・開拓7日目 窓、扉、梯子!
2人を屋上に残して地上に下りて、さあ次は何を作ろうかとインベントリを開いた。
するとそこには、俺たちがこの7日間ずっと待ち望んでいたある物が姿を現していた。
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〈高さ10キューブの建造物の完成を確認。〉
〈加護・ビルド&クラフトがランク5に成長しました。〉
〈以下のクラフトが開放されました。〉
・ガラス窓
材料
ガラス × 3
建材 × 1
・簡素な扉
材料
建材 × 3
金属 × 1
・不思議な梯子
材料
金属 × 5
猛禽の羽根 × 1
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それは扉だ。俺たちの家には今日までずっと扉がなかった。
かといってキューブで出入り口を塞ぐわけにもいかず、今日までずっとかゆいところに手が届かない生活を味わってきた。
加えて窓とハシゴも魅力的だ。このガラス窓というのを設置したら、昼間の家がそれだけ明るくなる。
ハシゴの方にも童心を刺激させられずにはいられない。2階へと続くハシゴの登り口を作ったら、この家の特別感が大きく増すだろう。
「ピオニー、クラウジヤ! ちょっとこれ見てよ!」
早速屋上の2人にレシピを見せてみた。
自分なりにクールを気取っているはずなのに、ついつい子供みたいにはしゃいだ言葉になってしまっていた。
「おぉぉーっ、やりましたね、ノアちゃーんっ! ついに……ついに私たちのお家に、扉が付いてしまう日がきたのですよっ!」
「むしろ今日までなしで生活していたのが不思議なくらいじゃな」
「ガラス、ガラスの窓も絶対欲しいですねー! ガラスはどこに行ったら手に入るですかー?」
「うん……そのレシピの問題といったらそこなんだよね……。木戸ならまだしも、ガラスはちょっと調達がね……」
ガラスというのは非常に貴重なものだ。
まず作るのに大量の燃料がいて、原材料となる珪砂もまた必要となる。これはポート・ダーナでも買えないだろう。
「木戸でいいならワシらが作るぞ。木工道具があればの話じゃが……」
「本当?」
「うむっ、材料さえあればワシらはガラスだって作れるのだぞ!」
「おぉーっ♪ クラウちゃん、しゅごいのです!」
「そ、そうか……? ま、まあ、それだけのことはあるかもしれんな、わははっ!」
ならば今作れる物から手を付けていこう。
俺はクラフト画面からインベントリに画面を移して、現在の在庫を確認した。それに続けて倉庫の方もだ。
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荒野の土 ×60 /9999999
石材 ×23 /9999999
石炭 ×20 /9999999
ミミズ ×40 /9999
芋(野生種) ×41 /9999
木綿生地 ×45 /9999
ハム ×47 /9999
干し魚 ×49 /9999
??????の魂 ×1 /?
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【倉庫・石の倉庫】容量:75キューブ
木材 ×3 /9999999
繊維 ×31 /9999999
アイアンインゴット ×99 /9999
小麦粉 ×200/9999
砂糖 ×50 /9999
精製塩 ×49 /9999
オリーブ油 ×22 /9999
草 ×1 /9999
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「扉を作るのですねっ、ではお水を材料にしましょう!」
「それはそれできっと面白いことになるのは認めるよ。だけど、それじゃ扉が扉の役目をなさないでしょ」
「そうですかー?」
「そうだよ」
「お水、ダメですかー? お水なら透け透けでー、扉を閉めてもお外の光でキラキラで、お家が明るくなると思うですよー?」
そう言われると強く惹かれるものがある。ただ金属と水は相性が悪そうだ。
「さぞ神秘的で美しい扉になるじゃろうな」
「そうですよねっ、クラウちゃんもそう思うですよねーっ」
「じゃが、この土地ではモンスターの群れを相手にどう自衛するかも考えておいた方がいいぞ。水の扉を作るにしても、屋内にしておくべきじゃろう」
「しょぼーん……。わかったです……クラウちゃんがそう言うなら、諦めるです……」
「なら今回の材料は荒野の土でいいかな。木材は貴重だし、土の家に石の扉というのはミスマッチだ」
有無を言わせぬ消去法で『荒野の土』をスロットに入れ、既にインベントリに移しておいた『アイアンインゴッド』も隣のスロットに入れた。
「土の扉か。それはそれで面白いではないか」
「強度が心配だけど、まあ間に合わせということで今はこれにしよう」
「ノアちゃんノアちゃんっ、ここはかわいいのでお願いします!」
「鉄と土が材料でかわいくなる予感がしないよ」
「そんなことないですよー。あの壷みたいに、ピンクのかわいいのができるに決まってるですよー」
「いや、だけどピンクはちょっと……」
「ワシは黄緑色がいいぞ!」
「あっあっ、それもいいですねー!」
扉にくらい彩りが欲しいという気持ちはよくわかる。
しかしあまりに少女趣味だと、男ドワーフたちにますます性別を誤解されそうだ……。
「じゃ、作るね」
「うむっ、なんだかわくわくじゃのぅっ!」
「ぴんくっ、ぴんくっ、ぴんくですよっ、ノアちゃん!」
「それは嫌」
「えーーーっ?!」
どうかピンクにだけはなりませんにようにと祈りながら、画面のOKボタンを押した。
「おお、5つも完成したようじゃぞっ!」
「やったですねっ! しゅごいですねっ、しゅごいですねーっ、これだけあったらいっぱい置けちゃいますねー!」
「いやどっちかというと、5つも同時にできてしまう融通の利かなさが、この加護の弱点なんじゃないかな」
画面がインベントリに移り、そこに『陶器の扉×5』が完成していた。
うちの1階に2つ、2階に1つ、ドワーフの家に1つ配置したところで1つ余ることになる。
「そんなことより早く早くっ、早く置いてみて下さい!」
「ならピオニーが配置するといいよ」
任せるとそう伝えると、ピオニーは素早い操作でインベントリから『陶器の扉』を全て引き出した。
実を言うとなんだか少し身体がだるくなってきていたので、このまま調子に乗せて設置を任せてしまおう。
「いくですよーっ?」
「陶器の扉とはどんなものじゃろうなぁ。ワシは白磁も好きじゃから、真っ白なやつもいいかもしれんなぁ!」
「ノアちゃんも早くこっちくるです!」
「はいはい。じゃあお願い」
「いきますよーっ、そいっ!」
いつだって開けっ放しだった出入り口に、ピオニーの手で陶器の扉が設置された。
「おっ、おぉぉーっ!? やりましたっ、これはお皿と同じやつですっ、ハクジーですよーっ、ハクジー!」
「違う。白磁じゃ」




