番外:羽双と悟の世間話
@悟視点@
まだまだ秋の涼しさが冬の寒さに勝る季節。日の強さを感じさせない太陽の下、俺と天利は広場で対峙している。そう、全てはこの前亡き者にされた俺の数百兆セルの敵を討つためっ!……一時は、三十億セルもの現金に心踊らされたときもあった!しかし、だからといって天利の呪いによって葬られた数百兆セルの無念はそれでは晴れない!手も足も出ない数百兆セルに代わって俺がこてんぱんに悪を討つぜ!
「そして隙あり!水圧圧縮砲!」
「ぐあぁっ!く、今日はここまでのようだ!くくく、悟、今日のところは引き分けにしておいてやろう……!」
「あっ!てめー逃げる気か!第二形態はどーしたっ!?」
「ふっ、今日はラスボス戦に相応しくないのでな。気が向いたらまた遊んでやる。ふふふふふっ、ふはははははーっ!」
天利がこちらを見下すように空高く飛び上がり、そのままどこかへと飛んでいく。あのやろっ、勝負を途中放棄しやがって!
「く、前の呪いの件もそうだが、いっつも自分勝手すぎるぞ。親として、いや、ラスボスとしてどうかしてるぜ……!ちゃんとやられろよあんにゃろー」
「仲よさそうな家族ですね」
「うお。羽双か!一体どうしてこんなところに」
「ここ広場ですよ。今のは、悟さんの…………お母さん、で合ってますか?」
「ん?ああ、一応。でも別に親子仲がいいわけじゃないぞ。俺は主人公で、あいつがラスボス。しかも奴は悪の組織の総帥王!俺と天利は戦うべき運命にあるのさ!」
「ほぉ。悪の総帥王ってことはやはり世界を取りにいったりするんですか?」
「するみたいだな。地球で別居する直前、皇神……俺の父親が世界を取ってくるとか言って出て行ったもん。あ、ちなみに皇神は悪の組織の幹部な」
「ふむふむ。その辺りは僕の家とも似てますね。僕の両親も世界を取ってくると旅立ちましたし」
羽双の両親というと無双と流双か。あの二人は多分ガチ侵略者なんだよなー、腕はともかく。俺のほうは悟ンジャーで世界を取ってくるって意味だったろうし。
「方向性が多分違うけどな。見た感じだが、そっちの家ではお前と無双が対立関係にある感じなのか?」
「そうですね。流双さん……母が雨双さんと因縁があって、無双さん……父と僕は普通に喧嘩してる感じです。僕たちのほうだと基本的に個別に動くんですけどそちらは?」
「こっちもそうだなー。たまに俺と希求……妹が手を組むか、あるいは天利を皇神がサポートするって感じ」
「大体同じですね。流双さんが好き勝手すると大変なことになるから、無双さんがよく止めに入ります」
「だよなー!こっちも天利を放っておくと大変なことになるんだ!人の報酬を滅茶苦茶にしたり……!あと結構前の話だが、俺とのタイマン対決のために仲間二人を操って帰らせたこともあった!」
「流双さんもよく人を操ろうとしますね。最近、特殊能力でも人を操れるようになって一段と厄介になったみたいです」
「ああ、お前が俺に流双討伐を頼んだ日にも使ってたよ。使いこなせてるとは言い難い感じだったけどな」
ていうか、無双の話だと流双は怒るとやばいらしいんだが。よく俺をそんな危ないやつの相手を俺に任せる気になったな、羽双め。
「流双さんは不器用ですからね。しかしあの人の場合、不器用ゆえに厄介なところもあるんです」
「本気の一撃で衝撃波が出るんだろう。無双から聞いたよ」
「そうでしたか。雨双さんや流双さんは力を纏めるより発散させるほうが得意なんです。それでも綺麗に発散させる雨双さんと、爆発的な流双さんでは全然違いますが」
雨双のアイススイートとかは距離が伸びるほど広がっていくけど、一応光線としての纏まりはある感じだもんな。……流双のは多分本当に爆発なんだろうなあ。
「あ、そういや羽双って普通の人間なんだってな?」
「ええ。化け物にでも見えますか?」
「いや、無双や流双は英雄補正であんな強さなんだろうけどさ。お前なんで人間なのにそんなに強いんだ?無双もすげー不思議がってたぜ」
「あー……、それは単純に魅異さんの弟子になったからです」
「魅異かぁ~。ああうん、あいつが関わるとなるほどとしか言えなくなるや」
「補足するなら、弟子になる以前にも人並みに強くはあったんですが。魅異さんのところで鍛えた力が僕や纏める才能に合致して跳ね上がったんです。雨双さんも同時期に弟子になってますけど今は順当という感じですし」
雨双は特殊能力が圧倒的に俺とかよりも強いが、確かに羽双一家の中では人間同然みたいなところがあるな。魅異の修行も効果はまちまちってことか。
「順当な強さでも特殊能力で必殺技を使えるってのは羨ましいが。だがなー、魅異の弟子ってのはちょっと嫌だし、うむむ。……例えば、無双とかなら纏める力があるから超パワーアップするのか?」
「無双さんは性格的に向いてない気がします。遊び心がないから。……弟子はともかくとして、悟さんには力を纏める才能はありそうですけどね」
「お。同種の才能は見ればわかる的なあれか?」
「まあ。悟さんは特殊能力でよく魔法弾を使っていますけど。その中に圧縮砲とつくシリーズの魔法弾がありますよね」
「ん、あれか?でもあれは魔法弾にそう名づけただけだぜ」
「その魔法弾の形状です。大体ちゃんと球体で整っているでしょう。特殊能力で物体を出す場合、物体ごとにそれなりに形にバラつきが出るんです。球体なら形が歪だったり、棘なら先端の丸みが違ったり。でも悟さんの魔法弾は水も油も大体球状になっている。あ、勿論発射前の状態ですけどね」
「よくそんなことに気づくな。視力いいけど気に留めたことないぞ」
「時間を止めてざっと相手の技の観察とかしていましてね」
「流双が意識を奪ってるときみたいな余裕っぷりだ」
「それは嫌ですね」
流双は相手の意識を奪ってから風呂は入ったりするみたいだからよほど余裕ぶってるけど。戦闘中に相手の観察するのもまあ大概だと思う。
「とりあえず、形状がきちんとなってしまうのは纏める能力があるからだと思います。勿論、性格が向いてるとは限りませんが」
「わざわざ綺麗な魔法弾を作る必要はないって感じだから性格は向いてない。まあカッコいいエフェクトは欲しいとは思うけど」
「闇の世界でも言いましたけど、悟さんは特殊能力で戦うほうがいいですね。向いてます。特殊能力を使っていれば少しずつではありますが纏める力がついていくと思います」
「そういえば言ってたな。特殊能力を使ってれば宇宙を割るくらいはできるって。どうだ?あれからもずっと特殊能力を使ってきた!そろそろ宇宙を割れるんじゃないか!?」
「…………塵も積もればいずれは山となります。その調子がいつまでも続けばいつかは多分。頑張ってください。では」
「あ!無理ならやっぱ無理でしたって言えよ、こらー!」
羽双は広場から消えるような速度で駆けていった。ああもう、どいつもこいつも逃げやがって。……とはいえ意外と話しやすい奴ではあったな、羽双。星を割るとか聞いてたし前は怖いイメージがあったんだが。今度会ったら一度和菓子でも奢ってやるか。