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第9部分 遺伝子の皮算用

第9部分 遺伝子の皮算用


【遺伝子の誤算】


こうしたホモサピエンス女子における遺伝子の戦略は、今まではそれなりにうまく機能していた、だから人類の異常とも言える大繁栄がもたらされてきたのだ。しかしその大繁栄こそが今じわじわとあだになり、今後は凋落ちょうらくしていきそうな雲行きだと思わないだろうか。

つまり女子にとって住みよい世界を築きあげ、女子を一層を清楚にそして魅力的にしてきたことが、逆にホモサピエンスの繁殖を抑える方向にむかっているような気がしてならないのである。


ここで一応生物としての「遺伝子の戦略ストラテジー」と思われることを確認しておきたい。

・その個体が生物として成長し生存してゆける生命力と代謝系を付与すること

・個体の命は有限であるため、何らかの手段で自己複製して次世代に遺伝子群を引き渡すこと

要は上記の2点だと思われる。


なぜ命が有限であるかについては、あまりに長くなるのでここでは触れない。ここで触れたいのは「何らかの手段で自己複製する」ことである。

「何らかの手段」は特に指定されていない。分裂でも出芽でも栄養生殖などの無性生殖でも良いが、成長と生存に「改良と繁栄」まで含めると受精などの有性生殖の方が圧倒的に有利になってくる。この場合引き渡される遺伝子群は必ずしも親と同一にはならないが、こうしたマイナーチェンジまでが規制されているワケではない。



ここからは人間ホモサピエンス視点に切り替えてみよう。

ヒト単独は生物として強力な存在であるとは言い難い。相手が単独、かつ本気で襲ってくるものとして、対抗できるのはイエネコや中型イヌまでだと言われているし、それはそのとおりだと思う。優美で知られる白鳥は彼らの巣や子どもを護るために本気で襲い掛かってくることがあるが、ヒト自身の護身だけを考えると、まさか殺されはしないにしてもちょっと勝てそうな気もしない。こっちも白鳥スワンル気で頭か首でも攻撃すれば、なんとか撃退できるかもしれない…くらいのレベルだろうか…


こんな弱っちい存在の人類だが、意外にも他の動物たちから率先して人類を攻撃してくることが少ないのは気のせいだろうか。

確かに、その辺の山地を歩くだけなら、ごく少数の例外はあるにしても、イノシシ、クマといった大型で肉も食べる動物に食用目的で襲われることはほぼない、と断言できるレベルに過ぎない。明治初期まで山野に徘徊していたオオカミでさえそういうものだったらしい。



ところで、そのオオカミだが、古人いわく、

「ヒトを襲うことは(めったに)ないが、転ぶと襲ってくる」


この言い回しは何を意味しているか…


サティはこの原因を「目線の高さ」と「二足歩行」ではないかと考えている。

ひ弱い存在ながらも、立ち上がって二足歩行をする人類。必然的に大型捕食者よりも目線の位置は高い。


目がくちほどにモノを言うのは、人類だけに限らない。

通常、目が高いことは相手が大きいことを意味している。相手が大きければ、必然勝ち目は薄い。だから動物たちは本能的に目線が高い相手を警戒し、怖れるのではないか。逆に言えば、転んだり背中を見せたときが人類の危機になる、という解釈は誤っていないように思う。


また二足歩行ゆえに、両手が自在に使えるのも大きな効果が期待できる。木に掴まったり昇ったり、石を投げたり音をたてたり棒を振って威嚇や攻撃をするような行動は、接触以前の相手に大きな圧力プレッシャーを与えることだろう。

いざ接触が始まってしまった場合でも、牙や角はなくても、相手の目や口の中といった「弱点を直接攻撃できる」両手の意味は大きいように思える。無論当事者人類のリスクも大きいが、やすやすと殺られない難敵… というイメージを相手に学習させれば、人類全体としては大きな利益になることだ。

これらはいま尻や脊椎骨や腹や首を襲われ食われようとしている草食獣が有効な反撃ができないままに倒され喰われてゆくことを見て感じたことだが… みなさんそう思いませんでしたか?。



この仮説が正しいものであると仮定して、他に遺伝子レベルで規定されていることはあるだろうか。


第一の特徴は、ホモ サピエンス全体が余程の幼体でない限り常に発情していることだ。老人を除くべきという主張もあるかも知れないが、サティのにらむところ、じいさんもばあさんもそういう相手と機会があれば(自身の性的魅力と能力はとりあえず棚上げにして)交尾のチャンスを窺っているように見える。

「爺さん同士の恋のさや当て」だの福祉施設従業員へのセクハラなんてものはその根拠になりうるものだ。

あまり表面化はしないがおそらく深刻な問題として、「息子の嫁」を舐めるように見るだけならまだしも、風呂を覗くとか触ろうとするとか、幾つかのなかなか酷い事例を聞いたことがある。


そもそもサティ自身もアラ還に突入してしまったが、性欲自体は減退を感じない。Xツイッターに流れてくるエロビデオをついつい視聴してしまうときでも、どうせ時間を費やして見るなら「好みの娘」を捜してしまう浅ましい自分に嫌悪感を感じたりするのだ。そして行き当たる「好みの娘」は決まって若いし可愛いし美しいし… 

これってルッキズムだよな、なんて思いつつ…


だから機会あれば… まあこの辺で自粛しておくか… 

そう、そしてこの自粛ができなくなったときに周囲からは「老害」とか「エロ親父」と後ろ指を指されるのだろう。

そんなこんなで、爺さんの性欲の存在に疑う余地はない。


ばあさんの方はちょっとよくわからなかった… 

というのは、従来は「老人シニア=すでに枯れてる」というイメージで、語られもせずまともな調査もないような、いわば未開の領域だったからだと思う。


それが近年になってようやく「性欲は生涯」「セッ久スも現役でいられる」というような実情が公にされ、真面目に語られるようになったため、ああこりゃばあさんにも性欲があるんだ、と少しは自信を持って言えるようになったワケだ。


例の大岡越前守が彼の母に「女はいつまで性欲があるのか」と訊ねたら、母は黙って火鉢の灰をかき回したとかいう話を以前に聞いたことはあった。世間ではこれを「灰になるまで」と解釈するのが通例だったが、果たして本当にそういう意味だったのかはその「母」にしか分からないことだ。

「そんなこと親に訊くもんじゃないよ」と呆れながら、または「答えたくない」という無言の主張の代わりに、髪を触るように何気なく火鉢の火の具合を気にしたのかもしれない。ひょっとしたら「このアホ息子が!」と怒気を発し、火箸を投げつけてやろうかと思った可能性すらあるではないか。

そもそも「性欲」という単語を、越前守がどのように表現したのだろう。そしてその二人の会話を誰がどのように広めたのか… ということにも興味があるんだよね。


ただ… 「遺伝子」としては現代のような人類の未来を全く予見できていなかった可能性が高い。なぜなら、多くの個体が寿命まで、いや当初想定していた寿命以上まで無意味に生きながらえるようなしぶとい生物じんるいなんて、1万年間、いや千年前… どころか百年前の誰も思いつけなかった破天荒な案件ではないだろうか。

本来の生物は自然の一環であり、天敵や病気、飢餓やケガ等でバタバタと死んでいくのが当たり前の姿なのである。ヒトの場合、これに戦乱や民族浄化ジェノサイド、思想や宗教レリージョン等の「悪」の追加を必要とする。


特に女子メスが年中ラ セゾンした状態であることは要因として大きな比率を占めるだろう。

大多数の動物は発情期、すなわち排卵に伴う交尾の時期が決まっている。種によって異なるが、年1回~数回、数日~数週間が一般的で、受精、妊娠できる期間はこのうちの数日という感じになる。そしてここが肝腎なところだがメスは「交尾」という、いわば隙だらけになる行事を基本発情期しか受け入れないのが特徴的なところなのだ。


ヒトは… 御存知のとおりで、28日程度の性周期こそあるもの、交尾は月経期を除く期間、つまり2/3~4/5程度の期間は事実上可能になっている。中には月経カップ使ってるから大丈夫とか「ピル飲んでるよ、オールウェイズ カモン」みたいに活性状態ヤリマンが常態の娘もいるらしいが…。

それが統計的にどのくらい居るかについては残念ながらデータはない。たとえあったとしても基本自己申告ゆえに信憑しんぴょう性に欠けた資料にしかならないだろう。


多くの動物は自らの排卵期がどうやら察知できるようで、そのタイミングでしか交尾しようとしないらしい。ヒトの場合、勘の良い女子は「!」と気付けるらしいが、サティ自身で体験することができないので確信を持って主張することができない。



第2の特徴は他の動物よりも妊娠したメスの体力的、身体的負担が大きいことだ。

元々妊娠出産というメス特有の事情は、その心理的および身体的な負担は非常に大きい。したがって何の戦術も施策しさくもなければ、妊娠や出産を忌避きひする心理が作用するのは当然で、その結果として出生しゅっしょう率は下がってしまうことだろう。しかしそれでは遺伝子が目論もくろむ自己増殖とか繁栄とかいう目的を果たすことができない。


「じゃあ妊娠したくなるような… いやまて、そのあとあとまでの試練を上回るほどのボーナスを事前に出した方が良いんじゃない? ほら、朝三暮四って言うじゃんか。そうだよ、じゃんじゃん交尾したくなるような仕掛けを作れば、奴らは後先考えず自然に交尾に励むだろう。そうすりゃ子孫爆誕間違いなし!」

そのように遺伝子は結論を付けたのだろう。


ではそのボーナスとは何か。それが性交時の快感オーガズムの正体ではなかろうか。

具体的には陰核クリトリスを外性器周辺に大きく貼り付け、スイッチが入ったときには過剰ブースト信号を脳に伝達する仕組みとするだけでなく、脳は脳で快感物質エンドルフィンやドーパミンをドバドバ出す仕掛けを創案したのだ。


この仕組みの卓抜なところはそれだけではない。1つには禁止されていることや命の危険という場合にはむしろ盛り上がってしまうワナまで仕掛けられている。こうしていろいろな遺伝子の組合せ作成を伴う交尾を試みさせる仕組なのである。2つにはイってしまったあとに身動きもならずに茫然としてしまう空白の時間、いわゆる賢者タイムがあることで、精子が膣奥の子宮口から子宮に侵入する時間を稼ぐことに成功したワケだ。ここで精子を殺されたり洗浄されたりしたら、遺伝子の企みは無残にも潰えてしまうことになるのだから…


同様なことが男性にも言える。まず交尾時には周囲への警戒実態がゼロに等しくなること、そして妊娠出産後には母体と子供に保護と食料を供給する労力が非常に大きな負担になるため、やはり交尾そのものに快感が加算されているのだろうと推論することができる。


従ってこの快感を付与する仕組みは男子の身体作りにもそのまま引き継がれたワケだ。男と女の身体の差異は明らかだが、そもそもの原型は同一である。基本は女性の身体であっても、発生のある時期からY染色体上の遺伝子が活動を始めて、メスになりかかった身体をオス方向へと強引にじ曲げてゆく。

性器付近で言うなら、卵巣は精巣になるだけでなく、体温という温度下では精子が成熟できないことから股間に吊るして空冷式で冷やすべく周辺装置の引っ越しおよび改造をおこなう。さらに陰裂から肛門までを強引に縫い合わせて精巣きんたまを収納する代わりに子宮を消す。陰核クリトリスはもっと巨大化させて亀頭さきっちょ化し、陰茎の上に載せて精子兼尿の運搬パイプに模様替えする。


他にもバルトリン腺をカウパー腺に改装して摺動ピストン時に摩擦力の軽減を図る分泌物を担当させるなど、複雑かつ精密な工事をしてゆくが、陰核に持たせた快感受容の作用は亀頭にもひきつがれているため、男子もここへの刺激を無上の刺激と感じてしまう。ところでその手の書籍によると、女子の陰核で感じる快感は男子が亀頭で感じる快感の数倍にも達するらしい。


おい、このデータ、誰がどうやって比較したのかね? 

ほんでもって…おい神様、そりゃ女子ばっかズルいでしょ!

まあその分妊娠出産子育ての負担とリスクと苦労は大変だと思うけどさ…


でもさ、やっぱ… ズルい!

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