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クッキーモンスター

 俺は一旦部屋に戻ってベッドに体を沈み込ませた。

 ロベリアの記憶によれば、今は俺が死んでから10年が経っている。クラセチカはもう19才、成人が15才であることを考えれば、立派な大人だ。

 しかし、ロベリアの頭でどうにか思い出そうとしても、クラセチカの現在がわからない。王子も王様も全く関係のない人物だった。一応、クラセチカの叔母にあたる人がこの国の公爵と政略結婚をしていたので、その人に預かってもらうことに賭けて隣国へと逃げ込んだのだ。血縁的には貴族としての生活を送っていて、ロベリアと出会っていそうだが……。オーケー、わからないことは考えても仕方がない。早くクラセチカに会いたいが、今はまだ無理だ。自分の今の状況でさえわからないのにどうにかできることではない。

 まずは、使用人達と仲良くしよう。俺がマルクだった時もそうだ。集団たるもの団結が大事なのだ!


「あのー」

「一度ならず二度までも! 呼び鈴に気が付かず申し訳ありません」

「あぁ、いいのいいの、鳴らしてないから。ちょっと聞きたいことがあって」

「は、はい」

「その、なんで俺こんなにビビられてるの?」

「いえ、恐れているわけではなくて、あの、その」

「言ってくれ、悪いとこがあれば直すから」

「そ、それは、LOFCのせいなのです」

 言ってやったとスッキリした様子の年配の女性使用人はそれだけを言って気絶した。

 どれだけ恐ろしいんだよlofc、関わったら俺も死ぬんじゃねえか? だが、男マルク、一歩も引かん!

 取り敢えず、使用人さんを俺の部屋にあるベッドに寝かせて次の使用人に声をかけに行く。俺をこの部屋に案内してくれた女の子だ。

「なあ、LOFCってなんだ?」

「おっお嬢様、何故その言葉を?」

「ああ、とある情報通からな」

 取り敢えずあの使用人を守るために、適当なことを言ったが適当すぎるだろ。なんだ情報通って。

「LOFC、あれはとんでもない組織なのです。今まで奴らのせいで何人もの犠牲者が……」

 女の子の使用人はそこで気絶した。

 犠牲者? マジでヤベェ組織じゃねぇかよLOFC。もうこうなったら殺るしかねぇのか?

 取り敢えず、女の子の使用人を背負って俺の部屋のベッドに寝かせた。二人乗っても大丈夫、素晴らしいベッド。

 LOFCは口にしてはいけない言葉なのか?ならば……


 俺は今、家のエントランスホールに来ている。いや、おそらくただの玄関なのだろうが、エントランスホールに見えた。

 そこで叫んだ。

「LOFC!!!」

 その瞬間だった。何処からともなく気配が現れる。

「誰だ、その言葉を発したのは!」

 聞き覚えのない、少し低めの女の人の声が聞こえてから、革靴で走る音が聞こえてきた。

「あれっ、ロ、、ロベリアお嬢様!?」

 2階の、吹き抜けにに1人の女性使用が立っていた。気の強そうな吊り目に、真っ赤な髪色、炎みたいな使用人だ。それが、俺の姿を確認すると揺らいだ。

 俺はその使用人の方へ歩いて尋ねた。

「LOFCって何?」

「そっ、その、それは」

 使用人は、腰を抜かしてヘロヘロと座り込んだ。俺は自分より身長の低くなった使用人にもう一度尋ねる。

「LOFCって何?」

「ロっ、ロベリアお嬢様ファンクラブです!!」

 半ば叫ぶような使用人の声に俺は少し驚いたが、そのまま追撃する。

「それはなんの組織なんだ? 犠牲者が出てるうえに俺が怯えられてんだぞ!」

「それは、その」

「あぁん?」

「その、ロベリアお嬢様があまりに可愛いすぎるのがいけないのです」

「は?」

「事の発端は、ロベリアお嬢様クッキー事件から始まります。お嬢様がクッキーを焼いてみたいとおっしゃいましたので、当家の料理人と一緒にクッキーを作られた時です」

「あー、そんなのあったな」

 本当は全く覚えてないけど……

「その時、お嬢様はクッキーを幾つ焼かれたか覚えていらっしゃいますか?」

「いや、流石に覚えてないけど」

「20枚です」

 こっわ、えっ何、コイツ、ガキが焼いたクッキーの枚数覚えてんの?

「そうしてその時、お嬢様はもちろんガイル様、アイリス様、ランベル様に2枚ずつ渡し、一緒に作った料理人に1枚、そして自分で5枚召し上がりました。残ったクッキーの枚数は?」

「えっ、算学? いや無理だよ、習った事ない」

「8枚です」

「心優しいお嬢様は使用人である私達にもクッキーを与えてくださいました。しかし! しかしですよ!」

 急にテンションが跳ね上がる。その熱量たるや勝鬨。

「8枚は少なすぎました。ここに勤めている使用人の数は103人、その全員がそのクッキーを欲しがりました。当たり前です。あのお嬢様がお作りになられたのですから。それはもう惨たらしい戦いが起こりました……。そういった惨劇が繰り返されないように作られたのがLOFCなのです」

「な、成る程」

「そのため、お嬢様にあまり深入りしてはいけないという協定が成立、その結果です」

「でも、あんなに怯えるってことは何かやってんだろ」

「えぇ、その協定を破ったものは屋敷から追放です。ガイル様も了承されました」

 そりゃビビるよ! ちょっとでもなんかやったらクビって!

「あの、、、」

「はい」

「LOFC、解散の方向で」

「ま、またあの惨劇が」

 手で顔を隠すようにする使用人。

 何があったんだよ、まさかホントに死人でも出たの? 美少女のクッキー巡って死亡とかほんとに笑えないからやめてくれ!

「わかったわかった、じゃあこれからはクッキーは80枚作る」

「わかりました。解散前に一度LOFCで意見書を提出させていただきたいのです。LOFCがなくなっても大丈夫なように」


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