十六話 ファイナル・ラスト・ボスチック雷之
@悟視点@
お、ようやく光が収まってきたか。いったいどんな姿になってるんだ?
「ラスボスと主人公を両立する魔法少女。それこそが私、あまり少女・天利!」
「…主人公は俺だって」
「あ、ちなみにフルではあまり少女じゃない・天利!というんだぞ。私は大人だし」
全然何が言いたいのかはわからんが、俺からのダメージは残っているはずだ!それにあまりMPのないあまり少女の天利なんて、体力が余りある俺にとってはあまり怖くない!きっと余裕!
「この状態の私は物語を操れない。だがMPを使わずに魔法少女技を使える。ついでに第二形態だから体力は全回復してるぞ」
「なんだって!?じゃあ俺の方が不利だろ!」
「ま、ただの人であれば勝ち目はない」
く、主人公であるならこの程度は超えてみせろってことか。よし。所詮は自称ラスボス兼自称主人公。本物との格の差を見せ付けてやろうか!
「喰らえ!空気圧圧縮法!」
「ふん。こんなものか。チョク・サンドア」
[ばちちぃっ!]
う、素手で受け止めたか。ちょっとはやるようだな。
「うーん、雷の魔法か」
「ふふふ。私の家系は雷之家。その苗字通り、雷の魔法が得意な家系だ。雨雲つながりで風と水も得意だがね」
「俺の家系でもあるんだよ、それ」
そういえば、俺が好んで使う技は水と風の魔法弾だな。もしかして雷の必殺技とか使えるんじゃないか?
「よし、さっそく新必殺技だ!電圧圧縮砲!」
「雷之の電気、そして私の電気は甘くない。エン・サンドア!」
俺同じくらいの威力か。でも俺のほうが圧倒的に賢い!技の威力が同じでも天才的戦略でどうにかできるはずだ!
「ニヤニヤして気持ち悪いところ悪いが、…私は強い」
「そうか?」
「当然!チョク・サンドア!」
いってぇ!後ろに回り込むところまでは見えた!でも速くて反応できねぇ!あーもう、鼻打った!
「いてて。木で顔を打ったじゃないか!」
「動けるだと?そのコート、電気を通さないのか。頭を狙うべきだったな」
「俺に顔から突っ込めって言いたいんだな」
それにしても殴られるとは思わなかったな。魔法少女なら魔法少女らしく遠距離勝負してけばいいのに。華やかさなんてありゃしない。にしてもだ。うーん、瞬間移動みたいなのはどうするかなぁ。動きは見えても反応する前に吹き飛ばされるし。俺の技に電圧圧縮砲より速い技は今はないんだよなー。
「その様子だと、私の超凄い超高速超移動が見えたようだな。だがお前に対抗手段は無い。チョク・ウォウツア!」
「く!」
水のパンチか!くそ、殴り返すにも既にいないし!
「…うう、ちょっと酔った」
あ、少し気分悪そう。超凄い超高速で超動けば、さすがに酔うらしいな。
「あらら。なら、早く退場したほうが良いよ?」
「大丈夫だ。たとえ酔っていても悟に負けることはない。…お前は!?」
「ファイヤーショット!」
[どかあああぁん!]
おおぉっ!なんか飛んできた石が爆発したぞ!それに今の声は小巻か!
「おーい!悟ー!」
「おお、小巻!」
木の上に居たのか。あ、でも服が違う。前はお姫様スタイルだったけど今は雨双みたいなスタイルだ。マント着けてるし。
「ぐ、くっ。どうして悟以外の人物がここに?」
ん?この様子だと主人公以外はいまだに来れないのか?魔法少女状態でも能力は続くのかな。…するともう雑魚ベーと記紀弥はこの勝負には出れないのか?
「ここは欲望丸出し物語の範囲内。私と会うことを望まなければここまでは来れない筈だぞ。…まさか私のラスボスオーラの虜になったのか?」
「私は悪役には興味ないよ。狙うは白馬のヒーロー悟だけ!」
「…なるほど。彼女候補だけに悟と会うことを望んでいたか。それなら悟がここに居るのだから、ここに着いても仕方ない。なら二人してかかってくるといい!」
あー、待てよー。俺は小巻に強くなれとか多分言ったような気がする。もし小巻が自分の実力を試す為に俺と会いたいってことなら天利を倒せても小巻にやられる!普段ならともかく疲れてる今だと苦戦は間違いない!
…ど、どうする?天利と小巻のどっちにやられても主人公としては情けない結果に終わるよな。主人公らしい言い訳はないか?
「小巻、俺は銃メインだから後衛の方が向いてるんだ。前衛は任せて良いか?」
「うん!悟には攻撃一つ通さないよ!アイスショット!」
「こんな小娘に私の相手が勤まるわけがないだろう!なんたって私が相手だ!エン・アイシュウ!」
おー、小巻の技のほうが威力が高いっぽい。って、げ!こっちの天利の流れ弾がこっちに!
「わ、ごめん!拡散水玉砲!」
うお、俺に当たる前に防いだか。……あの水玉って水圧圧縮砲くらいの威力があるよな。そこそこ広範囲なのに。す、少しはできるじゃないか。
「ほほー。今のは特殊能力じゃないようだな。私には遠く及ばないだろうが、まあまあの実力者ということか。ステータス・ペーパーが使えないのが悔やまれるな」
まあまあの実力者ねぇ。俺の目には小巻の実力の方が上に見えるけどな。きっと天利はあれだな。多分、自分を妄信するタイプだ。強がりとかじゃなくて、相手の実力を正確に判断した上で自分の実力が上だと思ってるっぽい。バカだなー。そもそも俺に勝てると思ってる時点で底が知れてるようなもんなのに。
「ならば私の必殺技を喰らわせてやろう!はああぁ!」
な、なんだ?凄い速度で走り回ってるようだが。
「必殺、タークル・アタクゥ!」
ぐぅ!み、見えたが避けられないか。今のは高速の体当たりだったな。
「くそぅ、痛いだろ!」
「う。流石に強いね。私も少し痛い。だけど捕らえたよ!」
お、よく見ると小巻が天利のマントを掴んでいるぞ!ふっふっふ、さすがの天利もマントを掴まれれば動けないようだな!これで俺たちは圧倒的に有利だ!
「何!私のマントを掴んだだと!?」
「逃がさないよ!圧縮水玉砲!」
「ぐあああぁっ!」
よっしゃ、ぶっ飛ばしたか!にしても凄いな。城壁を突き破って飛んでったぞ。……うむむ、俺の水圧圧縮砲より大きいし、どうみても強そうだ。
「やったー!悟も見てた!?私も戦術が少し上達してきたよ!」
「そうだな。そういえば小巻は何でここに?」
ここって確か、ここに居る奴に会いたくなければ来れないとか言ってたような。つまり俺か天利に用が会ったって事になる。ま、まさか俺と勝負するのか?
「悟に実力報告しようと思ったの。後は強そうな人を探してたんだよ。でも悟ほどじゃなかったね」
あー、うん。まあな。俺の実力と比べてもなー。自称ラスボスが、本物の主人公であるこの俺に敵うはずがない!
「ただいまー」
「早っ!しかも、何で家に帰るようなノリなんだ!?」
飛んで帰ってきたか。あ、でもふらふらしてるぞ。俺たちとの戦闘でかなり疲れたようだな。
「ああー、まさか負けるとは思わなかった。そこの子もなかなか強いな」
「ふふふ、私は悟に追いつくつもりだからね!」
余裕そうな笑みだな。で、でも俺は疲れてるからあれだ。今戦っても追いついたことにはならない!
「正直、お前が本物の悟とは分かってた。ステータス・ペーパーに描いてあったからな。だが、悟。その体はどうやら別人のらしいぞ」
「ん?あー、やっぱり。それで犯人に会いたいんだけどどうすれば良いんだ?」
こいつなら犯人のところまで連れてってくれるかもしれん。…お、変身を解いた。
「私が魔法少女になれるのは一日一回。物語ポイントは残り僅かだ。少なくとも今日は帰れないが、それでもいいか?」
「大丈夫大丈夫。俺は主人公だし」
それに小巻がいれば何もしなくても勝てるだろう。黒幕程度、俺が相手をするまでもないな!
「じゃあ送るぞ?悟は、一人で、数十秒後に、明日までの間、犯人の居る場所に、居続ける!」
「あれ、そんな能力の使い方なんだ?」
俺もそれは思った。技を使えばいいだけじゃないのか?
「ああ、私はこの条件を技名に封印しているんだ。だから私の技は魔法みたいなものだな。…最低でもこれ位の条件がないと不安定で使えないんだ。例えば、一人で、って部分。これがないとこの辺の物も対象に入ったりしてMPが大幅に足りなくなったりするんだ。ちなみに魔法少女時は自作技は使えない」
それは面倒そうだな。きっと今までの技も、家等で地味に条件を組み入れてたんだろう。自分があの特殊能力じゃなくて良かった。一人で、なんて文一つで効果が変化するなんて、扱いにくいだろ。
「一人でねぇ。…一人で?」
「お、もう時間だ。じゃあ頑張るがいい」
「頑張ってねー」
ま、待てよ。俺のダメージは結構な量。途中で天利と体力交換したが、それでも強い奴が相手だと厳しい!
「ちょっと待てぇ!」
というわけで来てしまった。お、おのれー!
……にしてもファンタジックなところだな。特星で言うなら、特星エリアに町がある感じか?でも、あれだな。空に映ってる魅異の顔がなによりも不気味だ。ていうか悪趣味。
「でも、これで犯人はハッキリしたな。こんな悪趣味な空間に居る奴は一人しかいない!」
〔その通り!この俺、黒悟ちゃんが住んでるんだ!〕
あ、ボケ役。なんでこいつ空から来たの?…おや、手には水鉄砲と竹の棒を持ってるな。竹は神離槍っぽいけど色合いが微妙に違うから偽物か?
「ちゃ、ちゃん?いや、それより俺の体を盗んだのはお前だろ!理由を話して体を返せば痛い目にあうだけで済むぞ!」
〔うーん、そうだなぁ。まず訂正しておくと、俺の体はお前の体じゃないのさ。お前の体はコートの神様であるこの俺、黒悟の体だけどな〕
へー、コートの神様なのか。いい趣味の神様がいたもんだな。
それにしても、黒悟の体は俺のじゃないだと?別に、あいつの体が誰の物でも構わないけど。それより俺の体はどこにあるんだ?
「仮にそれを信じるとしても、俺の体はどこにあるんだ?」
〔俺が教えるとでも?〕
「思ってない!最初から倒して聞きだすつもりだ!空気圧圧縮砲!」
どうせボケ役は倒さないと教えないだろうし、ボケ役相手なら疲れてても苦戦はしないだろ。それに普段の仕返しもしたかったところだ!
〔だろうなー。だが、それは不可能だ!水圧圧縮砲!〕
うげ、水圧圧縮砲だって!?魔法弾を操るのは俺の特殊能力のはず!どうしてボケ役があの技を!?
「ど、どういうことだ!?」
〔ふふふ、甘いなぁ。特星の神様はな、神様としての特殊能力が貰えるのさ!そして俺は魔法弾を操る力を選んだんだ!〕
ああ、なるほど。…でも技名は完全に俺のを真似してやがるな。
「でも、お前の水圧圧縮砲が俺の空気圧圧縮砲と同威力だぞ?弱いな」
〔うん?そういえばそうだ。おかしいな?夢を操る能力で、特殊能力としては最高威力にしてるはずだが〕
さり気なく強化してやがった!あ、でも確か天利によれば、俺の家系は雷関係が強いとか言ってたような。つまりそれらの技ならボケ役より俺の方が強いってことか?ふーん、ボケ役の体でも効果出てるんだな。
「まあ食らえ!水圧分裂砲!」
〔迎え撃つ!水圧分裂砲!〕
…あー。俺の技のほうが威力は勝ってるな。あいてっ!で、でもボケ役は全部避けてやがる!こっちはたまに撃ちもらしが当たるし、不利だなこりゃ!
〔どんなもんだ!更にいくぞ!幻影の麗しい魅異光線!〕
「え、上だと!?」
うわ!空から巨大光線がこっちに!だ、だが黒悟も巻き込まれる位置だぞ!
〔あの光線は五分でここに着弾する!それまでに俺を倒せなければ、お前は事実を知らずに夢オチとなるぞ!〕
「じゃあ倒れろ!ハエ叩かない・一撃!」
両手でしかも全力だ!これなら一撃で倒れるだろ!
[がきぃん!]
う、竹槍で防がれたか。いや、どっちかといえば竹棒か?
〔やるな。だがこの黒悟槍を使うのは今日が初だ。まだまだこれからだ!戦隊の円払い!〕
うお、横払いか!でも天利とかよりはぜんぜん遅いな!
「よっと、ハエ叩き上げ!そんでハエ叩かない・高速!」
〔余裕!戦隊扇風機!〕
ああ、防がれたか!くそ、防御だけは速いやつめ!
「く、大花火圧縮砲!」
〔おお?戦隊の弾突き!〕
早撃ちも防がれたか。うぅ、予定外にボケ役が強い。時間は残り数分くらい。倒せるか?
…そういえば、確か今日のボケ役はいつからか反応がなかったはず。俺が戦いに来ることに勘付いて、ここでスタンバイしてたんだろうけど。ふふふ、なら俺の新技を知らない可能性が高いかもな。
「それならこれだ!電圧圧縮砲!」
[で、電圧?なら俺も、電圧圧縮砲!]
お!あいつのは圧縮ってかただの電気じゃん!よし、いけ!
〔やば!くそー!〕
コートで防いだみたいだが残念!接近攻撃が本命だ!ようやく攻撃を当てれる!
「そりゃああああぁっ!」
〔おお!?〕
槍を盾にしてもきっと防げないぞ!このノリとネーミングなら竹くらいは砕けるはず!
「予想通りだ!竹折りの粗品!」
そらー!電圧圧縮砲ごと突き抜いてやる!まあ、突き抜けなくても電気が手に当たってダメージはあるけどな!
[ばききぃっ!]
ほ、本当に折れた!光る竹みたいで綺麗な技になったな!
〔何!そんな!〕
「ラスト!雷之家の伝統ハエ取り!」
……よし!倒したか!ふぅー、まあ、顔面に電圧圧縮砲は効くよな。多分、ハエ叩きで叩いた分だけ普通より痛いだろうし。
「よっしゃあぁ!って、げ!」
やべー!光線がだいぶ近くに迫ってる!あれだと数十秒くらいで激突するぞ!い、いや、俺はボケ役を倒したんだから大丈夫!
〔よ、よく勝てたな。も、もう、戻ってもいいぞ。後で聞きたいことを教えてやる〕
「いや、その、俺には帰る方法がないんだが」
〔……まあ、やられても教えてやるさ〕
ふふふ、ふざけるなこのボケ役!あんなのに当たったら痛いに決まってるだろ!
「うわあああああー!」
ボケ役め、覚えてろよぉ!
「う、んん?」
「…………おはようございます。一日経ちましたが早起きの時間ですね」
ああ、眠い。って、記紀弥?…んー、ここはあれか。神社だな。おー、雑魚ベーたちが露天風呂で遊んでるな。
〔ふあぁー。何だ、もう起きたのか〕
あれ、ボケ役。隣の部屋で寝てたのか。へー、夢の世界じゃないのに普通に現れるのか。
「今起きたとこだけど。ああ、何だっけ?えー、そう、それで何で俺の体を盗んだんだよ?」
〔うん?ああ。うーん、どうするか。何から話せばいいのやら〕
「…………まずは黒悟さんの存在とか」
黒悟の存在ねぇ。心底興味が沸かないな。
〔ふ、ではバカなツッコミ役に分かるように説明してやろう!〕
「何で上から目線なんだ?」
〔俺は神様だし。そう、俺は神なんだよ。お前が日本に居たとき、家の近くに神社があっただろ?あそこに祭られてたのが俺。生まれたときから神様だ〕
え、そうなの?ボケ役が?じゃあこいつは本物の神様だったのか?特星の職業だけじゃない感じの?…ありがたみがまるでないんだけど。
「そもそも家の近くの神社といえば、俺の親戚の誰かが趣味で建てたという話だった気がするが。本物だとして、そんな適当な場所に神様が住めるのか?」
〔さあ?日本では神社暮らし以外はしたことないし、知らん〕
種族の生態くらいは自覚した方が良いような。いや、神様には必要ないかもしれないけどさ。
「……恐らく、信仰さえあれば一応は大丈夫だと思います。ただ、神社などで存在アピールをしなければ、すぐに忘れ去られてしまうでしょう。そして信仰がなければ、恐らく消滅します。黒悟さんが初代悟ンジャーを始めたのも、無意識の内に生存本能が働いていたのかもしれません」
〔信仰なんかなくても、魅異が居れば生きていける〕
「一度消えてしまえ」
子供のころに賽銭を五円だったか入れたことあるんだぞ!くっそ、金の無駄遣いだったな!
「ていうか、お前は何の神様だ?特星ではコートの神様なんだろ?まさか同じ?」
〔今も昔も変わらない!そんな俺はコートの神様さ!〕
「地球でもコートの神様か!やばい、予想以上に大物じゃないか!」
あ、土下座してしまった!でも正真正銘本物のコート神だぞ!世界中のレアなコートとか全部持ってるに違いない!あるいはコートと婚姻関係にあるとか!
ううぅ、子供のころに五億円くらい賽銭箱に入れるべきだった!
「………あの悟さんが土下座ですか?黒悟さん、地球ではそんなに凄い神様だったんですね」
〔ふはははは!当然!雷之家で二世代もの間、信仰され続けてきたからな!地域信仰ってやつだ!〕
地域信仰ってもうちょい広範囲だと思う。ええと、家庭信仰あたりだ。多分。
〔俺が生まれたのは多分、ツッコミ役の爺さんが居た頃。俺が実体化して意識を持ったのが皇神の頃。恐らく爺さんの信仰力で神様になって、皇神の頃に実体化できたんだ〕
「どの位の差があったんです?」
〔ツッコミ役の爺さんが、コートへの信仰だけで百辺りとすると、皇神は、コートへの信仰、初代悟ンジャーへの信仰、俺自身への信仰、これらを合わせて十辺りだな〕
へー、コート以外でもいいんだな。にしても、皇神の信仰は低いな。爺さんの頃とは違って、初代悟ンジャーやボケ役で稼げるんだから百は超えろよ。
〔ちなみにツッコミ役は合計三十辺りだ〕
え、三十?なら、爺さんが恐ろしく高いのか?そもそも俺はコートに執着してないしなぁ。コート単体への信仰だけなら三倍どころの話じゃないかも。
〔で、俺はある日、悟ンジャーとして活動をしてたんだ。ええと、お前がエクサスターガンを手に入れた日のことだ〕
エクサスターガンかー。確か地球に住んでた頃、テレビ局の射的大会に優勝して貰ったんだったかな。
〔お前はその日にエクサスターガンを手に入れた。そして自分を撃って消滅したんだ〕
「なんだとぉ!?」
そ、そんなことがあったなんて!てか、死ぬだろ!特星内でさえあれを食らったら消滅するんだから!魅異がいないと死ぬ!
〔俺はお前を助けたかったが、信仰不足でお前の体は作れなかったんだ。仕方ないから、俺の体を子供時代の悟っぽくして、お前に貸してやったというわけだ。これが序章〕
「…………黒悟さん、もっと手短にお願いします。もぐもぐ。このペースでは、神酒のお菓子を食べ終わってしまいます。むぐむぐもぐもぐ」
お、饅頭じゃないか。俺も食おう。
「もぐもぐもぐ。ふんふん、その頃はボケ役の体だったわけか」
〔そう。ちなみに俺はしばらく霊っぽい感じだった。……えーと、手短にか。俺はその後に特殊能力を手に入れて、夢を操る力でツッコミ役風の体を作って、神の体より便利だから元に戻ってない。そんなところだ〕
うわ、本当に短いな!にしても、その話が本当なのか?確かに大会後から視力が落ちた気はしてたが。
「むぐむぐ。……神様の体より便利なんですか?その体」
〔もぐもぐもぐ。大きな違いはコートでさ。その体はコートがないと体調がおかしくなるんだよ。コートの神はコートが無いと無力なんだ〕
「もぐもぐむぐむぐ。だきゃら気分がわりゅくなんのは」
咏とかが言ってたやつだな。コートの神様故に体調不良が起こるわけか!
あ、飲み込めない。一気に食いすぎた!
〔むぐむぐ。でも、この悟風の体にも欠点はあるぞ!視力が良すぎて気分が悪くなるんだ!成長するにつれて落ちていったが、最初の頃は酷かった!〕
作り物の体でも成長するんだな。ってか、視力が落ちるような生活するなよ。
〔それでどうする?体を返して欲しいなら返すぞ。一兆セルで〕
「む、たぢゃえもへっほう。いわおからあれいううん」
あああ!饅頭が邪魔で喋れない!しかも詰め過ぎて吐き出せない!く、どうするべきか。
「もぐもぐもぐ。……ただでも結構。今の体で十分。と、言ってます」
お、ナイス!記紀弥はよくさっきので聞き取れるな。自分で聞いててもよくわからなかったのに。
〔お、そうなのか?よっしゃあ!このコート無しの体で毎日過ごせるぜ!〕
もうこの体の生活に慣れてるし、今更戻してもなれるのに時間掛かりそうだからな。てか、こいつコートの神様を辞めた方がいいんじゃないか?コート着るの嫌がってるし。
「記紀弥様ー、そこのバカは起きましたか?って、ああ!」
うわ、神酒が来た!浴衣だけどやっぱり刀を持ってる!こ、ここは菓子を食った言い訳をしないと!
「わ、私のお菓子が!まさか全部食べたのか!」
「ひ、ひはう!ふっはのはほいふは!」
「……神酒。犯人は明白です」
[そうそう。見ての通りだ]
あ、二人とも逃げやがった!ってか、やべー!食べた量が多すぎて喋れない!それにどうみても俺が食ってるみたいに見えてしまう!に、逃げないと!
「逃がすか!たあぁ!」
[ずばばばばぁーん!]
いてぇっ!あ!ぎゃあああぁっ!コートが!コートの後ろ側が切られて飛んでったー!
あ、き、気分が悪くなってきた。立ってられないぞ!
「どうやら観念したようだな。だが、お菓子の恨みは大きいぞ!覚悟しろ!」
ひえー!ボケ役、やっぱりその体返しやがれ!今だけでいいから!だ、誰か助けてくれー!ぎゃー!