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変な星でツッコミ生活!?  作者: 神離人
本編:変な人たちの出会い その二
43/85

十話 雑魚ベーの故郷

@悟視点@


ここが雑魚ベーの故郷か!ざっと見た感じ現代エリアと特星エリアの中間くらいの、いや帝国に近い感じだな。建物は木造っぽいのも石造りっぽいのもあるけど一軒家が多い。複数階立ての建物といえば中央っぽいところにあるでっかい城くらいだ。おー、いいねぇ、ようやくスパイ旅行に来てるって気分になってきたぜ。


「さて雑魚ベーはどこにいるんだか。とりあえず貴族って言ってたし城に乗り込めば会えそうだな。お前らはどうするんだ?」


「ボスの様子を見てるとしよう」


「どうやらここの言語は俺たちのとは違うみたいだからな」


「ボスのために看病を!」


「誠心誠意復活をお祈りしますぜ、ボス!」


まあこいつらは異世界慣れしてそうだから大丈夫だろうしどうでもいいや。にしても広場だからかなんか人だかりみたいなのができてるな。……そりゃ木製バスが急に出現したら人も集まるか。


「この混みようは一体……ああーっ!」


「ん?」


なんとなく聞き覚えがあるような声が。なんだ?ローブを纏った、女か?俺よりも背の高いフードローブ女がこっちを指差して驚いている。声からして雑魚ベーじゃなさそうだが俺の知り合いか?


「雷之っ。くっ!」


「おい待てお前!水圧」


「わっ!」


「あ、止まった」


ご丁寧に両手を挙げて止まりやがった。惜しいな、早打ちならすでにぶっ飛ばしていたってのに。にしても撃つ前に降参とは、やっぱりこいつは俺のことを知っているようだな。それとも追っ手みたいなのがいて遭遇したとかか?


「何者だ?見た感じ俺のことを知ってるようだが」


「な、なんでこんなところに……」


「撃たれたくなければフードを取りな。言っておくが、今の俺はうきうきに浮かれてるから簡単に引き金を引いちまうぜ」


「わ、わかりました。でも人気のないところに場所を移してください。訳あってここの人たちに顔を見られるわけには……」


「まあいいけど。じゃあ、えー、……こっちだ」


「そっちは王城方面ですから兵士が多いのですが」


「ふ、やはりな。これでお前がこの国のことに詳しいやつだとわかった」


「私が案内しますから。こちらへ」




ローブの女の案内によって人通りの少ない道へ、そして路地裏へとやってきた。さっきの広場辺りにも路地裏はいくつかあったのに、慎重なやつ。


「この辺りなら人に見つかる心配はないでしょう」


「結局誰なんだよ」


「私ですよ、ほら」


被っていたローブのフードから顔を覗かせたのは…………え、誰こいつ?どこかで見たことあるような気はするんだが。


「え?」


「どこかで似た顔のやつをみた気が……いや、やっぱ見たことねえや。誰だよお前!?」


「ええー!?わかりません?本当にまーったく?」


「ちーっとも。変装解き忘れてるとかじゃないのか?」


「ふむむ?」


見た気がするのに思い出せないってことはよほど昔にあったってことか?あるいは遭遇回数が少ないのかもしれないな。こういうときは戦って思い出すのが一番簡単だしさっそく。


「悟さんは何の目的でここへ?」


「おあっ!?も、目的?いやなに、ちょっとしたすゅ……単なる旅行ってやつだよ!」


あ、危なくスパイ活動しに来たことを自慢げに話してしまいそうになった!いやまあ、別に聞かれても口封じすればいいだけのことだが。敵意のない相手を気絶まで攻撃し続けるのはさすがに気が引けるし。ここ、特星じゃないから気絶させるとなると下手すりゃ死ぬし。


「ええっ。本当、なにしに来てるんですか?」


「本当に旅行だよ。お土産いっぱいもらえるところがあるから貰いにきたのさ!」


「はあ、なるほど。行き先はどちらで?」


「えー、とりあえず行くあてもないから城かなぁ」


「いやあの、城はお土産はもらえません。やめておいたほうがいいですよ。お城の人たちはコートとかめっちゃ剥ぎ取って検査してきますよ」


「マジか!?」


そ、そいつはやべーな。コートを取られたら消滅してしまう。いくら俺とはいえ兵士に囲まれたらどうしようもないし。……もし雑魚ベーの故郷があの城でなかったらスパイどころじゃない。ただの侵入者扱いだ!


「おっと失礼。自己紹介がまだでしたね。私の名前はナレ君です」


「は?な、ナレ君……?なんだったっけ。あ、思い出した!お前あれだろ!闇の世界で雨双を操ったとかって聞いたことあるぞ!」


「いえ。それは流双さんが名乗ったただの偽名に過ぎません。偶々名前がかぶっただけのでしょう。私は本物。悟さん、私は貴方が雑魚ベーさんのいるサイドショット領に向かっていることも知っています」


「な、なぜそれを!?ただ、サイドショット領ってのは初耳だが」


「アルテさんや印納さんっているじゃないですか。特星で有名なアルテさんや印納さん。……あとは魅異社長やその妹さんとか。そうした実力強者の方たち……やばい人達は心が読めるじゃあないですか」


「ああ、思ったことに言及してくる、って、まさかあんたも!?」


た、たしかにさっきから思ったことに対して反応されてるような!なるほど、アルテたちのように読む気になれば心を読めるってことか。でもなんで魅異だけ社長呼びなんだろ。


「なぜって、そんなの簡単ですよ。私はナレーターのナレ君。勇者社社長である魅異社長とは仕事上のお付き合いがあるのです。社長呼びが定着していてつい」


「うわ、本当に考えたことを読まれた!」


「やばい実力者のあいだでは挨拶みたいに心を読みあいますからねー。心読まないとあの人達のナレーターなんてやってられませんよ」


「あいつらのナレーターやってるのか?可哀想に」


とはいえ心を読めるってことは、このナレーター自身もあの変人たちと同じようなやつということだろう。うわ、そりゃ俺の名前も勝手に知ってるわけだ。


「あ、あの、別に私はあの人たちと肩を並べるような実力者ではないので。あの人たちと同じように見られても困るんですが」


「似たり寄ったりじゃないかなぁ。あ、でも俺はやっぱりお前に会ったことはないよな?」


「それは……私は特星のナレーターなんです。で、悟さんのことは一度、天利さんとの対決後にこっそりナレーションしていたので会った気になってました。勘違いさせましたね失礼」


「見覚えある気がしたんだけどなぁ」


「わ、私がナレ君として初めての仕事したのがそのときです!最初で最後の仕事がそれでした!会ってるはずがありませんよ!」


こっそりナレーションするのが最初で最後の仕事って。こいつやっぱり上位の実力者と同じでやばそうなやつだな!ひえー、情報だけ早く貰って別れよーっと。


「私もそれがいいと思います。サイドショット領はあちらに見える山を越えた先にありまして、サイドショット家はそこの町の中心にあるお屋敷です」


「俺はサイドショット領ってところに向かえばいいんだな?」


「そうです」


ナレ君が指差したのは路地裏の奥、ああ確かに山が見えているな。あの先に雑魚ベーの故郷があるのか。ここがこの国の中心っぽい感じだし、雑魚ベーの家は田舎貴族みたいだ。


「この世界のことはサイドショット家で聞いたほうがいいでしょう。最近よく話題になるようですから。では私はこれで」


ナレ君はフードを被ると振り返り、来た道をもどっていく。……なんか、すげーもやもやする!なんだろうな、してやられたりっていうのか?戦闘で勝つとかそういうんじゃなく、なんか一つこう、心読まれた分を全部まとめて知的にやり返してやりたい気分だ!考え読まれて上手いように話されて、マウント取られてる気がしてならねぇ!


「ちょっと待った!」


「はい?」


「いやなに、一方的に心読まれて精神ダメージ受けるのもなんだからさ。1割くらいはやり返してやろうかなと」


「は、はあ。えっと、とりあえず本当に1割で済むんですか、それ?」


「ふ、それは知らん。だって俺は心読めないからどのくらいが1割かは予想するしかない。つまり自己解釈!そして自己解釈なら答えがわからないから遠慮するだけ無駄ってもんだ」


「全力じゃないですか!なにをする気ですか!」


「お前の話を聞いてさ、会話が長いと思ったんだ」


「え?……会話?さっきのですか?」


「そうそう。で、これは天利からの受け売りなんだが。物語に関係のない長話のシーンにもしも意味があるとすれば、伏線が張られていたり、誰かに伝えたいメッセージが込められていたり、ミステリーだと謎が隠されていたりして実のところは意味はあったりするんだとさ」


当然、単純にだらだらした会話だったり、今の俺みたいに雑学自慢してるだけだったりのほうが多いんだろうけど。……そもそも天利の話は舞台の話だから現実にあてはまるかは微妙だな。


「そして伏線もメッセージも謎も……ほんの2つだ。関連するもの2つがあれば気づける。キーワードでも数字でも人でも動きでもなんでもだ!同時に目にするのが一番わかりやすいが、あとで思い出したりしてもいい。関連するもの2つを繋ぎ合わせれば、こういう意味があるだろうということが成否に関わらずわかるのさ!」


「せ、成否に関わらず。それって推理としては破綻しているのでは」


「推理じゃない。自己解釈による閃きってやつだ。それに俺はこの考え方である事件の犯人と目論見を見事当ててるぜ。闇の世界での殺人劇なんだけど、異世界でのことだから知らないかな?」


「ああ、特星本部が動くほど荒らしまわったというあの」


む、あんまりいい伝わり方してなさそうだな。


さて、天利の受け売りはそれっぽくていいんだがここからどうするか。ナレのやつは明らかに怪しい。だからやつの言葉には秘密の一つや二つくらいはあると思う。でも、ストーリー中ならまだしも、現実の長話にわざわざ秘密を解き明かせるようなヒントをばら撒くか?こいつは戦闘で倒したわけじゃないし、知られたくないような秘密はむしろ長話で隠したほうが……あ!


「話を戻すぜ。長話には意味があるってことと意味の見つけ方はさっき話したとおりだ。ただしそれは舞台での話。意味の見つけ方はともかく現実の長話に意味があるとは限らない」


「ただの自己紹介ですからね」


「現実において、知られたくない秘密を長々と話す理由はない。だから長々と話してた自己紹介の部分はどうでもいいことってわけだ」


どうでもいいことは長々話す。なら逆に知られたくない秘密ならどうするか。もしうっかり話たくもない内容が話題に上がれば、俺なら話を切り上げてどうでもいい話題で話題逸らしをするだろうな。そして……こいつとは自己紹介の前に城の話をしていたなぁ!


「その考えは……、短絡的ではありませんか?」


「はん!まずナレ君、お前は今さっきこの路地を引き返そうとしたようだが。そういや、お前がどこに向かうか聞いてないな」


「そ、それはあなたには関係ないことではありませんか?」


まあ思い返せばこいつは露骨に俺を城に近づけないようにしていた。そして来た道を引き返せば広場があり、俺たちが向かわなかった城方面にいくことができる。俺が城に行くのを阻止して、こいつ自身は城のある方向に向かおうとした。とりあえずこの2つのことから思うに、だ。


「お前はあそこにある城の関係者で、俺が城に近づくと困るんだろう?」


「あ、ああぁ……!あーもーやだ、気づかれたっ。もうさ、ねぇ、本当なんでこんなところにいるんですかっ。しかもあんな思いつきでね、最後だけ当たってて……!」


「うわ、おい!なにも地面に顔伏せなくても!汚っ」


「だって……だってどうせ来るんでしょう?その為に推理したんでしょう?あー、やぁだやだやだやだやだぁーっ!絶対荒らしまわるし!こっちに後始末や城の仕事が回ってくるーっ!」


多分泣きながら、すげー手足をじたばたさせてる。ガキかこいつ!?こんなやつにさっきまで話の主導権を握られたと思うとなんか虚しくなってきた。


「落ち着け!城にはそもそも行かねえよ!」


「ほ、ほんと……?本当に本当に本当?」


「泣くほど、そこまで毛嫌いするか……。まあ元々雑魚ベーのいるところに用があるからな。城に用はない。あと顔が土だらけなんだけど」


そもそも城に行ってやろうかと脅かしてやるつもりだっただけだし。場合によってはちょっと乗り込んで敵っぽいやつを倒してたかもだけど。……まさかここまで嫌がられるとは思わなかった。ちょっとショック。


「ありがとうございます!いやもう、本当ぉーーーに、城には来ないでくださいね。お願いしますよ。私が帰るまではなんとしても耐えてください。というより雑魚ベーさんの件とやらをさっさと済ませて早く特星に帰りましょう」


「お前さ、今すぐ俺の心をよーく読んでみろよ。そこそこ深い傷を負ってるぞ、今」


「あ、こほん、失礼しました。では最後に勘違いしていたようなので一つ補足を」


「ん?」


「話の途中、特星じゃないから下手に攻撃すれば相手が死ぬと考えていたようですが。この大メインショット郷国ではその心配はありません。特星と同じように不老不死オーラに守られているのです」


「なんだって!?不老不死オーラは特星以外にもあるのか!?」


「詳しくはサイドショット領にいる雑魚ベーさんたちに聞いてください。大メインショット郷国全体に不老不死をもたらした方と知り合いですので。それでは……今度こそ失礼します」


特星じゃないこの世界に不老不死オーラだって?確かに雑魚ベーはエクサバーストで消滅させても死なないようなやつではあったが。んー、まあなんにせよ行ってみるしかなさそうだな。




「やーっと民家のあるところまで到着したーっ!」


ふへぇ、参道っぽい道を歩いたのに結局山越えに半日くらいは掛かっちまった。もう夕方だぞ。あ、よくみたら太陽がかなり小さいな。へえぇ、やっぱり特星や地球とは違って別世界なんだぁ。


「山越え前の町とは違って人がまばらだな」


ま、特星民としてはこのくらいの人口密度のほうが戦闘しやすいからいいけど。むしろもうちょっと少なくてもいい。


「あそこに見えてる洋館に行けばいいのか」


町の中央辺りにはそれほど大きくはないが館が一つ建ってる。さっきの町もだが一軒家の家ばかりだから二階以上ある建物はすごく目立つな。とはいえ、闇の世界にあった屋敷にくらべたら全然小さい。あれじゃあ四世帯くらいしか住めないんじゃねえかな。


「ふーん。って、あ!雑魚ベー!おーーい!」


「ん?は!?さ、悟さん!?」


洋館から目を逸らすと、丁度近くの店だか一軒家だかから出てくる雑魚ベーを見つけた!丁度いい!これで洋館の門番を倒す必要はなくなった!……あ、こっちきた。


「え?え?本物、ですか?」


「撃てばわかるかな」


「ちょっと!こんな対応するなんて本物確定じゃないですか!水鉄砲下ろしてくださいよぉっ!え、でもどうして悟さんが……げっ、ま、まさか」


「お前んちに遊びに来たぜー。さ、撃たれる前に大人しく招待しなっ!」


「そう、きますよねぇ。やっぱり。……悟さん。遠いところ来てもらって本っ当に申し訳ないんですけどねぇ。何年か後に出直してもらえませんか?」


「そんなに待てるかっ!いいのか、雨双から捜査許可は出てるんだぜ?新年早々冷たくなって発見されたくはないだろう?」


「そんなのっ、新年早々神社を空けたときから覚悟の上ですよぉっ!今は家がごたごたしているんです!サイドショット家の醜態をあなたに見られたくはありません!」


「どうしてもと言ったら?」


「悟さんには悪いですが、無理やり特星に帰らせて見せますよよぉっ!」


「上等だっ!やっぱり死ぬのか本当に死なないのか、お前の不老不死具合でこの世界を見極めてやる!空気圧圧縮砲!」


「ジャンピングキックですよぉっ!」


「よっ。電圧圧縮砲!」


「うあっ!あ、危ないですねぇ!ですがまだまだ、ジャンピぃーングっ」


「高いっ!水圧圧縮砲!」


「キックぅっ!」


[うぉっ!]


雑魚エーは水圧圧縮砲を打ち破ってかすりもしない位置に落ちたが、なんて威力だ!土と砂の波がここまできたぞ!しかも、雑魚ベーの周囲には落とし穴になりそうな広さのクレーターが。


「げほっ!雑魚ベーお前、ここ町の近くの道だぞ!ちゃんと修理費出せるんだろーな!?」


「おやおや、悟さんが今更なに言ってるんですか。というかこのくらいしないと貴方倒れないでしょうが!」


俺だって普段なら道だろうが建物だろうがちょっと壊れても気にしないさ。特星なら修理費出るし、日帰り旅行だったらばれる前に逃げりゃいいんだからな。……だが、今回の俺はスパイで、雑魚ベーの家に泊まろうかなーって思ってるんだ。あまり暴れられると悪人扱いされてスパイ旅行をエンジョイできないじゃないか!


「こいつ!すぐにでも沈めて」


「そこまでだー!」


「「え!?」」


雑魚べーをノックアウトしようとしたとき離れた位置から声がかかる。声のほうには1人の子供の女の子が……って、あいつは!


「タンシュクさん!?」


「いつぞやのロボット女子!なんだ邪魔する気か!?」


「わーわー!悟さんストップ!あの子は私の付き添いですよぉっ!」


なんだって?あのタンシュクってやつは闇の世界で武器を買ったり、帝国に潜水艦で乗り込んで来たりしてる怪しい奴だろ。一体、雑魚ベーとどういった関係があるんだ?ってか、なんでこんなところにいるんだよ!?


「雑魚ベー、ご主人様が早く戻れって。急げよノロマめー!お前のせいで私が伝達に駆り出されてるんだぞ!」


「早くといわれてましても。ちょっと外でお昼食べて戦い始めただけですよぉ?まったくあの人は」


「ご主人様ってことはあのうるせー感じのやつか……」


「おっと!紹介しますよぉっ!この方はロボットのタンシュクさん!本物の女子小学生と遜色ない女の子ですよぉっ!」


「ああ、前にあったことあるから知ってるよ。語尾が消えてるようだが」


「おん?あれ、お前は私を騙した根がクズのコート野郎!また私を誑かしにきたか?」


なんかこのタンシュクとやら、物騒な語尾が消えた代わりに口悪くなってないか?話し方も随分と流暢になってる気がする。


「ええ!?こんな純粋な女の子を騙して一体どんな悪行を!」


「主人公が悪行なんかするかっ!」


「私が頑張って特星で集めたお金をね、出所不明の武器と交換する取引を持ち掛けられたんだ。真っ暗で人目につかないところで取引したんだよ。ご主人様もこいつはゴミだって」


「闇の世界でドロップしたアイテムを格安価格で売ったんだよー!タンシュクと一緒にいたやつが逆恨みしてたからグルになって俺を陥れようとしてるんだ!」


「ああ、セーナさんですねぇ。んー、すみませんタンシュクさん。セーナさん分できっと悟さんのほうに言い分があるかなぁ、と」


「よっしゃ!」


「負けてしまった!ご主人様の足手まといーっ!」


すでに過ぎたことではあるが、俺の無実と正しさが一つ証明されてしまった。ふーん、タンシュクと一緒にいたやつはセーナって名前だったか。普段なら女子小学生に味方する雑魚ベーが俺を選ぶなんて、どうやらそのセーナってやつ、よっぽど雑魚ベーからの信頼がないみたいだな。


「で?どうする?このまま行くというのなら俺はついてくけど。決着つけておくか?」


「だ、ダメですよぉっ!家に来るのは絶対ダメ!ここで悟さんは止めて見せます!」


「雑魚ベー雑魚ベー、遅れると私がご主人様に叱られてしまう」


「えええっ。うむむむむ……し、仕方ありませんねぇ。じゃあ悟さん、来てもいいですけど家で見たことは他言無用でお願いしますよぉっ?」


「お前の家が悪徳貴族一家で俺が退治したとかでなければ話さないさ」


「なら大丈夫……ですかねぇ?悟さんだからむしろ大丈夫かも?わかりました!では私の友人として我が家に正式に招待いたしますよぉっ!」


「おお、頼むぜー。あ、それと悪いんだけどさ、水圧圧縮砲!」


「へ?ぐぶふぁっ!?」


ふむ。雑魚ベーの吹っ飛び具合からしてやっぱり水の魔法弾の威力は落ちてるようだ。それと雑魚ベーの顔は……潰れてもないし血も出てないから、不老不死オーラの効果があるってのも本当みたいだな。雑魚ベー自身の復活効果の影響かもしれないから確定ではないけど。


「いったぁ~っ。な、なにすんですかいきなり!?」


「いや、この世界にも不老不死オーラがあるって聞いたからちょっと試そうと思ってさ。ごめんな?」


「ありますよ!そういうことは口で聞いてくださいよぉっ!なんでいっつも先に手が出るんですか!」


「だってお前の気が変わって、家に来れなくするために俺の暗殺を企むかもしれないだろう?暗殺するなら油断させるため不老不死だと言う。まー、そういうわけで実際確かめるのが一番ってわけだ」


「もうっ!参拝客の皆さんが悟さんを恐れてる理由がちょっとだけわかる気がしますよ、まったく。じゃあ案内しますので……今度は本当に撃たないでくださいよぉ?」


「意味もなく撃たねーよ」


「あああ、すでに結構遅れている。急げー!ご主人様がお待ちだぞー!」


さあ、いよいよ雑魚ベーの家に乗り込むときだ!雑魚ベーがなぜか俺を家に寄せたがらないようだし多分なにかあるんだろう。悪事とは限らないがきっと悪事のはずだ!見事に雑魚ベーの秘密にしたいことを俺が暴いてやるぜっ!


「あ、ところで参拝客が恐れてるってどういう」


「自分の胸に聞いてはどうですかねぇ?」


まあモブ一般人は主人公とは距離感があるものだ。大目に見よう。……でも今度から神社のサービス戦闘を希望する客にはなるべく追撃してやろうっと。

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