・開拓7日目 天高くそびえる石の屋上 2/2
「そなた、本当に貴族なんじゃな……」
「一応ね。もっと偉そうにいばり散らした方がいい?」
「たぶん、そなたはそういう人間ではなかろう」
「さてそれはどうかな」
クラウジヤは俺の手をふりほどいて、恵まれた身体能力で2階へ、さらに3階へと駆け上がっていった。
「クラウちゃんっ、いらっしゃーいっ! どうですかっどうですかーっ、これっ!」
「お……おぉぉーっっ!! これは、なんという絶景じゃろうか!!」
2階建てにするのが目的だったはずなのに、2人が飛びついたのは3階からの見晴らしだった。
それも無理もないと、クラウジヤの後を追って階段を跳ね上がるたびに、俺もその高く果てしない見晴らしに目を奪われた。
「これはかなり高いね」
「ですねですねっ! ほらあそこ見て下さい、丘の向こうが見えちゃうんですよーっ!」
「良いな……。もしこれをもう1階分大きくしたら、そこからはどんな光景が見えるのじゃろうな……」
「2人とも、高所恐怖症って感じではなさそうだね」
土台を含めればキューブ9段分の高さだ。つまり7.2mの高さから俺たちは乾いた荒野を見渡している。
初めは木も水も何もなかった荒れ地に、蓮池ができて、玉石の道と倉庫ができて、少し先にはドワーフの大きくて平たい土の家が生まれている。
俺が手を入れた土地は全てが段差のない平地となり、未採掘の土地との境界線が直角に隆起していた。
さらにここから彼方に見える石切場に至っては、キューブ化による常識外れの採掘によって、まるで古代の神殿か何かのように見える。
「あっ、今いいこと思い付きました! もっともっと、お家を高くしちゃいましょう!」
「本気? 一応聞くけど、なんのために増築するの?」
「りゆー? 理由なんていらないですよ?」
「いや、いらないってことはないでしょ……」
「それにー、お家をいっぱい用意すればー、ドワーフさんたちが増えても困りませんよー?」
「うむ、我が同胞がいずれくるのじゃ! 何も困らん! 天高くそびえる家屋を築き、やつらを驚かせるとしよう!」
ピオニーは子供みたいに両手を揺すって、クラウジヤは俺と目が合うと強引なハイタッチを繰り出してきた。
「2人とも興奮しすぎだよ。そうやって騒ぎたくなる気持ちは、凄くわかるけれど」
確かめるようにもう一度彼方を見やった。
最高の眺めだ。あまりの絶景に景色から目が離せない。
どこまでも続く終わりのない荒野の中で、俺たちが築いた開拓地が燦然と輝いている。
荒涼としたこの不毛の土地も、こうして生活の基盤が築かれてゆくと、一変して味わい深い景色となってゆくのだから不思議なことだ。
俺たちはそれからしばらくの間、その美しい見晴らしと、自分たちが築いた世界に魅了された。
……だけどよくよく考えてみたら、どんくさいピオニーがこの高さから落ちたら大変だ。そうふと思い立った。
「ノアちゃん、何してるですかー?」
「少し狭くなるけど一応、間に合わせのフェンスを作っておこう」
屋上の外周をハーフサイズの石材を使ってフェンスにした。
スリリングさはこれで少し減ってしまったけれど、高さ80cmのフェンスが加わると、よりしっかりとした建物に感じられるようになった。
「いいですね。これならここでお昼寝しても大丈夫ですねー」
「洗濯物も乾きそうじゃな!」
「まだ洗濯に使うだけの綺麗な水がないけどね」
「大丈夫です。それも、ノアちゃんならどうにかしてくれるですよー」
「うむ、ノアは水すらキューブに変えてしまう男じゃからな」
「ふんすふんすっ、それとそれとっ、あそこの畑も大きくしたいですねーっ。そしたらー、美味しいものがいっぱいですよーっ」
「ワシも大賛成じゃ! ああ、夢が広がるのぅ! それとここ一帯には最低限の外壁も築きたいところじゃなぁ!」
「お花とか木も欲しいです!」
「納屋と溶鉱炉もじゃ!」
こうして俺たちの家に2階が完成した。
2人は子供のように無邪気に笑い合いながら辺りを指差して、あそこにはあれを作ろうと、空想の世界で幸せな未来を思い浮かべた。
2人は興奮のあまりかウサギみたいに跳び跳ねている。彼女たちはこの苦境をものともしていなかった。
「ノアちゃんは何を作りたいですかー?」
「クラフトの井戸を試してみたい。もしかしたらそれで水の蒸留なんてしないで済むかも」
「おお、井戸か! そういう力仕事ならワシ向きじゃ!」
順番にやっていこう。
俺たちの前には、まだまだやりたいことが山積みとなって存在していた。
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荒野の土 ×69 /9999999
→ ×60(2階階段に)
石材 ×110 /9999999
→ ×23(2階増築に)
石炭 ×20 /9999999
ミミズ ×40 /9999
芋(野生種) ×41 /9999
木綿生地 ×45 /9999
ハム ×47 /9999
干し魚 ×49 /9999
??????の魂 ×1 /?
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