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・開拓1日目 石材≒

 急場しのぎの家も建ったことなので、夕日を背に東の荒野へと出た。


「ノアちゃんはー、どこからきたんですかー?」

「あっち」


「あっちですかー! じゃあじゃあ、あっちのどこですかー!?」

「そっち」


「さっきと全然反対側じゃないですかーっ! もーっ、ちゃんと教えて下さいよーっ!」


 狙いは木材、繊維、石材の採集だ。どれもバラック小屋のクラフトに必要になる。

 それ抜きにしても、今夜の暖のためにも薪となる何かを確保したかった。


「海の向こうだよ。それより、そっちには何かあった?」

「あ、そうでした! あっちにこーんくらいの岩が少々!」


「そっちを先に教えて欲しかったな。よし、案内してくれる?」

「アイアイサーッ! こっちだよーっ、ノアちゃん!」


 ピオニーはやたらに元気なので、北側の探索をお願いしている。

 2人で平行して東を目指して、何かを見つけたら報告してもらう探索範囲2倍作戦だ。


「お、ぼちぼちでかいな。ありがとう、ピオニー」

「どういたしましてー! それよりノアちんのそれ、やっぱり見てるだけで面白いです!」


「そうかな」

「うんっ! あっ、それ使えばー、私もノアちゃんの中に入れるのかなー……?」


「いや、それは、どうなんだろう……。そういう怖いことをサラッと言うなよ……」


 クワで大岩をゴツンゴツンと何度も叩いてゆくと、爽快な手応えと共に岩が光となって俺の中に消えた。


――――――――――――――――――――

 石材 ×9 /9999999 new!

――――――――――――――――――――


 石材すらろくすっぽないなんて貧相な土地だ……。

 いっそまだ誰も所有者がいない土地まで遠征して、資材はそこで手に入れるべきなのだろうか。


 そう考えると、この土地の資源の乏しさにも納得できる。

 きっとみんなが同じことをしたのだ。だからここには何もないのかもしれない。


 それでも俺たちはまた手分けをして、東の荒野から使えそうな資源を回収していった。



 ・



「やっぱり木材が少ないね……。今日明日の暖はどうにかこれで取れそうだけど……」


 収穫は今一つだった。夕闇が長く色濃くなるまで粘ってみても、回収できた木材はインベントリ上によるとたった×2だった。


「贅沢は敵ですよ、ノアちゃん。ノアちゃんには、こんなに素晴らしい神様の加護があるのです! ノアちゃんは恵まれていますよ!」

「……そうかな」


「そうですよー! 私、ノアちゃんのこの力好きです。だって、とっても楽しいです! これがあれば、お家を作り放題ですよー!」

「どうしても厚さ80cmの壁と天井になるけどね……」


「あっ! あれ見てっ! 隊長、あそこに岩山があるであります!」

「おっ……」


 小さな丘を登り切ると、その先に平たく横に長い岩山があった。

 期待にピオニーと一緒になって駆け寄ると、俺はとあることに気付いた。


「どうしたのー、ノアちゃん? あとちょっとですよ!」

「あそこまで行く必要はなさそうだよ。だって――」


 クワを正面の大地に2度振り下ろすと、推測は現在のものとなった。


――――――――――――――――――――

 石材 ×9   /9999999

  → ×10

――――――――――――――――――――


 荒野の土に表面を覆われて見えなかっただけで、ここ一帯の大地は一枚の岩盤でできている。


「やっぱりね」

「おおーっ! もしや、この石材っていうのがあれば、石の家が作れるですかっ!?」


「石の家……? 言われてみればそうなるのか」

「素敵です! ガンガンもりもり集めましょう! 石のお家作り、私がんばりますね、ふんすふんすっ!」


「なら、俺ももう少しがんばってみるよ」


 ありがとう、ピオニーと言いかけてやっぱり止めた。

 俺はキューブ状の陥没に降りると、クワを振って振って振りまくって石材を採集していった。


 どうやらキューブ1つ分の石材となると、最低で2回の打撃が必要になるようだ。中には3回も叩かないと壊せない層もあった。


「あ。でもー、そんなに集めてどうするですかー?」

「俺の加護は、思っていたより凄い力だったのかもしれないね……」


「そんなの知ってますよっ! だーかーらー! それでお城みたいなお家を建てちゃいましょう!」

「いや、んなもん建ててどうする……。そうじゃなくて、凄いのはインベントリの方だよ。俺は事実上、重量0で無限の石材を持てる」


「わぁ! それ、魔法みたいですね、魔法! やっぱりノアちゃんは凄い子です!」


 俺をおだてるつもりではなくて、本気で言っている顔だった。

 そもそもコイツには、人をおだてるという発想がないのかもしれない……。


「まあ要するに、ここで石材を採集しまくって、余った分を街で売るんだ」

「へ……。石って、高いですか?」


「高い。このサイズの立方体に整形された石が、運搬コスト0で運べるなんてまさに魔法だ、反則だ。確実に、これは、儲かる!!」


「おおーーっ!? よくわかんないけど、凄いです! お金持ちになっても私たちお友達ですよ!?」

「友達? ……俺たち、友達だったのか」


「えーーーーっっ?!」

「……まあ、既に同じ夜を過ごす仲間ではあるね」


「ぁ……う、うん……同じ夜、ですね……。は、はひっ……ふつつか者ですが、よろしくお願いします……っ」

「びっくりするから急にしおらしくなるな……」


「へへへー、もしかして、今のかわいかったですかー? あ、手が止まってますよ、ノアちゃん?」

「君が妙なことを言うからだ……」


「やっぱり! ノアちゃんは私に一目惚れしてますねっ!」

「してねーよ……」


 取引を通じてこの石材が様々な資材や食料に変わる。

 赤黒い夕焼けの世界で、俺は何かに急かされるように再び腕を動かして、石の家もなかなか悪くないなと次第に乗り気になっていった。


もしよろしければブクマと評価をいただけると嬉しいです。

今夜00時にもう1度更新予定です。ヒット作が欲しいです。応援して下さい。

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