一話 パニックチック年明け(雑魚べー編)
@雑魚べー視点@
うむむむむ、寂しいですよぉっ!もう、この屋敷に来てからずっと皆別部屋じゃないですかー。一緒の部屋で寝てもいいじゃないですかー。うぅ、神社にいた頃が懐かしい。
「と、しょげていても仕方ありませんねぇ。出会い、再会、どっちでもいいから女子小学生を探しますよぉっ!」
「おっと、雑魚べー見ーっけた!」
「おわ、悟さん!」
び、びっくりしたー。しかし見つかってしまいましたか。いや、別に隠れてるわけじゃありませんけどねぇ。私になにか用でもあるんですかね?
「えっと、何か用ですか?」
「いや、特に用はない。用はないが、出会った奴らを叩きのめそうと思ってな!」
「ええー?それはまたどうして?」
「襲撃事件を企んでる奴がいるんだ。さあ、黙って倒されろ!ハエ叩きアタック!」
うおっと、危ない危ない。な、何だかよくわかりませんが倒しちゃってよさそうですねぇ。本気でいきますよぉっ!
「必殺、熱刀雨ですよぉっ!」
「そんなの当たるか!雷之ヒットシューズ!」
「はい?おっと!」
く、靴飛ばしとはかなり予想外でした。ふふふ、しかし所詮は靴!空中でも避けるのはたやすいことですねぇ!
「そんな奇策くらいで回避は遅れませんよぉっ!必殺、ジャンピングキック!」
「あぶね!主人公パンチ!」
「させません!琴刀ブーメラン!」
「ぶっ!」
「いきますよぉっ!ジャンピングキィーっク!」
「ぎゃあー!」
ふっ、決まりましたよぉっ!……それにしても、いつもより随分と弱いですねぇ。そもそもジャンピングキック一発で倒れるような人じゃないはずですが。
「うううぅ、連戦の疲れがー。今日は三人抜きか」
「今日は、ってことは毎日勝負してるのですか?そりゃまあ疲れますよ。何かあったんですか?」
「いや、女子小学生の襲撃事件に備えてちょっと」
「なんですって!?」
女子小学生の襲撃事件!ま、まさか悟さんは女子小学生の方々を守るために特訓を!?こ、これは私が動かないわけにはいきませんねぇ!
「それで犯人には目星がついてますかねぇ?」
「ああ。この近くにある神社にいる女子小学生が黒幕っぽい」
「なんと、女子小学生が黒幕ですか!うむむ、ちょっと見てみたい気も。ああいえ、ダメですよぉっ!襲撃なんて認めませんよぉっ!」
「それもあれだぞ。殺人事件の真似事でやってるみたいだ」
な、なぜ?同じ女子小学生をなぜ襲撃するのでしょうかねぇ?しかも殺人の真似だなんて!……お屋敷で殺人の真似。やはり恋愛事情?あ、ありえますよぉっ!
きっと純粋な女の子が彼氏を取られたのでしょう。そして全ての女子小学生を気絶させれば、彼氏は自分との恋愛をせざるを得なくなる!か、完璧なシナリオですよぉっ!非の打ち所がありません!あ、でもそれだと女子小学生の子が悪みたいですねぇ。現実的に考えてそれはありえません。……となると、女子小学生の子には年齢のお高い悪霊が取り憑いているのですねぇ!
「わかりました!その黒幕の子は私がどうにかしてみせますよぉっ!」
「そうか?あ、それなら明かりなしで行ったほうがいいぞ。あの女子小学生は暗さに弱い。弱いお前でも勝てる!明かりを持たずにこの世界の神社に向かうんだ!」
暗さ弱いのですか。暗いと悪霊が活発に動きそうですよねぇ。なるほど、悪霊に操られてる間は本気が出せないというわけですねぇっ!つまり、明かりなしで倒せば黒幕の子を救えるということ!よーし、さっそく向かいますよぉっ!
「ところでお前って女子小学生とかを平気で攻撃してるよな?好きなのに攻撃するのはどうなんだ?」
「え?あの、いや、本気で戦いたがってる子にだけですし。同意の上です!」
情報集めも兼ねて軽く戦いたいですね、女子小学生の誰かと。……うーん。あっちこっちから女子小学生の気配がしますねぇ。いやぁ、どこへ入ろうか迷ってしまいます!とりあえず知らない気配のところにいきましょうか。
[こんこんこん]
「誰?死ね」
「は?うわぁっと!」
な、なんですかこの子!?急に光線銃撃つなんて危なっかしいじゃありませんか!ひえー、あと少し反応が遅かったら当たってましたよぉっ!
「え、えっとですねぇ。私は雑魚べーです。私は女子小学生の味方であって怪しい者ではありませんよ。なのでその銃をこっちに向けないでくれませんかね」
「そうなの?でも死ね」
「いや、死にませんけど」
あ、でも光線銃っぽいのは下ろしてくれましたね。んー、なにかこの子からは他の子とは違う感じがしているような。小学生オーラは間違いなく出ていますけどねぇ。
「用はなに?死ね」
「あ、口調かなにかなんですねぇ。私はちょっと人探しをしているんですよ。女子小学生を襲いそうな人を探しているんですが、心当たりありませんか?」
「ああ、知ってるよ。きっと私のご主人様。まあ死ね」
「え?犯人見つかるの早過ぎません?と、とりあえずその人のことを教えてくださいよぉっ!」
「嫌だ。死ね。ぐるぐるアロー」
「おっと!あ、危ないですねぇ」
この子、銃の他に弓も使うんですか!もしかしたら遠距離武器全般が使えるのかも知れません!油断できませんよぉっ!……でもどうして戦う流れに!?
「でも、まあいいでしょう!熱刀波ですよぉっ!」
「む。少し危なかった。びゅーんアローで死ね」
「いたぁ!く、速い矢ですねぇ」
さっきのドリルは威力重視、こっちは速度重視って感じですかね。うーん、遠距離はいつもながら分が悪そうです。
「ならこれです!琴刀ブーメラン!逝刀ブーメラン!」
「……避けれた。さあ死ね。ん?あれ?」
「上ですよぉっ!ジャンピングキック!」
「いたーい。すっごい死ねぇ」
あれ、直撃したのに予想より効いてなさそうですねぇ。あ、いや、しかめっ面してますね。態度に出さないだけでしょうか?
「あれ?立てない。なんか死ね。……起こしてー。そして死ねぇ」
「あ、もしかして腰が抜けましたか?はい、どうぞ」
「ありがとー。そこそこに死ね。って、わあ。なんか浮いてる?」
「うわぁ!浮いてます!あ、あなた浮けるんですか!?」
た、大変です!スカートが!スカートの中が丸見えですよぉっ!ふぁあぁっ!ナイスぱんちーら!あ、横向きましたねぇ。し、しかしどうしましょう。他の人たちが見る前に降ろさなければなりません。あの子のパンツ情報が広がる前に!とりあえず自分で降りれないのでしょうか?
「超楽しい。程よく死ね」
「ちょ、ちょっとあなたー!パンツ!パンツ見えてますよぉっ!」
「私はタンシュク。覚えた?胸に刻んで死ねー」
「それよりここ廊下ですから!人が来たら見えちゃいますよぉっ!」
「あら。見せるために浮かせたんじゃなかったの?」
ああ、もう!いきなり見つかってますし!って、うげぇ!な!せ、セーナさん!?ど、どうしてこの人がこんなところに!
「セーナさん!なんであなたが特星に居るんですか!」
「あ、おかえりご主人様。知り合い?楽しく死ね」
ええええ!タンシュクさんのご主人様なんですか!?セーナさんが!?そ、そんなバカな!この人が女子小学生相手にまともな人付き合いをするなんて!あ、ありえませんよぉっ!
「ただいま。やたらご機嫌そうねぇ。ああ、こいつは私の弟よ。えーっと、なんだっけなー。雑魚マネキン?雑魚ぞうきん?そんな感じの名前だったような気がするわぁ。落ちぶれたわね」
「雑魚べーです!セーナさん、あなたが小学生を連れてるなんてどういうことですか!?ま、まさか女子小学生に手を出してるんじゃ?」
「ふふふふ。そう、その反応はあれね。一番ベストな反応ね。タンシュク、ちょっと私は用ができたわ。ちょっと場所を移すから、その辺で忍者ごっこでもしてて」
「わかった。快適に死ねぃ」
うううぅ。セーナさんのことです、きっとろくなことを考えていないでしょうね。気を抜かずに移動するとしましょう。
「ふっふふふふ。はははは。もうすぐ日が暮れそうだわ。前ならばもう子供達とのデートの時刻。そう、戯れるだけのデート。手が出せないのがこの上なく心苦しい時間だったでしょうね」
「いや、とっくに真っ暗ですよ。ここは闇の世界でずっと暗いみたいですから。……暗いからお屋敷に戻りませんか?」
「うるさい。……雑魚まねっ、いや雑魚べー。あなたは今でも女子小学生を愛しているかしら?」
うむむ、当然私は愛してます。ただ、セーナさん基準での愛するとは多分違いますよねぇ。この人の場合は心身ともに支配するのが前提でしょうし。
「間違いなく愛してますよぉっ!あなたの基準に当てはまるかは別ですが!」
「そう。私も愛していたわ。世間体や一般常識なんてものともせず、世界が敵に回ろうが打ち倒す覚悟でねぇ。ただ!この私の魂に掛けられた呪い!これだけはどうにもならなかったわ!これのせいで毎日が苦痛だった!」
「ああ、呪いは解けてませんでしたか。それは本当によかったですねぇ」
「ふん、まあ今となってはどうでもいいことよ。……そう、もう女子小学生なんてどうでもいい!私の心を満たすのは人間でも生き物でもない!だから私を愛するに相応しい、愛する資格を持つロボットを作り上げたわっ!」
「ま、まさか!タンシュクさんがそのロボットですか!?話の流れ的に!」
「ふふふふ、やっと気付いたようね。その通りよ」
いや、それはおかしいです!だってタンシュクさんからは本物の女子小学生のオーラが出てましたよぉっ!あの子がロボットだなんてそんなはずは!……うー、で、でもロボットなら、さっきタンシュクさんが浮いたことを説明できてしまいます。私の発達しすぎた技術力は、今では触れた機械を浮遊要塞に変えるほどになっていますからねぇ。タンシュクさんの手を掴んだせいで、彼女は浮かんでしまったのでしょう。……自爆しないか心配です。
「あなたも感じたでしょう?女子小学生の気配を!完全手作りのタンシュクから!機械には私の思いが通じる!あの子がいれば女子小学生なんて必要ないのよぉっ!そのうち、タンシュクとの愛を成し遂げて見せるわ!」
「は、はぁ。ええと、それにはタンシュクさんは同意しているんですかねぇ?」
「あら、あらあらぁ?ロボットとの恋愛に同意がいるとでも?」
「いや、まあ。本当に心を持たないロボットなら別にいいんですけどね?どうにも女子小学生オーラが気になるというか。いつの間にか心が宿ってそうというか」
「けっ!現実を見ない大馬鹿者ね!……確かにそこについては私もわからない。ただ!手作りなのは紛れもなく事実!機械でできてるのも紛れもなく事実!機械に心は通じた!でも、だからといって女子小学生ということにはならない!あなたに、あなたなんかにねぇ!私の愛を邪魔される筋合いはないわよぉっ!」
ひえぇ、おっかないです!おっかないですよぉっ!た、確かにそりゃそうですけど。機械への愛なら邪魔する必要はありませんけど。本当に全てプログラムだけで動いてるなら文句はないですけど。ううううぅ、でも、あのタンシュクさんがただのロボットだなんて信じられませんよぉっ!
「セーナさん!ええとぉ、あれです!あのですねぇ、タンシュクさんに手を出すのはしばらく待ってください!」
「嫌よ。あれは私のもの。どう接しようが私の勝手。それともなに?惚れてるの?」
「それはまあ、凄く可愛いですし激惚れですけど!そういうことじゃなくてですねぇ!」
「ふっふっふっふ!あははははは!それはいいわっ!ええ、それはそうでしょうねぇ!あなたも女子小学生には手が出せない身!そんな中、女子小学生そのものなロボットに出会ったんだから!そうなるのも無理はない!いいわいいわ、私と勝負してもし勝てたら、タンシュクへの求愛をしばらく後に引き伸ばしてあげる!その間に奪うなり気を惹くなり好きにすればいい!タンシュクは間違いなく私の元を離れないだろうけどねぇ!」
ほ、ほぇー。なんか勝手に勘違いして話が進んでいますねぇ。まあ、タンシュクさんのことを知る期間ができるのはいいことです!絶対に負けませんよぉっ!
「いきますよぉっ!カムトラップ!」
これで私の周りにカムが設置されましたし、とりあえず攻撃しにくくなったはずです。
「そんなもので身を守った気になっているの?私にとってはその程度の罠、守りのうちに入らないわよぉっ!」
「熱刀波です!」
「熱いっ!や、やってくれるじゃない」
昔から油断しすぎなんですよねぇ、この人。口喧嘩では勝てたことありませんけど。これは意外と余裕で倒せるかもしれませんねぇ!
「でも、私の実力がわかるのは今からよ!軟弱なあなたはこのフィールドに耐えられない!危険領域、小さなホロビの中心地!」
「ま、周りが炎に!?」
「ふふふふふ、驚くのも無理はないわ!この技は周囲を炎で滅ぼす技!このフィールドが展開している限り!あなたに安息の時間はないのよ!」
[どかああぁん!]
「きゃあああぁっ!ぐ、げほっ!こ、このように!炎の飛来物がフィールド内を赤く燃やし尽くすっ!この場では、私以外は危険に身を晒しているも同然!」
「ジャンピングキックですよぉっ!」
「私には通じないわよ!安全領域、ムテキのブラックホールシェルター!」
[がきぃーん!]
ぐ、防がれましたか!全方向に壁を張ってるみたいですねぇ!
「あぁはっは!そんなキックが通るわけがないでしょ!このシェルターは完全無敵!ブラックホールに投げ込まれても、中の私にはなんの影響もない!さあ、その場所でじわじわと疲れ果てて倒れなさい!危険な炎に飲まれるのよぉっ!」
「物理には強そうですねぇ。でもこれは多分通ります!熱刀雨!」
「ん?またさっきのビーム!?きゃああぁ!熱いって!で、でもこんな攻撃をいつまでも受け続ける私じゃない!そう、回避手段は用意してあるのよぉっ!熱い!安全圏、脱出用シュンカン移動!」
……む、中から声が聞こえなくなりましたねぇ。周りにも、うーん、居そうにありません。もしかして凄く遠くに瞬間移動したんじゃ?
「上よぉっ!一度見逃したが最後!必殺の一撃で決めてやるわぁ!」
[どかあぁっ!]
あ、落ちてきました。どうやら上空に移動したようですねぇ。どうみても安全圏とはいえなさそうですが。
「あのー、大丈夫ですか?そろそろ降参したほうがいいと思いますが」
「ぐ、うふふふ!この程度!この程度で私が倒れると思ったら大間違いよぉっ!私の、この溢れ出る愛への欲求がある限り!私が破れることはありえないわ!私を倒すことは」
[どがああぁん!]
「きゃあぁっ!な、なんで飛来物が私にばっかりー!?もう無理!ぐふぅ!」
あ、周りの炎が消えましたねぇ。気絶しましたか。今回は自滅技が多かったから勝てたものの、無難な技を使われてたら危なかったかもしれません。
「う、うぅ。ふ、復活!」
「うわ!復活早いですねぇ。……足がふらついてますけど大丈夫ですか?」
「触れないで。大丈夫、私なら余裕よ。大したことはない。この程度はなんともないわ。まるで効かなかったし、全然平気。……と、ところでなにか用かしら?」
「ほとんど自滅してましたけど、どんな特殊能力だったんですか?」
「……ふ、私の特殊能力は危険と安全を操る能力。非質系だけど、大技は自分にも被害が出る諸刃の剣よ。ま、今回は新技のテストも兼ねての勝負だったわ!結果は負けた!でも技のテストとしては大成功よ!……それに私はちょっと寝不足で気絶したにすぎない!雑魚べー、あなたは運がよかったのよ!」
ど、どうやら元気そうですねぇ。もう一戦とか言われる前にさっさと退却したいところです。
「えーと、では私が勝ったので、タンシュクさんには手を出さないで下さい。女子小学生としての心が宿ってるかもしれないので」
「約束は守るわ。どの道、まだ微調整とかするつもりだったからね。語尾とか」
そういえば、タンシュクさんは死ねってやたらに言ってましたよねぇ。どうしてあんな語尾にしたんでしょう?セーナさんにも言ってましたし。
「あの、なんであんな語尾なんですか?私は死ねって何度も言われましたけど」
「え?当然可愛いからよ。ちょっと反抗的なくらいが丁度いいのよねぇ。従わせる楽しみも増えるし」
「…………いい年してなに言ってるんですか」
「ああ?なに?もう一戦やりたいの?まだ超危険技とかあるけど」
「け、結構ですよぉっ!」
「けっ!二十台前半をいい年とか笑えるジョークね!いい年ってのは修士号を取るような年齢のことをいうのよ!大体、論文なんてものがなければ私だって」
ああ、始まりましたよ、もう。なんで私が愚痴に付き合わなくちゃならないんですかねぇ!……仕方ありません、適当な考え事でもして聞き流しましょう。
セーナさんの愚痴で大分時間をロスしましたよぉっ!ああもう、できれば二度と会わないようにしたいです。まったく。
「あ、そういえば神社の子を助けるって予定でしたねぇ」
うむむむむ、今からお屋敷に戻るのも二度手間ですよねぇ。少女達からの情報集めはもうやめておきますか。せっかく外に出たんですし、このまま神社に向かいましょう。
「それになんでしょう。女子小学生のオーラが近くから出ているような。……そこの木の上のあなた!あなたのことですよぉっ!」
「う、よくわかったわね!」
ああ、やっぱり居ましたか。気配を隠してたのか、なんだか少しわかりにくかったですねぇ。って、あれ?この気配は身に覚えがありますね。
「私を見つけたことは褒めてあげるわ。私は逸衣 刺間。くノ一をやってるのよ」
「え、ええぇ?えっと、あなたはマメ カーテンレースさんじゃないんですか?確かお屋敷への案内をしてましたよねぇ?声は違いますけど」
「うげ!な、なんのことかしら?ほら、この顔を見なさいよ!全然違うわよ!」
「あ、いえ、あの時顔は見えませんでした。ていうか、今も見えませんよ」
お屋敷の近くなら明かりで顔も見えるでしょうが、ここは少し離れてますからねぇ。前の案内も確か、お屋敷が見える辺りまでの案内でしたし。
「し、しまった!変装ばれを警戒したのが裏目に出たわ!」
「どうして警戒なんかしたんですか?少なくとも声は別人みたいですのに」
「うう、だってぇ。化粧とか初めてだったし、顔の変装には自信がなかったのよぉ~」
「いや、むしろ顔の変装が一番大切なんじゃありませんかねぇ?」
「私は岩とか木とかが専門なのー!」
ああ、なるほど。確かにくノ一って姿を隠すための変装をしそうなイメージですねぇ。うーん、初のお化粧ですか。少し見てみたかったですよぉっ!
「って、取り乱したわね。そう、案内人をしてたのは私よ。まあ単なる雇われだから、マメ様の目的とかはよく知らないんだけどね」
「単なる雇われなのに様付けなんですねぇ」
「有料オプションよ。他にも知ったかぶりをするオプションとかあるから、私に依頼があるときは言ってね。……さて、正体がばれたことをマメ様に知られるとまずいのよね。減給されちゃうわ。だからあなたをマメ様のところへは行かせない!投擲、憑依遠殺手裏剣!」
「おっと!当たりませんねぇ!」
ふっふっふ、暗くて見えにくいですが何とか避けれます!って、あれ?な、なんだか服が引っ張られますねぇ?
「かかったわね!それは接着剤付きよ!武器罠、感覚消失式電撃!」
[ばちばちばちぃ!]
「ぎええぇっ!だ、脱出ですよぉっ!」
「ち、服を脱いで逃げたようね。前の男みたいにはいかないか」
こ、こんなの逃げるに決まってますよ!ひえぇ、まだ全身が痺れてます!服の上からでも凄い威力ですよぉっ!
「だけど、まだまだ数はあるわ!投擲、憑依遠殺手裏剣!」
「うぅ、体に!でも、裸の状態であんな電気なんか受けてられません!ジャンピングキーック!」
「ああ!スイッチが!くぅ!」
く、もう少しで当たったんですが!暗すぎです!……あれ?か、体に糸みたいなのが巻き付いてますよぉっ!これだと武器が使えません!
「く、この手裏剣は相性が悪いわね。なら、これでどうかしら?」
「え、き、消えた!?」
ど、どこにいったんでしょう?さっきまでシルエットは見えていたはずなのに、今はまったく姿が見えません!気配も動き回ってます!
「案内前に言ったはずよ!私の能力は闇雲に隠れる能力だってね!」
「地味に厄介な能力ですねぇ!」
「もう私を捉えることはできない!漆黒、黒念刻波刀波!」
あちちち!げほげほ!く、当たったところから煙が出てますね。確か前も使ってましたが、前より煙が強いです!げほげほっ!
「終わりよ!暗殺、真悪根絶一刀飛来斬!」
「上に気配!?く!必殺、ジャンピングアターック!」
は、反射的に飛んでしまいましたが、きっと刺間さんは武器での技!分が悪いですよぉっ!でもこれまで神酒さんに斬られまくった私なら!きっとなんとかなるはずです!
[ぴっ。ばちばちばちばちぃ!]
「きゃあぁっ!」
「ぎゃあああああぁっ!電気がぁっ!痺れますよぉっ!」
ひええぇ!あ、お、収まりました!って、わー!落ちますよぉっ!
[どかぁっ!どさっ!]
うぐぐぐぐ、じ、地面で強く体を打ってしまいましたよぉ。って、おおぉっ!し、刺間さんの顔が近い!あ、いや、でも私の顔の上に電気のスイッチが!
「あいたた、こ、降参よ。いや、まいったわ」
「し、刺間さん!あの、電気スイッチがあるのでなんとかしてください!」
「ふぁああぁー。あー、ごめん。眠いから私は部屋に戻るわね。えっと、なんだっけ?そう、私たちの目的をばらすわけにはいけないわ!……よし」
「さっきなにも知らないって言ってたじゃありませんか。あとスイッチかこの紐のどちらかをどうにかしてくださいよぉっ!」
「ああ、ばれてたっけ?知ったかぶりは有料オプションなのよ。じゃあまたねー。あー、眠い。……あ、電気ショックの充電はもう切れてると思うわ」
「え?……あ、本当ですねぇ」
これなら電気ショックを気にせずに紐を解けそうですねぇ!
うーん、どうしましょう。悪霊に関する手がかりがないまま神社についてしまいました。こんな状態で少女を助けることができるのでしょうかねぇ?
「あ、見つけました!やはりマメさんでしたか!」
「うふふふ、見つけただなんて。わざわざ探して下さったのかしら?……ええ、私がマメ カーテンレースですわ。あなたはこのパーティを止めにきたのかしら?」
……今、話しているのはマメさんでしょうか?それとも悪霊でしょうか?うーむ、小学生オーラは出ているようですけどねぇ。悪霊が喋るときにも出るものなんでしょうか?っていうか、パーティって襲撃事件のことですよね?きっと。
「ええっと、一応確認しておきたいのですが、パーティってなんのことですか?」
「あら、知らないでここに?もう、仕方ありませんわねぇ。……私は知っていますのよ。えっと、確かあなたが呪いとかそんなので死なないことを。ついでに女子小学生の方々に性欲を向けると消えてしまうことも」
うぅ、な、なぜそのことを?私自身、現象が呪いだと知ったのは最近なんですが。確か教えてくれたのは御衣さんでしたか。……あ、でもセーナさんも知ってるような口ぶりでしたねぇ。意外と有名なんでしょうかねぇ?
「ええっと?それがパーティとなにか関係が?」
「まあまあ、順を追って説明いたしますわ。それで、恐らく特殊能力なしではあまり戦えないようですわね」
「まあ、そうですねぇ」
私の実力は、やられる度に強くなる能力の影響を受けているでしょうからね。多分、能力がなければ余裕で負けると思います。
「しかし特殊能力だけでは限界がありますのよ。あなたの特殊能力は十分に強いのだから、それを上手く活用できる能力を身につけてはどう?」
「結構頑張ってますけどねぇ」
「ふふふ、そうかしら?この神社内は特殊能力が使えませんのよ、私以外は。……さて、ここまでの話に神社の性質。パーティがなにを指すのか、おおよそ見当が付くでしょう?」
つ、つまりこのフィールド内では圧倒的にマメさんが有利ってことですか。マメさんは特殊能力で戦うことができ、他の人はそれができないわけですからねぇ。……やはり悪霊?いや、修行みたいなことを言ってましたからねぇ。どうでしょうか?
「……ふっふっふ!実はですね、私もマメさんについてあることを知っているのですよ!」
「あら、何のことでしょうか?私は検討も付きませんわー」
「それはですねぇ、マメさんを裏で操る者がここにいるってことですよぉっ!」
ぶ、ぶっちゃけなんの根拠もありません!でもこれだけ自信満々に言えば通るはずです!勝手に自供するに決まってますよぉっ!そして、本物のマメさんであっても、私が恥をかくだけで済むのです!実質デメリットはありません!
「……惜しいですわ。本当に惜しいですわね。ふふふふ、私が操られていることに気付いたのは見事ですわ!しかし残念、その操り主はここに居ませんのよ」
「ええ!?も、もしかして操り人形のような感じですか?」
「ええ。まさしくそのような感じですわね。まあ、ある程度は自由ですけれども。やるべきことはやらされてしまうのですわ」
むー、完全に想定外の出来事ですよぉっ!悪霊だからてっきり乗り移るものとばかり思ってました!でも、操り人形みたいな操られかたではどうしようもありません!
「わ、私は!私はどうすればいいんですか!?マメさんとは戦いたくありませんよぉっ!」
「あら、怖気づきましたの?でもあなたの道は一つしかありませんわ。氷造、コールドドーム!」
うわ、周りがなにかに!多分、技名的に氷で覆われましたよぉっ!これではお屋敷に戻ることができません!閉じ込められました!
「正体を知った私を逃がさないつもりですか!?もしかして操られてるんじゃ!」
「うふふ、これは私の本心ですわ。でも今はちょっと武器がありませんの。だから、真実に気付いたその実力を見込んで!特殊能力でお相手いたしますわ!質系の氷を操る能力、そして非質系の道を示す能力によって散りなさい!氷器、コールドクリスタル!」
「いたたた!」
うぐぅ、凄く冷たいです!暗くて寒くてしかも滑りますよぉっ!あ、よく見たら足元まで凍ってますね。
「ああ、そうそう。暗闇に隠れる能力、あれを使ってたのは私ではありませんのよ」
「知ってますよ!あいたた!」
……ええい、このまま負けても悪霊の思うつぼです!とりあえず倒しますよぉっ!
「こんな氷のつぶてくらい防げますよ!手裏剣洋服ガード!」
[きぃんきぃん]
ふふふ、刺間さんとの戦闘で生まれたこの手裏剣付きの服!盾としては一流ですねぇ!……ただ、氷のせいで冷えてきました。ううううぅ。
「ふむ、暗いですわねー。道しるべ、ステップポジションマーク!」
「このまま倒します!ジャンピングキックですよぉっ!」
[つるっ、ずがががが!」
いたたたたぁ!こ、氷で滑って地面に突っ込みましたよぉ。なんかいつもより痛いような。って、あれ?私の周りが少し明るいですねぇ。
「って、あなたどうして服を着ていませんの!?」
「いやまあ、服がこんな状態になっちゃいましてねぇ」
「おっと。あら?なにか包んでありますわね?」
[ぴっ。ばちばちぃ!]
「うぐぐぐ!ぐ、くぅ!わ、罠でしたか!やってくれますわね!」
「あぁっ!あの、いえ、すみません!違うんです!今のは違うんですよぉっ!」
ああもう、私のバカ!つい反射的に渡してしまいましたよぉっ!だ、大丈夫ですかねぇ?充電切れだったから油断していました。……あ、いや、充電切れは体に付いてたほうですね。
「あの、ところでこの私の周りの明かりは?」
「あなたの歩いたところに付く目印ですわっ!さあ、覚悟なさい!攻略、ビクトリティロード!」
「うぅ、ちょっと怖いですよぉ」
一体どんな技を使うのでしょうか?攻略って言ってますからやっぱり私の倒しかた?うむむむ、悪霊の倒し方がわかれば楽なんですが。
「ビクトリティロードは凄いですわよー。相手に楽に勝つ方法を一つ知ることができますの」
「あなたを操ってる人に使えばどうなります?」
「大したことはわからないと思いますわよ。……ええっと、この人を倒すには甘えて蒸発させる?や、やってられませんわ!」
わ、私としては是非やってほしいですけどねぇ。きっとあれでしょう。恥ずかしがり屋さんなんでしょうねぇ。
「裸男に甘えるくらいなら普通に倒しますわよ!氷器、コールドナイフ!」
「うわととと!熱刀波ですよぉっ!」
「おっと!あなたよく私の位置がわかりますわね!それそれ!」
うぐっ!服を渡したから避けるしかありませんねぇ!く、氷のナイフなんて普段はどうってことはないはずですが!今回はなんだかやたらに疲れますよぉっ!た、多分私の能力が無効化されて体力が落ちてますね!これだと長期戦はまず勝てません!
「うう、このままだと不利です!それそれ!」
「あきらめるがいいですわ!それそれ!」
[ぴきぴきぴき、ぱりん!]
って、どこからか氷の割れる音が?私の心が砕ける音?いや、普通に周りから聞こえてきますよぉっ!
「って、ああ!あ、あなたの熱光線みたいな技で、ドームの壁が壊れ始めてますわ!」
「え?この氷ドームってそんなに薄い氷でできてるんですか?」
「え?あ、いえ、そのぉ。……だってこれだけ広い範囲なんですものー!はったりで逃げられないと思わせるしかありませんわぁ!」
[ばりんばりん!ばりぃーん!]
「もうすぐ天井が落ちてきますわ!氷造、コールドハウス!」
「ああ!ずるい!私も入れてくださいよぉっ」
[ばりばりばりーん!ひゅー]
わ、私ではこの子は救えませんでした!こうなったらお屋敷で事件を未然に防ぎます!そしてマメさんはもっと強い人に助けてもらいますよぉっ!
[がしゃああああああぁん!]