三話 新たなる春に行く、神秘のビルの旅
@悟視点@
のどかでさわやかな風が吹く春の季節。行事に忙しいこの季節だが、先週は高校まで花見に行ったし、その前は神社に泊まりに行った。暇すぎる今週は、ぜひとも春だし今までにない新しいところへ挑戦したい!
「とはいえ、現代エリアじゃあ道と建物ばかりだし。だからって特星エリアは自然とモンスターばかりだし。どこへ行けば類稀なるこの冒険心を満たせるのか。……うーむ、わからん」
「おーっす悟!!寮の前でなに突っ立ってるんだ?」
「あれ、烈。外に行ってたのか」
「おっと!!このついさっき買ったジュースはやらねーぞ!」
「なんだよ。……あ、そうだ。外に出てたなら一つ聞くが。なんかこう、冒険してーみたいな場所なかったか?」
「は?冒険ー!?…………そうだなぁ」
おや、なんか烈が珍しくも考え込んでいるだって?こいつのことだからノータイムで答えてくれると思ってたが。これは期待薄かもな?
「……俺が前から気になってたところならあるぜ!!」
「烈が?ほうほう、どこどこ?」
「ここの寮から遠いんだが、瞑宰京中心部のビル街!」
「道路とビルしかなさそう」
「のビルの中っ!!!」
「ん?え、ビルの中だって?……どのビルが烈の一押しだ?」
俺は瞑宰京の中心部にはほとんど近寄らないから名所のビルはわからないな。前に中心部を遠目に見たときもビルがあるくらいの印象しかなかったし。
「どのビルだって構わねえ!!悟は疑問に思わねーのか!?あの腐るほどあるビル群の内部が!!外から見えないようなガラスも多いし未知なる空間が存在しているはずだっ!!!」
「れ、烈。さすがに仕事場があるだけじゃあ」
「ちっちっち。確かにテレビ番組では、ビルの中が職員室みたいになってるシーンがよくある!!ゲームでもな!!だが現実を見ようぜ、悟!!!特星生活の中でスーツを着た人類なんて一度だって見たことあるか!!?」
「そりゃあ、お前、…………………………あれ?ない、だって!?」
そ、そういえば今の今までごく自然に存在すると思っていたが、よく考えたらスーツを着てる奴ってみたことないような。校長とかはネクタイはつけてるけどスーツじゃなくて上着だしな、そういや。
「うーむ、心当たりがない。烈、よく気づけたな。スーツ着てる人間の数なんて気にしたことなかっぜ。普通に一杯居ると思ってた」
「はっはっはっはっはー!!なんせ俺はすげーからな!!ビルの中に仕事場がないってのもきっと当たってるぜ!!」
「いや、そっちは、……まあ、中で働いてる人間が居るかは怪しいもんだが」
でもそう言われるとちょっと気になってくるな。もしもビルの中に人間がいないようならあれだ。特星中のビルを改造して秘密基地とか作り放題じゃん!
「よし、烈!これから瞑宰京中心部にあるビル内部を調べに行く。お前も提案者として参加するように」
「なに!?お、怒られねーかそれ!?」
「ふふふふ、烈。主人公の探索というのは超寛容的に扱われるものだ。俺がちょっと準備していくだけでその程度のことは水に流されるのさ。そういうわけでジュースでも飲んでお前も準備しろ!」
「ごくごくごくごく!!」
「なるほど~。それでビル探検しても怒られないようにしてほしいわけだね~」
「ああ!魅異なら朝飯前だろ?」
「実際そうだけどね。それは別にいいんだけど、ただで認める気はないよ~」
「…………おい悟。魅異頼みかよ!?主人公パワーでなんとかするんじゃねーのかぁ!?」
「まあまあ。交友関係も主人公の強みだし。で、魅異はなにか要求が?」
正直、魅異の要求が本気めのものだったら何を言われても応えられる気がしない。だからあれだ、なんか冗談めいた要求こい!
「私と勝負してもらおうか~?」
「お、ああ、うん。手加減してくれよ?俺が勝てる程度にはっ!空気圧圧縮砲!」
「さあ?勇者拳~」
[ぱしぃ!]
く、空気の魔法弾がちょっと魅異の拳に当たっただけではじかれた!あいつの技って、一つの技でも攻撃パターンがいくつもあって厄介なんだよなぁ!思い込むと危険だ。
「神離槍装備!ミネラルレーザーだよ~。それそれ」
「うぉ!おおおぉ!?好き勝手動かせるレーザーかっ!?ハエ叩きアタック!」
「あら、消された。ならこれならどうかな~?勇者波~!」
「巨大光線だが、この威力なら突っ切る!いてててて!く、喰らえ、主人公パーンチ!」
[ばしぃ!]
くそ、魅異がさっき取り出した竹槍で止められた!でもこの主人公パンチは左手で囮だ!
「水圧圧縮砲!」
[どかああぁん!]
「わとと、降参降参~。いやぁ、悟にしては随分強くなったねぇ?」
「当たったんだからちょっとは痛がる素振りをみせろよ。……あれ、烈は?」
「ああ、ミネラルレーザーで寮の屋上に吹っ飛んでたね。あ、ビルの件はなんとかしておくからどこでも自由に荒らしまわっていいよ~」
「別に荒らす気はないんだが」
というわけで、勇者社のワープ装置で瞑宰京の中心部あたりにやってこれた。……でもあれだなぁ、人は見渡した感じ数人ほどがそれぞれ遠くを歩いてるんだが。
「思ったよりもまったく人がいないなぁ」
「そうか?じゃあ俺たちのところが多いんだな!!」
「都心部にしては少なすぎるって話だよ。ビルとかも中が見えるところには会社員とかまったくいなさそうだし」
「職員室もどきが大量にあるな!!!地球の都心部はどんな感じなんだ?」
「えー?俺は地球の都心部は行ったことないけど。……まあ俺の住んでたところでこういうビル街は車が多くて、かなりの人で込み合ってる感じだったな。あとテレビ局がでかい」
地球のビル街に比べてもかなり静か、っていうか特星に来たときも思ったことなんだが、この星って本当車を全く見かけねーんだよな。勇者社がいたるところにあってワープできるから困りはしないけどさ。
「車ってあれだろ!?銃撃戦で乗ったり競争したりするやつ!!俺もいつか車でビルや壁を登ってみたいぜっ!!!」
「……車、なくて正解かもな。そんな話はいいから、ビルいくぞ。そこの近くのでいいか」
「おお!!」
「待ちなっ!烈!悟!」
[すたっ]
うわ、どこからともなく男が降ってきた。防弾着のようなやたら丈夫そうな服に、ぶかぶかのズボン、年は俺たちと同じくらいか?だ、だがこいつ、知らない奴だ。なのになんでこいつは俺たちの名前を知ってるんだ?
「誰だお前?なんで俺たちの名前を知ってるんだ!」
「いや悟!こいつあれだ!!高校で同じクラスの花銃 咲だ!!」
「ははぁ?覚えてたりなかったり?まあ、覚えてねえのも無理はねえ。お前らと会ったのはなんせ夏休み前。会ってから何年経ったかわかったもんじゃねえからなー!」
へー、こんな奴そういえばいたかもなぁ。さすがに防弾服着てた生徒じゃなかっただろうが。
「ちなみに悟も烈も、お前たちの悪名は俺の耳にも届いてる。寮で騒ぎを起こしてるそーじゃねーの」
「どうかな!!?」
「で、花銃だっけ?通してくれるんだよな?入る許可貰ってるぜ、魅異から」
「もちろん邪魔するさ!なんせ、俺はこの辺一帯のビル管理をバイトでやっているからな!返り討ち禁止なんて今日も言われたことねえ!帰らないならやってやる!」
「ふん。今日は戦闘なんかせずにのどかなビル探索したいんだ。今までとは違って春らしくなっ。花銃!お前なんかさっさとぶっ倒してやる!水圧圧縮砲!」
「んあ!?」
[どがああぁっ!]
く、ぎりぎり避けられた!にしても奥のビルの壁、相当頑丈な素材を使ってるようだな。岩をも砕く水圧圧縮砲でヒビ一つ入ってない。
「やる気かバカ共め。へっ、だがビルで俺にかなうと思うなよ!たあああああ!爆撃十字撒き!」
「なに?ビルを駆け上った!?」
花銃のやつ、走って近くのビルの側面を駆け上がっていったぞ!なんで落ちないんだあいつ!そしてあれは、ば、爆弾を投げてきたぁ!?
「やべぇ!ここじゃ爆発する!」
「え!?ま、待てよ悟!!?」
[じじじ、どかああああぁん!]
ふぅ、なんとか俺も烈も撒かれた爆弾の爆発を避けれた。にしてもビルの壁をくっつくように移動できるなんて、おそらく補助系の特殊能力だな?ビルの窓に垂直に立っていやがる。
「俺の特殊能力は見てのとーり、壁や天井を歩ける能力だぁー!この位置からならほぼワンサイドゲームで終わっちまうのさぁー!」
「おー、あいつ叫ぶの大変そうだな。距離あるから」
「あれ?おーい花銃ー!!お前の能力ってー!!壁だけ歩けるんじゃなかったのかー!!?」
「昔はなー!だがぁ!使い慣れてパワーアップしたのかー!今なら天井も歩けるしー!壁を歩くときに体が曲がることもなくなったんだぜー!」
そういえば奴の体は重力の影響とか受けてなさそうだな。あんな風に足だけくっついてる状態だと体を支えるのが大変そうなもんだが、あいつは特に苦もなさそうだし体で支えてるって感じじゃなさそうだ。特殊能力のパワーアップ、本当にあるんだな。
「あいつが居るのはビルの五階辺りか。ふん、そんな距離で逃げたつもりかよ!空気圧圧縮砲!」
「……うおぉ!?」
惜しい、避けられたか。でもやっぱり飛び退いたりはしないみたいだ。まあ、多分飛び退いたら落ちそうだし。見た感じ、片足だけでもビルの側面についてればおちないっぽい。
「……超破滅ボム!」
「巨大爆弾!?大花火圧縮砲!」
[どがああああああぁん!]
「おい烈!お前も手伝え!」
「無茶言うな!!悟と違って俺は遠距離攻撃なんかできねーんだ!!多分、石とか投げても届かねーしな!!」
「………………褒めてやるぜ!」
ビルの上から花銃がなにか言ってるみたいだが遠くて聞こえねー。でもなんか褒められたみたい。
「とりあえず、動けないならこれで終わりだ!油圧圧縮砲!……そして大花火圧縮砲!」
まず花銃の顔狙いで油の魔法弾。まぁこれは距離あるし当然避けられるわけだが。これで奴と奴の足元であるビルの壁は油まみれだ!燃えろ燃えろー。
[ごおおぉ!]
「……ああああああぁーっ!」
[どがしゃっ!]
「よし撃墜!可哀想だから火だけは消しといてやるか。水圧圧縮砲っと」
銃で撃たずに魔法弾だけ出してー、それ。
[ばしゃー]
「それじゃあ管理者の許可も得たことだし、いくぞ烈!」
「おし!!花銃、今日は運がなかったな!がんばれよー!!」
とりあえず、一番近くのビルの中に入ったが。こ、ここがビルの内部だって?自動ドアを開けたときに見えた光景は確かに普通だった。うん、そのはずなんだが。
「れ、烈。俺たちの歩いてきた道は?」
「ない!どうなってるんだ!?前も周りもどろどろした青暗いスライムが混ざり合ってるみてーな遠くだ!!!」
「ああうん。青暗い色が混ざり合ってるような景色だな」
ビルのホールみたいな場所からいつの間にか変な場所に来てた。さっき言ったが青暗い混ざり合う景色。しかもこの景色、遠いからかなんなのか距離感がまるでつかめない。これがビルの内部だってのか?主人公的新感覚ではあれだ、やばい度高めかもしれん。そんなよくわからん基準で評価したくなるほど不安になるブル内部だ。
「まるで夜空だなー!心が開ける気分になるなぁ!!なあ、悟!?」
「えー。どうみても不自然現象じゃねえか。ビルに隠してるみたいでさー。こりゃあきっと悪の秘密結社とかの仕業だな」
〔誰だ!?そこにいやがるのはよぉ!?〕
「「上!?」」
今の声は上からだよな?あ、居た。居たけど、なんか白衣着てるおっさんが浮いてる!なんだあのおっさん、こんな所で浮いてるなんて。怪しすぎる!
「お、おい、何者だおっさん。医者か?」
〔あん?なんだこのガキ共?おめー、この服装が科学者に見えなくって何に見えるってんだぁ!?白衣にDrって表記があるんだから連想される職業は一つしかねぇだろうが!そう、ねえのさ!科学者だな?〕
「悟!このおっさんからなんとなく医者への敵意が感じられるぜ!!」
「俺も」
〔はっ!敵意なんてねーよ?死者すら蘇らせられない医者は役立たずだなんて、思ってるわけねーよぉ?ま、役立たずだけどなー!〕
なんか、テンションの高いおっさんだなぁ。それに、もしかしてあいつ幽霊じゃないか?あんまり透けてる感じしないけど。なんか輪郭が幽霊っぽい動きかたしてる気がする。
「で、ここはどこなんだ?なんでこんなところがビルの内部にある?」
〔知るか!ただ俺は無性に、コート野郎!てめえはどこかで見たことある気がするし、無性に一発殴りたくて仕方ねえのよー!死にやがれぇ!〕
「うぉ!?」
[すかぁ]
あ、す、すり抜けた。あ、あぶねー。おっさんが実態だったら不意打ちで一発喰らってた!て、ていうかなんだこいつ!怖っ!怖ーい!ふざけんなよこいつ、言いがかりつけて襲いやがって!
「この悪霊め!殴りたけりゃ実体化しな!返り討ちにしてやる!」
〔はぁ?実体化ぁ?おいそこのバカ面、このコートは頭おかしいのか?]
「俺は賢い!!!」
〔おいそこのバカ、てめえは頭がおかしい。ていうか、俺が実体化するよりもっと確実な方法があるだろうが。そこのコートが死ねば、幽霊同士で俺は殴り放題だからなぁ!さあコートのガキ、この俺様のためにちょっとだけ死になー!ベリー科学術の科学者、ベリー様に殴られるためにぃっ!]
「うおっ!?」
[すかぁ!]
〔「「…………」」〕
あ、あれ?幽霊野郎が急に殴りかかってきたからガードしたのに、すり抜けて当たってねえじゃねえか!も、もしかしてこいつ、幽霊の才能ないんじゃねーの?死んでる自覚はありそうだったけど。
「悟ー。こいつただの幽霊じゃねえか!?モブ的な!!」
〔ちっ。ガキ共めが。せっかく忘れてたのによぉ、死んでたって実感を思い出しちまったじゃねえか。……許さねえぇぇ!そーもそもっ、こんな星に居つこうとしたのが間違いなんだよぉっ!〕
「………………えっと、戦わないのか?怒ってるのに」
〔は?なんで科学者が戦うんだよバカかよ。ここではどうだか知らねえが、地球って星では科学者は研究したり色々書いたりすんだよ〕
「へー。地球にいたけど知らなかったな。悪の兵器とか作らないのか」
「発明はしねーのか!!?」
「悪のって……。発明はしなくはねえが、ほとんどが未完成か失敗に終わっちまった。俺の研究成果は使い捨てられたりだとか賭けに負けて譲ったりで地球には残ってねえけどぉ~〕
なんか楽しそうだ。機嫌が悪くなったり良くなったり、相当の情緒不安定さだなこいつ。とりあえず地球で活動してた科学者みたいだが、この星に来てるってことは瞑宰県民の可能性が高そうだ。ベリーベリー、うーん、なんか聞いたことあるような。
〔ところでそっちの殴りたい顔してるガキ、思い出したぜ。てめえさては天利んところのガキだな?天利と組んでなんとかっていう戦隊劇やってただろ?〕
「え!まさか天利の知り合いか!?」
〔はっ!奴はスポンサー様よぉ!天利がロケット開発を頼まなければ、誤作動かなにかによるロケット打ち上げもなく、宇宙で隕石に衝突することもなかった!ああでも石の呪いだとかが隕石を呼ぶから、やっぱり正安ぅー!てめーが元凶なんだよなぁーっ!」
「お、偶然だな!!俺たちの校長も正安って名前だぜ!!!」
んー?ロケットと隕石だって?あれ、これって。もしかして前にルソーが話してたロケットハイジャック事件と同じ事件なんじゃないのか?ていうか地球に隕石ってそのときくらいだもんな!そりゃ同じだ!そうだろボケ役!?
…………って、いないみたいだな。なんだよ、せっかく人がすげーつながりを見つけたのに。肝心なときに居ないんだから。
〔間違いねえなぁ!その正安だ〕
「うーん。あ、じゃあベリーが見たってのはボケ役か」
〔あん?なに言ってんだ?〕
「ん?ああいや別に」
ボケ役を知ってて俺を知らない感じかぁ。ボケ役いないし話がややこしくなりそうだな。今度ボケ役がいるときにでも説明してやろう。
〔ていうかさぁ。結局お前らは何の用があってここきたんだよ?俺の昔話なんざ聞きにきたってーのか?ええ?〕
「ああいや。あれ、なんだたっけ?」
「ビルの中が気になってな!!」
〔ああそう。このビル、地球と繋がってるみてえだからよー。他のビルもこの星以外につながってんじゃあねえかな〕
「「地球に!?」」
そ、そうだったのか。地球か。特星外って不老不死の効果外だからあんまり行く気しないなぁ。……今回の冒険はゆるーく行くつもりだったし、こんなもんでいいか。
「烈、地球まで行けば下手すると死ぬし、ここでゴールにするか?」
「おう!!なかなか朝の散歩みたいで楽しい冒険だったぜ!!」
〔なんだよ、地球を道連れに死んで俺に殴られねえの?〕
「いや、誰がやるかよ!なんの得があるんだ?」
〔け。やっぱり天利といた奴だし殴りてえのよぉ。正安ほどじゃあねえけどあいつも許しがてえ〕
ふーん、どうやら天利も相当怒りを買ってるようだ。まあ、自称ラスボスだし敵が増えるのは本望だろうが。なにやらかしたんだろう。
「あ、それじゃあ俺たち冒険終わったから帰るよ。朝飯食ってないし」
「またなベリーのおっさん!!!」
〔誰が二度とこんな星来るかよーっ!宇宙ごと死んでいやがれガキ共め!〕
あ、奥に行った。とりあえずあれだな。あんなに気性の荒れてる幽霊は初めてだ。あんなので本当にロケットとか作ったことあるのかー?今度ボケ役に聞いてみようっと。
というわけで、気持ち悪いビル内から脱出ー。ビルとビルの隙間から見た感じだとまだまだ日は上り坂だし、朝飯を食うのに丁度よさそうな時間だ。とはいえ特になんの準備もないけど。
「よーし。ビル踏破記念になんか奢ってやるぜ烈!俺は五百セルくらい使うからお前も五百セル以内で!」
「悟が奢るのか!?じゃあ二人でお菓子買ってゲームの賞品にしようぜ!!」
「え、俺は朝食買うから無理」
「じゃ、じゃあ俺が奢ってもらえる五百セル分のお菓子で!!」
「よし乗った!」
勇者社のワープ装置を使うついでにそこで買っていくとするか。さー、帰ろう。散策しただけって感じだけど新発見だったし。なんていうか本当にビルの内部って外見とは違うんだな。あれだけのビルが全部オフィスだなんて、おかしいと思ってたんだ。うん。
「あ、いたいた。お二人ともビルは壊してませんかー?ビル管理者から相談されたのですけど」
「あれ、あんたは社長秘書の」
几骨さんじゃないか。勇者社で社長秘書をやってる。うわ、やべ、せっかくの新発見を読まれてしまう!この人って心を読む特殊能力だし!
「「って、あれ?」」
「え?……あの、どうかしましたか。胸なんか、って、私のスーツを気にしているようですが」
「「スーツ着てるぅー!!?」」
「ええ?え?まあ、そう、ですね?」
そ、そんなまさか特星にスーツを着てる奴がいたなんて!そういえば前から着てたけど、よくよく考えたら心読めるし、あの魅異の社長秘書だし、やたらまじめっぽいし、年齢不詳だし、怪しく光る眼鏡をかけている!他に類を見ないほどとてつもなく怪しい!
「あのー、えっと、お二人とも。とりあえず年齢は二十歳で公開情報なんですよ。勇者社でも特星本部でもプロフィールが見れますのでそちらを見ていただければ誤解は」
「でもスーツを着ているんだ!きっと年齢詐称だー!嘘情報だー!」
「わー!わー!!わー!!!」
「解けそうもありませんね。そんな公のプロフィールで嘘情報だなんてほとんど……、こほん。仕方ありません。スーツに偏見を持っているようですし、ここは」
「烈!スーツの陰謀を解いたら賞品のお菓子全部だ!」
「乗ったぁ!!!」
「逃げましょう。それでは失礼します」
「「待てスーツ人!」」
ビルの内部にスーツの秘密。些細な発見だったがどっちも気づけば大きな謎を秘めている!今日のスーツ人捕獲が俺たちの謎解きの第二歩目になるだろうぜ!