八話 気持ちノリめになんか自然と
@悟視点@
寒さが増し……えー、……やべえ、なにも浮かばねえ!と、とにかく冬の季節だっ!
〔なにやってるんだ?こんな朝から〕
ああ、ボケ役。それがさー、なるべく毎日心がけていた季節感想が冴えなくてさー。それもこれも外の空気が悪いからだなきっと。
〔あー、事件の朝によく考えてるあれね。って、毎日やってたのか!?ひゅー、ポエマーっ〕
むしろお前は毎日季節感想してるのを知らなかったのか?起きるの遅いにしてもあれだ。俺の感想で目が覚めることもあるわけだろう。なんか頻度とかでわかりそうなもんじゃないか?
〔気持ち悪いこというなよ!寝るときにお前の声が聞こえるようにするわけねーだろっ!ツッコミ役、お前、俺がいつもツッコミ役の様子を探ってる盗聴魔みたいに考えてねーか?〕
おや、もしかして違ったのかな?
〔んなわけないだろ……。暇な日とか事件がありそうな時期に顔を出してるだけだぜ。面白半分、コート神時代の名残が半分。事件日を逃すことがあるくらいの頻度でしか様子を見ていないわけだし。盗聴魔扱いはあんまりだねっ。むしろ、ツッコミ役が呼びかければ俺の部屋に夢通信がつながって、俺を盗聴できるぜ。まあ電話みたいなもんだ。俺を呼びたきゃ頭の中で呼びかけな〕
ボケ役をわざわざ呼ぶことなんてことは滅多とないけど。にしても、そうかー。ボケ役はいつでもそばに置いてある便利な説明書みたいなものだと信じていたのに。意外と不便な奴なんだな。
〔ほっほん?そんなに言うなら本当に24時間密着解説してやってもいいんだぞ!俺はツッコミ役の夢の中にさえ介入できるのだからっ!〕
い、いや、それは別にいいかな。それよりさっきも言った、というか考えたことなんだけど。外の空気がなんか悪いんだよな。風が冷たいんだけど生ぬるいっていうか。なんか重いというか。
〔マジで?こっちは朝コタツで体を丸めているから、全方向ぬくもりに襲われてそりゃもう快適だが。まあ、少なくとも俺の住んでる裏ステージ側は普通に寒かったぜ。外出てないけどな〕
こっちは部屋にいる時点で違和感があったんだけどな。外は特に酷い。今、俺は寮の前にいるんだけど昨日とはまるで違う。たまに吹いてくる風からは普通の寒気を感じるが。
「うおっ!」
寮のほうを振り向いたらさらにすごい嫌な空気が体に!く、さっきまで俺の背はコートの加護によって守られていたから気づかなかった!どうやら寮の奥にある方角から嫌な空気が流れ込んできているみたいだ。
〔行くのか?〕
こんなんじゃ違和感がありすぎてまともに考えごともできねえ!勇者社のワープ装置で原因となっている場所まで乗り込んでやる!
〔そう。ま、がんばるんだなー。俺寝てるからー。ふああぁ……〕
せっかく事件に遭遇したんだからせめて見ていろよ……。
勇者社前までなんとか到着したか。ふう。そこら中で町の住民たちが犯人探しの戦いをしてやがるなあ。今回の事件は規模が大きく被害も広範囲だ。なのに住民を弱らせたり喜ばせる要素がないから、町の住民たちがストレス解消の遊び半分で事件解決に参入してきている。以前、町がお菓子になったときは事件解決を嘆く声もあったらしいのに、雲泥の差だな。
「とにかく無駄な戦闘は避けないとな。犯人対決で苦労することになるし。いてて」
すでに流れ弾を喰らってしまったけどな。く、町のいたるところで戦闘してるもんだから全方向に流れ弾の可能性がある。町が落ち着いてから事件解決に出るべきだったか?
「おいそこのコート男!」
「ん?」
声のしたほうには一人の男が槍を片手に立っている。俺と同じかちょっと高いくらいの身長だな。高校生くらいか。
「こんな時期に水鉄砲を持っているとは怪しいやつだな。その水鉄砲使いたさに空気を生冷たくしたんじゃないのか?」
「おいおい、いきなり酷い言いがかりだな。そんな適当な理由で人を犯人扱いして戦うつもりか?どっちかっていうと槍を持ってるお前のほうが物騒で怪しいと思うが」
とはいえ、物騒で怪しくて危ない奴ってだけで犯人ではなさそうだな。事件に踊らされているだけの無差別強行解決犯ってところか。こういうのを二次災害っていうんだな、きっと。
「だーが。槍は動機にはならないだろう。だが水鉄砲は動機になる!」
「ったく、どうやら話を聞くタイプじゃないようだな。いいだろう。水鉄砲は冬でも撃つものだと思い知らせてやるっ!水圧圧縮砲!」
「バカめ。特殊能力で俺に勝つことは不可能っ!川咲き突き破り開花!」
[がぎいぃん!っがしゃぁーん!がしゃがしゃ]
敵の突きたてた槍を弾き飛ばして俺の水の魔法弾が押し通ったな。軌道がずれて敵に当たらなかったのは残念。ていうか弾かれたあいつの槍が、勇者社2階の俺の上あたりにあるガラスを突き破ってんぞ。近くにガラスが降ってきて危ねー!
「なにぃ!?特殊能力に撃ち負けただって!?ばかな。特殊能力の威力はどれも大体一緒のはず!明らかに他の特殊能力とは威力が違ったぞ!」
「ふっ、勉強不足だな。力技でなんとか他の特殊能力を打ち破れる実力をつけてるようだが、甘いぜ!特星には特殊能力の力を高める隠し要素があるのさ!」
「そ、そんなものが!?なんてことだ。こんな不審者でも知ってることを俺は知らなかったとは。高等槍術部部長候補の名折れだっ。ぐぐぐぅ」
なんかよくわからないが、地面に両膝ついてすっごい体を反らせてるぞ、この不審者。それに高等槍術部って聞いたことあるな。……そうだ!たしか印納さんが部長をしてる部活だ!
「部長候補ってことは。おまえが印納さんの後継者なのか?」
「印納だって?高等槍術部を知ってるのか?お前さては悪人じゃないな!?くっくくく!敵にやられてないのなら稽古をつけただけということ!俺の名に傷はつかない!」
「なんだこいつ」
「悪かったな、水鉄砲男。俺は助治 几弦。印納部長とは違ってまともな槍術を鍛えている。現部長である印納と並んで部長候補だった男さ」
まともな槍術だって?高等槍術部ってもっとこう、槍魔術みたいな意味不明な現象を起こそうとしている恐怖の総本山じゃないのか?闇の魔術みたいな。
「うっそー」
「嘘じゃねーって!今に見てろよ!今回の事件を解決して、高等槍術部といえば俺、みたいな評判にしてやるからなー!」
几弦はどこかへと走り去っていった。今回は不戦勝みたいな感じだけど、勇者社の修理代請求はちゃんとあっちにいくんだろうか。ほとんど勇者社のサービスで保証されるからたいした額にはならないが、勝った俺に請求がきたらやだなー。
うっ!勇者社のワープ装置で不快気象の発生源と思われる方向にやってきて、勇者社の外にでてみたが。なんてところだ。湿度が高いって言うのかな。全身に冷やしシチューかなにかを浴びてるみたいな感覚だ。もしくはドロドロのゾンビにでもなったって感じ~っ。
「しかし思ったよりも人がいないな。こんな酷い状態なら逃げるために、ワープ装置に人が集まりそうなもんだが。もうみんな逃げ去った後なのかも」
「逃げ場など一つしかないというのにな。無駄なことを」
「おや、人がいたのか。って、その尻尾、擬人化モンスターか?」
うしろから声を掛けてきたのはふさっとまとまった耳と尻尾を持つ女の子。こいつもどうやら女子小学生に擬人化しているようだ。
「擬人化はあっておるが、元モンスターではなく元動物だ。……ここに足りているものは3つ。冬の寒さと、夏の蒸し暑さ、春のぽかぽかである」
「秋がたりてないようだが。なんでお前みたいな犬にそんなことがわかるんだ?」
「狐だっ、まぬけが!こほん。私は風水占いとお天気占いを専門にしている占い師でな。季節の流れなどたやすく読めるのだ」
「ふん、なら逆にこの不快な状況を作り出すこともできるんじゃないのか?」
「たやすいたやすい。原理は単純で、秋の季節が抜き取られて、そこに他の季節が流れ込んだだけだからな。現在の季節である冬が一番強いのは変わらないが、春や夏らしさが混ざり合ってこういう状況を生み出している」
「へー。……あれ、じゃあたまに吹いていた心地いい冬みたいな風は?」
「そりゃ吸収されてる秋の季節が混じった風だな。秋の塊みたいなものだから秋の風だが。……さてはお前さん、季節感のない人間だな?」
「へっ、このコートをみてみなっ!俺ほど季節感のある人間はいねーぜ!」
「手には夏そのものな水鉄砲、そして春みたいな頭の中身、どうせコートだって冬以外にも着ているんだろう?」
「喧嘩売ってんのかこの狐め。コートも水鉄砲も頭の中身も、全季節共通だっ!」
しかしまずいな。この風水狐の言うことが本当だったら、季節を取られた側のここは被害地ということになる。いや、それどころか秋ドレインによってほとんどの場所が秋季節の通り道となっているわけだから、すでに秋が尽きてるここは犯人の居場所とは正反対ということだ!
「くっ、まさか俺が嵌められたっていうのか!犯人はこことは逆の地にいやがるってことだろ!?」
「そうだな。まー、別にいいのでは?ワープで移動するんだから距離など気にならんだろう?それに無知なだけで嵌められたわけでも」
「いいや、調査を撒くために敵は巧妙な思考トリックを使ったのさ!不快な空気が強くなっているここに犯人がいると思わせるためにっ!ふふふふふ!ここまでやるだなんて、きっと相手は世界を混沌で覆おうとしている大参謀に違いないっ!」
「おやおや。慣れない季節でおかしくなったか。特星の治癒機能とやらも恐怖には通じないのだろうな」
「言ってろ。とにかく時間稼ぎはされたが、俺は見事に敵の居場所をみやぶった!あとは乗り込んで犯人を倒すだけだな。よし急ぐか」
「行かせはせんぞ」
[っどすっ!]
「いって!」
この狐!勇者社に向かおうとした途端に背中を木の棒でぶっさしやがった!てか、棒の長さが性悪狐の身長の二倍くらいあるんだけど、一体どこに隠してやがったんだ!?
「なんだやる気か!?」
「おおー怖い。いやなに、レアケースなときの占い調査で私はここにいるのだがな。私だってこんな季節じゃあストレスがたまるわけだ。だからちょっぴりいたぶって怖がらせてやろうと」
「水圧圧縮砲!」
「おっとと。気の早いやつめ」
「はん!こっちだって不快な空気と偉そうな狐でむかついてるんだ!無抵抗な人間に不意打ち攻撃しやがって!お前みたいなのは退治しないと、不意打ちがいつまでたってもヒーロー技のスタンダートになりゃしないぜ!空気圧分裂砲!」
「そうだな。テレポートアーマー」
「なにっ」
空気圧圧縮砲が風水狐に当たると同時に消えていく。触れてから消えてはいるものの、ダメージは入っていないようだ。
「く、勇者社でワープできるのにそんな特殊能力が手に入るとは」
「紹介しよう。私の特殊能力は見てのとおり瞬間移動能力。補助系だ。対象に制限があるのと、精度や判定がそれほどあてにならないのが難点だが。さっきの技で、雨の中傘なしで済むのは便利といえるな」
「狐だろーが濡れてろ!水圧圧縮砲!」
「マイテレポート」
「む、逃げられ」
[どかっ!]
「うぐっ!」
いってて、横腹をとび蹴りかなにかで蹴られた!く、威力はそんなに高くないが、こっちの攻撃がなかなか通りにくそうな戦術を使いやがる。
「左右と背中がよくがら空きになる男だ。……ひょっとして攻撃されたいのか?なーらもっと前をがら空きにせんと」
「したいんだよっ!主人公回しキック!」
「マイテレポート」
「くそ、今度は離れた位置に移動しやがったか」
戦う機会が少なかったせいか、こういう防御や回避をしまくってくるやつはそうにもやりにくい。理不尽に襲ってくる敵を返り討ちにするのが、主人公の基本戦闘スタイルだからな。襲っておいて防御や回避を重視なんて想定してねーよ!
「って、まるで攻撃されたいかのような思考を……。これが風水の力か!」
「そうだ。私の風水でお前さんの思考をちょいといじったのさ。では今度は風水によって私の攻撃を受け入れてしまうがいい……」
「ぐわーっ!手と足が勝手に開くー!大の字みたいになったら防御どころじゃねーっ!」
「やったぞ!ついに私は風水を超える力を手に入れてしまったようだ!ではぁ、……お前さんの期待に応えるとしようか。私からのとどめに喜ぶんだなーっ!」
「あああ……バカでサンキュー。水圧圧縮砲!」
「なにぃ!?」
[どかあああぁんっ!]
木の棒を持って突っ込んできた風水猫を、近距離での水の魔法弾でぶっ飛ばす。そしてすぐさま地面に横たわる風水猫に近づき、頭に水鉄砲を突きつける。
「テレポートはやめておくんだな。この距離での電気の魔法弾ならば、お前がテレポートで消えきる前に一発撃ち込むことができるんだぜ」
「ぐああぁ……っ!うぐぅっ、まさか嘘だったとは。どおりで今日の大の字からはちょっとよくない気配がしていたわけだっ。もっと気にとめるべきだった」
「俺の冗談に乗ってきたから風水にやられたふりしたけどさ。風水ってそもそも思考をいじったりできるもんなの?」
「いいや全然。ただお前さんからは思考がおかしくなった気配を強く感じてな。私が風水でやったことにすれば催眠術みたいに引っかかると思ったんだ。春みたいに単純そうだし。……逆に、大の字の不吉な気配はそれほど強くなくて、普段の占いで感じる程度の弱い気配だったからあてにはしなかった」
「どこまでも失礼な狐だな!ふん、俺のどこを見てそんな気配を判断してやがる?」
「風水は位置での判断が基本だ。まあ私はお天気占いの影響もあって、動きかたとか形状でも吉凶の判断ができるのだよ」
位置か……それじゃあ気をつけようがないな。動き方も戦闘しながらそこまで気を回すのは不可能。……形状ならなんとかなりそうだ。半袖コートや長袖コート、他にも実用的じゃないコートをいっぱい持ってるし。
「あてになるか怪しいから今度でいいか……。じゃあ俺はもう行くから今度こそ邪魔するなよ。寄っただけで撃つからな」
「そこまで疑わなくてもいいだろうに」
「タチの悪い擬人化の知り合いが多くてな」
「おやおや。では汚名挽回というわけではないが、最後に1つわかったことを教えてやろう」
「ん?」
「お前さんからは私のように天気にまつわる力を感じる。特に雷雨に関する……尖った雨乞い師かなにかをルーツとする血筋とみた」
雨乞い師?少なくとも俺の知ってる範囲にはそんな古臭い職業のやつはいないなぁ。だが心当たりがないわけじゃない。なんせ俺の水・風・雷の魔法弾はちょっと威力に補正がかかってるみたいだからな。ルーツかはともかく、水鉄砲での水技強化のような、特星の隠し効果にあてはまる力は持っているのかもしれない。
「ふむん。まったくありえない話でもねーな。一応、頭の隅にとどめておくことにするぜ」
「ああ。……………………マイテレ」
[ばちちちぃっ!]
「ぐあーっ!」
おっと!後ろも見ずに撃っちまったけど家にテレポートするだけの可能性もあったな。テレポートしてから技名言えばいいのに、応用のきかないやつだ。
「ま、いいや。はやく次行こーっと」
ワープ装置でさっきとはなるべく真逆に位置する勇者社にきてみたが、これは!
「なんて快適な空気!涼しげでさわやかで……季節感ばっちりの俺にはわかるぞ!これは、紛れもなく秋の季節!」
勇者社内を見ると、店内のベンチには結構な人がいる。ただ現地人なのか他の町からワープしてここを見つけたのかはわからないな。
「店内でこれってことは外に行けば気分爽快間違いなし!にしても冬の季節にこんな快適な気分を味わえるとはなー。もう解決するのやめてここで冬が過ぎるの待っちまうのもありか?」
「そうしなよ。絶対そのほうがいいって」
「おや。誰だ?」
これからの過ごしかたを決めようってときになんだろう。近くでくつろいでただけの男子学生のようだが。
「僕たちも住居周辺のあまりの不快感に解決にきたんだけどさ。これだけ快適なら次の秋までこのままでもいいかなーって思っちゃってね。多分、この辺の勇者社でくつろいでる人たちは皆、解決にきてやめた人たちじゃないかな」
「なるほど。なら俺は結構出遅れてきた感じだな。外はもっと快適だと思うんだがなんで勇者社にいるんだ?」
「うーん、アウトドア派なら外のほうがいいかもね。でも僕は秋に家でくつろぐ派だからここでくつろいでるんだ。外はちょっとすーすーしてここほど心地よくはないね」
「ふーん。じゃあちょっと外に行ってみるか」
あああー。いつもの秋に比べてなんて快適なんだぁーっ。思わず2時間くらいはずっと歩き続け、特星エリアに入り込んでしまった。やっぱり現代エリアよりも特星エリアの草原のほうが心地がいいな。吹き抜ける風が主人公らしさとさわやかさを与えてくれる。
「ただ、快適なほうに歩いてきたはいいけどなぜか人が少ないな。勇者社とは比べ物にならないくらい快適なのに」
そもそも特星エリアに入る前にいた町では、外にでてる人間よりも勇者社内にいた人間のほうが多かった。外で幸せそうにしてたやつらも、特星エリアよりも現代エリアのほうが快適だとか言っていたし。どうしてだ?快適な空気はどんどんこっちに集まっているのに。
「もうこんなところにやってくる人が現れるなんて。外は相当酷い状況みたいだね」
「ん?上から声が……な、なんだあれは!?」
「はははははははっ」
声のした空を見てみると、上から青光沢に輝く石版のようなものがゆっくり降りてきている!そして俺の目の前に着地を……。
「って、椅子だと!?台座つきで浮いていたのか!」
「ふ、これは玉座といって偉い人が座る椅子なんだよ」
「いやそれは知ってるけど」
青色の石版に見えたものは台座部分だったのか。青光沢の台座に、水色の生地と銀色の金属でできた玉座がくっついている。玉座の背もたれ部分は、座ってるやつの身長よりも長いな。あと玉座からものすごい秋パワーが発生している気がする。
座ってるのは……女子高生か?座高だからわかりにくいが、多分俺より背が高そうだ。あとは冬なのに夏服みたいな制服を着ているな。もしかしてこの辺りの高校は夏休みじゃないのか?
「お前がこの事件の犯人だな?その玉座を使って秋を奪っているんだろ!」
「うん。私のこの玉座は特星エリア探検で見つけた秘宝。鑑定した結果、秋か春のどちらかの季節を集める効力があるとわかったのさ。だから集めたんだよ、秋を」
「なぜ秋を?」
「秋は気分がいいからね。私は秋が大好きだ。だけど私は冬にアイスを食べるのが好きだし、夏に熱いシャワーを浴びるのが好きな季節感とは縁のない人間でね。……秋を満喫できていない気がしたのさ」
「だから秋を集めて、自分だけこんなに快適な場所で秋三昧しているというのか」
ていうか、特星エリアの探索でそんな玉座を見つけたなら、玉座を入手できるようにしてる特星管理者のやつらに問題があるような。事件規模のわりに、被害報告を受けてるはずの特星本部連中もまだ動いてなさそうだし……。肝心なときに役に立たねーんだから、まったく!
「君も季節感がない人間なんだろう?ここまでやってきたのだから」
「季節感はあるよ。ここが抜群に快適だってこともわかるぜ」
「ここほど秋の力が強いと、季節感のある人間には普段は気にならないはずの秋の悪い点にまで気がいってしまうんだよ。ここで快適にいられるってことは季節感がない証拠さ」
「ある!」
「秋なのにコート、秋なのに水鉄砲、秋なのに不審者、どこをどうみても季節感なさそうだよ、君」
「どれも全季節共通っ!それ以前にいまは冬だ!……ああ不審者でもないな」
少し前にも似たような言葉でバカにされた気がする。ただまあ、環境はほとんど間逆だったが。ここだと心地いい涼しさのおかげでそこまで気にはならないかな。
「そう怒らないでくれたまえよ。そんな君もこの場ではまさに秋人間そのもの。この秋の世界においては、君のコートも水鉄砲もミステリアスさも実に秋々している。いいねーっ」
「ふっ、おだてても事件は解決するからな?」
「それは結構。私もただの学生に負ける気はないのでね。でもその前に素晴らしい秋に似合う男を撮らせてもらうよ。はいチーズ」
[ぱしゃっ]
「いえーいっ。……さて。じゃあそろそろその上座は譲ってもらうぜ!写真は、お前がつかの間の秋の大王だった記念にくれてやるっ!水圧圧縮砲!」
「なに?空砲2!」
[どかああぁん!]
玉座の肘掛けから空気圧圧縮砲のような空気の塊が出て、俺の水圧圧縮砲を相殺する。ちっ、ただの玉座じゃなかったのか。
「驚いた。私の特殊能力に張り合える力を持つとは」
「なにっ!?じゃあいまのはまさか特殊能力で撃った弾なのか!?」
「そうさ。私の特殊能力は魔法弾を操る能力。風の魔法弾を、秋を集めて何段階かパワーアップしたこの玉座で撃つと、なぜだか威力が上がるみたいなのだが。まさか相殺されるなんて」
「俺と同じ能力なのか!く、レアアイテムで超強化しやがって!」
こっちがなんとか市販品の水鉄砲と雷之家補正で頑張ってるのに、アイテム一つで逆転するとは!だが水鉄砲よりも強化値の大きいあの玉座、俺が使えば相当の力を発揮できるはず!この勝負、負けられなくなったぞ!
「まさか君も魔法弾を操る力があるのか。それは残念。いまの私には玉座があるから銃を持ってないんだよ。……にしてもなんで水鉄砲なんかを武器にしてるんだい?」
「答えは自分で見つけな!水圧分裂砲!」
「ムダさ。空砲2!」
「うおっ!」
今度はさっきと逆側の肘掛けから、俺の技をかき消すように空気の塊がこちらに飛んでくる。何とか避けれたが、あ、危なかった。
く、あくまでも魔法弾だし、俺の圧縮砲シリーズと発射間隔は同じようだ。ただ左右どちらの肘掛けからでも発射してきやがる!これじゃあ二箇所に集中する必要があって反応が遅れちまうぜ。
[どかかかっ!]
「む。魔法弾だけだと片側被弾するのか。君やるねぇ。広く展開する魔法弾なんて私にはできないぞ」
「発射してないほうの玉座になら水圧分裂砲は当たるが……。やはり本体に当てねーとな!水圧圧縮砲!」
「何度やろうがムダなのだよ!空砲2!」
[どかあぁっ!]
「ふふふ。……なにっ!?」
「ふっ。水圧分裂砲はもう撃っているのさ。すでにお前の目前に迫っているぜ!」
[どかかかかかかかっ!]
大量の水の魔法弾の中に玉座は飲み込まれる。……いや、だが、なにかがおかしい!敵にヒットするよりも前に、水圧分裂砲はなにかにぶつかって消えている!
「まさかあれは……、普通の銃弾か!」
「そうさ!この玉座の肘置きにはフルオート仕込み銃が内蔵されているのだよ!弾数は、集めた季節から生成されるため無限!そして私の魔法弾、空砲2もすでに撃てる状態にあるのさ!」
ま、まずい!敵は片方の肘掛けから銃弾を撃ちつつ、もう片方の肘掛から空気の魔法弾を撃つことができる!だが、俺は水圧圧縮砲を使う前後に水圧分裂砲が少しだけ途切れるから、そのあいだに銃弾の嵐を喰らってしまうぞ!
銃弾は水鉄砲で強化した水圧分裂砲でなんとか防ぎきれる威力……。とはいえそれでも銃弾1発に対して、水圧分裂砲の魔法弾が2発当たってようやく相殺しているように見える。連射速度と範囲攻撃で補っているものの、単発威力では銃弾にすら勝てないのがきつい!
「これで終わりにしようじゃないか!空砲2!」
「もういいっ!水圧圧縮砲!」
[どかああぁっ!どかかかかかかか!]
「うっぐううおあぁっ!」
なんとか空気の魔法弾は相殺し、銃弾は防弾コートで受けてはいるが痛ってぇ!このままだと10秒も持ちはしない!そもそも防弾つっても俺のコートは薄いから防御力がない!
「ははははははっ!さて、そろそろ力尽きただろうか」
「ぐっ!はぁ、あ、止まったかっ!はぁ……っ」
「なんだまだ無事だったのか。どうだね、そろそろ負けを認めて、私と共にこの快適な世界を満喫しようじゃないか。季節感のないもの同士、仲良くしようとは思わないのか?」
「うっせー!この季節もその玉座も俺のものだ……!」
「この状況で欲張るとはね、バカなやつ。ではそんな君にはとどめを……ん?」
俺が空いているほうの左手に武器持つと、敵の言葉が止まる。気づかれてしまったがまあいいだろう。俺は右手の水鉄砲、左手のエクサスターガンを敵にむける。
「なんだい、その玩具は」
「エクサスターガン。特星でも消滅するという防御不能の超必殺技を撃てるスペシャルレア武器さ。ただまあ、玉座を消滅させるわけにはいかないからその技は使わないぜ。安心しな。あ、やべ、威力調節してっと」
「ハッタリかい?それがほんとうに武器ならさっきすでに使っているはずさ!」
「二丁拳銃はそこまで得意じゃないのさ。だが状況が状況だ!水圧圧縮砲!」
「空砲2!&両サイド銃弾発射!」
「くっ!水圧分裂砲!」
[どあああぁっ!どかかかかかかかか!]
まずは俺と敵の大きめの魔法弾が衝突し、相殺しあう。そしてほとんど間髪いれずに敵の銃弾が飛んでくるが、最初はなんとか回避して、そしてすぐに水圧分裂砲で相殺する!
「さっきとなにもかわらないさ!すぐにでも空砲2の発射準備は」
「遅いぜ!エクサスターショット!」
「っな!?」
[ばしゅあん、ばしゅあん!]
「うああっ!ぐぁぅ!」
エクサスターショットを受けた敵は前のめりに倒れていき、そのまま玉座から転がり落ちた。……秋の世界で毎日を過ごすというのもちょっとはありだと思っていたんだがな。残念、魔法弾使いとしてこんなやつに負けるわけにはいかねーのさ。それと玉座欲しかったし。
「魔法弾を……2つ同時に?いや、そうじゃないね。まさかあんな玩具がほんとうに武器だったなんて」
「ふん、お前さ、水鉄砲や光線銃をバカにしてるだろ。どっちもちゃんとした武器なんだぜ。魔法弾使いがこんなカッコいい銃をバカにするなよな」
「それが、快適な秋の世界を捨ててまで私を倒した理由なのか?」
「ああうん」
「そうだったのか……。私は実銃などを武器として使っていてね。実用性のない銃をバカにしていた節はたしかにあるよ、すまない。水鉄砲や光線銃を銃としてみたことすらないかもしれない」
実銃?ライフルとか拳銃とかああいうのか?あんなダサいものを使っているなんて、魔法弾使いとか以前の問題なのでは。季節感同様に美的センスがまったくないのかもしれない。同じ特殊能力を扱う仲間としてアドバイスをしておくか。
「実銃はやめておいたほうがいいぜ。魔法弾の特殊能力を使う機会が潰されてしまうからな。……せっかく魔法弾を操れるんだ。おもちゃ屋にある水鉄砲や光線銃を使うようにして、特殊能力を使った戦闘能力を鍛えるべきだ」
「し、しかし、そういう銃はちょっと恥ずかしいというか、その」
「よく考えろ!お前は水圧分裂砲のように大量に展開する魔法弾が使えなかっただろう?特殊能力を使い慣れてないからだっ。お前はもっと、武器の性能になるべく頼らない戦い方をするべきだ!」
「武器の性能に頼らない……はっ!まさか君が光線銃をなるべく使わないようにしていたのは」
「そうだ。俺は魔法弾使いとして、なるべく魔法弾で戦うことに誇りを持っているんだ。もちろん負けるくらいなら武器性能をフル活用するし、近接戦もこなすけどな」
それにぶっちゃけ、充電を消費するエクサスターガンよりも水鉄砲のほうが使いやすい。水系統の特殊能力もパワーアップするから結構強いし。……あ、そうだ。
「それに……この水鉄砲で水の魔法弾を撃ってみな」
「この水鉄砲で?……水砲!」
[どかあぁん!]
「うわっ!普段の私の水砲よりも強い!?」
「ああ。水鉄砲には水の魔法弾を強化するという、魔法弾使い専用の隠し効果があるのさ。……魔法弾で戦うための舞台はすでにあったんだよ。お前だって水鉄砲に偏見なく接していれば気づいてたはずだ」
「し、知らなかった。それでも君の水の魔法弾よりは弱い気がするけど、たしかに強くなっている」
「そこから先の強化は自分の手で探すんだ!水鉄砲を手にとってな!魔法弾を使いこなすことで更なる強化を見つけるんだ!」
「わかったよ。私だって強くなりたいという気持ちはあるのでね。特殊能力を強くする力が水鉄砲にあるのなら、使ってやろうじゃないか」
ほんとうは水系統の特殊能力を強化するって情報源であるゲームに書いてあったから、魔法弾使い専用ではないけれども。ま、こいつに完全な情報はまだ早すぎるな。……こいつが自力で情報を見つけたときに、誰にも知られていない、水鉄砲に秘められた真の力が手に入るっ。うーん、こういうほうがロマンがあっていいよなーっ。黙っておこう。
「もしかして玉座で空気の魔法弾が強くなるのも、その隠された効果とやらの影響なのだろうか?私は秋の力でなんか自然と強くなるものかと思っていたが」
「かもしれないな。あ、ちょっと俺もこの玉座で魔法弾撃ちたいから座っていいか?」
「好きにしてくれたまえ。私は草原でしばらく寝転んでいるよ。よいしょ。……正面は危なそうだから玉座の裏方向にいるとしよう」
「肘掛けが後ろに引けるな。どれどれ」
「どかかかかかかかか!」
これが仕込み銃ってやつか。外見が隠れているぶん、銃火器とかよりもダサさは気にならないな。銃弾は金属っぽいけどまあ仕方ない。……ふむ、撃った銃弾は少しすると消えてしまうみたいだな。魔法弾女の撃った銃弾が今になって次々と消滅している。そして銃弾の落ちている辺りからは冬……というか秋らしい風が出現している。心地いいー。
「それじゃあ、空気圧圧縮砲!」
[どがあああああぁん!]
おおーっ、地面に空気圧圧縮砲よりもひとまわり大きなクレーターが!なんてすげー威力なんだ!はははははっ!水圧圧縮砲なんてもういらねーや!
「はははは!今度は空気圧分裂砲だぜーっ!」
[どかかかかかかかぁん!]
ひゅー!一発一発がこの玉座の銃弾を打ち破れそうな威力だ!しかもこの玉座の仕込み銃よりも2倍ほどの速度で発射できる!強い!タフな敵でも10秒も持つか怪しいぜっ!
「君の空気圧圧縮砲は、私の空砲よりも高い威力のようだね。やはり魔法弾の年季が違うのだろう」
「そうだろう?そして俺の魔法弾とこの秋の力が合わさればまさに無敵!全世界の秋はいま、俺の手中にあるのさっ!はーっはっはっはっはぁー!」
「あれ。……なんだ君は?」
「さ、悟さん?」
「はぁぃ!?」
突如、背後から聞こえた第三者の声に思わずふりかえる。……けど背もたれが邪魔なので、玉座から降りて後ろを覗き込む。するとそこには、草原で寝転んでいる魔法弾女の手を握り、困惑した様子のウィルがいた。それとウィルの後ろには顔を背けて笑いをこらえる擬人化猫、ゲージの姿もある。ゲージは勇者っぽいコスプレだがそれなりに似合ってはいるな。
「くく、ふふふ……っ!この暴力コート男め、ついに本性を表したようだな!これだけ大人数を巻き込んでの大事件の犯人なのだから、貴様の評判は地に落ちたも同然!ついでに犯人退治ということで、いままで我に手痛く接してきた報いを受けさせてやろう!」
「ま、待ってくださいゲージさん。ほんとうに悟さんが犯人なんですか?どっちかといえば犯人をいじめて遊んでる人だと思うのですが」
「ほんとうです師匠!早朝から偵察に出ていた我を信じてください!それにこの男は罪のない人々をいじめるついでに犯人をいじめているのでありますぞ!師匠もさっきの悪の台詞を聞いたでしょう?」
「勝手に人を通り魔扱いしてるんじゃねーぞ!この猫かぶり猫め!」
「た、たしかに今日も狐さんから、悟さんらしき人物にいじめられたと報告があったそうですけど」
「ウィルー!?」
あのテレポート狐も手回ししてやがったのか!狐は多分、やられた腹いせだろうが。
それにしてもゲージの野郎、早朝からずっと偵察していてこのタイミングでの出現だと……わざわざ俺が動くのを狙ってやがったな!規模と事件のわかりやすさのわりに特星本部が動くのが遅いと思ってたんだ!
「ていうかそこの真犯人も寝てねーでなにか言ってやれ!このままだと玉座を取られちまうぜ!?」
「ん、私か。まあたしかに私が犯人ではあるからね。捕まって注意されるのは仕方あるまい」
「そうだ!そいつが黒幕だぜ!」
「あの。失礼ですが悟さんとはどういったご関係で?」
「我は聞いたぞ!お主とそこの暴力コート男は秋の力に魅入られた仲間!魔法弾を操る能力者同士としてもこそこそと秘密の力を共有していた。それと確か、そこのコート男が座っていた椅子で秋を集めていたのだったかな?」
「よくそこまで知っているね?ああそうだよ、私と彼の関係はそんなところだ」
…………あの猫の言い方、間違ってはいないけどなんか印象操作をしようとしている気がする!訂正しなければ。
「でも犯人はこいつだけだ!そうだろお前?」
「よさぬか暴力男!お主、彼女の仲間思いの心につけ込んで自分だけ助かろうなどと、恥を知らぬのか!?お主のような人間がいるだなんて我は」
「水圧圧縮砲!」
「ふ。ま、招き穴ー!」
[どかあぁっ!]
「ぐあっ!」
な、なにぃ!?俺の水圧圧縮砲がゲージの空間技に飲み込まれて、真犯人である魔法弾女に直撃した!光線銃から撃った水の魔法弾だから普段ほど強くはないが、それでも弱りきった犯人を倒すには十分すぎる威力だ!水鉄砲を預かっていたおかげでまだ命拾いしているほうだけどな、あの魔法弾女。
にしてもあのクソ猫!仮にも俺が水鉄砲や光線銃のよさを伝えた相手になんてことを!あのザコ猫の実力で俺の不意打ちを反射的に防げるとは思えない。きっとあらかじめこうなることを予想して、犯人の口封じを狙っていたんだろう。……なんか今日の猫野郎賢くね。
「す、すまぬ師匠っ!急にあやつが攻撃してきたから、我、慌てて方向を間違えてしまって……!」
「ああ、別に犯人は倒しても大丈夫ですよ。気絶させる手間が省けましたし」
「え?……わかったぞ師匠っ!我もちょっと気にしすぎたようだ!……師匠なんか冷たいな」
「ゲージっ、こいつ!どうやら本気で俺を犯人の一味として陥れたいようだなっ!」
「なんのことだか我にはわからぬにゃあ。くくくくっ。まあそんなに不安がることはない。なんせ我とお主の仲だからな!被害者の狐女と一緒に、優しくお主に注意するだけで許してやろうではないか!なに、安全のためにちょっとコートを脱いだまま説教を聞くというだけのこと……。それだけで許すというのだ、我はとっても優しいだろう?」
こいつまさか!俺がコートを脱がされると存在を保てなくなるコート神だと知っているのか!?ほんとうにコートを脱いだまま説教されたのでは、俺は存在そのものが消滅してしまう!
「おいウィル!仮に冤罪はいいとしてもコートを脱がすのは虐待だろ!暴力行為だぜ!」
「でも今回の被害に比べれば……そのくらい我慢してくださいとしか。悟さん、説教とかを聞くくらいならどんな手を使ってでも逃げそうな性格してそうですし」
「まあ説教なんて話し手を倒せば終わるし……しまったつい本音が!なんて姑息な誘導尋問を……!エクサスターショット!」
「「え!?」うわあぁ!」
やや強めに設定した光線が当たり、ゲージはそのまま倒れて気絶する。ウィルはなんとか跳んで回避したが、すぐそばで気絶していた魔法弾女が流れ玉に被弾する。マジごめん!
俺はその隙に玉座を捨てて、走って一時退却する。く、玉座の浮かし方がわかれば空から逃げれのに!
「あ、こら悟さん!待ちなさい!」
「まったくの無実だっていってるだろー!水圧圧縮砲!追うならその真犯人に事情を聞いてから追いやがれー!空気圧分裂砲っ!」
その後、俺はウィルをふりきって未知の土地の特星エリアを逃げ回りつづけた。次の日の昼ごろ、ずたボロになったゲージを連れて、ウィルが謝罪しに現れたことでこの事件は幕を閉じた。ちなみにずたボロゲージにはもちろん一発撃ったが、一発で許してやったぜ。俺はとっても優しいからな!……今度ウィルのいないところで懲らしめてやる。