・開拓2日目 キューブで建てる石の倉庫
朝、昨晩と代わり映えしない朝食で空腹を満たした。
「へへへー、幸せです。はぐはぐ……」
「やっすい幸せだね」
「もしかして褒めてるですかー?」
「そうかもね」
またピオニーが食べ足りなそうにしているので、もう食べ終わった自分の串にジャガイモを3つ刺して、笑顔と一緒に彼女に差し出した。
たったそれだけで目を星に変えるのだから、やっぱり安いやつだ。
「おぉぉ……このご恩は、必ず……! ノアちゃんありがとう!」
「どういたしまして」
一足先に家の外に出て、俺は朝日に照らされた荒野を一望した。
モンスターの影はなさそうだけど、ここが新大陸である以上いつここが襲撃されるかわからない。
昨晩立てた計画を、ピオニーが姿を現すまでしばらく予習した。
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「お待たせ、ノアちゃん! さあ、今日は何を作りますかー!?」
「まず倉庫が最優先かな」
「質問! 倉庫は何に使うですか?」
「もちろん物資の保存と、いざというときの避難先かな。それに物資を家で保管してたら、物でゴチャゴチャして住みづらいでしょ」
「なるほどです! つまり……昨日の石で作るですね!?」
「お、鋭いね。花丸をあげよう」
ピオニーの手を取って、手のひらの上に指で花丸を描くと子供みたいに喜んだ。
俺よりでかいくせに、中身はやはりお子様だ。
「ノアちゃん……今、私を子供扱いした目で見ましたね?」
「まさか。それよりも楽しい倉庫作りに入ろうよ」
「それもそうですね! よーし、がんばりましょーっ!」
「うん、がんばろう」
作業を始める前にインベントリを再確認した。
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石材 ×179 /9999999
木材 ×2 /9999999
石炭 ×23 /9999999
砂利石 ×14 /9999999
錆鉄 ×10 /9999999
銅鉱石 ×8 /9999999
武具の破片×41 /9999
??????の魂 ×1 /?
――――――――――――――――――――――
このビルド&クラフトの加護には、インベントリ枠という弱点がある。
その弱点をカバーしてくれるものが倉庫だ。可能ならば大きな物を作りたい。
「どんなの作るですか、ノアちゃん?」
「可能な限り大きいやつがいいな」
「そうですね! 大きい方が楽しいです!」
「……そうなると、縦横7×7の正方形で、床と天井含めて石材5段にした倉庫がいいかな」
(7×7×5)-(5×5×3)で必要な石材は170個。これならばギリギリで手持ちで足りる。
「ん、んんー……? ごめん、ノアちゃん。私には難しくて、よくわかんないです……」
「ま、こういうのは説明するより行動した方が早いね。まずは床に石材を敷こう。俺のインベントリから石材を100個受け取ってくれる?」
「へい、棟梁!」
「そこは相棒くらいにしておいてよ」
「相棒! いいですね、とてもいい響きです!」
「そうかもね」
ピオニーが俺のインベントリから石材を100個受け取った。
物凄い勢いで光が彼女の中に流れていって、それが終わるのを見届けると俺は大地にクワを振り下ろした。横7マス分の陥没が完成した。
「こうですか、ノアちゃん!?」
「うん、そうだよ。そうやって俺が掘ったところに、石材を埋め込んでいってくれる?」
「あいあいさーっ!」
「本当に、特別な村人って感じだな……」
ピオニーはどんどん石材を手から出しては、陥没に埋め込んでゆく。
追いつかれそうなので俺も手を動かして、7×7の正方形に大地を削っていった。
「ノアちゃん、ノアちゃん、これ楽しいです!」
「もう少しゆっくりやってくれてもいいんだよ……? こっちは後ろから石が迫ってくるような気分だし……」
「ふんすふんすっ、それは楽しそうですね!」
「いや怖いって言ってるんだよ……」
正方形の外周から内側へとグルリグルリと回りながら、俺たちは倉庫の床を作っていった。
「ふぅ……。2人でやるとあっという間だな」
「ノアちゃんっ、この床カッコイイです! まるでお城みたいです!」
「お城は大げさだけど、思ったよりこれは立派だね。石と石のつなぎ目に引っかかりもないし、これなら倉庫の床として理想的かな」
「次は壁ですね、壁! えっと高さは……3段?」
「俺はいいけど、それだとピオニーの頭が天井にぶつかるけどいいの?」
「あ、そっか、屋根を付けるんでした!」
「何を当然のことを。屋根がない倉庫なんて聞いたこともないよ」
「でも、それはそれで面白そうですね!」
「面白い止まりで使い道がないと思うけど……。まあとにかく、この床の外側に沿って、石材を高さ4段まで積み上げよう」
「わかったです! つまりノアちゃんと私で競争ですね!」
「競争はしないよ。それより落としたら危ないから丁寧にね」
「ノアちゃんは、お母さんみたいですね。ちっちゃいけど……」
「そういうピオニーは一言も二言も余計だと思うよ……」
俺たちは石材で壁を作って、東西南北を完成させた。
……やはり悪くない。厚さ80cmの石壁は、どんなモンスターの突破も許さないだろう。
「はわっ、大変ですノアちゃん!! なんか……壁が高くて出れません!!」
「君、自分で自分を閉じこめたのか……」
「あ、そういうことだったんですねー。中から壁を作っちゃダメだったんですねー」
「いや、気付くの遅いだろ……」
仕方がないので1度クワで壁を崩して、ピオニーを外へと出してやった。
「ドアとか欲しいですね」
「そうだな。まあ、石で密封した方が防犯性も気密性も高そうだから、しばらくはコレが鍵だな」
ピオニーにクワをかざして見せた。
それから俺はインベントリを開くと、荒野の土で倉庫の上への階段を作った。
「あっあっあっ、それピオニーがやります! ノアちゃんは休んでて下さい!」
「落ちたら危ないぞ? これで高さ3mもあるんだから」
「いいからピオニーに任せるです! 残りの石、もらっちゃいますね!」
「鈍くさいのに大丈夫……?」
「平気です! これ、昨日からやってみたかったです。ノアちゃんは下で見てて下さいねー!」
「石が落ちてきたら死ぬから遠慮しておくよ」
屋根作りをノリノリのピオニーに任せて、俺はインベントリを眺めながら倉庫の活用の方を考えた。
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石材 ×179 /9999999
→ ×0
荒野の土 ×35 /9999999
木材 ×2 /9999999
石炭 ×23 /9999999
砂利石 ×14 /9999999
→ ×15
錆鉄 ×10 /9999999
銅鉱石 ×8 /9999999
武具の破片×41 /9999
→ ×42
??????の魂 ×1 /?
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果たしてこれはどれくらいの容積なのだろうと、確認に武具の破片を1つ取り出してみた。
どうやらこれは朽ちた剣や槍、防具の一部のようだ。荒野の乾いた環境がよかったのか錆び付いていない。
いや、錆びた部分は『錆鉄』としてインベントリに入ったのかもしれない。
『武具の破片』のインベントリ1つあたりの容積はバケツ2杯ほどで、石材や土よりもずっと少ない。
そうなるとこれは推測だけど、所持上限9999の『物品』と、岩や土といった『未加工品』は扱いが大きく異なるようだ。
「ノアちゃんっ、見て見て! 倉庫ちゃんの屋根が完成しましたよーっ!」
「……早いね。お、中は暗いな」
「ホントですかー!? ……わあっ、ホントです、真っ暗です!」
中は5×5×3の空間になっている。
ここに保管するのは、物品カテゴリーを中心にするべきだろう。
「じゃ、まずはそこの物資を中に運ぼう。この建物はおいおい拡張もしないとね」
「立派ですね、立派な倉庫の完成ですよ、ノアちゃん! こーんなに大きいのが、あっという間に作れちゃいましたよ! やっぱり魔法みたいです!」
「眺めるのは後にして、先にこっちの運搬を手伝ってよ」
「了解なのです。さっさとぶちこみましょう!」
「そこは丁寧にお願い」
「へいほーっ!」
「君は海賊か……」
俺たちは倉庫の中に大切な物資を詰め込んだ。
――――――――――――――――――――――
荒野の土 ×35 /9999999
→ ×31
木材 ×2 /9999999
→ ×0(倉庫へ)
石炭 ×23 /9999999
砂利石 ×15 /9999999
錆鉄 ×10 /9999999
銅鉱石 ×8 /9999999
→ ×0(倉庫へ)
武具の破片×42 /9999
→ ×0(倉庫へ)
??????の魂 ×1 /?
→ ×1(それを捨てるなんてとんでもない)
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【倉庫・石の倉庫】
木材 ×2 /9999999
銅鉱石 ×8 /9999999
武具の破片×42 /9999
開拓物資 ×まだまだ豊富
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【恐縮なお願い】
もし少しでも
「楽しい!」
「続きはよ!」
「マイクラやってみたい!」
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