七話 情けない襲撃と流れ星
@雑魚ベー視点@
ナメクジやカタツムリの擬人化少女などに出会えそうな梅雨の季節。今日は雨なのに毬の寺に遊びに来ていますよぉっ!
現在私は客室でお茶を飲んでます。
「…で、縁側の二人はどういうことだ?」
怒った顔をして私の前に立っているのは神酒さんですねぇ。神酒さんの指差す先は縁側で、雨双さんとアミュリーさんと記紀弥さんが滑ってますねぇ。廊下を凍らせて。
「スケートごっこじゃないですかねぇ」
「だからなんでこの寺の縁側でやっているんだ!氷を溶かしたり掃除させたり後が面倒なんだぞ!」
そういえば片付けは大体が神酒さんだったはず。それなら神酒さんが怒るのも仕方ありませんねぇ。
しかし!この遊びは記紀弥さん公認ですよぉっ!寺の持ち主が良いって言ってんだから良いに決まってます!
「そういうことなら私が掃除をしましょう。少女の雑用やお世話係として働くのも私の務めですからねぇ!神酒さんは遠慮無しに滑って結構ですよぉっ!あ、そこのお菓子食べて良いですか?」
「それは私のお菓子だから駄目だ!…まぁ片づけをやってくれるのは助かる。私のお菓子はあげないが記紀弥様のでよければ少し分けてやろう」
え、それっていろいろと問題ありませんか?上下関係のこととか。
「許可なくもらって大丈夫なんですか?」
「あぁ。記紀弥様は前に私のお菓子を勝手に食べてたし、その仕返しだから大丈夫だ。あむっ」
そういってお菓子を食べ始める神酒さん。食べ物の恨みは怖いですねぇ。ちなみに私はちょっと前にすでに神酒さんのお菓子を頂きましたが、気づかれると怖いので黙っておきましょう。
あ、記紀弥さんがこっちにきました。
「………神酒、ちょっといいですか?」
「うぐっ、ごほっ!なんでしょうか!?」
咳き込みながらも食べてるお菓子を素早く隠す神酒さん。あの速さで隠したのであれば気づかれてはいないでしょう。
「…………さっき何者かに襲撃されかけました。なので襲撃を目論んだ者を倒してきてください」
急な経緯説明と目標設定ですねぇ。襲撃の割には物音とか全然しませんでしたが。
「襲撃!?記紀弥様は怪我とかしませんでしたか!?」
「……えぇ。しかし犯人には逃げられました」
一緒にスケートをしてた二人は無事でしょうか?…元気に縁側を滑り続けてますね。奥の二人が特に動じていない事から考えると、襲撃されたのに気づいたのは記紀弥さんだけですかねぇ?
「なるほど。もう少し詳しい事情を聞かせてください」
「……私達はさっき縁側でスケートで勝負をしていました。接戦で誰が勝ってもおかしくない状況だったのですが、そのとき襲撃者が覚悟と言って私の前に飛び出してきたのです」
小学生の見所ある勝負を妨害する不届き物ですか。確かにそれは許しがたいですねぇ。
「………結果、私は寺の縁側スケートチャンピオンの座を同着の二人に奪われたのです!…犯人は気づいた時にはいませんでした」
涙ながらに語る記紀弥さん。可愛いですねぇ。さすがは寺の縁側スケートチャンピオンだったことだけのことはあります。どんな競技かは知りませんが。
「犯人が居なかったのは記紀弥様がふっ飛ばしたからでは?…ごちそうさまでした」
記紀弥さんのお菓子をこっそり全部食べ終わった神酒さん。結局私は食べる暇がありませんでした。
「……とにかく私はチャンピオンの座を奪回しなければなりません。なので神酒が犯人を倒してください」
「有休が余ってるので今日は休みます。前に記紀弥様に食べられた分のお菓子を買わなければなりませんので」
部屋を出て行く神酒さん。お菓子のつまみ食いに気づかれる前に逃げるようです。
「……………神酒は駄目ですか。雑魚ベーさんはどうでしょうか?」
「任せてください!必ず犯人を倒しますよぉっ!」
「……では代わりにお願いします。もし必要であればキールを連れて行ってください。キールだけは有休を使い切ってますから」
こうして記紀弥さんから任されたこの事件ですが、私は無事に女子小学生の敵キャラと会うことが出来るのでしょうか?
「記紀弥様も酷いなぁ。有休無いことを利用するなんて」
うつ伏せのまま愚痴を言っているのはキールさん。堂々とスケートをしてない縁側でサボってます。有休無いのにサボるほうが酷いと思いますけどねぇ。
「悪いけど私は忙しいの。暇つぶしと減給対策で」
「犯人倒せば臨時ボーナスなどが出るかもしれませんねぇ」
「面倒で非効率ねー」
この人はお金が餌でも食いつきませんねぇ。悟さんあたりなら確実にお金に食いつくのに。
「…楽な仕事しか任されなくなるかもしれませんよ」
「よし、さっさと行くわよ!」
楽な仕事でも大抵はサボるのに喜ぶキールさん。…今更ですけど一人の方が良かったような。
「行き先がわかりませんねぇ」
よく考えたらノーヒントで敵の場所まで行くなんて無理ですよねぇ。襲撃した敵はどこかへ逃げたらしいですし。
「それじゃあ今日はこのくらいにして寝よう」
「寺から出て十分くらいで何を言いますか。せめて島を出てから休憩にしましょう」
でも今の時間帯は偶然欠航中だったりしそうですねぇ。勇者社の交通手段は事件発生中などにそういう偶然がよくありますからねぇ。…まぁ故意でしょうけど。
「船着場が見えてきたわ!あ、でも船が偶然手漕ぎボートしかないわ!」
やはり偶然船は欠航中でしたか。しかしキールさんがボートを漕いでくれるとは思えませんし、どうしましょうかねぇ。
「ふははは!よく来たわね!いや、来ましたわね!」
いきなり空中から登場したのは、特星のトップクラスの変質者である印納さんではないですか!…しかも喋り方が変ですねぇ。
「えっと。いろいろ言いたいことがあるんだけど何か用かしら?」
「バイトですの。あんた達を足止めすればお金がもらえるらしいですわ。ま、手加減するから覚悟しなさいですの!」
手加減するより言葉遣いを戻すほうがありがたいですねぇ。
「どうして変な言葉遣いなんですか?それもバイトのオプションか何かですかねぇ?」
「サボり幽霊と喋り方が近いから、区別しやすいようにとサービスですわ」
サービスというより拷問に近いですねぇ。普段から変質的なのにさらに磨きが掛かって背筋が凍りそうです。女子小学生があの喋り方なら抱きしめますが。
「そっちが手加減してもこっちは全力よ!じゃ、頑張って!」
それだけ言い残してキールさんはどこかへ消えました。く、サボり能力でこの戦闘をサボるつもりですね!
「喋り方の近い者が消えたから私の喋りも元に戻すわ!槍魔術、スペシャルスタースピア!」
印納さんが槍を掲げると太陽があっという間に沈んで夜になってしまいました!
「ふふふ。上を見てみなさい」
「上?あ、流れ星じゃないですか!」
空を見上げると夜空にいくつかの流れ星が見えます。しかも普通より長いこと光ってますねぇ!
多くの女子小学生と幸せに暮らしたい、多くの女子小学生と幸せに暮らしたい、多くの女子小学生と幸せに暮らしたいですよぉっ!
「この流れ星の出現によって特星の多くの人々が何かを願うわ」
…今は戦闘中でした!ということはこの技で集めた願いを何かの攻撃に!?
「次よ!槍魔術、オーバーグレート!」
印納さんが槍を前に突き出すと枕が出現します。真っ白な枕ですねぇ。
「そして喰らいなさい!槍魔術、ハイパーシュート!…うおー、てりゃー」
先ほど出現させた枕をやる気なさそうに落とす印納さん。投げるモーションですけど投げれてません!
「やる気ないですねぇ」
「手加減してるのよ。…あ、これ枕じゃなくてマシュマロよ!美味しい!」
「地面に落とした奴ですよねぇ?それ」
一度地面に落ちた枕サイズのマシュマロを噛まずに飲み込む印納さん。何故喉に詰まらないのかが不思議ですねぇ。
「…お腹が少し膨らんだ。妊娠ね!」
「子供が真似するといけないのでそういうことは言わないでくださいよぉっ!」
もしも枕サイズのマシュマロを誰かが喉に詰まらせたら印納さんの責任ですねぇ。そもそも枕サイズのマシュマロが売ってるかどうかがわかりませんが。
「甘いものを食べ過ぎて気分が悪いわ。私の負けね」
この人って強いのか弱いのかよくわかりませんねぇ。実力はありそうですけど槍の関係ない技が多いですよねぇ。槍魔術なのに。
「あ、終わったみたいね」
勝負が終わったからか、姿を消していたキールさんが出てきました。
「えぇ。特星が半壊するような戦いだったわ」
平然と嘘をつく印納さん。あ、変な口調はもう使わないんですねぇ。
「と、特星が半壊!?…そのシーン、撮ってない?記紀弥様に見せたら有休とかもらえそうなんだけど」
おぉ、見事に騙されてますねぇ。というか、特星の危機より有休の心配ってどれだけサボり体質なんですか!?
「あなたの上司のお菓子一年分でならいいわよ」
「記紀弥様のお菓子取ったら有休減る!神酒のはこれ以上食べると気づかれて斬られる!」
印納さんの要求を全力で拒否するキールさん。神酒さんのお菓子を数日前に食べた私はどうすれば良いのでしょうか?誰か救いの手をくださーい!
「で、印納さんの雇い主は結局誰ですか?」
「あー。送ってあげるわ。槍魔術、ゴーゴーワープ!」
印納さんの技で私達の足元に穴が!
「ひえぇっ!」
そして落ちます。こういう展開は慣れているのですが、ついつい叫んじゃいますよねぇ。
「おとと」
地面に何とか着地。落ちる距離がわからないというのも結構怖いですねぇ。
辺りを見渡すと地平線が見えるほどの草原が広がっています。草原だけなので、全力で転がってみたくなりますねぇ。
「あら。見渡す限りの草原ねー。今日からここは私のサボりポイントね!」
「私が居ないと来れないじゃない」
印納さんも普通についてきてますね。手伝ってくれるのでしょうか?
「ふふふふ。よく来たね、雑魚ベーとその他オマケ一人。…それと印納?」
「おや、アルテさんじゃありませんか」
私の目の前に現れたのはアルティメット少女ことアルテさん。少し前に黒い原油かコーヒー的な液体を降らした女子小学生で、黒い雨には私も巻き込まれましたねぇ。
しかし事件解決後に行った寿司屋では話さなかったのに、よく私の名前が判りましたねぇ。
「言われた時間は足止めしたわ。さぁアルティメットな金額のバイト料をこの手に!」
「あ、うん。道案内の分も追加で出すよ」
アルテさんが印納さんに札束をパスします。それはもうアルティメットな金額間違いなしでしょう!
「じゃ、終わったら迎えに来るわ」
そういって印納さんは姿を消します。来る時とは違って一瞬で消えました!
「それでアルテさん!あなたの目的は何ですか!?」
「君には特星に来る前に一度計画を邪魔されたからね。そのときの仕返しにきたのさ!」
…あれ?私って何かの計画とか邪魔しましたかねぇ?
「キールさんにですか?」
「ぐぅー」
いつの間にか寝ているキールさん。草原で寝転ぶと服が汚れますよぉっ!
「え、覚えてないの?おかしいなぁ。えっと、アミュリー神社に住んでないの?」
「ななっ!」
あ、ありえません!この子は占い師か何かでしょうか!?
「どど、どうして私のその計画を!?まだ誰にも話してない計画のはずですよぉっ!」
そう!私は毬の島に神社を建てる計画を考えているのです!そしてその計画はまだアイディア段階のもの!土地が記紀弥さんのものなので一部貸してもらえないか相談するつもりでした。
「ということは私の計画を邪魔したのは未来の雑魚ベー?もしくは平行世界的な何かとか?」
頭を抱えながら考え込むアルテさん。なんだか物凄く可愛いですねぇ。
「まあいいや!私の計画を邪魔したんだから、過去の君の計画も邪魔してやる!」
正直協力したいのですが、私達の将来を邪魔させるわけには行きません!和解してアルテさんも誘ってしまいますよぉっ!
「と、その前に。記紀弥さんを襲わせた理由だけ聞いておきますよぉっ!」
「記紀弥?私は幽霊に恨みはないよ。それにもう一人のバイトには神社の変人を襲えと言ったはずだ」
なるほど!もう一人のバイトは頭が悪いんですね!恐らく神社と寺を勘違いしたのでしょう。そして凍った縁側でスケートをしてる記紀弥さんに襲い掛かったわけですね。ナイス推理!
…でもどうして記紀弥さんが変人に見えたのでしょうか?寺の縁側スケートチャンピオンだからですかねぇ?
「とにかく!私の魔学科法の力を思い知らせてやる!魔学科法ホノー!」
空中に浮かび上がったアルテさんを中心に炎が広がるように放たれます!
「うあっ!」
範囲が広いので避けきれません!服に炎がついたので転がって消します。
「別の星のようですが怪我はありませんねぇ」
ということはこの草原は特星と同じか似たような効果があるようですねぇ。死ぬ心配はありません。
「それにしても凄い威力ですねぇ」
「当然!魔学科法は私のみつけた凄い技だからねぇ!…あれ?体が?」
アルテさんが動きが急に止まります。…近くにはいつの間にか起きていたキールさん。全体攻撃されたからサボれないと思ったんですかねぇ?
[ドカアァン!]
急にアルテさんの後ろで爆発が起こります。
「睡眠妨害とサボり妨害とは迷惑なやつね!」
どうやらキールさんが自縛爆霊で攻撃したようです。
「今のは自縛爆霊か。ちょっと面倒だねー。魔学科法デンキ」
雲すらない空から雷が出現し、次々と当たりに降り注いでいます。眩しくてアルテさんの居場所とか見失いそうですねぇ。
「くらえっ!」
「ぎゃぁっ!」
なんてゆっくりしてる場合じゃありません!こっちに向けて雷を飛ばしてきましたよぉっ!そして見事に喰らってしまいました!全然平気ですけど!
「そうだ!アルテさんに抱きついていれば攻撃されないはずです!」
アルテさんの攻撃は広範囲攻撃!アルテさんに抱きついている私を攻撃すれば、アルテさん自身もダメージを受けることになります!これを機会にアルテさんとの仲も良くなるはず!
「キールさん!ここは私が接近戦で行きます!」
「そう?なら援護は任せなさい!」
とりあえずアルテさんの真下までいって距離を確かめましょう。まぁ私のジャンプ力であれば届くでしょうがねぇ。
「アルテ!これを見なさい!」
キールさんは足元の草を抜いてアルテさんの気をそらしているようです。
「どうよ!これで私がサボりなんかしない善人であることがわかったでしょ!働き者よ!」
「ちょっと前にサボり妨害が迷惑とか言ってなかったっけ?」
「妄想じゃないの?考えすぎは体に毒よ。少し休憩すれば?ちなみに私は死ぬまでの間に二十五年分はサボったわ」
キールさんって二十五歳ですよね?死ぬまでサボってたんでしょうねぇ。幽霊になった今でもサボり続けてますが。
とか考えている間にアルテさんの真下に到着しました!アルテさんの浮いてる位置は二階くらいの位置なので、ジャンピングキックなどで跳べば何とか届きそうです。
それにしても良い眺めですねぇ。…んん?
「アルテさん!ブルマーをパンツ代わりに履くのはどうかと思いますよぉっ!」
あくまで偶然見えたのですが、スカートの下に体操ズボン型のブルマーを履いているようです。しかも大きなサイズなので中が見えそうです!見てませんけど!
「な、なに見てる!融合魔学科法エクサバースト!」
「こ、この技は!うわあぁっ!」
急に放たれたエクサバーストを避けれるはずもなく直撃。私は消滅してしまいました。まぁ消滅しても復活できますけどねぇ。
今のうちにアルテさんの背後に移動しておきましょう。
「…ちょっとやりすぎじゃない?自業自得だけど」
キールさんが味方なのに自業自得といっていますねぇ。私は他の人に見られるといけないので、忠告しただけなんですけどねぇ。見えませんでしたがおそらくブルマーより中は履いてません。アルテさん周辺の空気の触り心地がそんな感じでしたし。
「し、仕方ないよ!梅雨でパンツが乾かないんだから!」
「え、本当に履いてないの?」
どうやら本当に履いてなかったようですねぇ。辺りの気配からそれを感じ取った私は凄いかもしれません。
「…深い詮索はしないほうが君のためだよ」
これは元の状態に戻ったら確実にもう一度消されますねぇ。しばらくこのまま盗み聞きしましょう。
「まぁ危険人物も倒されたし、私は寺に帰るわ」
「へぇい!ワープ屋到着よ!」
印納さんがどこからか急に登場。おそらくどこからかこの勝負を見ていたのでしょうねぇ。さて、そろそろ戻りましょうか。
「よっと。それじゃあ帰りましょうかね」
浮いているアルテさんの上に復活してそのままアルテさんに掴まります。
「…なんだ。無事だったんだ」
非常に残念そうにいうアルテさん。おそらく心の中では感動の涙であふれているのでしょうねぇ!その出来事に私は感動しそうですよぉっ!
「確かに邪魔されたんだけどなぁ。パラレルワールドなのかな?」
そもそもアルテさんってどんな場所から来たのでしょうか?魔学科法もみつけた技と言っていたので特殊能力ではありませんよねぇ。
「集まったわね?では!槍魔術、ゴーゴーワープ!」
印納さんのワープで帰ったきた私達。そして私とキールさんは寺に到着したのですが、大問題が発覚してしまいました!
「で?私のお菓子を食べたのは雑魚ベーと聞いたんだが?」
現在神酒さんに全力で土下座中。どうやら寺の幽霊の一人が私のお菓子を食べる現場を見ていたようです。ちなみに隣でキールさんも土下座中」
「…何で私まで?」
「キールはサボりすぎだ!お前が掃除とかの当番の日は全部私が代わりにやっているんだぞ!」
キールさんの分を全部肩代わりですか。そんなの他の幽霊に任せれば良いと思いますけどねぇ。
「なんだ。昨日食べたお菓子のことじゃないのね?」
「ほー」
神酒さんから殺気的なオーラが噴出されてます!
「キールさん!何故そんなに危険なことを自ら!?」
「大丈夫よ。そろそろ時間だから」
って、そんなこと言ってる間にも神酒さんが刀を構えてます!私まで巻き込まれるのでは!?
「覚悟っ!」
「…………………神酒」
そこへ現れたのはスケートが終わった様子の記紀弥さん。
「え?」
「きゃあっ!」
しかし登場が少し遅かったためか、キールさんは神酒さんの攻撃を受けてしまいます。タイミングを誤ったようですねぇ。
「ちょっと記紀弥様。喋り始めが普段より微妙に遅くなかったですか?」
「…………峰打ちのようでしたので」
神酒さんの刀の持ち方を見ると刃が逆になっています。…峰打ちを見たかったのでしょうか?
「………神酒、私のお菓子が無くなっていたのだけど知りませんか?」
それはもしかして神酒さんが私に食べさせようとしたあのお菓子?確か神酒さんが全部食べていましたよねぇ。私は食べてないから無罪です。
「え!あの、それは…、わかりません。わ、私は盗まれたお菓子のお菓子入れには近づいてませんから」
神酒さん!盗まれたお菓子を知ってるのは記紀弥さんと犯人くらいですよ!
「……そうですか?私はてっきり、昨日神酒のお菓子を食べた犯人を私と勘違いして、その仕返しに私のお菓子を食べたのかと思ってました。じゃあ間違えてお客さんに出したということもありませんね。近づいていないのだから」
なんてピンポイントで的確な予想!まるで教科書に書いてある答えをそのまま言っているようです!というか絶対にわかって言ってますよねぇ。
昨日食べたお菓子ってことはキールさんが原因ですね。そのキールさんはすでに飽きたのか、どこかへサボりに出かけたようで居ませんが。
「………話は変わりますが、神酒が雑魚ベーさんに勧めていたお菓子。あれって私の無くなったと似ていたような」
「その時点で見られてた!?…幻覚です記紀弥様。スケートをしていた廊下の冷気で、記紀弥様は幻覚を見ていたのです!」
神酒さんって案外記紀弥さんに対して嘘とかつきますよねぇ。ありえないくらい嘘が下手ですが。お菓子食べられた仕返しとかもしているので、案外友達に近い感覚で記紀弥さんと接している気がします。
それと部屋から廊下が見えるのだから、廊下から部屋が見えるのは当然ですよねぇ。
「…………はぁ。まぁいいでしょう。神酒は下がってください」
「あ、はい。それではお菓子を買ってきます」
逃げるように外に飛んでいく神酒さん。遠くでキールさんの悲鳴が聞こえます。記紀弥さんは神酒さんが出ていくと軽く笑います。
「………ふふ。今日は流れ星が流れましたね。雑魚ベーさんは三回なにかを願いましたか?」
流れ星?…あぁ、印納さんの使った変な技ですね。そういえばアルテさんの場所についたあたりから、夜から昼に戻ってましたねぇ。
「もちろん三回きっちり願いましたよぉっ!」
「…………そうですか。どんな願い事か楽しみです」
おぉ!記紀弥さんが私の願い事に興味を示していますよぉっ!
「私の願い事を知りたいですか?」
「……はい。女子小学生関係ですか?」
な、なぜ私の願い事が女子小学生関係だとわかったのでしょう?
「多くの女子小学生と一緒に過ごしたいと願いましたよぉっ!」
「……そうですか。数ヵ月後が楽しみですね」
楽しそうに微笑む記紀弥さん。数ヵ月後?数ヵ月後にそんなイベントが発生するのでしょうかねぇ?
「数ヵ月後に何かあるのですか?」
「……………えぇ、悟ンジャーの感動的かもしれない対決があります!」
悟ンジャーといえば悟さんがブラックのあの悟ンジャー?記紀弥さんがここまで目を輝かせているのですから、かなり確定的なんでしょうねぇ。
…でも女子小学生との関係はあるのでしょうか?
「ところで記紀弥さんに頼みたいことがあるのですが。その前に雨双さんとアミュリーさんは?」
神社の土地のことを話す前に、二人が居ないかを確認します。二人には完成してから見せるつもりなので、居たら先に帰ってもらう必要があります。
「………二人は先に帰らせました。それで頼みは何ですか?」
二人とも居ないとは都合が良いですねぇ。完成してから二人にしかし土地なんて貸してくれるのでしょうか?まぁ今更な疑問なのですが。
「実は神社を作ろうと思っているんです。それで毬の島の土地を一部貸していただけませんかねぇ?」
他の場所の土地を買っても良いのですが、島にある神社の方が特殊な感じで良いですよねぇ。少し高い位置だと階段が作れてさらに雰囲気が出ますし。
「……………偶然掃除のやり過ぎで神社を建てれる状態の場所があります。少し高い位置なので階段を作る必要がありますが、そこであれば条件次第で貸すことができます」
記紀弥さんの条件がどんなものかは知りませんが、記紀弥さんの頼みですから土地の貸し借り関係なしで条件クリアを頑張りますよぉっ!
「で、条件とはなにですか!?」
「………そうですね。数ヵ月後にちょうど完成した神社に来てください。そして完成パーティをしてください。でも悟さんには気づかれないようにお願いします」
へ?悟さんに見つかると何か問題なのでしょうか?
「その前に数ヵ月後にきっちり完成しますかねぇ?天候とかに左右されませんか?」
「…………大丈夫です。神社は何もしなくても数ヵ月後には完成します。そして雑魚ベーさんが来れば完成パーティをする人数の女子小学生が集まります。ただ女子小学生以外が集まる可能性もあるのです」
んー。なんだか記紀弥さんの言ってることが全然わかりません。そして何を企んでいるのかもさっぱりわかりません。悟さんは記紀弥さんに嫌われているのでしょうかねぇ?
「………私は次回の事件はぜひ悟さんに解決してほしいのです。解決する必要すらない事件ですが、それを解決するのが主人公だと思いませんか?」
まったくわかりません。しかし記紀弥さんの主人公にこだわっているのはわかりました。そして私はそれを聞いて一つ思ったことがあります。
「悟さんに事件の内容と犯人を教えれば良いんじゃないですか?」
記紀弥さんの話を聞く限り、誰がどんな事件を起こすかわかっているようです。それなら悟さんにそのことをネタバレすれば良いのではないでしょうか?
「…………駄目ですよ。それは絶対駄目です!そんな夢のない展開は私が許しません!そういうことにならないように、主人公や悟ンジャーのあり方について今から議論しましょう!」
その後、三日くらい飲まず食わずの徹夜で議論をさせられました。記紀弥さんの言いたいことはわかりませんでしたが、記紀弥さんとずっと一緒で嬉しい三日間でした。
話を聞いてる間に悟さんが他の二人と寺の廊下でスケートをしてたのが羨ましかったですけどねぇ。