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変な星でツッコミ生活!?  作者: 神離人
本編:変な人たちの出会い その一
7/85

六話 アルティメット少女と黒色の主人公

@悟視点@


寒さが身に染みる冬の季節。特星は冷凍庫のような物凄く寒い冬を迎えていた。


そんな日なのに外へ出かける者などほとんど居ないだろう。居るとすればこの俺のように主人公オーラとコートで寒さを守れる者だけなのだ!


ちなみにアミュリーには子供用のコートを着せてある。


「よし!準備は良いかアミュリー!」


「完全なんだってば!」


こんな日に何で外出するかというと、対策会議が今日なのだ。


日本ではクリスマスムード全開であるこの日こそが対策会議の日なのだ!本当は家でアミュリーとゲームでもしていたいが、皆の命には代えられない!


「じゃあいくぞ!」


そういって勢いよくドアを開けようとする。


「…あれ?開かない?」


しかしドアは押しても全然開かなかった。ちなみに内側に開くドアではないので引いても無駄だ。


「ふん、主人公の道を遮れるわけがない!アミュリー隊員、やれ」


「了解。強制的に内側に開くんだってば」


アミュリーが磁力を操り、扉が内側に開く。


「悟隊長、目の前が壁だってば」


アミュリーが指差す先に見えるのは一見白い壁に見える。だが冬であることを考えるとそれの正体はすぐわかった。


「あ、アミュリー!それに触るな!」


恐らく雪が物凄く積もって壁のようになっているのだろう。そしてあれに触れると家の中に雪が流れ込むことは目に見えている。


「でも、このままじゃ出られないんだってば」


「…よし!今日は諦めてゲームでもしよう!」


この雪じゃあ会議どころか会議場所にだっていけない。そもそも場所は聞いてないし。


「そうはさせないよ。ほほほ」


諦めようと思ったら、姫卸の婆さんがいきなり押入れから出てくる。迎えに来てくれたのは良いのだが、出入り口を作るならもっと別の場所にして欲しかったな。雰囲気的に。


「姫卸も作戦に参加するんだっけ?」


「そりゃあ当然。この寒さが続くと、夏に海水浴する少女が減るからねぇ。ほほほほ」


事件の犯人を倒す前に姫卸の婆さんを倒すべきじゃないだろうか?勝てるかどうかは別として。


「さあこっちだ」


姫卸の婆さんが中に入っていくので俺達も後を追う。






「………来たようですね」


「そうですか」


会議場所に居たのは記紀弥と羽双だった。この二人は和服同盟か!


ちなみにこのメンバーの中で和服が羽双と記紀弥と姫卸の三人。コートが俺とアミュリーの二人だ。今回だけは和服派のほうが多いようだ。


「ほほほほ。全員そろったから会議を始めようか」


「質問だってば。こんな人数で足りるんだっけ?」


アミュリーが手を上げて質問する。だがそこまで心配しているようでもなさそうだ。


ちなみに人数は俺達を含めても五人。主人公の俺に百人分の戦闘力があるとしても、敵は国にダメージを与えるクラスの敵だ。十分とはいえないような気がする。


「大丈夫大丈夫!六人とはいえ、この面子ならまず全滅はないよ!ほほほほ」


〔あれま。何で俺までカウントされてんだか〕


どうやらボケ役の台詞は姫卸と記紀弥には聞こえるようだ。


「それでどういう作戦ですか?なんなら今すぐにでも僕が敵を撃墜しましょうか?」


「………私としては正々堂々と正面から立ち向かうのが良いかと思います」


「ほほほほほ。少女権の優先により正面突破に決定だよ」


なんだかこの中で俺と羽双だけ不利な気がする。


「まぁ僕は報酬がもらえればそれで良いですけどね」


「何か貰うのか?」


「和服を数着と和菓子を少々いただく予定です」


さすが和風好き!貰う物が和風チックじゃないか!


「なら液体を降らす乗り物を破壊する班と、犯人を倒す班に分かれるのはどうだっけ?」


「少女権により決定よ。悟はカセットを持ってるから犯人を倒す班だけどねぇ。ほほほ。ちなみに私は送り向かいと会議の進行役だけの非戦闘員だよ」


姫卸の婆さんはどう考えてもその辺の戦闘員よりは戦力になるだろ。


「……私は犯人退治班にしますね!感動的な場面を見逃すわけにはいきません!」


「私も皆を取り返すために犯人と戦うんだってば!」


「では乗り物の破壊は僕一人でおこないます」


ということで俺は意見を出す暇もなくメンバーが決定してしまった!まぁどんなポジションであっても勝つのが真の主人公というものだ!この状況で勝ち抜いてやろうじゃないか!






猛烈な寒さと大吹雪によりありがたみのない大晦日がやってきた。俺達五人のいる場所は特星エリアの平原である。…雪のせいでほとんど雪原であるが。


こんな吹雪の日に敵は本当に来るのだろうか?


「それにしてもなんでわざわざ特星エリアまで来たんだ?現代エリアでも十分だろうが」


「………敵の飛行物が凄く大きいらしいですよ。私達の住んでる島より大きいとか」


記紀弥たちの住んでいる毬の島はそれほど大きくはない。それでも勇者社や寺や屋敷が余裕で建つ程度の大きさはある。

なるほど。そんなサイズの飛行物が落ちたのであれば瞑宰京へのダメージはなかなかだろう。


「しかしそんな大きさであるのに目撃例は少ないそうです。島より大きいという情報も姫卸さんの波動で感知できたものですからね。僕たちに見えないように、ステレス機能でもつけてるでしょうね」


そのくらいの大きさだったら俺が見てるはずだからな。


「ん。あれじゃないか?」


空を見上げていると黒い点々が見えたのでそのほうを指差す。全員がそのほうを見る。


「どれどれ。…なるほど。確かにそのようだねぇ。よくこの距離なのに裸眼で見えるねぇ。ほほほ」


「見えないんだってばー」


姫卸の婆さんは波動で見えたようだが、それ以外の人物はまだ見えないらしい。この吹雪の中じゃ視界が悪いから仕方ないが。


しかし見えるのは降っている液体だけだ。あれを降らせている乗り物的なものは見えない。やはりステルス的な機能を使ってるんだな!


「こっちの方向ですね?ちょっと待っててください」


そういって羽双は消える。恐らく時間を操って移動したのだろう。


[ゴオォン]


液体の降っていた方向から音が聞こえたので見てみる。すると、さっきまで見えなかったものがみえる。あれは乗り物じゃなくて要塞!?


「…………何か見えます。けどあれは何でしょう?」


「遠すぎて判りにくいんだってば。でも恐らく羽双が乗り物を壊したんだってば」


二人はようやく要塞が見えた程度で、要塞がどうなっているかわからないらしい。


でも俺には要塞の形がどんどんと崩れていくのがわかる。強烈な一撃を喰らったのだろう。


「終わりました。それではやるべきことはやったので帰ります」


「ほほほほ。お疲れ。土産は勇者社のほうに頼んであるよ」


姫卸の婆さんの波動で羽双は先に退場する。その十数秒後に要塞は墜落した。


「羽双は最後まで居ないのか?」


「そりゃ要塞を落とす係だからねぇ。さて、要塞の場所まで送ってあげるよ」


姫卸の婆さんの作った波動に入り、敵の要塞へと向かうのだった。






~壊滅した微科学な要塞~


波動を通って要塞まで来た俺達。姫卸婆さんは勝負が終わったら迎えに来るということでここにはいない。


要塞なので科学チックなものを予想していたのだが、機械と西洋の城をくっつけたような要塞だ。大体がファンタジックで微妙に科学風といった雰囲気がある。


「………これでは自爆して海に墜落するシーンが見れません。少し残念です」


「ふふ、それは残念だねぇ。でも要塞を落とされた私は凄く残念」


瓦礫の中から一人の少女が現れる。普段見る小学生よりも幼いようだし、小学生の中学年くらいか?


「でも君達はカセットを持ってる。これは不幸中の幸いだろうね」


カセットの売値が数億だとしても、あの要塞を作るにはそれ以上にコストが掛かるよな。どう考えてもそんだと思うんだが。


「お前がアルテか?」


「アルテじゃないっ!その名前は記憶喪失の間使ってただけ!私の本当の名前はアルティメットだよ!」


記憶喪失だったとかそんなこと急に言われても知らない。まぁ俺達も相手の都合を考えずに勝手な自己紹介をしてるけどな。


「長いからアルテでよくないか?」


「………音楽の符号に似たような名前があった気がします」


「確かフォルテだってば。フォルティッシシシシシモとかあるって噂だってば」


アルテの名前もそんな感じにすれば呼びやすいんじゃないか?


〔普通に呼びにくくないか?〕


多少は呼びにくくても喜んで使いそうな名前だろ?音楽関係で覚えやすそうだし!


「俺は主人公の悟だ!それよりアルティッシシシシシモ!お前が数ヶ月間撒いていた液体をさっさと消してもらおうか!」


「普通に言いにくそうだね!?だから私の本名はアルティメットだって!…なんで皆は本名で呼ばないのかなぁ」


本名で呼ばれないのは名前が長くて覚えにくいからだと思うぞ。名前のセンスはそこそこ良いと思うんだけどなぁ。


「まぁいいや。渡す気はないようだから、私は君達の星のルールに乗っ取るよ。そう、気絶させて奪うまで!パーテパニングの大雪!」


これまでの大吹雪が収まり、雪だるまサイズの雪玉が降り注ぐ。


「いたっ!固められてるぞ、この雪玉!」


「………しかも凄い量です!」


「私に任せるんだってば!」


アミュリーがそう言うと同時に俺の体が浮き上がり、空中に固定される。その下にアミュリーと記紀弥が逃げ込む。


いたたっ!どういうつもりだ!?


「悟と空中の座標に違う種類の強力な磁石属性を与えたんだってば。だから悟が空中にくっついてるんだってば」


「……すみません悟さん。攻撃の手段が思いつくまで耐えてください」


確かに俺は二人より大人だし主人公だけど!こんな扱いはあんまりだ!人を盾にするなんて酷いぞー!


「…………有利、環境の変異!」


記紀弥の使った技で雪を降らせていた雲が無くなり晴れてくる。確か記紀弥の能力は有利不利を操るとか言ってたな。


温度が少々上昇したため、敵の雪玉は地面に落ちる前に割れてしまう。


さて、そろそろ敵にダメージを与えないとな。


「そうだ。アミュリー、アルテに向かって俺を飛ばしてくれ」


「わかったんだってば!それっ!」


磁力の速さが加わった俺のキックで仕留める!


「おっと。危ないね」


しかしアルテは空を飛んで回避する。


「飛べるのか!どあっ!」


吹っ飛んだままだった俺は瓦礫の山となった要塞に突っ込む。


「…いてて。ブレーキとかで止めてほしかったな」


「ふふふ。三人がかりでこの程度なんて大したことないね。それとも私が強すぎるかな?」


いやいや、残りの二人はともかく俺は全然本気じゃないぞ。二人も大した技は使ってなかったけど。


「さっきも言ったが俺は主人公だ!そして主人公の力は盾となる仲間がいて初めて発揮されるもの!そう、主人公は仲間と協力することで真の力を発揮するんだ!」


それなのにこの程度の戦闘で勝手に実力を決めるなんて愚かだ。


…でもあの二人を盾にすると後で仕返しされそうだしなぁ。


「それは協力じゃないと思うけど…。まぁ仮に君達が協力しようがしなかろうが私には遠く及ばない!これで終わりだ!ムクロンウン吸収液!」


アルテが手を掲げると空中から黒い液体が出現し、滝のようにあたりに流れ出す。その液体で二人は遠くへ流されていく。

しかしその途中で急に出現した波動に飲み込まれていった。


「姫卸に救出されたか。うおっ!」


液体が流れてくるので瓦礫の山を登って逃げる。少し足に付着したが、特に冷たいわけではない。しかし付着部分がどんどんと寒くなっていく。


「何だこれ!?威力は大したことないのにやけに不快だぞ!」


黒い液体で温度が下がる効果?あれ聞き覚えがあるぞ。


「特星に撒いてたのってこれか?やること派手なのに効果は地味だなー」


「それは当然。温度を奪うのはあくまでオマケに過ぎないからね」


温度を奪う以外にも効果があるのか?俺はてっきりコートを流行らす為に、温度を下げてるのかと思ってたが。


というかアルテが説明モードに入ったから攻撃が止まってる!ちょっとでも無駄話を続けて時間を稼ごう!助けとかはこないだろうけど!


「それならお前の目的は何だ?要塞一つ作るほど凄いことなのか?」


「ふふ、言われるまでもなくその通りだよ。今では時代遅れとか思われているけど、世界征服が私の目的。まずは特星を含むこの宇宙を征服し、その後に別の世界を乗っ取りにいくつもりだよ!」


いろいろと話が飛びまくっているが、とりあえず特星は最後に回すべきだろう。勇者社の社長が絶対的な確立で関わってくるぞ。


〔秘書の話では、魅異は既にこいつに会ってるとか言ってなかったか?〕


秘書ってのは几骨さんだな。確か魅異がアルテをからかいに向かったとかなんとか。


「さぁ、次こそ最後だ!ムクロンウン吸収液を喰らえ!」


「え、不意打ちか!?」


ボケ役と会話をしている隙に前方から川のように流れてくる黒い液体。


「なんのっ!」


反射的にジャンプして一瞬回避する。しかし努力は実らずそのまま黒い液体の川に落ちて流される。体中の温度が無くなっていくのがわかる。


〔その黒い液体って何味だ?〕


ボケ役が何かを言っているがそんなことを気にしている場合ではない。俺は今までこの液体が原油かコーヒー的な何かだと思っていたが、やけに甘いのでどうやら違うようだ。

…この甘さはどこかで食べた気がする。何かのフルーツで食べたはずだ。


[どこっ!]


「痛っ!」


流されていた俺は森の木にぶつかって止まる。顔面から直撃してしまった。


〔水流滑り台みたいで楽しそうだな〕


木に顔をぶつけるような滑り台が楽しいわけないだろっ!


ちなみにさっき痛いって言ったが、実際は寒すぎて痛くなかったぞ。雰囲気出す為にちょっと言ってみただけだ。


「これを取り返したんだから私の勝ちだね」


〔あ、カセット取られたぞ〕


何かもう疲れた。というか敵は何でカセット一つのためにここまでやるんだ?小学生がこんなことするなんて大人気ないとは思わないのか?


〔寒くて喋れないからって思考で文句を言ってもなぁ。まぁこの星の場合、大人気ないのは大人だけで十分だな〕


「凍えて口も利けないのかな?大丈夫。私がこの星を乗っ取ったら元に戻してあげるから安心しなよ。私の操る世界は夢と希望でいっぱいだよ」


夢と希望でいっぱいか。なら一兆セルに埋もれてみたいな。


〔潰れるのが夢か?〕


一兆セルくらいの大金がほしいってことだよ。コートとか半袖コートとか買いたいからな。


〔へー。何色だ?さぁ何色だ?〕


それは当然今着てるコートと同じ色だ。…あぁ!


「そうだ!黒色だ!」


「うわあっ!?」


何か大事な感覚を思い出して立ち上がる。


ちなみに普段は濃い緑のコートを着ているが、現在のコートは黒く染まっている。


「お、驚いたぁ。…あれ、どうして立ってるの!?」


一兆セルか。確かに大金だけど俺の夢はこの程度じゃないんだ。この俺は主人公!主人公らしい主人公といえば戦隊が必要不可欠!ならば主人公である俺が戦隊を作るのは当然のことだ!


〔そして主人公であるツッコミ役の色は黒。悟ンジャーの一人悟ンジャーブラックだ〕


「俺が立ってる理由は俺が主人公で悟ンジャーブラックだからだ!」


ちなみに俺は子供の頃に悟ンジャーブラックに会ったことがある。今の俺とそっくりだったが黒くはなかったな。


〔ならツッコミ役は二代目だな〕


いや、俺以外に主人公はいないからあれは偽者だ。そもそも特星が作られる前で、俺が地球に住んでた時だからなぁ。


「どう見てもムクロンウン吸収液で真っ黒だよね。…どんなトリックなんだろう?」


「そうそう。その黒い液体なんだけど、バナナの黒い部分の味がするぞ。凄く甘い」


ブラックバナナジュースとして家に持ち帰るのもありだな。


「主人公は正義!そして俺は主人公であり正義の味方だ!必殺、姿隠しの大砂!」


アルテに向かって砂を投げつけ、その隙に近くの木の裏に隠れる。アルテは空中に居るが、悟ンジャー状態なので普通に届く。


「あれ、逃げられたのかな?なら今のうちだね!」


アルテはカセットを分解して中に入っていた雑草らしきものを飲み込む。食べ物はちゃんと噛まないと駄目だろ。


「…うわ、不味いなぁ。バナナの皮みたいな味がする」


(バナナの皮は相手を転ばせるためのものだろうが。食べてどうする〕


「あ、そこに居たんだ」


アルテが木の裏にいる俺に気づく。ボケ役の声が聞こえたらしい。…さっきまで気づいてなかったボケ役に気づいたってことは、それだけパワーアップしたってことか!?


「気づかれたなら仕方ない!必殺、悟ンジャー蹴り!」


俺は頑張って敵の位置までジャンプして、そのまま回し蹴りで攻撃する。しかしアルテはもっと上空に飛んで回避する。


「くらえー!魔学科法ホノー!」


アルテを中心にかなりの数の炎が周辺に放たれる。一部が木に降り注いで森が燃え出す。


「熱いっ!防火コートだけど熱い!」


アルテに攻撃を当てそこねた俺も被害を受ける。く、コートを火災保険に入れとくべきだった。防火コートだから保険金は貰えないかもしれないが。


「なんとか着地!ふー、危なく美味しく焼けるところだった」


「燃えかけるなんてしょうがないなぁ。魔学科法ミズ!」


今度は滝だと思えるくらいミズを出すアルテ。黒い液体の時のように流されかける。


「なんの!必殺、全力水泳!」


しかし滝登りの如く泳いで流されないようにする。体に付着した黒い液体は取れないが、逆に悟ンジャーとして戦い続けられる!


〔俺も少しだけ援護してやるぞ。子供が憧れる空飛ぶ風船!〕


その辺りから数え切れないほどの風船が出現し続け、その風船は空に飛んでいく。そして空はあっという間にカラフルな風船で見えなくなる。


「うわっ!何この風船!?このっ!」


空中のどこからかアルテの声が聞こえる。どうやら風船が邪魔で行動できないようだ。おかげで水流が止まった。


〔その風船はなかなか割れないぞ。ツッコミ役はさっさと風船に乗れ〕


あぁ!ちょっと怖いけどな!


この風船には紐がついていないようなので上に乗るしかない。そして不安定な風船に乗るのは非常に怖い!


「もー、邪魔しないで!魔学科法コーセン!」


アルテがどんな技を使ったのかはよく見えなかったが、何本かのレーザーが俺の近くを通り過ぎた。そして数秒後に地上のほうから壮大な爆発音が聞こえる。


怖っ!爆発するレーザーとか本当にあったのか!


〔ツッコミ役。さっきの光線で周辺の森の半分以上が壊滅してるぞ。以上、姫卸婆さんの波動テレビの映像でしたー〕


半分以上が壊滅!?どれだけ威力が高いんだよ!そしてお前はここに着てるのか!?


「いないなぁ。空中の風船に紛れて隠れているのかな?」


アルテがあっちこっち見回す。ありがたいことにこっちには気づいていないようだ。


「不意打ちあるのみだな。悟ンジャー蹴り!」


上空から踵落としのようにアルテを蹴り落とす。


「うあぁっ!そ、そんなっ!多くの星で、力を、集めたのにっ…」


肩近くを狙うつもりがついうっかり頭に直撃させてしまう。そしてアルテはそのまま地面に落ちていく。まぁ特星だし、相手を気絶させたようなので問題はないだろう。


そして俺もそのまま落下する。


「…着地はどうするんだよ!?」


「はぁ。後先考え無しだなぁ、君は」


「え?」


横を見るとアルテが目を覚まして落下している。というか浮いた状態で下に下りてる?


「魔学科法フワフワ」


そのまま地面に衝突した俺だが、地面が軟らかくて痛くなかった。


「アルテ。お前気絶したはずじゃ?」


「言うだけ無駄かもしれないけど、私はアルティメットだよ」


言うだけ無駄だな。おれは雑魚ベーに雑魚ベーの名前を定着させたんだぞ。…あれ、本名が思い浮かばないから雑魚ベーが本名か?


「あと私は気絶なんかしてないよ。勝負を中断する為にちょっと演技をしただけ。今の私が本気を出せば君なんかじゃ勝てないよっ!」


〔じゃあ悟を倒せばよかったんじゃないか?〕


主人公である俺がこんなやつに負けるわけないだろ!


「うーん、見えない君の言うとおりに倒すつもりだったんだけどね。でもよく考えたら恩人に近いって事に気づいたんだ」


まぁこの俺は特星中の住民の恩人になる予定だからなぁ!まだ実行段階じゃないけど。


〔でもツッコミ役に恩なんかあるのか?〕


「カセットを持ってたよね?あの変な槍の人からカセットを取り上げてただけでも、私はかなり感謝してるよ!」


そういえばあのカセットは印納さんから譲って貰ったんだっけ。


「あれって奪われたのか?」


「そうそう。帝国を作るためにレベルアップとか言って一方的に襲われたんだよ。負けてカセット奪われるし、もう二度とあの人には会いたくないなぁ」


俺もできることなら印納さんとは会いたくないな。あの人が何かを思いつくと高確率で悪い結果になるからな。躊躇なく辺りを巻き込むし。


「あ、それより黒い液体は?」


「すでに消しておいたよ。君も自分の服装を見れば分かるよ」


そういえば落ちるのに気をとられて気づかなかったが、服が完全に乾いているな。黒い液体も跡形なく消えている。


「でも特星征服はするつもりだよ。いつ開始するかは未定だけどねー」


未定ならとりあえず今回の事件はこれで解決だな。黒い液体をどうにかするのが目的だったし、カセットがないのは残念だが結果的によしとしよう。


「凄い勝負だったね~。二人とも大丈夫?」


「ん?」


聞き覚えのある声に後ろを向くと魅異がいた。ついさっき現れたんだろう。


〔おぉ!魅異!俺に会いに来たかー!〕


「正解といえば正解だね。久々に特星では大きめの事件だったからお祝いに来たんだよ~。姫卸たちや雑魚ベーたちとお寿司を食べに行くけど皆行く?」


「行く!」


〔行く!〕


俺とボケ役は即答する。寿司を食べに行くなんて事はあまりないからな。ちなみに祝いごとに食べるものって寿司か焼肉しか思いつかない。


「うーん、魅異の誘いは嬉しいけど私はやめておくね。事件の首謀者だし私がいたらきっと気まずくなるよ」


「ほほほほほ。そんなことはありえないよ!」


「うわっ!」


急に現れた姫卸にアルテが驚く。波動でワープしてきたようだ。


「食事中の少女はいわば和みの存在で場に多ければ多いほど良いもの!そこに居るだけで食事場所の見栄えが上がり食も進むからねぇ!それに少女の残した分の食べ物を食べるイベントだって発生しやすくなるじゃあないか!他にも服に醤油をこぼしたのを拭き、そのときにちょっと胸を触るイベント!ご飯粒を取ろうとしたら少女に倒れこむイベント!ほほほほほほ!最高だねぇ!」


胸触ったり抱きついたりに関しては、姫卸の婆さんなら普段でもやってそうだけどな。


〔前に少女と風呂でダンス踊ったって言ってたぞ。少女抱いたまま石鹸に乗ってスケートの如く滑ったとかなんとかとも言ってた〕


ということはさっき言ったイベントもやりかねんな。アルテに行かないほうが良いと教えるべきか?


「えっと。いいのかな?」


「先の短いこの私に少女の食事光景を見せてくれないかねぇ?ほほほ。それだけが私の生き甲斐なんだよ」


確かに生き甲斐ではあるかもしれないが、特星にいる限り先は長いだろ!


「じゃあ行こうかな。私もお腹すいたからね」


「決定だね~。じゃあ出発だよ」


その後姫卸の婆さんの波動ワープで寿司屋に行って皆で寿司を食べた。珍しくおかしなことは発生せず、俺は悟ンジャーについてずっと語っていた。記紀弥以外は聞いてなかったが。

とにかくオチ無しで平和に今回の事件は幕を閉じたのだった。寿司は魅異が奢ってくれたからな。


〔遠くに居る俺は寿司を食べれなかったぞ!…誘われたのに誰も迎えに来なかった〕


あ、オチ有りだった。

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