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・開拓7日目 星の夜

 それから夕食を食べて、広い家でみんなで食後を過ごすと眠る時間がやってきた。

 だけど俺は昼間ずっと寝ていたのでまだ眠れそうもない。そこで屋上に上がって星を見た。


「ノア、まだ寝ないのか? ん……外はもう冷えてきているな」

「ノアちゃんはー、お星様見てたですかー?」


 2人が寝たらこっそり草のベッドを作ってそこで寝ようと思っていたのに、これではそうもいかなそうだ。


 左にピオニー、右にクラウジヤが寝そべっきてて、2人は俺と一緒に星空を見上げた。頭上に広がる濃紺の空は、まるで海の中に星が浮かんでいるかのようだった。


 故郷にいた頃は明るくて白い星しか見えなかったのに、ここでは星の細かな色合いまでわかる。真っ暗闇の世界で、星と月だけが静かに輝いていた。


「せっかくここを作ったんだから使わないと損でしょ。……あ、そうだ、2人ともちょっと立って。せっかくだから織物を敷くよ」

「それはとってもいい考えなのです」


 跳ね上がるようにピオニーとクラウジヤが立った。


「せっかくたくさん買ったんだから使わないとね」

「掛け布団になるやつも欲しいのです。そしたらもっと温かふわふわなのですよ~」

「そなた、まさかここで寝る気か? いや……じゃがそれも悪くないな……。屋上で星を見上げながら眠るなんて、なんてひとときじゃろうか……」


「君たち正気?」

「うむ、正気も正気じゃ。ここでこのまま寝たら気持ちよさそうじゃ」


「朝方の冷え込みと結露を考えると、止めておいた方がいいと思うけど……」


 床に綿織物を敷き詰めて、要望通りに掛け布団となる布を取り出した。

 やわらかな織物に背中を預けて、温かな布をかぶるととても気持ちがいい。


「あう……。私、なんか、寝ちゃいそうなのです……」

「ならますます止めた方がいいよ」

「まあいいではないか。冷え込む前に下に戻ればいい」


「寝ちゃったらそうはいかないでしょ」

「だがこれは最高じゃ! そなたと出会えて、ワシは幸運じゃったと今再確信したほどじゃ! この家は素晴らしい! これほどまでに人を幸せにできる加護は他にない!」

「ふんすふんすっ、ピオニーもそう思うですよーっ! あ、明日はどうしましょうかー?」


「明日? まずは井戸の作成かな。蒸留に頼らない綺麗な真水の確保をしたい」

「いいですねー、そしたらー、ご飯も色々作れちゃいますねー!」

「な、なんてことじゃ……。ピオニーの料理がさらに美味くなったら、ワシらはもう他の食事が喉を通らなくなってしまうぞ……」


「へへへー、ありがとうございます、クラウちゃん♪」

「感謝するのはワシらの方じゃ! よーしっ、俄然やる気が出てきおったーっ!」

「君たちはいつだって食べ物が中心なんだね……」


 今日の夕飯に食べたトマトとハムとオリーブオイルのサラダは、確かに過不足のない絶妙の味付けで、最高に美味しかったけれど……。


「井戸が正常に動いたら穴を掘ろう」

「穴……? なんの穴じゃ?」


「公共風呂もとい、プールかな。作った穴を石材で覆って、そこに水をためるんだ」

「でもでもノアちゃん? 足揚げを取るですけどー、お風呂よりー、プールの方が贅沢な響きがするですよー?」


 足揚げ……? ああ、揚げ足のことか……。あえて突っ込まないでおこう。


「まあ確かに」

「水浴びかぁ……。それは、かなり惹かれる提案じゃなぁ……♪」


「きっとその夢も明日には叶うよ。明日からもがんばろうね」

「ノアちゃんはー、ほどほどにですよー? あ、どこ行くですかー?」


 昼間あれだけ寝たのにまた眠くなってきた。

 俺はその場を立ち上がると、屋上の階段に足をかけた。


「ごめん、なんだかマジで疲れてるみたい……。きてくれたところ悪いけど、先に下で寝てるよ」

「待て!」


 暗い階段を下りようとすると、クラウジヤの気持ち大きな声に引き留められた。

 何かと思い振り返ると、彼女は機敏にその場から立ち上がっていた。


「ノア、ワシはそなたに感謝しておる」

「それは前も聞いた」


「茶々を入れずに最後まで聞け。今のワシらは、そなたにとってはさぞ頼りない住民かもしれん……。じゃが、ワシらはワシらなりにそなたをサポートしてゆくつもりじゃ! ワシらはいつまでも、お荷物でいるつもりはないぞ!」


 迷い迷いに手を握られた。肌寒いこんな時刻なのもあって、それはとても温かく感じられた。


「じゃから、あまり無理をするな……」

「そうですよー。みんなで、ゆーっくり、よくしていきましょうねー」


 そこにピオニーまで立ち上がってきて、その必要もないのに手を重ねてきた。

 まるで友達ごっこだ。新大陸にくる前の俺なら、そう意地の悪い感想を抱いていただろう。


「……そうだね、よく心に留めておくよ。それじゃ、おやすみ」


 階段を下ってゆくと眠気と疲れが倍に膨れ上がった。意識できない潜在的な疲労がまだ肉体に残っているのかもしれない。


俺は2階から飛び降りると月に輝く白磁の扉をくぐって、巨大な花のベッドに横たわった。

 眠気まなこでベッドサイドを見れば、そこに5つの宝石が並んでいる。


 大切なコレクションを消費するのが惜しいけれど、明日は残りの芋も集めてピオニーのアップグレートもしよう。

 そうしたらきっと、今よりもずっとよくなってゆくはずだ。


 もしかしたらアップグレードであの可憐な姿になってくれるかもしれないと期待して、俺は重いまぶたを閉じた。

 ああ……今日はほとんど何もしていないはずなのに、なんだかとても疲れた……。


――――――――――――――――――――――

 荒野の土   ×51  /9999999

      → ×47(陶器のテーブルに)

 石材     ×23  /9999999

 石炭     ×20  /9999999

 ミミズ        ×40 /9999

 芋(野生種)     ×41 /9999

 木綿生地       ×45 /9999

 ハム         ×47 /9999

 干し魚        ×49 /9999

 ??????の魂   ×1  /?

――――――――――――――――――――――

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