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・開拓7日目 天高くそびえる石の屋上 1/2

「ノア、オレタチ、女神!」

「女神ノア、ガンバル!」


「イッテクル! オレタチ、ベッド、フヤス!」


 朝食を済ませて、ドワーフ2人組が採集に出るのを見送った。

 素朴で邪心のない良いやつらなのだけど、融通が利かないというか、俺はイイ女から女神に格上げされてしまっていた。


「ふぁぁ……。眠いのじゃ……世界が揺れてるのじゃ……」

「かなり寝不足みたいだね。俺はぐっすりだったよ」


「そんなの知っておる……」

「気持ち、わかるですよー。私もノアちゃんと最初に寝た夜はー、大変でしたよー」

「なら彼女を真ん中に寝かせようだなんて考えるなよ……」


「えへへー、ごめんねー、クラウちゃん。昨日の夜は楽しくて、ちょっとやり過ぎたかもです」

「もうよい……。あれはあれで、貴重な体験じゃった……」


 たかだか隣り合って寝ただけなのに、クラウジヤの言い方は随分と大げさだ。

 しかし寝不足の青い顔に朱色の興奮を混じらせるところからして、本気で言っているようだった。


「ワシは、初めてじゃった……」

「ちょっと待った、なんかその言い方が気になる! 言っておくけど俺は何もしてないからね!?」


「なっ、そ、そういう意味ではないぞ……っ!? お、男と寄り添いあって寝たことなど、生まれて初めてじゃったと、そう言っておるのじゃ……っ!」

「はへ……?」


 あまりに彼女の反応が大げさだったので、ピオニーが首をかしげた。


「ああそっか。ドワーフって、性別で家が別れてるんだっけ」

「なのじゃ……そうなのじゃ……。よって昨晩は、ワシにとって冒険……いや、大冒険じゃった……。ん、んん、ふぁぁぁ……っ」


「そんなに眠いならまだ仕事はいいから、家で少し休んでおくといいよ」

「2階ができたら呼びに行くですよ。それと、あらためて昨日はごめんなさいです」


「すまぬ、ならば今日は、お言葉に甘える……。昨晩は、本当に眠れなかったのじゃ……」


 クラウジヤは工事予定のないドワーフの家の方ではなく、うちの家の方に入っていった。

 すぐにベッドに倒れ込む音がした。


「なんか、とっても、悪いことしたですねー……」

「そうだね。だけど昨晩はなんだかんだ面白かったかな。あいつ、ちょっと荒っぽいくせに男に免疫が全くなかったんだね」


「はいっ、そこがとってもかわいいですっ」

「そうだろうけど、あまりそこをいじってやると可哀想――いや、まあこの話はいいや。さて、さっと2階を作っちゃおうか!」


 そういうことで俺たちは1段40cmのダイナミックな階段を使って屋上に上った。

 何度上がってもここはいい眺めだ。白い朝日に照らされた大地は、一昨日見た姿よりも直角でデコボコとしていた。


「ノアちゃんいっぱいがんばりましたねー。丘のあそこ、バターをナイフで切ったみたいになってて、面白いです」

「この調子でここ一帯を平地にしたいところだね」


「お家もいっぱい建てましょう!」

「そうだね」


「そしていつかお店屋さんも!」

「それもいいね」


 インベントリを出して、石材を60個ほどピオニーに渡した。

 今回は下のフロアと同じ構造にする。

 そうなると必要となる石材は――


 全体の容積(6×7×4) - 室内の容積(4×5×3)で、87個だ。


「強度を考えると下と同じ構造がいいと思う。壁ぞいに石材を並べていこう」

「じゃあ、ピオニーはあっちとこっちの壁、作りますねー」


「うん、俺はそっちとあそこの壁にするね」

「では競争です! よーい、どんっ!」


「競争はしないよ」


 北と東の壁を担当して、石材を1つ1つ積み重ねていった。


「ピオニーの勝ちーんっ!!」

「競ってないって言ってるでしょ。……はい、こっちも終わり。さあ次は――」


「屋根ですね、屋根! 足場お願いしますよ、親方ーっ!」

「はいはい、ちょっと待ってね、ピオニー隊長」


 四方の壁と出入り口が完成したので、その次は土の家の外壁の上に、荒野の土を重ねて階段を作る。 


「むむむむ……インベントリ、せめて2つくらい欲しいです……。そしたらもっと、ノアちゃんのお手伝いができるのに……」

「君のアップグレードをしたら、枠が増えたりするのかな」


「おお……。それはお芋を犠牲にする価値があるかもしれないですね……」

「素材がたまり次第やってみよう。……ところでこの家の雰囲気、自画自賛かもだけどなかなかよくない?」


「よいですっ、ピオニーも同じこと思ったところですよーっ。お家の屋上に階段があってー、1番高いところに繋がってるなんてー、とっても面白いですねーっ!」


 3階屋上へと続く階段が完成した。

 ピオニーがまるで妖精みたいにそれを駆け上がって、3階屋上に屋根がまだないことを思い出してビックリと踏み止まった。


「じゃ、屋根をお願い。俺はクラウジヤの様子を見てくるよ」

「ふんすふんすっ、ピオニーに任せるですよっ」


 俺は玄関の前に飛び降りて、中のクラウジヤの様子をうかがった。

 厚さ80cmのキューブでできた家は思いの他に騒音に強い。クラウジヤは花と草のベッドで安らかに眠っていた。もう少し寝かせておくべきだろうか……。


「ん、んん……。ノア……? いつからそこにおった……」

「ついさっきかな。2階の完成を伝えにきたけど、眠いならもっと寝たらいい」


「おお、ついにできたか……。見たい」

「じゃあ一緒に行こう」


 クラウジヤに手を差し出すと、迷い迷いに彼女は手と手を繋いでくれた。

 彼女を引っ張り起こして、そのまま手を引いて、2階への階段前までエスコートした。


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