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変な星でツッコミ生活!?  作者: 神離人
本編:変な人たちの出会い その一
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三話 氷使いの少女

@悟視点@


アミュリーが家に住んでから数ヵ月が経ったある日のこと。


「怪しいと思いませんかねぇ?」


朝食の最中に雑魚ベーがいきなり変なことを言いだす。


どうして雑魚ベーがいるかというと、アミュリーと俺だけで住ますわけにはいかないとかいう理由で雑魚ベーも一緒に暮らすことになってしまったのだ。

高校の寮なのにいいのか?…それをいうとアミュリーも駄目になってしまうな。


ちなみに食事係とか作ろうと思ったんだが、貴族や神様に出来ると思えないので俺が食事を毎日作ることになったのだ。


「思わないな」


「答える前に何が怪しいかを聞くべきだってば」


アミュリーが正論を言っているが、雑魚ベーの言うことは大体正しくない気がする。


どうでもいいことだが、アミュリーは神様なのに非常に筆記が苦手なようだ。読むのは漢字でも大丈夫なのに、書くのは平仮名すら駄目なのだ。

ちなみに小学五年生らしい。雑魚ベー曰く、今の時代では珍しい純粋な小学五年生とのこと。


…語尾とかにつっこんだら駄目なんだろうなぁ。


「主人公が私でないことがですよぉっ!私には十分に主人公の要素はあるはずです!」


確かに貴族らしいし、女子との恋愛もありそうだが甘いな。


「俺の予想では年齢が問題だと思うなぁ。この話では学園生活が主人公の基本だろ?その中でも恋愛話の作りやすいのは高校生か中学生!この理論によって雑魚ベーは主人公になれてないんだ!」


雑魚ベーはこれでも二十歳らしい。大学生ではないらしいのだが、小学生好きじゃなければ主人公になれる可能性はあると思うぞ。


「私はどうだっけ?」


「アホな女の子の心情って判りにくいんだぞー」


あ、このアホは悪口で言ってるんじゃないぞ。特徴を褒める言葉として言ってるつもりだ。


だがアミュリーの勉強能力は本当に酷い。普段はそれほどでもないのだが、筆記能力が小学生とはとても思えないくらい酷いのだ。


「悟にアホって言われたんだってばー」


「悟さんは駄目ですねぇ。女子小学生の心はデリケートなんですよぉっ!」


そういう雑魚ベーの心は物凄くシンプルなんだろうな。文句を言うアミュリーを見て満面の笑みを浮かべてるぞ。


「悪かったって。それよりコートの注文に行くから留守を頼んでも良いか?」


「あ、買い物だっけ?私も行きたいんだってば!」


「アミュリーさんが行くなら私も行きたいですよぉっ!」


別に良いけど店で暴れないか心配だなー。…暴れたところで問題ないから良いか。


「そういえば二人は着替えとかは持ってきてたっけ?」


「あまりないんですよねぇ。女子小学生用の服は大量にあったんですが、船と共に水の底に沈みましたし」


あー、その悲しみはわかるなぁ。俺も大量のコートを注文したんだが、そのコートを乗せたヘリが墜落して全部パーになったことがあるなぁ。


ちなみに俺は無地のコートが大好きだ!特に愛用してるのが濃い緑色のコートで、夏は半袖コートとかをオーダー注文してるぞ!


「ふんっ、私の少女用の服は二万着以上ですよぉっ!スカートやズボンを合わせると計十万着くらいのそ損失ですよぉっ!」


「俺のコートだって通常のと半袖を合わせたらそのくらいは失ったぞ!」


…まぁ、遠い場所にある勇者社の売れ残りを無料で貰う予定だったんだけどな。


「ご馳走様だってば」


っと、喋ってる間にアミュリーが食べ終わったようだ。俺達も急いで食べるか。






ということで服屋に到着。勇者社内の服屋なので変な服から伝説級のものまで多くある。


「わー、凄い品揃えだってば」


「和服とかって買う人いるんですかねぇ?」


和服は結構高めだから飾るだけって人なら買うんじゃないか?


「売られているのは買う人がいるからですよ。…勇者社の場合は買う人がいなくても売るでしょうが」


「あ、羽双!」


いつの間にか居たのは和風マニアこと羽双だった。ちなみに雑魚ベーとアミュリーも住み込みしてるうちに羽双と知り合いになったらしい。


このように特星ではほんの数ヶ月経つだけで、様々な人たちがいつの間にか知り合いになったりするのだ。変わった者同士だからだろうけど。


「大勢で買い物ですか?」


「そうなんですよぉっ!悟さんの家には服があまりありませんからねぇ」


おい、元は一人暮らしなんだから仕方ないだろ。


「そうですか。…ところでこの辺で子供を見かけませんでしたか?」


「子供?特に見てないが、待ち合わせでもしてるのか?」


羽双の性格からして、誰かを待ったりはしなさそうなんだが。


「雨双さんという方で僕の妹です」


「妹なんているんだっけ?」


「えぇ。女子小学生なんですが」


「おぉ!では私が羽双さんのために連れてきてあげますよぉっ!」


女子小学生と聞いた途端に張り切って雨双を探し始める雑魚ベー。片っ端から子供に名前を聞く様子は不審者そのものだな。


「僕はそろそろ帰りますので、見つかったら奢った和菓子を返すように言っておいてください」


「え、ちょっと待て!」


静止の言葉を聞かずに居なくなる羽双。和菓子返させるためだけに妹を探してるのか?


「奥義、アイススイート!」


「ぎゃふ!」


そのとき急に凍った雑魚ベーが俺の近くに飛んできた。一体なんだ!?


雑魚ベーが飛んできたほうを見ると、一人の小学生位の女の子が立っていた。状況的にあの子が雨双だな!


「まったく、最近の誘拐犯は堂々としているな」


喋り方は全然違うが確かに羽双の妹だ!なんか冷静な雰囲気がそれっぽいし!


「ん?そこの男も誘拐犯か?」


はっ!アミュリーを連れてるから雑魚ベーの仲間だと思われている!此処は何とかして誤解を解かないと雑魚ベーみたいになる!


「俺は雷之 悟!そこの倒れてる雑魚ベーとは単なる知り合いなんだ!」


「私はアミュリー レイカレーンだってば。雑魚ベーと一緒に悟の家に住んでるんだってば」


でた!ごく自然に話をややこしくするこの展開!


「そして私が本名を忘れましたが雑魚ベーです!全世界の純粋な女子小学生の味方ですよぉっ!」


あ、凍ってた雑魚ベーが復活してる。


「なるほど。とりあえずアミュリーはその男達から離れたほうが良いぞ。物凄く怪しいから」


俺は主人公だから怪しくない!怪しいのは雑魚ベーだけだ!


「仮装、一つ言っておく!」


「仮装じゃない!私はしん そうだ!」


あれ、雨双ってあんまり冷静じゃないかもしれない。


というか一文字違うだけじゃないか。雑魚ベーなんか本名があるのかどうかも判らないくらい、名前を間違えられてるんだぞ。


「じゃあ雨双、俺は主人公だ!凄いぞー」


「…とりあえず私を誘拐しようとしたことを悔やむんだな!アイスソード!」


氷の剣を飛ばしてくる雨双。氷を操る能力のようだ。


「うお、危ないな」


いつだったかに手に入れたハエ叩きで氷の剣を叩き落としていく。雑魚ベーは避けれずに攻撃を受けてるが。


「ハエ叩き?私をバカにしているのか?」


「ハエ叩きにすら勝てない氷のくせに何を言う!」


まぁ、氷が弱いわけじゃなくハエ叩きが強いんだろうが。


「勘違いかなんかで大変なことになってるんだってばー」


ベンチに座りながら戦いを見ているアミュリー。そもそもの原因が一番安全とは。


「なら叩き落とせない技で決めるまで」


「はい、そこまで~」


攻撃しようとした雨双の額を、急に現れた魅異が竹槍の尖ってないほうで軽く突く。


「いたっ!」


不意のことに雨双はそのまま尻餅をつく。


「おや、魅異さんじゃないですか」


「いたた…。え、魅異さん?」


雑魚ベーの言葉に反応して雨双が魅異を見上げる。


「どうして魅異がここにいるんだっけ?」


ベンチで休んでいたアミュリーもやってくる。手にはまだ開けていないジュースが握られている。


「休んでたんだから俺にくれ!」


そういってアミュリーのジュースを取り上げる。


「あー!返せだってば!私のだってば!」


「服を買ってやるんだからジュースくらい良いだろー!」


「あれ、アミュリーは誘拐されてたんじゃ?」


ここでようやく雨双が勘違いに気づいたようだ。そもそも雰囲気とかで誘拐犯じゃないってわかるだろ。コート着る人に悪い人は少ないんだよ!


「ところで魅異さんと雨双さんの関係を知りたいですねぇ」


「私は魅異さんの弟子なんだ。…あと、二人とも疑ってすまなかった」


「いえいえ構いませんよぉっ!」


俺も心が広いから許してやろう!


あ、ジュース全部飲んじゃったな。


「あー!全部飲んだんだってば!」


「可哀想にね~。はい、これ」


魅異がアミュリーにジュースを渡す。なんか俺が悪者みたいじゃないか!


「ありがとうだってば!」


「ふふん、このジュース代は高いよ~」


魅異がこっちを見ながら言う。金を取るつもりか!?


「金はないぞ!」


「私がお金に興味あると思う?ちょっとした用事を頼みたいんだよ~」


ちょっとした用事?ま、その程度なら事件とかに巻き込まれることはなさそうだな。


「最近特星エリアで起こってる事件を解決して欲しいんだけど」


「おぉ、いきなり巻き込まれたよ」


「あ、それってあれですかねぇ?特星エリアにお菓子だらけの場所が現れる事件!たしか新聞で見ましたよぉっ!」


それって印納さんが作ったお菓子の国か何かじゃないのか?前に城とか作ってたし。


「ちなみに犯人は女子小学生だよ~。場所は特星エリアを適当に前進してれば着くから四人で頑張ってね~」


拒否しても何らかの形で巻き込まれるだろうし、今日の昼食費がお菓子でチャラにできるかも!


「四人でってことだし、私も行くぞ」


そういって立ち上がる雨双。というか、さっきまでずっと倒れてたのか?


「雨双は巻き添えだから嫌なら来なくても良いぞ」


「魅異さんが四人でといってたし、アミュリーをお前達に任せると危ないからな。…お菓子食べたいし」


雑魚ベーはともかく、俺は非常に安全な男だぞ!


「とにかく向かうぞ」


こうして俺たち四人は特星エリアへ向かった。






~特星エリア~


というわけでやって来ました特星エリア!


「さあ、お菓子はどこだ!?一ヶ月分は貰いたい!」


「悟さん張り切ってますねぇ」


それは当然だ。食費が三人分わけだし。


それにしても全員がほぼ装備なしだが大丈夫だろうか?特星エリアに居る奴は変なのが多いらしいが。女子小学生とか。


「皆、さっきから襲ってきてるモンスターには関心がないんだっけ?」


アミュリーの質問でわかるように、現在進行形でモンスターが俺達を襲っているのだ。もっとも足止めにすらなっておらず、歩きながら倒せるので楽だ。


「違うぞアミュリー。会話しながら倒せるようなモンスターを気にしてると、主人公としての程度が低くなる。だから俺はあえて会話にその話題を出さないんだ」


「私は関心がないだけだぞ」


む、もしかして主人公であることを気にしてるのは俺だけか?


「あら、ならば関心を示せる相手が必要ね!」


どこからか聞こえてくる声。…この声は聴き覚えがあるぞ。


「それなら私が相手よ!」


要注意人物である印納さんが空から降ってきて登場する。


「印納さん、俺達はわけありで急いでるんですけど」


「ふふん。お菓子だらけのエリアのことね?悪いけどそこへ行きたければ、お菓子系賢者の私を倒さなければいけないわ!」


別に印納さんはそこまでお菓子と関わりのある人でもないけどな。


「でも四対一は卑怯よ。だから二人が私と戦い、もう二人が先に進むってのはどう?」


「二対一は卑怯じゃないんだっけー?」


「私は優しいからそのくらいのハンデはあげるわよー」


それなら四対一でも良いと思うけどなぁ。恐らく二対一で勝てる自信があるんだろうなー。


「誰が行く?俺はパスしたいんだが」


「あ、悟は強制参加ね」


「嘘!?」


印納さんが相手とか本気で嫌なんだが。ふざけてるけど強い技とか使ってくるし。


「雨双さんかアミュリーさんとのペアが良いので今回は出ませんよぉっ!」


自分勝手だと言いたいが、いつも盾になってくれてるんだからたまには許してやるか。


「私もまだジュース飲み終わってないんだってば」


そのジュース何本目だ?


「なら私しかいないな」


「ってことで俺と雨双のペアでいきますよ?」


「誰と組もうが問題ないわ!この東洋で幻の印納槍で吹き飛ばすまでよ!」


そういって印納さんが取り出したのは竹箒だった。そもそも槍じゃないし、そんなものが東洋で幻なわけあるかっ!


「なら俺も我が家に伝わる水鉄砲とハエ叩きでいくぜ!」


「何で張り合う!?…私達は急いでるんじゃなかったっけ?」


甘いな雨双。焦るだけじゃあミスが多くなる。だから余裕のある行動をすることが大事なんだ!


「さぁ、くらえ!水圧圧縮砲!」


岩でも砕ける水圧圧縮砲を何発か撃つ。だが印納さんは笑顔でスキップして全て避ける。


「これが青春よー!」


「嫌な青春だ。アイスニードル!」


雨双も氷の棘を飛ばすが全て避けられる。


「こっちのターンよ!槍魔術、スーパーエナジー!」


持ってる竹箒を天に掲げる印納さん。思わず身構える雨双と俺。


印納さんの竹箒が輝く。印納さんは輝いている竹箒をこちらへ向けてくる。


「ほら、綺麗よ!」


「…それで?」


技を使ってくると思っていた俺はつい聞き返す。まさかこれだけってことはないはずだ。


「これでこそ東洋の幻に相応しいわ!」


「…空気圧圧縮砲!」


竹箒に見とれている印納さんに魔法弾を撃つ。


「きゃあぁっ!」


油断していた印納さんはそれを喰らって吹っ飛ぶ。


「悟、あの人はなんなんだ?」


「俺が知るか!」


変な人であることは確かだが、それ以外は何にもわからん。


「うぅ、二人とも強くなったわね」


いつの間にか印納さんが立ち直ってるし。


「私は初対面だが」


そういえば雨双は印納さんと会うのは初めてなのか。


「それもそうね。…さて今回は私の負けにしておくわ!戦利品としてこれ託すわよ!」


印納さんが俺に渡したのはゲームのカセット的なものだった。


「ゲームですか?」


「さあねぇ?そんなの教えないわよー。あ、お菓子だらけの場所は向こうよ」


それだけ教えると何処かへ走り去る印納さん。何しに来たかはわからないがゲームのカセットらしきものはもらうことにした。






~お菓子の隠された森~


印納さんに教えられた森の中を歩いている俺と雨双。雑魚ベーやアミュリーとは合流できていないが、地面にクリームなどが多くなってきている。


「雑魚ベーとアミュリーはどこなんだ?」


「二人とも迷ってるんじゃないか?その場合、私は雑魚ベーだけ見つからないでほしいな」


本人が聞いたら落ち込みそうなことを平然と言う雨双。…いや、あいつならなに言われても喜ぶか。


「あ、二人を発見なんだってば!」


噂をすればアミュリーを発見。あれ、でも雑魚ベーの姿が見当たらないぞ。


「大変なんだってば!雑魚ベーとはぐれたんだってば!」


おぉ、雨双の願いが叶ってしまった!これは雑魚ベーを放置しなければならない予感だ。


「どうする雨双?」


「え、捜せば良いんじゃないか?」


おや、これは予想外の反応だ。


「ほら、あれだ。私達の盾に適役だからな。それとも悟が代役か?」


「俺には荷が重い!だから早く雑魚ベーを捜そう!俺はあっちを捜すから!」


雨双やアミュリーとは別行動で捜すことにする。


もし今の状態で敵に出会ったら盾にされる!その前に雑魚ベーを見つけなければ!


「こっちか?…あ」


いつの間にか森を抜けてしまったようだ。目の前には大きなお菓子のお城が見える。


そしてお城を見上げる一人の少女が立っている。雨双やアミュリーと同じくらいだろうか。


「……………ここですか」


あの子、ふらふらしてるけど大丈夫か。


「………あ!」


あ、こっちに気づいた。


「……あなたはもしかして雷之 悟さんですか?」


「なっ!俺の名前を知ってるなんて、俺のファンか!?」


主人公暦数ヶ月、ついに人気者になってしまったか俺!


「………この季節にコートを着ている人は珍しいですから」


あ、違ったか。


半袖コートは注文中だから仕方ないだろ。


「……ところであなたはこのお菓子のお城が目的ですか?」


「あぁ。事件解決ついでにこの城を全部もらうつもりだ」


虫とかがも寄り付かない城のようだし、よく見ると下の部分が大きな皿になってるから全部食えそうだ。


「………そうですか。でも私もこのお菓子を全部貰うつもりです」


…なるほどな。言いたいことは完全にわかった!


「それならどちらのものか決着つけないとな!」


「……別に私が全部食べたいわけではありませんが、皆へのお土産のためにすべて頂きます!戦場の結界。そして自縛爆霊の召喚」


相手の辺りに多くの幽霊が召喚されてこっちに飛んでくる。


「幽霊!?」


「………私の名前はいが 記紀弥ききや。とある島の寺の主をしている幽霊です。特殊能力は有利不利を操る能力ですが、結界や術なども扱えます」


幽霊自体は怖くはないが攻撃とかが通じるか心配だ。


「水圧圧縮砲!」


こちらへ飛んでくる幽霊を避けつつ攻撃する。


「…………防御の結界」


普通に結界で防がれる。技名言うより結界使う方が早いぞ!


「とりあえず距離を!いたっ!」


後ろに下がろうとしたら見えない何かにぶつかった!


「………お城に被害が出ないように私達の辺りには結界があります」


一番最初に使ってた戦場の結界とかいうあの技か!


「あれ、体が?」


急に体が動かなくなったぞ!


[バアァン!]


そして背中で何かが爆発して、その勢いで結界に突っ込む。


「……………自縛爆霊は触れた者の動きを封じ、爆発します」


いてて、ならさっきのは背中にその霊がくっついたのか。


記紀弥は場所を変更しながら霊を呼び出してくる。


「だがそんなの避けるまで!って、凄くいっぱい飛んできた!悪霊退散!」


避けられそうにないのでとりあえず逃げる。でもこの結界内だけで何処まで逃げ切れるか。


「こうなったら全力撃退だ!」


俺の持ってる最強の武器、エクサスターガンで倒すしかないな。この銃は充電式で、充電最大の時に撃てる必殺技は特星内でも相手を消滅させる程の威力があるんだ。効かない相手もいるわけだが。

人相手に使うと危険だが、幽霊相手だから使っても大丈夫だろ。


「悪いな。エクサバースト!」


いざという時の為に先に謝って必殺技を撃つ。小屋くらいなら飲み込めそうな大きさの光線が記紀弥へむかう。


「……これは!」


巨大な光線は結界と記紀弥を飲み込むかのように、森の木を消滅させながら突き進んでいった。


「どうだ?倒せたか?」


〔…………今のは危なかったです〕


記紀弥は無事だったようだが本物の幽霊っぽく浮いていた。


「無事か。でも妙に違和感があるな」


〔……さっきまでは仮の姿。今の私こそが真の姿である記紀弥第二形態!…冗談です〕


おぉ、なんだか話が合いそうなやつに思えてきた!


記紀弥第二形態か。だがこの俺は主人公!第二形態程度に敗れる俺じゃないっ!


「こ、これが真の記紀弥!だがお菓子と食事代とお土産を待つ者のためにも俺は負けれない!」


〔………なるほど。ならばその意気込み、お菓子の城とともに断ち切ってあげましょう〕


雰囲気は良いのだが、お菓子の城を断ち切られると凄く困るんだが。


〔……と言いたいところですが、そろそろ帰りの船が出る時間なので行かなければなりません。私はある島の寺に住んでいますので、よければ今度遊びに来てください〕


記紀弥はそれだけ言うと第一形態に戻り、その辺のお菓子を集めて去っていった。遊びに誘うのならちゃんとどこの島とか言ってくれないとわからんぞ。


「敵も無事に倒せたし、ついにラスボスか!」


「あ、悟発見だってば!」


敵陣に乗り込もうとしたとき、後ろからアミュリーの声が聞こえる。


「お、みんな無事だったか」


声のほうを見ると三人ともそろっていた。道に迷った雑魚ベーも見つかったようだ。


「悟、これは誰の仕業だ?」


雨双は歩いてきた道を指差してたずねる。そこにはエクサバーストの攻撃で出来た直線の道があった。


「それは俺がエクサバーストを撃った時にできた道だ!敵に襲われてたからな」


「へー、これは悟の仕業なのか」


「凄いだろ!」


エクサバーストを撃ったから充電が空になったが、数ヶ月くらいで満タンになるはずだ。


「悟ー、その攻撃に雨双が当たりかけたんだってば。しかも本当に直前で避けたんだってば」


「え?」


そういえば俺が戦闘中もみんなは森にいたわけで、普通にあたる可能性があっということか。…は、さっきから雨双に睨まれてる!?


「いや、あの、悪かった!俺が悪かったから許してくれ!」


「特星で人が消滅するような攻撃だったんだ。それなりの覚悟は良いか?」


な、何でそんなこと知ってるんだ!?雑魚ベーやアミュリーでさえ知らないはずなのに!


「どこでそんな情報を仕入れた!?」


「いやぁ、私が喰らって消滅しちゃいましてねぇ」


雑魚ベーは喰らったのか。でも復活してるから別にいいや。


「待て雨双!今はボス戦前だから体力の温存を優先させるべきだと思うぞ!」


「なら、さっきの私みたいに避ければいい!奥義、アイススイート!」


雨双の右手から二階建ての家なら飲み込めそうな、巨大な冷凍光線が撃たれる。エクサバーストより大きいって!


「私がお店で喰らったのより大きいですねぇ」


「こんなの避けれるかぁ!うわあぁっ!」


アイススイートで吹っ飛ばされて、後ろのお菓子のお城が凍りつくところが見える。そして俺の意識はそこで途絶えたのだった。






「…あれ?寒っ!」


辺りがとても暗い。後ろを見ると表面が完全に凍ったお菓子のお城があった。


「雨双にやられんだっけ。…誰も居ない」


ということはこのお菓子のお城は俺のもの!?


「よっしゃ!表面は凍って食べれないが、側面と裏面と屋根と内側は食えるぞ!」


これだけあれば数ヶ月はお菓子だけで生活できる!そうすれば数ヵ月分の食費をコートとゲームに使えるぞ!


「誰か助けてー!」


おや、お城の中から声が聞こえたぞ?


「中に誰かいるのかー?」


「あ!はい、居ます!閉じ込められたみたいなので助けてください!」


呼びかけると返事が返ってくる。お城の中に居るってことはボス予定の子か?


「このお城は何だ?」


「このお城ですか?私の能力で作ったお菓子のお城なんです」


どうやらお菓子のお城の製作者らしい。


「横の壁とかを食べて出てきたらどうだ?」


別に助け出しても良いが、お菓子の城なら食べたり壊したりで出れるだろ。


「それがこのお城って美味しくないんです。私の能力だとお菓子の質はこのくらいが限度なので」


美味しくないのか?凍っていない部分の壁のクリームを食べてみよう。


「んー、確かに美味しくはないな」


クリームの感触であるが味は水道水みたいだ。


「もしも助け出せたらこのお城を持っていってもいいので助けてくださいー!」


…今回こんな目にあった原因の二割くらいは中に居るこいつだし、こんなお菓子の城は正直いらないから助けないでおこう。


というか正面のドア以外に出口がないし、欠陥住宅だろこれ。


「忙しいから他に頼んでくれ。俺は忙しいから」


「私は女子小学生ですよ?子供を助けるのが大人の役目じゃないんですか?」


「特星においては子供の役目だぞそれ。もしくは小学生の味方の役目だ。じゃあ頑張れー」


見えないだろうが手を振ってその場を後にする。明日あたりにでも凍らした張本人に助けさせよう。恐らく今日は俺の部屋に居るだろうし。


部屋に帰ると予想通り三人は俺の部屋で夕食を食べていた。そして雑魚ベーとアミュリーの要望により、雨双も俺の部屋に住むこととなってしまった。

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