・開拓22日目 人口100から始まるメガクラフト 1/2
翌日の昼過ぎ、俺は立派になった開拓に戻ってきた。
あちこちに大きな土蔵の家が増え、家と家を繋ぐ通りが整備され、畑が広がって、彼方に黒煙を上げる工房がある。
石で舗装された広場にはテーブルとイスが並び、併設された炊事場からも煙が上がっている。
「あれ……?」
ところがその広場に人だかりを見つけることになった。
「え、人間……?」
さらに近付くとそれがドワーフではなく、ヒューマンであることがわかった。
ドワーフたちが俺を見つけると、甲高い声を上げて駆けてきた。
「タイヘンダ、ノアッ! アイツラ、暮ラス、言ウ!」
「食ベ物、少ナイ! 言ッタノニ!」
「ドウスル、ドウスル!?」
ドワーフに囲まれながら広場に入ると、ずいぶんと客人たちはやつれていた。誰もが頬がこけていて、テーブルには空になったスープが並んでいた。
「ノアちゃん、おかえりなさーい! この人たち、ノアちゃん待ってたですよー」
「おお、聞いてはいましたが、ノア様がこんなに若いとは……」
ノア様? しばらく縁のなかった敬称に俺は顔をしかめて客人たちを見た。見ればわかる。彼らは俺と同じ開拓民だ。
「へっへーん、ノアちゃんはちっちゃいけどー、すっごいのですよーっ! なんと! えーと、んーと……手からオリーブオイル出せるです!」
「お客さんを困らせちゃダメだよ、ピオニー。それで、用件は?」
代表の老人は言いよどんだ。
ざっくりと見て、広場には彼ら客人が40人前後もいる。食べ物を譲ってくれというだけなら、こんな人数で押し掛けたりしないだろう。
「土地はどうしたの?」
「モンスターに、襲われちゃったそうですよー」
「はい……。もうあそこでは暮らせません……。食べ物も尽きかけ、震えて暮らしていたところに、角張った町の噂を……」
「角張った町? ああ、ここのことか……」
俺はちょっと得意げに微笑んでいた。この角張った変な町並みを誇りに思っていた。
「ノアちゃん、助けてあげるですよー」
「ただでさえ物資不足のこの状況で? 助ける義理がないよ」
「そ、そこを、そこなんとか、お願いします……っ」
「ノアちゃん、意地悪しちゃダメです」
「意地悪なんてしてないよ。それより他のみんなは納得してるの?」
「そこは賛否両論じゃ。だからノアの判断に任せることになったぞ」
ピオニーが返答を迷っていると、クラウジヤがこちらに駆けてきた。
彼女は鍛冶場で自分の仕事を持って以来、気負うことが減って生き生きとするようになった。
「助けて下さい、お願いします! もう、私たちには帰る場所もないのです……っ」
「クラウジヤ、君たちが作った武器だけどあっちで大好評だったよ。次は今回の3倍の量を買いたいって」
「わははっ、当然じゃ! ワシらのドワーフの鍛造技術はヒューマンにはマネすらできん!」
クラウジヤと笑い合いながら、俺は移民希望者の前で荒野の土を2×2×2に積み重ねて見せた。誰もが声を上げて驚いた。
「しばらくは土蔵の家でもいいなら、今から人数分の家を建てよう。ようこそ、角張った町へ。君たちを受け入れよう」
「お、おお……っ。ありがとう、ありがとうございます、ノア様!!」
「奇跡、奇跡だわっ!」
「ああやってこの町を作ったのか!? なんと凄まじい力なのだ!」
状況が状況だけに彼らは大げさだった。
この判断を不満に思う者もいるだろう。だけど明日は我が身だ。次はこの土地が襲われるかもしれない。
「今度は倒れる前に休むのじゃぞ」
「わかっているよ」
ところがいいところでインベントリが独りでに現れた。
何かと思って閲覧すると、いつものアレだった。
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<人口100人達成を確認>
<メガクラフトのレシピが追加されました。インベントリの限界枠が13になりました>
<建築物コピーの能力が解放されました。建材さえあれば、既存の建物と同一の物を配置可能です>
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・醸造所
石材 × 150
木材 × 10
小麦 × 20
砂糖 × 10
ガラス × 10
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・大規模農園
土 × 256
木材 × 5
石材 × 5
宝石 × 1
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・大公園
草 × 100
水 × 10
木材 × 10
石材 × 5
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インベントリのクラフト画面に新しいタブが生まれて、そこにメガクラウトという項目が増えていた。要求素材が膨大だ。
だがこの大規模農園というのをクラフトすれば、食糧不足に大きく貢献してくれそうだ。
「公園! 公園から作りましょうっ!」
「ここで公園を優先するところがさすがピオニーだね。まずは家を建てよう。それから『建築物コピー』ってのを試っていうのはどう?」
「ワシは賛成じゃ」
ならば決まりだ。どんな家に済みたいのかと希望を聞いて、インベントリの一部を倉庫に移してから工事を始めた。
場所はドワーフの家の隣だ。近い方がいざというとき相互に守りやすい。
――完成した。
「いいですねいいですねっ、おっきいです!」
「お、ぉぉ……これほどまでに立派な家を、こんな簡単に築いてしまわれるとは……!」
この家には個室がない。中は寝室と居間に分かれていて、大きな2階建て構造になっている。
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■ ■ ■
■ 居 扉 寝 ■
■ 間 ■ 室 ■
■ ■ ■
■扉■■■■■■■■■
階段
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容積はそんなでもないけれど、この構造ならばがっちりしていて頑丈だ。いざとなったら2階に逃げ込むこともできる。
モンスターに家を奪われた彼らは安心感を家に求めた。
「じゃ、コピーしてみるね」
「わくわく……!」
「また倒れられても困るからな、これでノアの負担が減るならワシらも安心じゃ」
パネルを操作して、『建築物コピー』を起動した。
それから建物に触れてみると、クラフト画面に似たもの現れた。
「はいはいはいっ、それ私がやるですよーっ!」
「どうぞ」
ピオニーが操作すると、スロットに建材が挿入された。
クラフトと全く同じみたいだ。ピオニーが決定ボタンを押すと、画面がインベントリに移り変わって、『頑丈な2階建ての家』×1がそこに現れていた。




