・開拓8日目 倉庫増築とGOZA 1/2
2人が水浴びに興じている間に、俺の方は倉庫の増築に手を入れることにした。
といっても手元に石材はなく、今から採集していては1日が終わってしまう。
そこでまずは荒野の土で増築を済ませ、後からオブジェクト置き換えの力で石材に変換することにした。
現在の倉庫の大きさは7×7で、内部の容積はキューブ75個分だ。これを14×7に改造する。
「……あっちは楽しそうだな」
クラウジヤとピオニーのいつもより甲高い声を聞きながら、俺は土台の整理から始めた。
つるはしで足下を掘り、そこに建材を再配置することで平坦な地面が生まれる。地味ながらこれはちょっとした魔法だ。
「ほんと、楽しそうだな……」
余った石材3つを含めて荒野の土を並べて土台を完成させると、その次は壁を配置した。
だいぶこの作業にも慣れてきたのか、ほんの3分程度で両側の壁が完成することになった。
その次は既存の石材壁を崩して移植する。
これもてきぱきと作業すればすぐに片付いた。後は屋根を作って、明日にでも石材に置き換えれば完成だ。
「あ、遠くから見ると、我ながら綺麗な仕上がりだな……」
倉庫の屋根に上ると、彼方に大理石のプールが見えた。
それと丸裸で踊り回る2人の姿も見える。ここからじゃ遠くてよく見えないけれど、メチャクチャ楽しそうにプールの浅瀬を駆け回っていた。
「ん……もう少し大きくしておいた方がよかったかな。まあでも、こんなものか」
屋根を敷いて増築を完成させた。
これで内部の容積は12×5×3=180だ。
「あ、柱を追加しないとか」
しかしこのままだと屋根の強度が不安なことに気づいて柱を追加すると、最終的にはキューブ177個分の容積の倉庫が完成した。
ちなみにピオニーたちはまだまだプールではしゃぎ回っている。
なので俺は陶器の扉から倉庫に入って、インベントリの整理をした。
こっちの作業の方が建築より手間がかかってしまっただから、変な話だった。
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【倉庫・石の倉庫】容量:75 → 177キューブ
木材 ×5 /9999999
繊維 ×17 /9999999
石炭 ×23 /9999999 new!
アイアンインゴット ×81 /9999
木綿生地 ×45 /9999 new!
ハム ×45 /9999 new!
干し魚 ×48 /9999 new!
小麦粉 ×200/9999
砂糖 ×50 /9999
精製塩 ×49 /9999
オリーブ油 ×22 /9999
草 ×28 /9999
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【インベントリ】
荒野の土 ×533 /9999999
→ ×445(倉庫の建築に)
石材 ×3 /9999999
→ ×0 (倉庫の建築に)
大理石 ×27 /9999999
石炭 ×23 /9999999
→ ×0(倉庫へ)
ミミズ ×58 /9999
芋(野生種) ×33 /9999
木綿生地 ×45 /9999
→ ×0(倉庫へ)
ハム ×45 /9999
→ ×0(倉庫へ)
干し魚 ×48 /9999
→ ×0(倉庫へ)
??????の魂 ×1 /?
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これでインベントリの占有を5枠まで減らせた。スッキリだ。
明日からまたがんばろうと満足感に浸りながら倉庫から出ると、西の空が赤く燃えていた。
「あいつら、まだ入ってる……。あんなに入って寒くないのか……?」
自宅の階段を使って2階屋上に上がった。
ここからならもう少しよく見える。
「クラウちゃんっ、そいやーっ!」
「わぷっ?! お、おのれーっ、卑怯じゃぞピオニー!」
ピオニーはペラペラの平面生物だ。
クラウジヤが水を叩いて反撃しても、ピオニー側は横を向けばほぼノーダメージなのか平然としている。確かにあれは卑怯だ。
「むふふーっ、一対一なら負ける気がしないのです! かかってくるですよ、クラウちゃん!」
「うぬぬぬぬっ、ならば奥の手じゃっ! ドリャーッッ!!」
「ギャーッ?!」
「わはははっ、力ずくなら負けん! ああ楽しいのぅっ!」
「ゴボボボボ……ぶぺぇっ?! 暴力ですっ、これは暴力ですよ、クラウちゃんっ!」
「逃げろ逃げろっ、もう一度水に沈めてくれるわーっ!」
……あ、いかん。あまりに楽しそうなのでつい見つめてしまっていた。
それにこんな遠くからでもクラウジヤの大きな胸はよく目立つ。なので遠くからでも少し、その……かなり刺激的だった。
「今日は諦めた方がいいのかも……」
このままだとずっと見つめてしまいそうなので、倉庫の圧縮もかねてクラフトをすることにした。
―――――――
・麻布
繊維 ×5
・ござ
麻布 ×2
・草紐
繊維 ×3
―――――――
まず繊維を麻布に変えた。
インベントリから取り出してみると、それは裁断されていないザラザラとした生地だった。
「昔の農民はこれを服にしていたらしいけど……ちょっと信じられないな」
今では綿花を作ったコットンの服が一般的だ。
「お、これが草紐か。これは汎用性が高くていいな……」
次に草紐を作ってみた。
取り出してみるとそれは麻で作られた細い紐だ。何に付けても用途が多そうで、少し多めに作って倉庫に備蓄しておくことにした。
「ゴザ、ゴザってなんだろう……。おっ……」
最後に麻布を材料にゴザとやらを作ってみると、なんとそれは麻布で作られた敷物だった。
綿織物よりもザラザラとした感触だが、これはこれで通気性が高くて快適そうだ。
倉庫の一角に麻布を巻いて立てかけて、その隣に草紐を積み上げた。
紐の一部は持ち帰ることにして、俺は倉庫を離れて自宅に戻った。
それからゴザを2階の空き部屋に敷いてみた。
「あ、なかなかこれは……」
肌触りはザラザラしているけれどなかなかいい感じだ。思った通り涼しくて、それに青々とした良い匂いがした。
そこにピオニーとクラウジヤが帰ってきた。
「おおぉぉーっっ、なんですかそれっ、新しく作ったやつなのですかーっ!?」
「すまん、ノア……。日が暮れてしまったのじゃ……」
「これがゴザらしい。ザラッとしてるけど、そこがなんかいい。麻は貧民の物という思い込みは間違いだね」
2人は髪が濡れていて、水浴びを済ませたからか清潔な女の子の匂いがした。
「わぁっ、これ、寝転がると気持ちいいのですっ。クラウちゃんも試してみるでですよ!」
「本当か……? お……おおっ、これはなかなか……ん、んんっ……♪」
2人がゴザに寝そべると手狭になったので俺の方は身を起こした。
すぐ隣に平面生物ピオニーが、身体の正面をこちらに向けてガン見していたのもある……。
「これなら男ドワーフたちも喜ぶかな?」
「うむ、間違いなく喜ぶぞ。ああ、よいのぅ……このまま眠ってしまいそうじゃ……」
「いいですねっ、いいですねーっ!」
「じゃあちょっとあっちに置いくるよ。それからさっと水を浴びてくる」
「遅くなってすまぬ……」
「いいんだよ。あんなに楽しそうな姿を見たら――あ」
これ、口に出しちゃいけないやつだ。ピオニーは口を大きく開けて、クラウジヤは胸を隠して内股になった。
「はっ?! ノアちゃん……まさか、のぞいてたのですかーっ!?」
「なっなななっ、なんじゃとぉぉーっ?!」
「……倉庫の屋根からちょっと見えただけだよ。遠すぎて何も見えなかった」
「そ、そうか……よかった、のじゃ……」
「むふふー」
「急に何、その笑い……?」
「良い身体してたですよ、むふふーっ♪」
「なっ、何を言っておるそなたっっ?!」
「ぐふふ、ぽいんぽいんだったのです♪ ノアちゃん、見れなくて残念だったですねー」
「こ、こっち見るなっ、変な目で見るな、ノアッ!」
「ごめん、つい。じゃあごゆっくり」
ぽいんぽいんか……。
本音を言えば見たかった。水浴びを済ませたピオニーとクラウジヤは、さっきよりもずっと綺麗で、女の子らしさを感じさせられた。
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【倉庫・石の倉庫】容量:75 → 177キューブ
木材 ×5 /9999999
繊維 ×17 /9999999
→ ×9(麻布と草紐に)
石炭 ×23 /9999999
アイアンインゴット ×81 /9999
麻布 ×10 new!
→ ×8(ござに)
草紐 ×50 new!
ござ ×10 new!
→ ×9
木綿生地 ×45 /9999
ハム ×45 /9999
干し魚 ×48 /9999
小麦粉 ×200/9999
砂糖 ×50 /9999
精製塩 ×49 /9999
オリーブ油 ×22 /9999
草 ×28 /9999
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