神離 御衣。私の妹でこんな字だよ~」
魅異が空中に文字を映し出す。普通に紙に書けよ。
…御衣って魅異と読み方が同じじゃないか。
〔御衣の特殊能力は様々なものを無視する能力。チート能力だな〕
チート能力なのか?話しかけられても無視するくらいの使い道しか思い浮かばないんだが。
「正直わかりにくいぞ」
〔御衣にはほとんど何も通じず、向こうからの攻撃は大体防げない〕
「わかりやすい!そしてなんてチートだ!」
ほとんどや大体という言い回しをしてるから完璧ではないだろうが、それでも防御と攻撃が凄いのは確かだろう。
というか、そういう特殊能力は主人公である俺が使えるべきじゃないか?ハンデとしてこういう能力の割り振りなのか?
〔水鉄砲が似合うからだろ?…とにかく御衣が攻撃を仕掛けたときの対策を集会かなにかで考えたらどうだ?〕
「駄目だよボケ役。戦力も被害も楽しさもマイナスになるからね~。各自自由行動が一番だよ~」
〔気が合うな。俺もまったく同じ考えなんだ。まぁ俺と魅異との相性の良さってやつ?ふふふふふ!ははははは!〕
どういう理屈でマイナスになるのかは判らないが、俺の知り合いには団体行動をしてくれそうな奴は本当に少ないと思う。
あとボケ役が気持ち悪い。笑い方とか特に気持ち悪い。もう一回あの笑い方をしたらダサさ十倍って叫んでやろう。
〔あ、ちなみにこの笑い方はツッコミ役の物真似だぜ〕
「してない!そんな笑い方断じてしてない!」
俺の笑い方はもっと上品なはず!笑い声を出さずに微笑むとかそんな感じに違いない!百億セルを持つ俺なら大丈夫!
「…げ!そういえばこのクジをクジ屋に持ってかないと!」
〔そのクジ、どこで買ったんだ?〕
ふふふ!当たりクジの買った店を忘れるわけないだろう!えっと…、あれ?
「そういえば買った覚えがない。何かヒントはないのか!?」
当たりクジを取り出して見てみると、神門王国の神門城というところが主催しているらしい。
「神門王国?」
「神門王国は特星のある場所とは別の世界にある場所だね~。異世界の中でも比較的私たちの世界と近いから、特星にも知ってる人はいるかも。…でも当選日が約四ヶ月後くらいだよ?」
魅異の指差す場所を見てみると確かに当選日が四ヶ月くらい先になっている。もし当選日より早くもっていったら面倒だな。不正をして当てたと思われたり、宝くじを買った人ではないと思われるかもしれない。
〔それは流れ星で叶えた願いだったりするか?〕
「え?…思い出した!そうそう、そういえば宝くじのことを願ったんだった!」
印納さんが流れ星のことを言ってたときは忘れてたが、宝くじいくつか大当たりで当てたいって願ったんだ!そして今日コートと百億セルが当たったんだ!
…クジの当たり報告は手紙で届いたんだが、どうして数ヵ月後の当たりが今日届いたんだ?勇者社からだったし、なんでもありか?
〔おかしいな。そんな非現実的な当たり方はしないはずだが。悟がその当たりかたを夢見てたなら別だが〕
「むしろ現金で欲しい!」
〔…だよな〕
そんな焦らした当たりかたなんて望むわけないだろ!それなら朝起きて百億あったほうがまだマシだ!
「あれ魅異は?」
〔流れ星のことを思い出した辺りで神社に行ったぞ。パーティに参加してくるって〕
神社?俺の今まで行った場所に神社なんてものはなかったはずだが。
〔記紀弥が神社の完成を願ったんだ。…そのおかげで俺とツッコミ役の決着がつかなかったが。で、その神社に雑魚ベーたちが移る住むらしいぞ〕
おぉ!それなら食費が一人分に戻るわけか!まあ金持ちとなった俺には食費なんて些細なことだが、金持ちになっても出来るだけ節約はしないと。
「とりあえず俺達もパーティに参加するぞ!」
〔もう昨日はとっくに過ぎたぞ。今日の今は一時前だ〕
「三日徹夜でパーティをやればいい!」
その後、本当に三日徹夜でパーティをやったらしい。俺は二日目の時点で寝てしまい、起きたらパーティは終わっていた。しかし三日とも楽しいパーティであったことは実感するのであった。