〇話 最初の話には世界観やキャラの紹介が多い
@悟視点@
俺の名前は雷之 悟。高校二年生で自称ツッコミ役の主人公だ。周りにまともな人が集まらないのが特徴で、特星という変な星の瞑宰京という町の寮に住んでいる。
「さて、朝食でも作るか」
基本的に一人暮らしだから食事はそれなりに出来るつもりだ。
「………朝だけどオムライスで良いか」
卵の賞味期限が非常に迫っているので、卵を五個も使用する豪華なオムライスだ!
「よし、完成!」
なかなか完成度の高いオムライスだな。
えー、それで特星というのは地球の近くにある星で、地球よりもかなり大きな星である。陸地と海の割合が半分ずつで、太陽の影響などは何らかの方法で地球と同じになっている。随分前の授業でそう聞いた。
そしてこの星は人工的に作られた星だ。詳しいことは忘れたが、僅かな人数で作ったらしい。
ちなみにこの星でのお金の単位はセルで、一セルの価値は一円と同じである。普通に円のままで良いと思うんだけどなぁ。セル以外は使えない。
で、今から話す部分はファンタジックな部分だ。だから日常ほのぼの系の話が目的の方は今すぐ地球に戻ることをお勧めするぞ。
「さすがは俺だな。特殊能力で作ったオムライスは一味違う」
特星内に入れば、基本的に一人一つずつ不思議な能力が使えるようになるんだ。まぁ、一人でいくつかの能力を使う奴も居るが。この能力は特殊能力と呼ばれている。その能力は大きく三つに分かれていて、質系と非質系と補助系の三つだ。
質系は炎や氷など、操れるものが少ないタイプ。才能や特訓しだいで非質系並に強くなることもあるらしい。俺もこのタイプだな。
非質系は操れるものが曖昧なため、いろいろ操れるタイプ。例えば力を操る能力者は魔力、火力、冷凍力、財力、知力、人との協力などを操れる。質系より強い人が多いかな。
補助系は身体能力が上がったり、特別な技能を手に入れたりするタイプだ。透視やつまみ食いして気づかれないなど。羨ましいものが多い。
俺は魔法弾を作り出す能力で、質系だったような気がする。
「痛たた!舌噛んだ!あー、特星じゃなければ多量出血で死んでたな。もしくは傷口にワサビがしみてショック死してたかもしれない」
この星では人が基本的に怪我はしないし年を取らない。というか出来ない仕組みになっている。どういう原理かはわからんが、この仕組みのおかげで特星での武器の持ち歩きや決闘などは正式に許可されている。ダメージはあるが怪我はしないので、降参させるか気絶させたら勝ちというのが、特星の一般ルールである。
ちなみに俺の得意武器は銃系で、光線や炎の玉なども能力で撃つことが出来るぞ!…出来るようになるはずなんだ。特訓が成功すれば。
「特星エリアには最近行ってないな。まあ、小学生が多くて危険だけど」
特星には都市などがある現代エリアと、自然と多くの小学生が特徴的な特星エリアがある。
現代エリアはビルなどが多くて近代的だ。しかし、地球に居た頃とは違う面もある。移動手段は徒歩か能力かワープが主流。車などはほぼない。また、特星の九割以上の店を開いているのが、勇者社という会社である。警察やレスキュー隊もないが、それらの事は各自解決か、その辺を担当する人が居るらしい。
特星エリアは自然や女子小学生が多い。ごく稀にモンスターも居る。その他は現代エリアと同じだ。
小学生は特殊能力が普通より強いため、特星エリアに住処を作って住んでいる者が多い。ちなみに特殊能力が強い特典があるのは、女子小学生と変な人がほとんどである。女子小学生で、変な人で、才能があって、非質系能力者なら凄く強いんだろうな。
一般人が女子小学生と戦っても、まず勝てないくらいの差がある。俺は鍛えてるから互角以上に戦えるけど。
「ふぅ、ごちそうさまっと」
俺の通っている高校は校長がかなりの権限を握っている。数週間くらい前から校長の気まぐれで高校がずっと休みだ。校長の気まぐれで年中完全休暇ということも少なくない。
特星内では年をとらないので、学年が上がる事がほとんどない。ただし、飛び級とかは小学生で時々あるらしい。
あと、特星内では実力があれば子供でもなれる職業がある。その職業は仕事がないのと同じようなものがほとんどだ。
例えば勇者や魔王や聖王の職業だが、これは称号みたいなものだ。この称号的職業を利用した会社とかもある。特星で有名なのは勇者社という会社で、特星中のほとんどの店が勇者社の管理下にある。難しい話は苦手なんだけどなぁ。
でも、この三つの職業は一人しかなれないんだ。
神様の職業には何人かが転職できて、この職業になった人は何かの特殊能力を追加で覚えることが出来るらしい。
あと、高性能翻訳飴という飴を食べているので、誰と話す場合でも自分の使い慣れた言葉に翻訳されて聞こえる。特星に入る際に食べないといけない。
だが、食べてない人とも普通に会話できるらしく、翻訳飴以外の効果で翻訳されているという噂もある。
「おはよう〜」
「あー、魅異か」
隣の部屋から部屋をすり抜けてきたのは神離 魅異。俺の部屋の隣に住んでる奴で高校での席も隣だ。高校はほとんど休みなので意味ないが。
一応勇者の職業をやっていて、勇者社の社長でもある。
身体能力も思考能力も計測不能に出来るような人物。人かどうかは怪しい。むしろ人じゃないほうが納得できるかも。
あとなんか神離槍とかいう名の竹槍持ってる。曲がるけど不変で折れないらしい。
「ふふふ、私は正真正銘の人間だよ~」
思考くらいは軽く読んでるよ。
魅異の特徴は本気を出さないことだな。遊び気分で別世界を作り出したりとかそういう規模の人だ。得意武器は特に決まっていないと思うが、気分的に槍という事にしているそうだ。魅異の場合は武器がない方が強いと思うけどな。
でも信じ難いことに特星製作にはあまり関与してないらしい。本人談だからあてにならないが。
「それで何のようだ?」
「最近この近くの山で宝の地図が見つかって、その山に宝探しに向かう人が増えてるらしいよ〜。宝を持ってる人から勝負して奪うのも正式に問題ないね~」
さすがは魅異だ。俺の性格をわかってるじゃないか。宝探しと言われれば行くしかないな。今月の食費も結構かかりそうだし。
「何処の山だ?」
「現代エリアの滑り山だね~」
聞いたことない山だが、滑り台でも山についてるのか?そもそもなんで現代エリアに山があるんだ?そんな自然環境に良さそうなものは、特星エリアにあるのが普通のはずだが。
「行きたいなら案内しようか~?」
「そうか?なら、頼む」
~雪が積もる滑りの山~
「おー、見事な雪景色だな。春なのに」
「この山は人工的に雪が作られてるから、夏以外に来たら、大抵雪が積もってるんだよ~」
滑り山は家から少し遠かったが、魅異の瞬間移動的な技ですぐについた。
「技ではないけどね~」
「で、場所は?」
「細かいことは秘密だけど、此処より高い場所にあるよ~」
上に行く乗り物的なものはないし、歩いて探すしかないようだ。
「じゃ、頑張ってね~」
言われなくても頑張るけどな。
「あー、道に迷ったな」
雪だらけの山だから迷いやすいのか?
「こういう時は耳を澄まして、川の方向を探るんだよな」
そして川を見つけたら、川に沿って歩けば山を出られるらしい。
「一回山を降りて、地図でも買いに行くか」
運が良ければ無料で配布している可能性がある。
というか、地図もなしに宝探しなんて無理だろ!
「あれ、お前は悟じゃないか!」
「お、その声は烈か?」
急に現れたこの男は烈。
最初から特星に住んでた奴で、クラスは違うが俺の同級生だ。
体力と元気くらいしか取り柄がないので、撃ち飛ばしても問題のない人間だ。
特殊能力は水の上を歩ける能力だが、どう見ても雪の上に立っている。俺なんか、足が凍りつきそうなんだぞ!
「おい、どうして雪の上を歩けるんだ!」
「ふっふっふ、騙されたな、悟。雪の上に居るように見えるが、実は俺は岩の上に立っているんだ!」
あ、よく見たら確かに岩の上だ。
岩が雪に埋もれてたから、全然判らなかった。
「気づかなかっただろ!やーい、バーカ!」
「バカはお前だろ、バーカ!」
というか、烈の言い方が子供みたいで気持ち悪い!
「よし、こうなったら、先に宝を見つけた方がバカじゃないってことでどうだ?」
なるほど、俺がバカじゃないと証明され、更にはお宝までもが手に入れられるな。
「よし、その勝負を受けてやる!」
「お前が負けたら主人公の座をもらうからな!」
「なんでそうなる!」
あー、全然見つからないなぁ。
というか、結局は山を下りれなかったし。
「あれ、悟だ」
「お、ジャルス」
えー、こいつはジャルス。
最初から特星に住んでた奴で、クラスは違うが俺の同級生の一人だ。
烈とは違い、常識的でたいした問題がない奴だ。
特殊能力は他の特殊能力をランダムに使うことが出来る能力だ。
ちなみにボケもツッコミもこいつの役割ではない。
「ジャルスもお宝目当てか!?」
「いや、僕は烈と名産品巡りに来たんだけど、烈がお宝の話を聞いたら、目の色変えて勝手に何処かに行っちゃったんだよ」
まぁ、烈だから仕方ない。
「さっき川の方で見かけたけど、絶対にもう居ないな」
「烈だから仕方ないけどねー。一応探してくるよ」
それにしても、この山は一般人用なのに必要以上に寒いな。
「誰かが悪戯で寒くしてるとかは考えられるな」
町とかならそういう奴は撃退されるが、山の中だと人が少ないからなぁ。
「というか、宝を探しに来てる人が居ない気がする」
実際にお宝目当てなのは烈だけだったし。
「まさか、魅異に騙されたか?」
いや、魅異のことだからボスにお宝を渡してあるとかだろう。
俺の思考は常に魅異の上をいくかもしれない!
「おや、こんな寒い時に人が来るとは珍しい」
お、こんな寒いときに珍しく人が居るぞ。
女性の人で二十歳近くだと思う。
「お宝目が目的のようですね」
「そのとおり!…って、お前が持ってるのは!」
なんと、相手は宝箱を持っていた。
「これは大した物ではありません。では、失礼します」
大した物ではないと言ってるが、噂のお宝に違いない!
「ちょっと待った!それがこの山のお宝なら、勝負して奪い取ることが出来るはずだ!」
これは魅異から聞いたことだけどな。
「確かにこの宝箱はこの山で拾った物です。ただし、これは仕掛けられた宝箱ですから開けても得はありませんよ。まぁ、私は中身を見てませんけどね」
「中を見てないなら、どうして仕掛けられた宝箱だと分かるんだ?」
ふっ、俺を騙して宝箱を奪えるわけがない。
「さて、私は寒いので帰りますね」
あー、確かに俺も寒くなってきたから帰ろうかな。
「って、その前に勝負だ!」
「寒いなら帰れば良いのに。まぁ、相手くらいなら構いませんけどね」
おー、やっとやる気になってくれたみたいだ。
「水圧圧縮砲!」
俺は自分の能力で作った魔法弾を使用するから、実際に弾数は無限に撃てるぞ。
水圧圧縮砲は水を圧縮させて撃つ技で、岩とかを砕く威力を持つんだ。
どんどんと撃っていくが、攻撃は全て避けられてしまう。
うーん、俺は射的大会とかで優勝できる腕前なんだけどなぁ。
「水圧分裂砲!」
これは水圧圧縮砲の弾を小さくして、連射性を重視した技だ。引き金を引きっぱなしで自動で連射してくれる。
「って、居ないし!」
いつの間にか相手が視界内から居なくなっていた。
「後ろです」
後ろから声が聞こえたので後ろを撃つ。
だが、相手はまたもや見当たらなかった。
「それ!」
あいてはしゃがみ込んでいたらしく、腹部を攻撃してくる。
あー、撃つ速さが遅いから弾があたらないのか?
「いえ、撃つ速さと反射力は凄いと思います」
「…ちょっと待て」
思考を読まれたのか?
「まぁ、その通りです。状況把握の速さは遅いんですね」
「うるさい。というか、思考を読まれたら弾が当たらないのは当然か」
思考読むのはルール違反ってことで良いか?
「それだと私の方が不利になります」
お、喋らなくていいから楽だな。
「殴って良いでしょうか?」
頭が悪くなったらどうする!
というか、お前は何が目的なんだ!
「私は社長からの命令で来ただけです」
社長って?
「私だよ~」
って、魅異のことかよ!
「あ、社長。私はもう帰りますよ?」
「ご自由に~」
魅異が現れたからか、魅異の部下らしき人は帰っていった。
「悟の聞いたとおり、彼女は私の秘書の篠頼 几骨だよ~」
魅異の秘書ってことは大変だろうな。
「まぁ、私の仕事はほとんど几骨に任せてるからね~」
別に任せなくても、分身でもして自分で出来るだろ。
あー、こいつはチートだから分身や分裂をして、特星中を同時に見渡したりとかやってるぞ。そんなことしなくても、特星中の状況を全て把握できるくせに。
「それだと、私が何でも出来るから、秘書の仕事が無くなるよ~。あと、私には思考で喋らず普通に喋ったら~?」
「あぁ、そうする」
魅異は能力とかは関係なしで、相手の思考とかを読めるぞ。
これからは魅異がどういう行動をとっても、全然自然な光景だと思ってくれ。
「っと、宝箱を忘れてた」
几骨さんは持っていかなかったから、俺のものってことで問題ないな。
中身のものに期待しながら、俺は宝箱をゆっくり開けていく。
だが、中には何も入っていなかった。
「はいっ!?」
いやいや、オチがないからってこれは酷くないか?
「いや、几骨さんに盗まれたに違いない!」
「まぁ、実際は元々空だったんだけどね~」
はっ!最初から宝はなかったってオチか!
「おっ、見事に大当たりだよ~」
「くそー、騙されるとは!」
第一、宝探しに来てる人なんて居ないし!
「宝地図が示す宝は空箱で、宝を探しに来た人が増えてるというのは、烈とジャルスの事だったとすれば、私の言った事に嘘はまったくないよ~」
うわっ、詐欺に近い言い訳だ!
というか、主人公として言いたくはないが死ね。
「別に復活できるけどね~」
何を言ったら魅異に勝てるのかが分からない。
「あ、そうそう。お宝発見したからこれをあげるね~」
魅異に渡されたのはツッコミ用と書かれたハエ叩きだった。
というか、魅異の喋り方がさっき普通っぽくなったな。
「まぁ、この喋り方は遊びみたいなものだからね~。じゃ、私かこの辺で帰るよ~」
…俺も此処に用はないから帰るか。
「んー、よく寝た」
ハエ叩きを手に入れてから数週間が過ぎた。
見かけは普段通りの朝だが、今日はいつもと違う朝だった。
「お、手紙だ」
誰だか知らないが、携帯電話のメールで知らせて欲しいものだ。
ちなみに特星の携帯電話は地球のものとは違い、形は普通の携帯電話だが、中には機械などは入っていない。だが、何故か携帯としての機能は使えるのだ。
まぁ、特星の物は勇者社製が多いので、どんな事があろうが気にするだけ無駄である。
で、手紙の内容だが、どうやら高校が休みという名の封印を解くそうだ。
「…どうせすぐに休みになるんだろうなぁ」
高校が休みでなくなる原因はいくつか考えられる。
まず、校長の気まぐれだが、可能性が一番大きいな。校長が気まぐれで休み終了とか思いつき、それを実行してしまうパターンだ。
次に行事が開かれる場合だが、今日は特になにもないはず。
次に何か問題が発生した場合だが、俺が巻き込まれる可能性があるので考えないでおくか。
「あとは誰かが転校や飛び級してくるとかだが、この可能性はあまりないだろう。それに校長が飛び級を許す相手が常識人である可能性はかなり低い」
可愛い常識人の女の子とかだったらいいけど、そんな可能性は極限に近い確立でありえないだろう。更にそんな子と仲良くなれるなんて、フラグ的なものでもない限りは不可能だ。
「というわけで、何の期待も出来ないことが証明された」
恐らく校長の気まぐれだろう。
気づいたら時間が結構経っているようなので、さっさと高校に向かうとしよう。
~瞑宰通常高校~
俺の通っている高校に着いたわけだが、残念ながら途中に転校生らしき子とは会わなかった。
「というか、今頃だけど通常高校ってなんだろう?」
普通に瞑宰高校で問題ないよなぁ。
「あ、悟」
「おー、ジャルスじゃないか」
ジャルスと会うのは数週間前の宝探しで会って以来だな。
というか、宝探し以降は学生の誰とも会った覚えがない。
「今日は転校生が来るらしいね」
「え、そうなのか?」
俺の予想は大きく外れてしまったようだ。
「うん。少し前の日に校長と会って、その時に今日のことも聞いたんだよ」
ということは、転校生の事は急に決まったのではなく、少し前の日から決まっていたという事か。
校長の事だから、転校が決まった次の日に転校生を呼びそうだけどな。
「ところで烈は?」
「さぁ?多分、手紙には気づかずにねてるんじゃないの?じゃ、僕は先に行くから」
そういってジャルスは先に教室に行く。
同じ寮に住んでるのなら、来るときに起こしてやれよ。
…あ、俺もか。
というか、同じ寮に住んでる学生に、数週間の間も会わなかった俺は凄くないか?
「ははははははははは!」
「あ、烈」
聞き苦しい声で笑いながら、烈が凄まじい速さで教室に走っていった。
で、烈が教室に入ったとたん、烈の笑い声が聞こえなくなった。
「気になるな」
覗き魔ではないが、烈の居る教室を覗いてみる。そこで俺が見たのは静かに椅子に座っている烈と、異常者を見るような目で、烈を見る教室中の生徒全員であった。
結論、静かな烈は非常に怪しい。
ちなみに俺はクラスが違うので元のクラスに戻る。
「お、ようやく来たね~」
あー、魅異は俺と同じクラスだったな。
現在のところは大した問題を起こしてないが、絶対に何かを企んでいるはずだ。
「いやいや、私は他人の問題を見る派だよ~」
「数週間前に宝探しをやらされたが?」
「あれはゲームでいうイベント進行フラグの回収だよ~。あのイベントのお陰で転校生が今日来るんだからね~」
此処で分かりやすいように説明しておこう。
特星にはゲーム要素も含まれており、とあるイベントを進行させることで別のイベントが都合よく発生するのだ。
ただし、イベント要素は誰にでもあるわけではなく、主人公である俺を中心に発生するようだ。
「イベント要素が都合よく発生すると、誰かが仕組んでそうで面白いよね~」
「この星の異常さについて、星の製作者に講義してやりたい」
「その製作者が来たみたいだよ~」
お、もうこんな時間か。
「はい、ただいま到着しましたよ。遅れましたが、私に時間制限はないので問題はありませんね」
この人は杉野 正安校長。特星中のほとんどの学校の校長をしていて、さらに特星を作った人達の代表でもある。年はなんと三十歳である。
この人以外の職員はその辺から適当に選ばれているらしい。
性格は結構良い人だが、適当に物事を進める事がある。ちなみにこの人が原因で、学校のある日より休みの方が多いという状況になっている。ほとんどの生徒と友達関係を結んでいる。
特殊能力は波動を操る能力で、遠くにワープとかもできるらしい。特星中の学校での校長をやっていけるのは能力のお陰だろう。
ちなみに収入は多いのにやけに貧乏で、校長室に寝泊りしている。
「今日は転校生が来るから登校するように言ったのですが、このクラスではなかったみたいなんですよ」
おや、この展開はもしかして!
「というわけで、転校生の子を見たい人以外は帰っちゃってください」
「校長、一つだけ言いたい事があるんだが」
ちゃんと手を上げて発言しておく。
ちなみに俺も校長と友好関係を結んでいるので、普段どおりの喋り方で問題はない。
「はい、なんですか悟君?」
「このクラスは俺と魅異以外に登校してないぞ」
隣の烈とジャルスのクラスは半分くらいの人が来てたのに、俺たちのクラスは俺と魅異しか来ていないのだ。
「あれ、本当ですね」
え、気づいてなかったのか!?
「そういえば、今日は新しいゲームの販売日だからね~」
「あぁ、そのゲームなら私も波動人間を使って買いに向かわせてますよ」
このクラスはそんなにゲーム好きが多いのか?
ちなみに俺は中学の頃にかなりのゲームをやったなぁ。
あ、波動人間というのは校長が作り出した人型の波動で、戦闘やお使いなどをやるらしい。
「別に買わなくても、私の会社から取り寄せてあげるのにね~」
「本当ですか!?なら、今度から無料で譲ってください!」
「いいよ~」
校長は嬉しそうに飛び跳ねて教室を出ていった。
「さて、どうする~?」
「来たからには転校生を見ていくべきだろ」
隣はまだ授業中のようだ。
「授業が続いてるという事は、隣のクラスに転校生が居るということだね~」
「あ、そうか!」
そういえば、隣のクラス以外からは生徒が帰っていくな。
「待てよ、烈がさっき異常だったのは転校生が来ると知ってたからか!」
「しかも、自分のクラスに来ることまで予想できてたみたいだね~」
くっ、バカなくせにそこまで読んでいたとは!
「ちょっと道をあけてくれぇ!」
噂をした結果なのか、烈が叫びながら誰かを引き連れて走っていった。
その後を同じ教室から出てきた生徒たちが追う。
「な、なんなんだ?」
「あ、悟や魅異も追いかけるの?」
此処でジャルスが教室から出てくる。
「何かあったの~?」
「転校生の子と烈が知り合いだったみたいだよ。それでクラス中が関係を問い詰めようという結論になっちゃってね」
おー、烈が転校生と知り合いなのか。
「逃げられたみたいだけどね~」
魅異が窓の外を指差して言う。
外を見ると、辺りを見回す生徒たちの大群が見えた。
「なんか人数が増えてるね」
「恐らく、噂が広がって参加者が増えたんだろ」
はぁ、せっかく転校生を見に来たのに居ないのか。
「あ、ジャルスは転校生を見たよな?どんな感じだったんだ?」
「普通に可愛い女の子だったよ。元勇者とか言ってたから、魅異のほうが詳しいんじゃないかな」
魅異の場合は関係者じゃない相手の事も詳しいけどな。
「それはウィルだね~。今は体育館のステージ裏に烈と隠れてるよ~」
そこに隠れるくらいなら校外に逃げればいいと思うけどな。
「私は校長にゲームを届けるから帰るね~」
瞬間移動で届けれるくせに。
「僕も厄介なことは避けたいから帰るよ」
えぇ、俺が一人で向かうのかよ!
「一人で来てしまった」
烈たちとは関係なく嫌な予感がする。
「あれ、悟じゃない。どうしたのー?」
「あ、隠納さん」
この人は岩捌 隠納さん。三年生で高等槍術部という部活の部長をしている。
魅異も一応この部活に入っているが、ほとんど来ていない。
この人は大胆な性格で、いつか国を乗っ取って世界征服をすると言っている。この人なら本気でやりかねないので注意が必要だ。
得意武器は槍で、特殊能力も槍魔術を使えるという変な能力である。
正直な話、俺はあまり関わりたくない。
ちなみに槍術部への入部希望者は百人を越えるが、印納さんの入部試験により今年の部員は四人しか居ないらしい。
「部長じゃなくて王よ!私は王か女王に十年以内になるのよ!」
「いや、人の説明を狂わせないでください」
喋ってるだけで非常に疲れる。
「悟も私の部活に入ってよー。そして五人で戦隊作って世界制服しよう!」
「俺は世界征服なんて無理です。あー、瞑宰京からは非常に遠いですが、帝国的な場所があるのでそこを奪うのはどうですか?」
「お、良い案ね!」
帝国なら、印納さんが支配しても問題は無いだろう。
「ところで、烈と転入生を見ませんでしたか?」
「舞台裏に居るわよー」
あれ、意外に普通に教えてもらえた。
とりあえず、舞台裏までいってみる。
「おーい、俺だぞー」
「お、悟じゃないか!」
床の板を押し上げて、烈が床の中から出てくる。
「そんな場所に隠れてたのか?」
「あぁ!中は結構広いからな!」
床の修理代とかはどうするつもりなんだ?
「あの、どうかしたんですか?」
更に床の中から転校生らしき子が出てくる。
お、可愛い!
「あー、友人が心配して来てくれたんだぜ!」
いや、心配なんか少しもしていなかった。
「紹介するぜ!こいつが俺の友人の一人である悟だ!」
「よろしくな」
「はい、よろしくお願いします!あ、私はウィル スクロールと言います」
異常なところがない普通の女の子じゃないか!
「烈、どういうことだ!?お前の知り合いにまともなやつが居るなんておかしいだろ!」
「ははは!なら、この子との出会いから話してやろう!」
くっ、この烈の自信はよっぽど凄い事なんだろう。
「朝に起きるのが遅かった俺は、学校に来る途中の道にある坂をジャンプしたんだ。そしたら、別の道から走ってきたウィルとぶつかり、ジャンプしていた俺は道路に飛ばされ、車に何回か撥ねられたんだ」
最初から最後まで運命的な展開はないじゃないか。
「で、その後にウィルが心配して俺を助けてくれて、手を差し伸べてくれたんだ!その後に俺は喜んで学校まで突っ走ったんだぜ!」
「学校で同じクラスだったのは驚きましたけどね」
うーん、微妙に感動的なのだが、明らかにジャンプした烈が悪いよなぁ。
というか、これは恋愛フラグなのでは!?
…ふふふ、そんなものはぶち壊せば怖くない!
「烈、いつまでも此処に居るわけにも行かないし、戻って皆に事情を説明したらどうだ?」
まぁ、説明を皆が聞くかは別として。
「だが、皆が俺の話を聞くか?」
「あぁ、みんな聞いてくれるさ!主人公の俺が言うんだから間違いない!」
まぁ、主人公も間違いはするけどな。
「あ、それなら私が事情説明しといてあげようか?」
って、印納さん!
「え、良いのか!?」
「ふふふん、事情は盗み聞きさせてもらったわ。その程度の事情説明なら私に任せて大丈夫よ!」
いや、盗み聞きしてたんだ。
「じゃ、数分くらい待っててね!」
印納さんは元気そうに外に走っていく。
「いやぁ、助かりましたね」
「まったくだ!なぁ、悟!」
「えっ、あー、そうだな」
くぅー、俺的に予想外の展開過ぎる!
とりあえず、ウィルという子が転校してきたのだった。