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変な星でツッコミ生活!?  作者: 神離人
本編:変な人たちの出会い その一
14/85

十三話 魔法の雨紅茶

@悟視点@


四つの虹が四方向に見える今日この頃。寺を壊してから一日しか経っていないが、俺は手漕ぎボートを借りて四つの虹の中心付近に来ていた。


「…大丈夫だろうか、これ」


海上に浮かぶ一つの輪ゴム。俺でなければ普通は見つけることは難しいだろうが、問題はこれが入り口の可能性が高いということだ。中に草原らしき場所が見える。

だがこの輪ゴムを伸ばさなければこの中に入れない。もしかしたら輪ゴムが千切れて顔に当たるかもしれないのだ。


「ううん」


試しに伸ばしても普通程度にしか伸びない。俺がこの中に入るには無理やり伸ばさなければならない。


「く。ここで入る資格があるのか試すってわけか」


普通の人間ならば恐怖のあまりまず引き返すだろう。というか見つけることすらできないかもしれない。しかし俺は主人公!世界最大級の恐怖が相手でも怯むはずがない!

というわけで予備のコート二つを手袋代わりにして、もう一つの予備を顔に巻いてなんとか進入することに成功する。輪ゴムは切れなかった。

侵入した先には草原が広がり、その中心らしきところに洋風的な小屋が二つある。その小屋はどちらも小さい。


〔おお、もう出発してたのか。そこは裏ステージ専用の場所。ほとんどの構造がそっちと同じ裏ステージの中で、もっともオリジナリティあふれる場所だ〕


おおボケ役。さすが裏ステージに住んでるだけあって詳しいじゃないか。でもお前の部屋も相当俺の部屋と違った気がするぞ。

裏ステージ専用ってことはお前らは自由に行き来できるのか?


〔無理無理。そこは裏ステージの一部ではあるが、そこへ行く道は裏ステージにはない。おそらく特星本部からでも手出し不可能だ。ツッコミ役の入ってきた裏口を使うか、よっぽど特星的な変人であればまだ可能性はあるが〕


「その通り!しかしその場合においてもここに居る子の気分次第よ!まあ私は問答無用で入れるけどね!」


特星的な変人がなんなのかはよく判らない。だがこの場所に居る時点でおそらくはこの人のような人のことだろう。いつの間にか居たのは毎度お馴染みの印納さんだ。


「あら。今回は戦いに来たわけじゃないわよー。ただ悟が実力者ランキングで十位以内に入ってないって話だから笑いに来たのよ。ふふふふ、情けないわねー」


…物凄く腹立たしい。腹立たしいけどエクサバーストは昨日使ってしまったのでまだまだ使えない。あと本当にこの人の行動原理がわからない。


〔まあ、悟ンジャーブラックを名乗るなら最低十位以内くらいは必要だな〕


「黒悟も十位には入ってないわ」


〔嘘!?く、魅異へのアピールになると思ったのに!〕


元悟ンジャーブラックも似たり寄ったりってことか。まあ主人公は名誉なんか求めるものじゃないし、俺が十位に入らないのも誠実さ故に仕方がないことだ。


「まあ見下しにきたというのは半分は冗談よ。ただここの神様と会えばあなたは四人の特星の神と会ったことになる。特星の神様は四人だけ。全ての神様と会ったことになるのよ」


四人の神様ねぇ。アミュリーと姫卸、それにこれから会う神様。…三人じゃないか!まあ自己紹介が雑な奴も多いからな。


「まさか無意識のうちに倒したり、寝ぼけて倒したりしてしまったのか!?」


「あら鋭いじゃない!確かに自己紹介で相手は神だと言わなかったのよ!」


「あ、そっちですか」


てっきり独り言の方が合ってると思ってたんだが。それよりも印納さんは槍魔術を使える能力なのにどうして俺の考えが読めるんだ?槍魔術?というか槍魔術って何だ?

…考えが読めるってことはまさか、印納さんといた時に考えてた悪口もばれてる!?


「いやいや、私の悪口を考えた人とは一度も会ったことがないわよ?私のような繊細、天才、健在の三つがそろってる女に欠点など無いのよ。ちなみに考えを読めるのは才能」


「そうでした」


まあ魅異に続いて順位二位だからそのくらい不思議ではない。…ならその印納さんに続いて三位の神様も相当変人なのか?


「あ、ちなみに神様全員の正体が判っても何も特しないわよ。じゃあ私はその辺で日光浴してくるわー」


両手を伸ばしながら印納さんは草原を歩いていく。その後寝転がり、そのまま転がってどこかへいなくなる。この草原、今までの草原と違ってなんだか平和的な気がする。


「鋭いわあああぁー!」


「…突入するか」


片方の小屋の扉を開ける。中には洋風のベッドや真っ白な家具などの洋風的な内装だった。ただ、床が畳で部屋の真ん中にコタツがある。


「いらっしゃいー。あなたが噂の誰かさんね。アミュリーちゃんから話は聞かせてもらったわ!」


「…ん、小さい小学生だな。そう、俺こそが天才的主役で全特星民の憧れの雷之 悟だ!」


「うーん、私は憧れてないけどね。ふわああ」


なんだか眠そうな神様。絶好調のところを余裕勝ちする予定なのに、これじゃあ相手の不調で勝ったと思われてしまう!誰にかはわからないが!


「私は魔法使いのメニアリィ レインティ。あれ、おもてなしの果物がない」


「今、お前が食べてる蜜柑のことか?」


「うん。………わ、私が悪いのー?」


蜜柑を食べたことよりも主人公のもてなしが蜜柑だけってのが問題だな。初対面の相手にはフルーツの盛り合わせを出すのが実力者としては普通だろう。あと持ち帰り用も。


「ごめんね。少し寝不足だから眠くてつい」


「アミュリーと会ってたんだったな。でもアミュリーの帰りはそんなに遅くなかったぞ?」


寺を壊して数十分くらいにアミュリーたちは帰ったはず。まあそれ以前に神酒によって寺の柱に縛られてたから、少し判りにくかったが。


「あれれ。そういえばパーティで会わなかったね。もしかして凄い事件でも解決してたの?」


「ふふふ、その通り!空飛ぶ要塞に乗って、森を焼き払える敵と戦ったんだ!そして激闘の末に浮遊要塞の一撃で相手を怯ませ、要塞で特攻して相討ちとなった!」


「わー、なんだか凄そう!」


それはもう凄い戦いだった。特に勝負後の夜は皆が楽しそうにパーティをしている中、俺とアルテは終了間際まで参加させてもらえなかったからだ。しかも今日の朝、記紀弥にキャッシュカードを取られてしまった。どれだけの金額が修理費に使われるのかが心配だ。


「ところでここの隣にある小屋に凄いお宝とかはないのか?もしあるなら少しお土産に持っていきたいんだが」


「知りたい?ふふふ、そこの小屋には確かに私の大切な大切な宝物があるわ!」


大切をここまで強調しているということはよほど凄いお宝なのだろうか?魔法使いらしく、魔法が使える道具であれば是非欲しい。


「ええっと、でも、変態?」


「え、何で?女子専用の装備とかなのか?」


その場合は売るしか使い道がないことになる。というか変人はたまに言われるけど、変態扱いされるなんて初めてかもしれない。


「んーとねぇ、お釜?」


「釜?魔法使いの釜といえば、錬金釜のイメージだな。壺と鍋を合わせたようなやつ」


でも本当に金を作れるならこの子を弟子にしてやっても良い。そうすれば弟子料金で金塊一つとか作ってもらえるし、将来安泰な生活が送れる。


「そうそう。お風呂にも調理器具にもなるのよ。その釜」


「…汚いなあ」


「私は綺麗よー。それに釜はちゃんと魔法で洗ってるもん」


「料理は気分で味わうもんだけどな。俺なんか悪いことしないから、昨日の晩飯も美味しく食べれたぞ」


まあ神酒に呪われそうな視線を向けられたけどな。なんでも要塞と寺の崩壊に巻き込まれたとか。しかも昨日から現在進行中で瓦礫の撤去をしているらしい。


「んー。そういえば何か用かしら?変なコートだから入り口開けちゃったけど」


「変な魔法使いがいるから勝負しようと思ってな。魔法で」


「コスプレで?」


「魔法で!」


そんなにコートが珍しいか!確かに春くらいになるとコート着てる奴は減ってくるけど、夏用の半袖コートが売られるくらいコートは特星で人気ファッションなんだぞ!


「うんうん、マイブーム」


「お前だけに言えることじゃないが、能力なしにどうして思考が読めるんだ?」


「なんだかニヤニヤしてるもん。あと右手にちゅーもーくっ」


言われて右手を見るといつの間にか予備のコートをつきつけていた。ちゃんと名前を書くところには俺の名前がある。間違いなくこれは俺のものだ。


「き、気づかなかった」


「わー、やっぱり変な人。そうだ、特産品の雨紅茶でもいかが?」


いつの間にかコタツの上には二つの紅茶が置いてある。出されたものは貰わなければ勿体無いのでメニアリィの正面の場所に入る。今日はあまり寒くはないからか、コタツはついていない。


「この雨紅茶は魔法の雨水と魔法の茶葉で作られた魔法の紅茶なの。インスタントの紅茶には少し及ばないけどね」


「紅茶はあまり飲まないから美味いかわからないな。まあでも美味い」


俺とメニアリィは雨紅茶を楽しむ。楽しむといっても楽しいわけではないが、まあ気分がのんびりしているのでつまらないということはない。

よく考えたら事件が起こってないときはでも、ここまで穏やかなのは珍しいな。いつもなら神社や寺で、お菓子の取り合いやおかずの取り合いに参加しているはずだ。


「うぅ、熱くて飲めない」


「アホだろ」


「本当に熱いもん。ふー、ふー」


魔法で氷を出して入れれば良いと思うんだけどなぁ。もしくは最初からあまり熱くない紅茶を魔法で出すとか。そもそもジュースでいいような気がする。


「ごくごく。それでどうしてここに?日光浴?」


「魔法勝負だって。もっとも俺のは特殊能力の魔法弾だけど」


そう、魔法弾も多分魔法の一種!相手の得意分野で打ち負かしたのであれば、特星中の全員がこの俺の実力を認めざるを得ないというわけだ。


「ふむふむ。なら魔法のお料理対決をしましょう」


「魔法弾で料理!?俺が圧倒的に不利な勝負じゃないか!」


「じゃあふりふりファッション勝負にする?」


「魔法関係ないし。そもそもふりふりコートはまだ数が少ないんだよ。特に半袖のふりふりコートは十着すら持ってない」


そもそも俺自身がほとんど着ないんだよなあ。インパクトが少ないし、なによりも全然似合わないのが問題だ。半袖のほうは結構自然な感じだったが。


「あ、わかった。この俺が強いことを見抜いて勝負を避けてるんだな?まあ俺は全戦不敗の主人公だからなー。仕方ないさ」


「おー、すごいね。憧れちゃうな」


…うーん。いつもならここで勝負になる筈なのにその気配がない。まさか本当に弱いんじゃないか?仮に強いとしても実力を隠すような臆病者なんて俺の敵じゃないだろう。

まあ今回は特別に勝負は勘弁してやるか!やるまでもなく結果は見えてるけどな!


〔確かにやるまでもないか〕


「あれ。コートの人と一緒に入ったこの通信の声、どこかで聞いたことがあるような?あなた誰ー?」


ボケ役が喋った後にメニアリィがボケ役に尋ねる。ボケ役の声を知ってるって事は初代の悟ンジャーに関係があるのか?


〔やべっ。ツッコミ役、俺のことは黙っとけ!〕


「ああ!こいつはボケ役だ!」


〔ちょっと黙れ〕


「…息ができない!」


〔短いな!〕


ふふふ!この漫才のネタにメニアリィは釘付けのはず!このまま心臓マッサージに話を変更してボケ役かの話題を終わらせる!


〔おお!意外に少し良い奴だ!息ができないといえば、心臓マッサージの秘話があるんだが聞きたいか?〕


「聞きたいぜ!」


「あ、私も聞きたい!」


ここまでは俺の作戦通りの展開だ。あとはボケ役がメニアリィを釘付けにするほどのネタを持っていればよし。持ってなければ別の話を与えるまでだ!


〔いや、持ってないに決まってるだろ。マイナーすぎる〕


「息ができないといえばやっぱり人工呼吸がメジャーだからな!ボケ役はどんな人工呼吸秘話があるんだ!?」


凄いぞ俺!こんなに自然に話題変更ができるなんて天才だ!これだけ上手くフォローできればどんなつまらない話題でも絶対に興味をもたれるはず!


〔そうか?なら人工呼吸で財宝を発見した人の実話があるんだが〕


「楽しそうなお話だけど、さっきの悟の焦ったような喋り方が気になるなー」


…あれだな。俺のフォローは完璧なのに、ボケ役の話題があまりにつまらなさそうだからこっちに興味を向けてるんだな。まったく、ボケ役は面白そうな話題提供もできないのか?


〔ツッコミ役の考えたことを日記につけてるんだが、株価並みの変化があって面白いぞ〕


今のは俺が悪かったからちょっとその日記を処分させてくれ。俺の思考が全世界に知れ渡ったら、その天才的な考え方に多くの人が影響を受けてしまう。そして恐らく特星一の大事件として代々歴史に残る可能性がある。


〔あってたまるか〕


「ねえねえ、ボケの人は誰と話してるの?」


〔未知のコート人と話してるんだ〕


「人知だ。俺は結構な有名人だぞ」


緑のコートと水鉄砲を見ただけで俺だと判る人もたまにいるほどだ。たまに、もしコートを着てなければ気づかない的なことを言われることもあるが。


「コートといえば、前に悟とそっくりな人に会ったような。今思えば同一人物な気がするー。どこかで会わなかった?」


「記憶にないな。多分、会ったのはボケ役のほうじゃないか?」


「うん?そうかな?本人だと思ったんだけどなあ」


〔会ったのは随分前のことだから覚えてないな〕


覚えてるじゃないか。まあボケ役の過去なんてどうでも良いし、深くは追求しないけどな。それにしても俺とボケ役、オーラ的なものが全然違うのに見分けられないのだろうか?俺の方が主人公的というか、特別凄い人オーラが出てると思うんだけどな。


〔ああ、なるほど。確かに鋭い〕


おやおや、さすがのボケ役も俺の凄さは理解してしまうのか!まあ実力の都合上、仕方ないといえば仕方ないけどな!


〔よく俺が会ったのを覚えてることがわかったな〕


「お前もそっちかよ!いつも地味なほうの推理が褒められてる気がする!」


というか自分で話したことくらい覚えとけよ!


「んんー、考え事しすぎて眠いよー。そろそろ寝るからまたきてね」


メニアリィが手を振ると同時に急に目が眩む。なんか変な感覚だ。






「ん?ここは」


「ほほほほ、目が覚めたようだねぇ」


気がつくと木製の床の上だった。近くでは姫卸婆さんが小さな波動を見ている。その波動には雨双が昼寝している姿が見える。…覗いてたのがばれたらやられそうだから、見なかったことにしておこう。


「姫卸婆さんがなんでここに?」


「アミュリーから頼まれたのさ。多分メニアリィの場所に行ってるから、迎えに行ってほしいって。アミュリーは神様会議に出席中だからねぇ。ほほほ」


そういえばちょくちょく神様会議に参加してるんだよな。やっぱり神様の職業も楽じゃないんだな。そういえば、勇者や神様の募集を今年は見てない気がする。毎年やってるはずだけどな。


「…ちょっと待て!姫卸の婆さんも神様じゃなかったか!?」


「ほほほほほ。こんな八十過ぎの老いぼれに仕事しろなんて厳しいねぇ。でも残念ながらアミュリーとメニアリィ以外の神様は、特星本部の本部長に本部立ち入り禁止令を出されてるんだよ。あそこは女子小学生専用施設だからね。ほほほ。まあメニアリィはサボりだけどねぇ」


ふむふむ、そうなるともう一人の神様は小学生じゃないのか。ボケ役に雑魚ベーに印納さん、結構神様の可能性がありそうだよな。

補助系の神様は居ないから、大穴で几骨さんあたりが神様の可能性があるかもしれない。いや、あの人忙しそうだからやっぱりないかな。


「少女の神様である私、友達の神様のアミュリー、そして雨紅茶の神様のメニアリィ。これらが特星の神様の通称だよ」


「アミュリーとメニアリィの通称は初めて聞いたな」


そもそも姫卸婆さん以外は通称名乗ってないからな。神様やってるのに皆適当だよな。そもそも特星の製作者がまず適当だから仕方ないか。夏休み、いつまで続くんだか。


「というか全員が自分の好きなものを通称に使ってないか?通称、自分で決めてるだろ」


「おお鋭いねぇ。全部その通りだよ。だからもう一人の通称を言えば誰だか判ってしまう」


お、今日初めて全部の推理を褒められた。というか別に判っても良いんじゃないかと思う。


「まあ全員の神様を知ったところで特に何もないが、その知らない神様は雷之家と関係が深いと本人と校長が言っていたよ」


「そうか?無宗教派のつもりだけどな」


まあ校長が言っていたのなら可能性は高い。なんせ校長とは地球にいた頃からの付き合いだからな。そういえば父親と知り合いだとか昔に聞いたな。どういう関係なのかはわからないが。


「ほほほ。家族がその神様を祀っていたかもしれないよ。なんせ、その神様は特星に来る前から神様だったらしいからねぇ。ああ、メニアリィもだね」


「特星に来る前から?特星の神様は職業的としての神様のはず。本物の神様が特星でも神様をやってるってことか?」


特星外で神様なんてものが本当に実在するとは信じ難い。でも別世界には魔法使いが普通にいたし、パラレルワールドなんてのもあるのだから可能性はある。

そもそも特星を作ったのは校長だし、エクサスターガンも地球のテレビ番組で入手したものだ。意外にも地球にはファンタジックな成分があるようだ。


「そういうことらしいねぇ。ほほほほほ。まあ特星で神様になった私には、本物にどんな力があるかなんてわからないがね。ほほほ。特殊能力以外で変な性質があるかもしれないよ」


そんなやつはいっぱいいるけどな。俺も術や魔法を使いたいな。






「悟ンジャーの秘宝だと!?」


「ええ!その通りですよぉっ!」


雑魚ベーが自慢げに宝の地図らしき特星の世界地図を見せてくる。姫卸に毬の島まで送ってもらった俺は、神社にお菓子を食べにきたのだがお菓子以上の収穫があった。

悟ンジャーに関する秘宝の地図を雑魚ベーが入手していたのだ。毬の寺の瓦礫撤去の最中に雑魚ベーが地図を見つけたとのことらしい。そして記紀弥に聞いたところ、悟ンジャー専用の秘宝の位置が記された地図らしいのだ。


「私は絶対にその秘宝を手に入れ、悟ンジャーキャプテンである記紀弥さんにプレゼントしますよぉっ!」


「秘宝か。悟ンジャーファンの記紀弥なら高く買い取ってくれるはずだ」


確か毬の寺には高級品はお菓子くらいしかなかった。最近見つけた隠し部屋にも、悟ンジャーグッズはあったが秘宝はなかったはずだ。

もしも地図の秘宝を入手してないのなら、それはもう大金を積んででも入手したいはず!


「よし!なら俺も記紀弥のために秘宝を入手するぞ!」


とはいえ地図は雑魚ベーが持ってるから、勝負して奪うしかないんだよな。でも仮に倒したとしても地図の内容を覚えていたら、結局は雑魚ベーの方が早く宝の元に着いてしまう。海上の地理に詳しい元海賊の雑魚ベーと、主人公としての才能は最高だが、その他の才能は普通より良い程度の俺とでは微妙に競り負けてしまうのだ。


「おお!?悟さんも記紀弥さんに秘宝を渡す気ですか!?ならばどちらが先に記紀弥さんに渡せるか勝負ですよぉっ!」


「ん?…お!そうだな!じゃあ今からいかだや船を作って勝負するぞ!そして明日の日の出の時間、その作ったいかだや泳ぎで宝島まで先に行って、宝を手に入れたら勝ちってのはどうだ?」


「それは面白いですねぇ!それなら今からいかだを作ってきますよぉっ!」


やる気全開で海岸の方へ走っていく雑魚ベー。ふふふ。できる限り良い船を作ってもらいたいな。

まず俺は雑魚ベーより早起きをして、宝の地図をいただく。そしてコートを着た善人が取っていった、と俺の知っている情報を書置きして残しておく。次に雑魚ベーのいかだを頂戴する。そして緑のコートのカッコいい人物が乗っていった、と書置きを残す。

あとは雑魚ベーの地図といかだは謎の人物が奪ったことになり、その間に俺がお宝を入手して勝負は俺の勝ちとなる!…謎の人物は遭難したことにでもなるだろう。


「そうなると地図のある神社近くに泊まる必要があるな。まあスタート地点は同じなほうがいいと言って、今日は神社に泊まるかな。久々に広い風呂に入れるなー」


いつも通り変なことは起こらなかったが、変な魔法使いと出会った今日。これから数ヶ月の間は何も起こらないはずが宝探しに行くことになった。

明日は簡単に秘宝を見つけ、主人公としての地位と多少の収入が手にはいるだろう。楽しみだ。

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