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変な星でツッコミ生活!?  作者: 神離人
本編:???days特星解明クライマックスストーリー編(part01)
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〇話-001日目 最もか弱いドラゴン

@悟視点@


梅雨の雲がついに雨を降らし始めたこの頃。昨日は電子界に閉じ込められていたドラゴンを救出してから俺は意識を失ったはずだ。夢じゃなければな。……まだこの部屋の中に居るのか?


「おーい、居るか?」


〔誰を探しているのですか、雷之 悟。この部屋には私しかいませんよ〕


む、頭の中に声が。ドラゴンはまだこの部屋に居るようだな。もしくはもうに外に出ていて魔法で俺に語り掛けているのかもしれない。まあ、何にしても話を聞けそうでよかった。


「お前に話を聞こうと思ってな。何だかんだで電子界だと事件の話ばかりだっただろ?特星生活のアドバイスとかでお前に話しておきたいこともあるし」


〔それで誰を探していたんですか〕


「いや。お前だって」


〔ふっふっふっふ。私を探していましたか。いい心掛けですね、雷之 悟!お前はきっと、私を探したくて探したくて仕方なかったのでしょうね!〕


「なに言ってんだ……?」


〔余計なことは考えなくていいんです。お前は私が聞いたことに答えてください。ほらほら、誰を探していたんですか?〕


「お前だよ」


〔ふふふふふ。お前は人間なのに私をそこまで探していたとは。ふふふっふふふふふっふふふふふふふふふふふっ〕


大丈夫かこいつ。どことなく情緒が不安定に見えるぜ。特星の不老不死オーラで心はかなり回復しているはずだが、一晩では安定しないくらいの精神ダメージを負っていたってことなのかな。……なんなら電子界に居たときの方がまともに見える。


〔ふぅ。それでお前は私に何を聞こうというのですか。言っておきますが私は信仰や地球以外のことは相当疎いですよ〕


「生活スタイルを決めておいた方がいいと思ってな。特星だと金の稼ぎ方は主に2種類に分かれるんだよ。戦って稼ぐか、働いて稼ぐか。……まあ別に金がなくても生きていけるけど、退屈過ぎて結局働いたり戦ったりするからな。準備はしておくほうがいいぜ」


〔ほほう、地球とはかなり状況が違うようですね。私はドラゴンらしく戦う方が性に合っていますが。ただ、この星の働き口というのも気になります。一体どういう仕事があるのですか〕


「勇者社関連での仕事が主だな。特星の経済って9割以上が勇者社で回ってるらしいし。仕事は好きに選べるって話だが、大抵の仕事は常に順番待ちだそうだ。接客や受付あたりは採用人数が多いらしいが、あの辺は戦闘ができないと厳しいかもな」


〔接客や受付で戦闘……?〕


「勇者社はサービスの一環で店員と戦闘できるんだ。正直、戦闘で稼いでる大半の奴らより強いと思う。まあ今は女子小学生が帝国に集まってて戦える店員不足で弱体化してるけどな」


〔女子小学生が居なくて弱体化……?〕


「ま、まあ地球慣れしてるとこの感覚はわからないか。大事なのはそれでも店員は足りてるって部分だな。特星では人手が全然足りてて、人が余りまくってるんだ。だから機会があって都合がいいときだけ働けばいいぜ。スローライフってやつだな」


〔地球だと、競争倍率が高いほど争いは激化していましたけど。この星だと逆なのですね〕


これは烈から聞いた話だが、勇者社では基本的に1人で1つの仕事を行っているらしい。しかもシフトは未定で順番が回ったときの連絡で間に合いそうなら直行して働くとか。絶え間なく稼働させる地球の仕事とはかなり印象が違うかもな。


〔しかしよくその体制で物流を維持できますね。工場の生産とかどうなっているんですか〕


「工場は見たことないな。どこかの街にはあるかもしれないが。勇者社の販売物は全部魅異が店に直接出現させてるって話を聞くからそんな感じじゃないか。飯屋とかも質はいいが手作り感はないしな」


〔神離 魅異ですか。なら言うことはありませんね。そろそろ戦闘での稼ぎ方についての説明を聞きましょうか〕


「戦闘は簡単だよ。ダンジョンでレアアイテムを手に入れて勇者社に売却するんだ。あとは戦闘で倒した相手の落とし物を拾う手もある。まあ所持品を奪うのは、反感を買ってリベンジされたりするから慣れてきてからがいいと思うけど」


〔ダンジョンにそう都合よくお宝が落ちているんですか?〕


「ダンジョンの宝は、勇者社だか特星本部だかが配置してるって話だったような気がする。……あ、特星本部ってのは特星の維持管理を行う役場みたいなところだ。あそこは常に人手不足で戦闘に事欠くこともないぜ。公務員になりたいなら特星本部一択だな」


〔公務員で不人気とは。給料悪いんですか?〕


「いやそうでもないんだ。ただ、戦闘とチーム行動が必ず付き纏うからな。戦闘能力があって、好き勝手せず、指示通りに動けるってタイプ向きなんだ。その辺のやつを雑に倒して情報収集とかできないし……。むしろ逆に仲介したり止めたりする側。あれじゃあ人が集まらなくて当然だぜ」


〔地球で言う警察みたいなものですか〕


「事務職員みたいなのもいるにはいるな。ただ、特星本部の安全な仕事は子供優先だからお前じゃ無理かもな。帝国に人員取られる前の特星本部は小学生だらけだったし。今じゃ特星本部長が万能特殊能力で全部まとめて処理してるって感じらしいけど」


〔……勇者社といい特星本部といい、労働者が居なくても問題ないのでは?〕


「トップだけで十分ではあるな。極端な話、魅異がいればどうとでもなるだろーぜ。でも、俺はあいつの力に頼りすぎるのはなんか気に喰わないけどな!」


〔おや。何故そう思うのですか〕


「気兼ねなく会えなくなりそうじゃん。俺も魅異がこの星にとって必須なのはわかってるんだ。頼らざるを得ない。……でも、あいつとはなるべく対等な友達でありたいからな。気分よくまた会いたいから頼り過ぎる気はないぜ。魅異が気にしなかろうと、貸し借りって自分ではどこか気になるものだからな」


〔お前にしては殊勝な心掛けですね。私にもちょっと刺さるセリフです〕


魅異か……。俺も含めて、この星の連中はあまり魅異と会おうとしないんだよな。特星の住人ならば誰もが勇者社を利用してるしあいつに頼っている。その借りの大きさは、礼ひとつで済むようなものじゃないと誰もが自負しているんだろう。……あと単純に強すぎて絡みにくいってのもあるか。


「話が逸れたな。まあ戦うか働くかだけでも決めといたほうがいいぜ。働きたいときは俺だと役に立てないから詳しそうなやつに頼むことになるけどな」


〔ふん。私はドラゴンですよ。戦いの中でこそ真価を発揮するに決まっているでしょう。それに借りを作る人間はお前ひとりで十分です!〕


「まー、電子界でもかなり苦戦したからな。いいんじゃないか」


〔しかし、戦うにしても働くにしても体を手に入れる必要がありますね。今の幽霊未満のエネルギー量のままではまともに生活できませんし〕


「そういえば体ないよな。俺は体が戻ったのになんでだ?」


〔元々私は肉体を持たないドラゴンなのです。電子界に備わっている仮の姿形を与える機能がなければ、本来の姿などわからない、計算式や仮想粒子のような存在。物質への影響力で言えば、姿を投影できる幽霊よりも影響力が少ないですね。今みたいにメッセージを送り合える相手も、神や信仰生物に限定されています〕


「あれ、声は物理現象だよな。じゃあ話をしてるわけじゃないのか。心を読めるのか?」


〔魔法を使えば読めますよ。でも今お前と会話できているのは信仰を介しているからですね。……言葉には他人への影響力という形で微弱な信仰が乗ります。その信仰を読み取ることで9割くらい正確にお前や人間たちの言葉を読み取れるのです。ただ、問題は私側が話すときですね。信仰を介してメッセージを発信するので、信仰を知覚できる神や信仰生物が相手でなければ私の言葉が届かないのですよ〕


「へー。さすがに信仰専門なだけあって説明が細けーな。今のままだと人間とは話せないわけか」


〔そうですそうです。このままでは会話は勿論のこと労働や戦闘もままならないでしょうね。いやぁ残念です。体さえあれば竜の知恵と力をフル活用して特星の支配も易々行えたのですが。体や脳がなくては私の真なる力はお披露目できませんねー〕


「お、言ったな?よーしちょっと待ってろ。用意できるかもしれないから」


ってわけで、話は聞いてただろボケ役。このドラゴンの体をお前の夢パワーで何とか作り上げてくれないか。竜形態でも擬人化でもどっちでもいいからさ。


〔あ、あのなー。話は聞いてたけどそりゃ難しい注文だぜ。せめて幽霊連中みたいにエネルギーを高める修行とかをしてれば話は別だけどよ〕


そこをなんとか頼むよ。こいつは長いこと電子界に閉じ込められていて、ようやく特星に脱出してきたんだ。昨日はその記念デーだぜ。体の一つくらい送ってやりたいんだよ。


〔ふーん……。電子界に通う内に感化されたってわけね。わかったよ。夢の力を超精密に稼働させて、そいつでも使える物質の体を作れないか試してみる。10分くらい音信不通にするぜ〕


おお、サンキューなボケ役!やっぱりお前は頼りになるやつだ!


「待たせたな。今、ボケ役がお前の体を作れないか試してくれるってよ。夢の力でも難しいらしいけど、ボケ役は期待を裏切らないやつだ。多分何とかなるぜ」


〔ボケ役……黒悟ですか。エクサスターガンでの事故の際にお前にコート神の体を託した男。種族の違うあの男を随分と信頼しているのですね〕


「そんなことまで知ってるのか。ああ、俺にとってあいつは命の恩人だ。だけどそれ以上に、俺の近況をよく熟知してるっていう安心感があるな。理解者って感じなんだ」


〔理解者ですか〕


「ああ。今にして思えば、地球にいた頃からずっと見守られていたんじゃないかって気がするな。特星でもよく俺を覗いてるっぽいし。……ある意味、お前と似てるかもしれないぜ。見守る範囲が地球か雷之家かの違いはあるけど」


〔なら私も負けていられませんね!信仰専門のドラゴンとしては、神に分類されるお前のことくらいは理解できなければなりませんから。私こそがベストパートナーです!〕


「なら後で勝負だな。戦うのが一番手っ取り早く理解し合える」


〔え。脳筋過ぎません?ま、まあ受けて立ちますけどね。お前など数秒と掛からずにズタボロにしてあげますよ!〕




「体ゲットーっ!」


10分程を待った後。戻ってきたボケ役の夢の力により、ドラゴンは体を手に入れることができた。そして俺の部屋を飛び回っているわけだが。……おいボケ役。俺の部屋を飛び回っているこの小さいドラゴンについて何か言うことはないのか。


〔文句なら受け付けねーぜ!物質未満のエネルギーしかないんだ!光より貧弱な存在で通常サイズのドラゴンの体が動かせるかってんだ!〕


……え?光より弱いの?俺が電子界でこいつと戦ったときはもっとドラゴンらしい姿だったし、何なら魔法だって使えていたはずだぞ!?


〔よーく考えろツッコミ役。お前は自身が存在するために必要な信仰エネルギーを捨てて、体を失うことでようやく電子界に入ることができたんだぜ。電子界でお前といい勝負したそいつには、電子界に居られる程度のパワーしかないという事さ〕


い、言われてみれば……確かに。そこのドラゴンは大きなエネルギーを持つから電子界の出入り口を通れなかったが、電子界に侵入した俺と大差ない実力だった。外で体を失い、物質ですらない俺と互角だったということは……電子界の外だとあのドラゴンの実力は……。


〔この物質世界だと奴は弱いということだな。電子界出入口の許容エネルギーを5、ツッコミ役の電子界でのエネルギーを4とするなら、ドラゴンのエネルギーは6から7程度だろう。しかし物質ひとつのエネルギーとなれば100以上はある……!〕


物質ひとつ分のエネルギーすら持っていない!?だ、だけどあいつの体は動いてるぜ。


〔だから!俺が頑張ったんだよっ!褒めてくれ!〕


ああ。夢の力っていうだけはあるな。それに……夢って強キャラ感あるし!ボケ役、お前はとんでもない大いなる力を手にしているに違いない!お前はラッキーな男だ!神だ!大魔王だ!


〔ふっ。悪い気はしねーな〕


「さてこの体にも慣れてきました。雷之 悟。もはやお前との体格差など問題ではないでしょうね」


「あ、ああ。本当にそうかな。俺の小指の爪くらいの大きさしかないけど。虫というか」


「外へ出なさい!私の初勝利はお前の泣き顔以外にありえないのですから!」


「俺になんの怨みがあるんだよ……」




外は梅雨の小雨が降り続けている。風は吹いてないし雨も弱いから天候が勝負の邪魔になることはなさそうだ。……ま、このドラゴンは魔法が使えるんだ。ボケ役が言うような実力差があっても、魔法の力があればいい勝負ができるだろうぜ。


「さあどうする。電子界に悪天候はなかったと思うが」


「地球を見てきた私は梅雨を知り尽くしています!簡単に勝てるとはきゃああああぁーーーっ!?」


「ど、ドラゴンーーーーっ!?」


ドラゴンが外に出た途端、雨粒の一つがドラゴンの体に直撃した。雨粒の砲撃を受け、ドラゴンの体は雨粒ごと地面へと撃ち落されていく。そのままドラゴンの体は地面へと叩きつけられて、雨粒と水たまりの中でもがいている。脱出しようにも雨粒や波に邪魔をされて出られないようだ。


「うぷっ!お、溺れっ!」


「大丈夫か!?」


「がぼげほっ!」


「ダメそう!おい、しっかりしろって!」


水たまりからドラゴンを救い上げると、体力を使い果たしたのか完全に伸びている。溺れたときに水をかなり飲んだのか明らかに腹が出てるな。にしてもあの数秒でここまで飲むものか?


〔溺れた後に、雨水の圧力で無理やり体内に水を流し込まれたんだろうな。てかまだ溺れているんじゃないのか?口の中まで水が溢れてるぜ〕


沈んでないのに溺れるのか?まあでも息ができなさそうだし水を出すか。……おおっ、腹を押したら噴水みたいに水が出た!ふやけて柔らかいから、腹に穴が開かないかだけちょっと不安だけど。特星だし大丈夫だろう多分。


〔その体を壊したら俺がキレるからな。人間の体の何百万倍も精密に作ってあるんだ。絶対壊すなよ〕


柔らかいなー。こんなの押しすぎちまうって。あっ。


〔おい!?〕


ああいや違う。水を出し切ったみたいで泡が出たんだよ。ドラゴンって炎とか吐くしきっとその原料みたいなものだろ。危ないし全部吐き出させよう。


〔そりゃだ液だ。泡は人間でも吹く〕


あ、ゲロ吐いた。


〔押しすぎだバカっ!〕




ひとまず部屋にドラゴンを持ち帰り、雨水から保護する。ドラゴンは途中で意識を取り戻したが、救出してからは恨めしそうな目でこちらを睨みつけている。逆恨みのようだ。


「………………」


「……な、何だよ。ちゃんと助けたぞ」


「玩具みたいに体を弄ばれた気がします……!」


「そんなことしてねーって。ボケ役が証人だ」


〔してたぞ〕


「じゃ、じゃあ。その黒悟に私の醜態を晒して見世物にしたりも?」


「してないしてない」


〔ゲロ吐いてるとこ見たよ〕


「そうですか……。意識がない間、お前が私の体を好き勝手にするビジョンが浮かんでいたのですよ。私の思い違いでしたか」


「ああ。誤解が解けたみたいでよかったぜ」


〔なあツッコミ役……。そのドラゴン、言葉のチョイスが随分と偏っていないか。何か企みがあると考えた方がいいんじゃ〕


でも、こいつは地球を長らく見守ってきたドラゴンだからな。現代地球っぽい言葉遣いになるのも仕方ないだろうぜ。気になるならボケ役の能力で調べたらどうだ?


〔やってるけど謎の妨害が……。あっ!〕


……ボケ役?な、何だどうした?ボケ役からの通信が急に途絶えたように思えるが。


「雷之 悟。このままびしょ濡れの私を放置する気ですか。ほら、お前の力で何とかしてください。体を拭くとか、その身で温めるとか、解決策は幾らでもあるでしょう?」


「ん、ああ悪い。エアコン付けるぜ」


とりあえず、ボケ役のことは後だ。小雨の雨にやられるような虚弱体だと特星での生活なんてやっていけない。雨の降らない室内で万全の状態ならまだ戦えるかもしれないし。まず水を乾かそう。


「よし。これで体が乾くはず」


「きゃああああああああーーーっ!」


「ど、ドラゴンーーーーー!?」


エアコンの風が強くなった途端、ドラゴンの体は巻き上げられ壁に叩きつけられた。明らかにエアコンの風に乗せられて飛ばされるような動きだ!そんな、エアコンにすら勝てないのか!?


「うぐうぅっ!い、息がぁ……!」


「て、停止だ!停止ボタン!」


エアコンの電源を切ると、先ほどまで風圧で潰されそうだったドラゴンは地面にポトリと落ちる。虫が殺虫剤掛けられた光景に似てる……。そ、それはそうとドラゴンは無事か!?


「お、おい。大丈夫かお前」


「お、お前に心配される筋合いはありません。ですが、思ったより過酷な環境に身を置いているのですね……。正直、不意を突かれたって感じです」


「俺も想定外で驚いてるよ。エアコンでさえ不意打ちになるのか……」


「ふーんだ。油断しただけで何呆れているんですか。ちょっと暴風に飛ばされたくらいで大げさに叫んで……。あ、そういえばお前私の名前覚えてますか」


「え、名前あるの?」


「ジパンレイドラゴン。初めの自己紹介で名乗ったはずですよ。なのにお前だのドラゴンだの失礼な」


「お前初めの自己紹介でドラゴンって呼べとか言ってたろ」


「さて何のことやら」


「大体、皿々だって何とかドラゴンなのに皿々だろ。お前も似たような日本名ないのかよ」


「皿々ちゃんは日本暮らしな上に人前に出ていきますもん。私は電子界ができるまで姿形がなかったから、日本名とか要らなかったんですよ」


「へー。じゃあ俺が名前つけてやろうか?」


「やった是非!あ、でも本当にいいんですか?これから特星でも名乗っていく名前ですからね。私、かなり厳選しちゃいますよ?」


お、どうやらかなり乗り気なようだ。そりゃそうか。今まで名前を必要としなかった奴が、ついに体を手に入れて名前が必要になったわけだからな。インパクトのあるいい名前つけないと。


「いいぜ任せな。雑魚ベーの名前も今思えば、俺が名付けて本名よりも馴染んでいるんだ。お前ぴったりの名前がきっとあるはずさ」


「うん?」


「ひとまず雑魚ドラ、雑魚ゴン、雑魚ジーパン、雑魚ンレの4つだな。どれがいい?」


「うわー。……ああ決めました。私はこれからパンレーと名乗るのでよろしく」


「俺の考えた名前候補は!?」


「論外ですよ論外!ああでもほら、雑魚ンレから後ろ2文字取ってますから」


「元はジパンレイドラゴンの一部だしそれ。何でだよー。雑魚ベーは今じゃ自ら名乗るくらい気に入ってくれたのに」


「私と異世界人では感性が違うのですよ感性が。大体、あの男にしたって事情込みで受け入れることができたのでしょうし」


「事情?雑魚ベーに?」


「お前は知らないのですか。雑魚ベーという名前は元々、彼の姉が子供時代に使っていた蔑称であって、お前が初出じゃないのですよ」


雑魚ベーの姉……?ああ、ロボ狂いのあいつか。セーナとか言ったっけ、ロボット少女のタンシュクを連れてる女だ。うーん、あいつと同じセンスかぁ……。


「前にテーナの話を聞いただけなので詳しくは知りませんけどね。でもまあ、お前の呼び名を気にしないのには相応の理由があるって訳ですよ」


「あーもうわかったって。センス合わねーなお前とは」


「パンレーです。忘れない内に復唱しておきなさい」


「パンレー、パンレー、パンレー」


「ふふふふふ、パンレーと決まったか。その命名、是非私にもお祝いをさせてもらおう!ジパンレイドラゴンのパンレーっ!」


「「えっ」」


[がしゃああぁん!]


声の聞こえた方を向くと同時に、魔鏡が割れてガラス片が飛んでくる。とっさにコートでガラス片を防ぐがいくつかは肌を掠っていった。……今確かに、ガラスを割る何者かの手が見えた!だが、どうして割れたガラスの後ろには誰もいないんだ!?


「どこを見ているコートの神よ。私はここだ」


「後ろ!?お前いつの間に!」


「ま、魔鏡が粉々に」


「ふっ魔鏡か。ドラゴン共が作り上げた厄介なマジックアイテム。しかしエネルギーは中々だな!ミラー・コレクト!」


人っぽい姿の青年が杖を掲げると、謎の球体が発生し、散らばった魔鏡の破片は全てその球体に飲み込まれてしまう。な、なんだありゃ!魔法か!?


「いやそれよりも。お前……人間の姿だが下手な変装をしてやがるな。姿の見え方がとても現実の物体とは思えないぜ」


「ほう。思ったよりも鼻の利く神だ。我がアングル魔術を看破するとはな」


一見ただの人間に見えるこの男。だが、俺の目には何らかの術で姿を投影してるのが丸わかりだ。鏡を割ったんだから本体を偽の外見で覆ってるのか?


「あ、アングル魔術ですって!?」


「ドラゴン……いやパンレー!この迷惑野郎に心当たりがあるってのか!?」


「我々ドラゴンと敵対中の集団が用いる魔法です。集団の名は……恐怖の大王一族!」


「くくく。安心するがいいパンレ―。私がここに来たのは別件……貴様の始末などどうでもいい。魔鏡のエネルギーも頂いたし、そろそろ引き上げるさ」


「別件だと?鏡はやったんだから目的を教えやがれ!それか弁償しろ!」


「いいだろう。恐怖の大王一族内では今、人間を主力とした復興計画が進んでいる。私はそのメンバーの選定に駆り出されているという訳だ」


「ま、まさか狙いは俺か!」


「人間と言っただろうコート神よ。それにお前のような頭のネジがぶっ飛んだ奴は要らん。上は堅実主義なのだよ。きっと流双に壊滅させられたことが余程堪えているのだろう。ははははっ」


流双……。そういえば電子界で流双からも一族とやらの話は聞いたな。確かあいつは恐怖の大王一族を勝手に自称して、認めない同族を全て始末したとか言ってたっけ。壊滅って、一体どれだけの恐怖の大王一族を始末したんだろう。


「流双姫のことは……敵ながら同情します。確か、数億から数百にまで個体数が減ったとか」


「そんなに!?」


「ふっ。雑魚の数などうでもいいことだ。大切なのは主力の強さなのだからな。貴様たちも我が一族もそのことが理解できていないようだ」


「な、なんて言い草ですかお前ー!やられた仲間のことなのに!」


「くくくく。文句なら私に意見するだけの力を得てから物申すことだな。……いや。そのちっぽけなエネルギーの体では強くなろうがたかが知れているか!ははははっ!」


「水圧圧縮砲!」


「ミラーバウンド!」


水の魔法弾を発射して攻撃するが、奴が手をかざすと突如魔法弾は軌道を変え、壁や床に当たる度に方向を変えて跳ね回る。最終的に俺たちの頭上で水の魔法弾は弾け、部屋内に水の雨が降り注いだ!


「うおっ!?」


「きゃーっ!」


「さて帰るか。今日は案外楽しめた。私の名はオットー ローアングル モーレ。私に相手してほしければ魔鏡を3枚は用意しておくことだな!ミラールート!」


「あ、逃げるな!」


俺が呼び止める前にオットーは姿を消してしまう。


「ははははっ!さらばだっ!」


「外か!?くそっ、せめて魔鏡の弁償代払いやがれーっ!」


窓を開けて叫ぶが、そこにオットーの姿はなく返事もなかった。恐怖の大王一族……この星でメンバーを集めるとか言ってやがったな。一大事にならなきゃいいが。


「あ、お前大丈夫か。パンレー」


「えへん。水滴くらい全部避けましたよ。あ、お前は10発以上被弾してましたね」


「体格差だし」


「しかしさっきの奴むかつきますねー!今度会うときにコテンパンにできるよう強くならなきゃいけませんね!」


「そりゃそうだが。お前はまず戦える相手を探さないとな。オットーのことは……まっ、ボケ役が報告してるだろうから大丈夫か」


〔報告済みだぜ〕


「ボケ役は既に報告済みか」


「なら暇ですね?今日は特訓しますよ!使用できるエネルギー量を増やして体を大きくするんです!」


〔ちなみに夢の体は適切サイズがエネルギーを最も収容できる。だが今は保持できるエネルギー量が少なすぎて体を大きくできない。だから技術や精神を鍛えてそこにエネルギーを蓄えるのさ。エネルギー量が増えれば自動で体が適切サイズに近づく仕組みだ〕


「技術や精神を磨けば、自動で体が大きくなるらしいぞ」


「ですね。自分の体なので概ねわかります。さあ早く、程よい相手を用意するのですよ!」


「じゃあ……。この埃1本で」


「ぎゃあああああぁーっ!」


「ぱ、パンレーーーーーーーっ!?」


埃1本に負けた!お前、何になら勝てるんだよ!くっ、これは強くなるまで先が長そうだ……!

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