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変な星でツッコミ生活!?  作者: 神離人
本編:変な人たちの出会い その一
19/85

十七話 妹おかしさは小さなおかしさに動かされる

@悟視点@


茶色い葉と爽やかな天候、そして様々な欲望に駆られる秋の季節。でも、今年はきっと食欲の秋だと思わせる光景が目の前に広がっている。


「な、何だこれ?」


俺の目の前に広がってるのはお菓子の部屋だ。構造的には俺の部屋っぽいんだけどな。こんなカラフルなお菓子で作られてなかったぞ。


「何処も彼処もお菓子か。しかも洋菓子の甘そうなのだな」


せんべいでもあればまだ朝食っぽかったんだけどな。どうするべきか。お菓子をこんなに食べれる機会は滅多にない。食べるかなー。


[ばたあぁん!]


「悟ー!俺の服と部屋が大変なことになっちまったぁ!」


「ん?烈か。っくふぅ!な、何だその格好は!」


烈の奴、何か魔法少女っぽい服を着てるな。わははは!スカートが全然似合ってないぞ!……代償に元ドアらしきビスケットが粉砕したけどな。


「何だ、悟の服は案外変わらないんだな」


「案外?んん?げ、何だこの模様は!」


俺のコートの模様が可愛らしい感じに!まずい、コートが変だから体調不良になるかもしれない。今回の事件は休業するべきか?でも俺ほどの主人公が休むわけにもいかないか。


「そして俺はついさっき犯人を思い出した!特星乙女事件の犯人はお前だ、悟!」


と、特星乙女事件?この怪奇現象は特星中で起こってるのか?でも烈の言うことだから信頼できないなぁ。現に俺を犯人だと思ってるみたいだし。


「一応言っとくが、お前に思い出されるほど落ちぶれてないぞ」


「ちっちっ、甘いな!お前がどれだけ落ちぶれようと俺はお前の自白を忘れてないぜ!」


「自白?」


「そうだ!悟、お前は夢を操れると言って俺の夢を何度も台無しにしただろ!それが何よりの証拠だ!この悪夢のような状況もお前の特殊能力が原因だ!」


「惜しいがそれは俺じゃない!」


ボケ役の仕業だな!しかも怒りの矛先が俺に向いてる!…でも、烈の考えは確かに正しい気がする。特星を子供の夢を単純に表したようなこんな状況にするなんてセンス、ボケ役以外で持ってるやつはいないだろ!どうだボケ役!


〔俺?知らねーなぁ。俺が犯人って言うなら証拠でもあるのー?前に活躍した俺が今回も関わってる理由はー?〕


って、何かいつも以上にやる気がなさそうだな。まあいいや。それはさておき、烈の誤解を解いておかないと悪夢を見るたびに文句を言われそうだ。


「悟、ここに嘘と真実を見抜くイチゴがある!お前が犯人じゃないなら食ってみろ!」


何だあれ?見かけは唐辛子のようにしか見えない。でも今は特星中が変な状態だからその影響で唐辛子になったのかもしれないな。見た目が悪い。


「まあ、誤解が解けるならちょっと食ってやるよ。……辛っ!うおお、染みる!」


「よっしゃ!引っ掛かったな!やーい、バカ悟!それはトイレで自家栽培した苺型の唐辛子だ!一つ千セルの苺型高級唐辛子として売っているんだぞ!試食したんだから初めての客として買え!」


「す、水圧圧縮砲!ごくごく」


ふぇー!魔法弾作れてよかった。にしても、烈の嘘なんかに引っ掛かるとは!状況が状況とはいえこれ以上の屈辱もそうそうないぞ!ていうか、どこからどうみてもただの唐辛子だ!そもそもトイレで育てるんじゃねー!


〔それよりも、ツッコミ長い。落ち着けよ〕


川柳みたいに言うなよ。ってか、落ち着けるか!これは不当な言いがかりってやつだぞ!日ごろの行いの良い俺を疑うなんて!


「よくもやったな!」


「うっせ!お前だってたまに俺の寿司のわさびを増やしてるだろ!」


「ばれてたか!でも烈は俺のゲームデータ全部消しただろ!」


「あれは消して良いって言ってたぞ!」


「眠いときに聞くからだ!」


く、こいつと言い合っても不毛なレベルの争いになっちまう!いや、そもそも言い争う必要もない。駆け引きなら俺のほうが二乗は上。烈が五十歩なら俺は百歩!


〔二倍じゃねーか!〕


よーし、さっきの仕返しに心理的な隙を突いた攻撃をしてやる。俺は烈のように小道具を使わなくても高度な語りで心理的な隙を作れる!


「烈、あのユーフォーにお前好みの美女が乗ってるぞ!」


「な、何!んん、どこだ?」


「隙あり!油圧圧縮砲!」


って、銃がない!微妙な形のクッキーだ!まさか水鉄砲やエクサスターガンも別のものになってるのか!なら魔法弾を投げるまでだ!


「うおお!足元になんか降ってきた!まさか溶けたユーフォーか?」


「油だバカ!でもどうだ、これで身動き取れないだろ!」


ただ、投げたから俺の手が油まみれだけどな。まあいい!烈の行動は完璧に封じた!こいつは油があればまず転ぶような宿命!この時点で詰みは確定だな!


「ふふふ、完全に俺の勝ちだな!あ、この生クリーム超美味い」


「これじゃあ完全に動けない!しかも周りは油まみれでお菓子が食えない!悟、完全に俺の完敗だぜ」


「当然。じゃあ俺はもう行くけど最後に一つ教えておくぞ」


「どうした?」


「さっき舐めた生クリーム、半分以上は油だった!」


油物って最初は美味しいけど後から気分悪くなるんだよー。くそー、手が油だらけだったことを考慮しておくべきだったか!凄く気分が悪い!


「何!生クリームと油は意外と合うのか!よーし、この辺の油お菓子を食い散らかすぜ!」


やっぱりバカだ。こいつはきっと俺の二乗はバカに違いない。俺は五十歩なら烈は百歩だ!


〔バカだなー〕


烈の半分くらいだけどな!


〔バカ、だなー〕




町中を移動できないってわけでもないな。お菓子だらけで原型がほとんどないけど。


「ふふふふふ、よくぞきた!待ちわびたぞ、悟」


「うん?敵か?」


猫耳に尻尾がある女の子か。ただ服装がさっきの烈と同じく美少女魔法少女だ。戦いなれた俺には分かるぞ。こいつは戦闘が弱いタイプの小学生だな!


「私の名はゲージ。この世で一番気高い猫であり今は魔法少女だ。悟、私はお前のテストの成績から正安に貸して消されたゲームデータの数まで何でもお見通しであるぞ」


正安って校長のことか?主人公である俺について詳しく知りたいというのは分かるが、何で校長の名前なんて知ってるんだ?


〔あー、思い出した。確か校長室に住み着いてる猫の名前がスペシャルキャットゲージだったな。機嫌を損ねると別空間に閉じ込められるとか〕


ああ、それなら知ってるぞ!学校の七不思議になってる猫だな!……あれ?


「お前って確か雄だよな」


「え!あ、あー!……うぅ」


おお、不自然なほど動揺してる。人を欺くと噂の猫としてあの動揺はわざとらしすぎるな。猫かどうかも怪しいレベルだ。


だが、女の子に変装して俺を騙せた部分は猫としてはいい感じだ。烈のは騙す気がないかと思えるほど酷い変装だったからな。


〔ツッコミ役の中で猫と烈はどんなイメージなんだ?〕


「あー、そのー、私はさ、猫であるぞ。猫に日本語が話せるわけないだろう?そもそも魔法少女なんて私は知らぬぞ。雄の私が女子小学生の持ち込んだ漫画を読むとでも思うか?それに私の服は寺で貰ったものだぞ?それがこの事件でたまたま魔法少女の服となったに過ぎぬぞ」


もしかして嘘は苦手なのか?頭悪そうな印象はあったがあまりにも雑だな。ただ、服が可愛くなったのは仕方ないかもしれないな。


「…………最後のは保障しますよ。キールに服を貰っていたようです」


「あれ、記紀弥?どうしてここに?」


第一形態での登場とは珍しい。何の用だろう?


「何だお主?私はいま大事な話をしておるのだが」


「………………こんにちは。キールから服を借りたそうですね。ただ、その服はキールの服にしては小さい気がするのですが、どういうことでしょうか?」


「あー。あれは私には大きすぎたからな。だから特別に小さな魔法少女っぽい服と交換してやったのだ。もしかしてお主のか?ならば感謝するがよい!ただで大きい服が手に入ったのだぞ!」


これはもしかしてあれか?ゲージは記紀弥の服を着ていったってパターンか?しばらく後にゲージがどんな様子か見に行くか。


〔いや、記紀弥の表情からして神酒のだな。俺らが着く頃にはどっかに飛ばされてるだろ〕


「……既に気付いた人も居るようですが、私ではなく神酒という子の服です。そして今からゲージを生贄に捧げないと私はお菓子が食べれません」


「ええ!?待て!私は生贄にされるようなことはしておらぬぞ!」


「………………大丈夫です。猫がノーパン主義なのと、私達より身長が小さいおかげでそれほど痛い目を見ることはない気がします。もしパンツまで盗んでいたらもっと大変だったでしょうね」


「ノーパン?パンツ?と、とにかく逃」


あ、消えた。まあ、記紀弥たちより小さいから手加減するだろ。でも神酒のを取ったのは運が悪いとしか言いようがないな。ただの雑魚幽霊のなら無事に帰れただろうに。




この辺りは所々お菓子じゃないな。この先にある山は普通な感じだったから、敵かお菓子を元に戻せる奴がいるんだろう。


「よく来ましたね、悟さん」


「うわ、羽双!」


急に現れるから驚いてしまった。どうやらこの辺りにある和菓子を取って食ってるようだな。手に持ってる饅頭、五十個はあるんじゃないか?


「実は悟さんを倒すように頼まれていますが、僕は和菓子集めに忙しいので不戦勝にしてあげます。で、負けたので教えますが今回の黒幕はこの山の洞穴の中です。用件はそれだけなので僕はもう行きますね」


あ、居なくなった。よくわからんけど眼中にないみたいな感じだったな。主人公様をスルーとはなんて奴だ!勝負を恐れて逃げたに違いない!


〔おー、じゃあ今度羽双と合ったら勝負するか?〕


いやいや、それとこれとは話が別だ。





お、この洞穴か。この辺りは普通の土でできてるな。この周辺のお菓子はちょっと食いたくない。土とか混じってそうだ。


「ふん、来たようだな」


「お、今度は天利か」


どうやら敵の黒幕は俺の知り合いや知り合いの関係者を雇ってるらしいな。しかも強そうな奴らばっかり雇いやがって!


「悟、お前との決着を着けれると聞いて私はここに来た。だが、私は気付いてしまった!」


「え、何に?」


「私のこのポジションはラスボスではない!」


そりゃ当然だろ。雇われてる立場なんて雑魚か強い用心棒ポジション。せめてラスボスに指示をしてれば黒幕としての可能性もあるだろうけど。


「そういうわけで興ざめだから私は帰る。命拾いしたな!」


うーん、何か納得がいかない。まあ俺は主人公だし、自称ラスボスのこだわりなんかどうでもいいけど。何か違和感があるなぁ。




洞窟は行き止まりのようだな。敵も居ないし途中分かれ道もなかったから、きっと黒幕が現れて倒す流れだな!


〔んん?あ、俺の担当場所じゃん。予想通りえらく早いな〕


って、ボケ役!お前やっぱり敵側じゃないか!どうやら下っ端らしいから烈の予想ははずれてたか。まあいいさ、倒してやるからかかってこい!あるいは素直に道を開けてもらおうか!


〔俺なら戦えるが、今なら雑魚べーより早く黒幕に会えるかもしれないな〕


え、あいつ来てるのか?それにその言い方だと俺は雑魚べーの奴より遅れてるのか!


〔そもそも黒幕はお前の相手をする気はないっぽい。ただ、そいつと同じ位の実力者が居てな。そいつがお前とどうしても戦いたいってさ〕


ふん、そんな事情は俺の知ったこっちゃあない。ただ、主人公が乗り込んでるっていうのに黒幕が戦わずにいるってのは気に食わないな!さあ、任せたぞボケ役!


〔いってらっしゃーい〕




ここが敵の本拠地か。空には黒い雲、目の前には黒いメタリックな城、周りは暗く茂る不気味な草花。いかにも黒幕が潜んでそうな世界だな。


〔あー、違う違う。そこはまだ黒幕の居ないエリアだ。そこに居る奴が雑魚べーを黒幕まで送る予定なんだよ。お前の最後の相手も本来そいつ〕


〔お、ようやく来たわね!私が最後の番人よ!〕


「って、キールじゃないか」


こいつが最後の番人だと?何でだ?実力で言えば羽双の方がこのエリア担当でいいはず。もしかしてキールには隠された実力でもあるんだろうか。まあないだろう。


「最後の番人ってことはさすがに戦うだろ?」


〔えー。だって幽霊が居る方が雰囲気出るって理由でここに居るだけだしー。仕事をサボるために悟撃退の依頼を引き受けたのに、ここで依頼通りに戦ったら本末転倒じゃない〕


なんだろう。ここまで全部戦うことなく進んできてしまっているぞ。まさか俺の主人公としての素質が消えてるのか?……い、いや!そんなことがあるわけがない!


「その、あれだ。お前に依頼した奴はちゃんと俺と戦うよな?」


〔さあ?ただ、悟に巻けたら城の最上階で待ってるって言っておけだってさ。それと聞いてた時間より来るのが早いから、雑魚べーと途中で会うかもしれないわね〕


「雑魚べーとは戦ったのか?」


〔いや、私の担当はあんただからさっき普通に通したわよ〕


主人公がこの俺である以上、雑魚べーなんかに黒幕を倒されてたまるか!




「やっと追いついたぞ、雑魚べー!」


超どでかい赤じゅうたんの敷かれた部屋の隅、じゅうたんを体に巻いて姿は見えないが、あのバカは間違いなく雑魚ベーだ!


「この声は悟さん!ちょっと助けてください!じゅうたんを体に巻いて転がっていたら出られなくなったんですよぉっ!」


「あー、まあ気持ちは分かるが実際やる気にはならないな。少なくとも敵の本拠地では。……いや、そんなことはどうでもいい!さあ雑魚べー、俺と勝負だ!」


「えー。私、連戦で凄く疲れてるんですが。それに悟さんは今回の件に関係ないんじゃ?」


うおおおおぉっ!やっぱり俺をのけ者にして話を進めるつもりだったのか!主人公なのに!おのれ、あっちは敵とちゃんと戦ってるようだし、これじゃあ俺が手加減されてたみたいだ!でも疲れてるのは好都合。ふふふ、余裕で倒して格の違いを見せ付けてやろう!


「さあ、正々堂々と勝負だ!今すぐ倒してやる!」


「何か不機嫌ですねぇ。じゃ、悟さんのストレス解消に付き合ってあげましょうかねぇ!必殺、ジャンピングキックですよぉっ!」


「迎撃してやる!水圧圧縮砲!って、ああ!」


そういえば銃を持ってない!こ、これはまずい!とりあえず弾で防ぐ!


[ざば、どかあぁっ!]


「いって!」


水圧圧縮砲と雑魚べーの纏ってるじゅうたんでだいぶダメージは抑えたみたいだが、それでも結構痛い。そもそもどうやって狙いを定めてるんだかよくわからん!まさかあれで見えてるのか?


「あれ、水圧圧縮砲の割には普通に水を蹴ったような感覚ですねぇ」


あ、見えてないのか。それにしてもどうしたものかねぇ。こっちから言い出した以上、勝負を断りにくい。そもそも雑魚べー相手に下手にでるのは気に食わない!……武器持ってないのを良いことに積年の恨みを晴らされるかもしれないし、何とか誤魔化して勝負をやめさせよう。


「ちょっとストップ!よく考えたら今は雑魚べーと戦うのは不公平だった!」


「え、不公平?どういうことですか?」


「それがさ、今回の敵はエクサバーストすら効かない敵だったんだ。ほら、パラレルワールドってやつ?あれの三つくらい上の次元を支配してる奴らしい。それで一時的にだが、今の俺は凄い人にそれに対抗できる程強くしてもらってるってわけだ。俺は俺の力で雑魚べーに勝ちたい!だから今回は引き分けにしてやる!」


って、敵の設定に無理があったかも。でも今回俺の倒した奴はヒントをわざわざ残してたが、敵に関するヒントはなかったはず。雑魚べーのルートも同く敵の情報がないって可能性は高い!


「……ふふふふ、なるほど!私には全てが分かりましたよぉっ!」


「あ、やっぱり無理があったか」


「そうですねぇ!私相手に悟さんに化けようなんて百年早いですよぉっ!」


…………んー?俺に化ける?何だろう、物凄く勘違いをされているような気がする。


「いいですか?悟さんはですねぇ、そんな力を手に入れたら間違いなく自分の力だと言いますよぉっ!しかも相手に勝てる状況なら喜んで戦う賢い人です!勝てるのに引き分けにしろなんて言いません!不戦勝を要求するはずですよぉっ!」


ああー、そりゃそうだな。よく俺の性格を分かってるじゃないか。……こんな時に限って。


〔でもそれ抜きにしても設定で気付かれるんじゃないかなぁ〕


「ふふふふ、パラレルやら次元やらはよく分かりませんが、そんな程度の実力は雨双さんのセクシーポーズの足元にも及ばないでしょうねぇ!」


〔ダメだ!雑魚べーは頭が悪い!〕


そうじゃないんだよ、ボケ役君。これは日ごろの行いが良いからこそ得られる信用だ。つまりは俺が凄すぎるということなのだよ!


〔いや、雑魚べーは前に雨双のセクシーポーズを見てるんだ。でもその時はパラレルワールド全消滅止まりの威力だった。つまり雑魚べーは雨双の実力を買い被っている!〕


え、本当にそんなことがあったのか?……俺の知らない間に凄い事が起きてたんだなー。


「で、雑魚べーは俺の引き分けを受け入れるつもりはないんだな?」


「ええ。そして負けるつもりもありません。……よいしょっと」


[ばきぃ!かちゃかちゃ]


おう?何か雑魚べーの足元辺りで音が聞こえるな。足元を壊したような音とかちゃかちゃしてる音?一体何をやってるんだ?


「よーし、完了ですよぉっ!ふふ、私はこの城を自爆可能な浮遊要塞に改造しました!」


「ええ?は、早いな。十秒ちょっとだぞ」


[ごごごごごご!]


うおおおぉっ!本当に浮遊感が!これはいつもの爆発に巻き込まれるパターン!ど、どうするべきだ?とりあえず雑魚べーを倒すべきか?


「先手必勝ですよぉっ!とおぅ!」


回転しながら跳んだようだが、いつもとちょっと違う!


「後ろに引き気味だからジャンピングキックじゃないだろ!」


「その通り!逝刀と琴刀でいきますよぉっ!必殺、熱刀雨!」


雑魚べーっていうかじゅうたんからその辺に光線が!でもこっちにはあまり飛んでこないから避けれる!


「うわととと。く、やられっぱなしでいられるか!くらえ、雷之ヒットシューズ!」


[ばしぃ!]


近づいて履いてる靴を飛ばしてみたものの、じゅうたんのせいで当たってもダメージはなさそうだ。やっぱり武器がないとどうしようもない!


「声の位置的に近づいてしまったようですねぇ!必殺、ジャンピングキックですよぉっ!」


「わ、やばい!」


[どかあぁっ!]


「ぐおぉっ!」


いってぇっ!うおぉっ!これはいつも以上に不味い!半分自滅みたいだからって理由もあるが普通に立てない!


〔まったく備えなしに受ければそうなるだろうな。カウンターってやつだ。ジャンピングキックは高威力だし仕方ないさ〕


「あ、どうやら勝っちゃったようですねぇ。本物かとちょっと思いましたが思い過ごしでしたか」


「いてて。うぅ、まさか雑魚べーに負けるとは」


まだ道中で他のやつに負けた方がマシだったか。でも黒幕に出会えずに敗れるとは思わなかった。くぅ、主人公なのに!


「さて、勝ったとはいえ油断はできませんねぇ。ぼんやりとして分かりづらいですが、近くに女子小学生の気配を感じます」


「む、気付かれちゃったか。道に迷わなければ勝負の結果は違ってたんだけどねぇ。あ、いや、今からでも変えれるけどね」


うわ、扉をすり抜けて現れたぞ。小学生っぽいというよりただの女子小学生だ!ランドセルを背負ってる小学生なんて久々に見た気がする。レアだな。


〔俺を雇ったのはその小学生だ〕


「始めましてー。私の名前はらい きゅう。今回黒幕の小学五年生だよ。……本当は雑魚べーさんをさっさと送って、お兄ちゃんと感動の対決をする予定だったんだけどね」


雷之?ってことは俺の妹か!そういえばランドセルで気付かなかったが緑のコートを着てるな。へー、俺が特星に引っ越してから生まれたのか?地球に居た頃は生まれてすらなかったはずだが。


〔忘れてるのか?随分昔に俺からツッコミ役に伝えたぞ。恋愛ゲームで妹キャラ攻略中に〕


そんなタイミングで本気にするわけねーだろ!


〔だって皇神が妹を欲しがるタイミングで言えって頼んだもん。俺は要望に答えたまでだ!〕


「なぜかお兄ちゃんが来ちゃってるんだよねぇ。それだけでも予定外なのに私と戦わずに負けるなんて、やっぱりお兄ちゃんは凄い!」


「何で負けたのに俺は褒められてるんだよ」


「いやいや。お兄ちゃんの相手には時間を稼いで負けるように頼んであったからね。お兄ちゃんが私の意図を見抜いて、わざわざ戦闘を避ける技を使ったとしか思えないね!お兄ちゃんにかかってる技が何よりの証拠!」


え、俺の体にそんな技がかかってるのか?そんな技は使った覚えも喰らった覚えもないんだが。……でも戦闘した記憶はないなぁ。


「あれ、自覚なし?おかしいなぁ。私の思い過ごしかな?」


〔きっとボケ役のことだ。お前の物理学を無視する能力のことまで見抜いた上で、心を読ませないように工夫しているんだろう〕


「おー、さすがはお兄ちゃん」


「え?ああ、希求さんも黒悟さんの声が聞こえる人のようですねぇ。あれ、悟さんは偽物だから偽黒悟さん?」


「ふーんだ。予想外で面白かったけどお兄ちゃんを倒したことは許さないよ!黒悟ちゃんの声どころかやろうと思えば心さえ読める!私の物理学を無視する能力は何か結構色々できるからねぇ!」


物理学を無視する能力?名前的に補助系の技だろうが、補助系で色々できるってのは珍しいな。っていうか心読めた時点で几骨さんとかより上なんじゃないか?


「おおー、お兄ちゃんが心のポーカーフェイスで知らないフリしてるー。って、そうじゃなくて。計画外だけど腹いせに雑魚べーさんには倒れてもらうよ!」


「はっはっは!いいでしょう!この私が相手をしますよぉっ!……あ!」


「うん?……え?自爆機能?」


[どかああああああぁん!]


うわああああぁっ!びっくりした!って、外?え、放り出されたのか?うおおおおおぉ!落ちるー!


〔落ち着け。爆風で出口側に吹き飛んだだけだ。雑魚ベーが自爆装置でも仕掛けたんだろ。希求の反応的に〕


そうそう!部屋の真ん中から急に光が出たんだよ!ちょうど希求の居た辺り!ああ、城が遠ざかっていくー!そもそもここは特星なのか?どうなんだよー!


〔特星の範囲内にある別空間だからまあ特星だな〕


ボケ役何とかしてー!


〔ちょっと待て。……あー、残り二人は城の壁に埋まって気絶してるな。俺が手助けしなくても引き分け以上だからいいじゃん〕


[どかあぁっ!ずがががががが!]


「ぎゃああああぁっ!」




「はぁー、はぁー」


な、何とか気絶せずに城まで着いたぞ。この城が墜落してるってことは中の二人は埋まってるのか。希求っぽい足が見えるからとりあえず引っこ抜くか。


「そりゃあっ!」


[がらがらぁっ!]


「あいたぁ!」


お、引き抜いた勢いで目を覚ましたか。もうちょっと丁寧に引っこ抜くべきだったか?武器があれば瓦礫を吹っ飛ばせたんだが。


「ああ、もう。完全にやられたなぁ。まさか能力を使う前に自爆装置が作動するなんて。お兄ちゃんには完敗だねぇ」


「ええっと、よく分からんけど俺の勝ちでいいんだな?」


「そうそう。それでどうするの?家に送ることもできるから帰れるけど」


えーと、俺は本来希求の相手をして終わりの予定なんだっけ?今日は強敵との死闘が多かったし、疲れたから帰ろうかな。もう一人の黒幕なんて余裕だけど雑魚べーの相手だからなー。


〔もう一人も倒すだって!でもちょんと口で言えよツッコミ役ー!心を読むなんてそんなに使わないんだからさ!〕


「え?倒す?」


「お、頑張るねぇ。じゃあ送るよー」




……ボケ役!お前のせいで送られちまったじゃないか!武器もないし結構疲れてるのにどうしてくれるんだ!あー、状況は最悪だー!敵に負けて主人公歴に傷がつくに決まってるよー!


〔さっき負けたからいいじゃん。それより空が綺麗だなぁ〕


まあ、さっきの場所は薄暗かったからな。ていうか一面草原か。特星エリアのどっかなんじゃないのか?さっきの城の方がよっぽど雰囲気出てたぞ。


〔お前がそこに行くのは想定外なんだって。そこは瞑宰京の現代エリアにある特星本部!しかも本部長の部屋だ!黒幕の家はここから少し遠いけどな〕


部屋に草原や空があって、更に家まで建ててるのか。本部長の部屋に飛ばされたってことは相手もそいつなんだろ。どんな奴なんだ?そんなに偉いのか?


〔お、察しがいいな。希求の話では実力はそこそこらしい。ただ特星で一番トップの役職に就いている。実質的な偉さも特星で二、三番くらいだ〕


「そうなんですよ」


お、ついに現れたか黒幕!希求がペアを組んでるって時点で予想はしてたが、やっぱり小学生のようだな。ランドセルは背負ってないけど。


「よくぞ来て下さいましたね。私はしん 御衣みいです。ご存知かは分かりませんが、勇者社の社長をしている神離 魅異が姉です」


え、魅異の妹だって!もしかして凄く強い相手なんじゃなかろうか。……ボケ役が強引に俺をここに送らせた理由が分かったぞ。名前が同じだから魅異と間違えたな。


〔そんなわけあるか。先に言っておくが名前の字は魅異と違うからな。ちなみにさっき強引にここに来させたのは今回の事件でわからんことがあるからだ〕


「希求は悟さんを買い被っていますからねー。兄が全て見抜いたと考えて何も話さなかったようですし、無理もないことです。そうですねぇ、じゃあハプニングの一部についてだけ話しましょうか」


「えー、全部話せばいいだろ」


「貴方の相手は希求でしょうに。希求の目的は貴方と感動的な勝負をすることですよ。もう効いたでしょう?希求に勝ったからって私の目的を話す気はありません」


融通の利かない奴だなぁ。本当に共犯なのかちょっと疑いたくなるよ。


〔まあまあ。それでハプニングって?〕


「雑魚べーさんの方は順調だったんですけどね。悟さんの方は凄かったですよ。寮がお菓子になってました」


「え、特星中がお菓子になったんだろ?」


〔外見だけだって。部屋の中までお菓子にすると不便だろ?〕


確かに不便だったな。朝食はお菓子しか食えないし、武器がお菓子になって戦闘どころじゃなかったし。


「更に悟さんの武器が無くなっていたらしいですね。服も変なデザインだったとか。まあ服は元々あれですけど」


「失敬な!」


〔そーだそーだ!〕


ぐ、でもよく考えたら途中に居た相手は普通だった!烈とゲージの服は魔法少女だったが、趣味で着ていたんだろうなぁ。でも武器は完全に事件が原因でお菓子になってると思ってたぜ。


〔よーく考えてみろ。希求の目的はお前との勝負。武器をお菓子にする理由はないだろ〕


それもそうか。なら希求に勝った時点でおかしいと気付くべきだったってことだな。


「その後は悟さんが戦闘回避技の効果で戦闘できなくなったとか。私的にはこれが一番痛手でしたねー。雑魚べーさんに追いつきましたし」


「そんな技使った記憶がないんだが」


〔変なもの食うから。今回会った奴で戦闘できない悟と戦えるのは俺と天利と雑魚べーと希求とお前。あと、戦闘できなくなる前に会った烈の六人だったな〕


ああ、烈に騙されて食った唐辛子か!いや、苺か?そういえばトイレで自家栽培したとか言ってたな!そうか、家の中のものがお菓子になってるなら唐辛子のままなのはおかしいのか!


〔そうそう。だからその時点で気付かないお前を馬鹿にしてたぞ〕


「少なくともボケ役はバカにしてたな」


〔正解!バーカ!〕


「って、貴方や天利さんは戦えるじゃないですか!…………もう、依頼を受けておいて何サボってるんですか」


〔武器のないツッコミ役に負けるのは難しそうだから不戦勝にしたまでだ。他意はあったけど、負けた上でちゃんと情報は出したぜ。希求も満足してたからいいじゃん〕


え、俺って武器無いとそんなに弱いと思われてんの?確かに雑魚べーには負けたけど烈や希求には勝っただろ!それにほとんどの勝負は俺の勝ちだった!


〔不戦勝は素手での勝負にカウントしねーよ!それに希求戦は実質、雑魚ベー対希求だっただろ。希求が勘違いしてただけで〕


……そもそも本当に戦えない状態なのか?全部俺が実力で不戦勝に持ってったんじゃないのか?雑魚べーとは戦えたわけだし。


「雑魚べーさんはかなり特殊なパターンなんですよ。因縁が強すぎるというか。普通は特殊能力とかで戦闘回避を無効化したり、影響を受けなかったりするしかありません」


〔雑魚とはエンカウントしない状態だが、イベント戦は避けれないみたいな感じだ。ゲームで例えるならな〕


イベント船!主人公ならば避けては通れない道と言えるな。相手をもっと選びたくはあるが。


「最後は悟さんがここへ来たことですが、悟さんは何か用はありますか?強制的に送られたようでしたが」


「今回の事件の目的が気になってたがまあいいや。それよりも烈だ!どうにもあいつにしてはやることが賢すぎる気がする!」


烈自体はどうせ間違いなくしょーもない目的で動いてるだろうが、共犯者はどうだか分かったものじゃないな。武器がなくなってたから、エクサスターガンが目的って可能性もある。ま、奪われてもどうってことないが。


「とりあえず、私がお菓子にした所は元に戻しておきました。用が済んだなら帰って下さいねー」


「戦うのかどうか聞かないのか?」


「そっちに戦う理由があってもこっちにはないですねぇ。エクサスターガンでも持ってたら話は別でしたけど。それでは私は雑魚べーさんに会いに行くので失礼しまーす」


〔あ、おい、ツッコミ役には聞かないのか?〕


あ、消えた。なんていうか、今回の本部長側の目的はさっぱりだったな。でも烈の怪しさに気付けるような賢い奴なら何か知ってそうだなー。最後に何か言って無視されてたし。


〔俺みたいな凄い能力持ってる奴を増やしたいのさ〕


ああそう。さっさと俺を部屋に送ってくれ。


〔はーい〕




…………破れた穴からは元に戻った景色が見える。外を見れば特星が元に戻ったことが実感できる。なのに、何で俺の部屋はお菓子だらけなんだよぉっ!


〔自分がお菓子に変えた所は直したって言ってただろ。今、お菓子のままの部分は烈一味の仕業だな〕


しかもドッキリ大成功の文字が壁に!……唐辛子味のチョコだ!


〔ツッコミ役、一杯喰わされたのにまだ懲りてないのか〕


んーむ。あ、喰わされたと言えば、唐辛子食ったのって烈と戦う前だったよな。まさかあいつとも因縁みたいなのが強いのか?だとしたら因縁ある奴らとは絶因縁しようと思う。断因縁でもいいけど。


〔なんだそりゃ。うーん、言っちゃうけど唐辛子じゃなくてクリームだな〕


ああ。そういえば食ったような気がするな、クリーム。烈が食ったのか今はぐちゃぐちゃだけど。そうかそうか、あれなら確かに烈と戦った後だな!


「はぁ、何か疲れた。今日は寝るか」


〔まだ昼だぞ。お菓子の部屋だし〕


明日に備えて多く睡眠をとらないといけないからな!……明日は絶対に戦って倒す!戦闘回避とか関係なく、戦闘扱いにならないように単に撃って吹き飛ばす!………………ぐー、ぐー。


〔怖いなー。技の効果、見た感じ今夜には消えてそうだけど黙っておこう。……ぐーぐー〕

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