・開拓6日目 分厚く大きな土の家の内装作り - 水と蓮のテーブル -
クラフト画面から『シンプルなテーブルとイス』の項目を選び、スロットに「綺麗な沼の水』×4を入れた。
「君が発案者なんだから、このボタンはピオニーが押してよ」
「おぉっ! いいんですかいいんですかっ、それっ、私がやってもいいんですかーっ?」
「もちろん。これで失敗したらピオニーのせいにできるしね」
「えーーっ?!」
「責任重大だよね」
「えーっ、ええーーっ?! そ、そんなこと言われても……えぇー!?」
「じゃれ合っとらんではよ押せ、もどかしい……。押さぬならワシが押すぞ!」
「わーっわーっ、ダメですダメですっ、ピオニーが押すですよーっ!」
ピオニーは気づいていないみたいだけど、クラウジヤはパネルに触れることすらできなかった。まるで幽霊のようにパネルはクラウジヤの指をすり抜けていた。
「ぽちぃっ!!」
ピオニーがOKボタンを押すと、画面がインベントリに切り替わった。
そこに新たに追加されたのは、透けるような水色をしたテーブルとイスの画像だ。名称の部分にはこうあった。
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水と蓮のテーブル ×1
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「ほわぁぁーーっっ、蓮です蓮っ、蓮ですって!」
「いいのいいのぅっ! これは絶対に良いやつで決まりじゃの! ……ただ、ワシはこの画面に触れることができぬようじゃの。残念じゃ……」
「そこはピオニーが特殊なんだと思う。さて、それじゃピオニー、設置の方もお願いできる?」
「任せてガッテン!」
「ガッテンって言いたいだけでしょ」
「そうです!」
インベントリ画面から『水と蓮のテーブル』が消えた。
「ぇ、ぁ……っ?!」
そうとなると設置の邪魔になるので、俺はクラウジヤの手を取って壁際までエスコートすることにした。
「その辺りでいいよ、お願い」
「ガッテンガッテン! それじゃ、ここに置きますよーっ?」
「お願い。……ん、クラウジヤ? どうかしたの?」
「な、なんでもないのじゃ……」
「はい、気持ちはわかりますよ、クラウちゃん。でも、ノアちゃんはそういう人なのです」
「なんのこと?」
「なんでもないですよー。ではでは、設置しちゃいますねーっ!」
ピオニーが『水と蓮のテーブル』の出入り口寄りの床に配置した。
するとその途端、些細な疑問なんてどうでもよくなって、俺はクラウジヤの手を興奮に握り締めていた。
「ほわぁぁーっっ♪ こ、これはっ、これはしゅごひ……っ!!」
「綺麗だね。アンティークなんて目じゃない」
「お、おい……手、手を離せ……っ。いつまで触っておるつもりじゃ……っ」
「あ、ごめん」
「見て下さいノアちゃんっ、このテーブル、ぽいんぽいんっですよーっ!」
ピオニーが丸いテーブルを指でつつくと、水は彼女の白い指を弾き返した。
液体が個体を跳ね返すなんて不思議だ。いったいこれはどうなっているのだろう。
気になって俺はクラウジヤの手をそのまま引いて、離してほしいそうなのでそこまでくると解放した。
「これは初めての感触かも」
「な、なんじゃこれは……。なぜ水なのに、ワシの手を跳ね返しおる……」
水と蓮のテーブルは、蓮を水の中に閉じ込めたような優美なデザインだった。
蓮の長い茎が骨組みとしてテーブルの中を走っていて、それはイスの方でも同じだった。
「おっ……。これ、かなり座り心地いいぞ……。ヤバい……」
「本当ですかっ!?」
「最高だ……」
「そんなに……? では、私もよっこいしょっと……おっ、おぉぉぉ~~♪ こっちも、ぽいんぽいんなのですっ!」
こちらはテーブルよりも弾力がやわらかい。
グニグニとした素材が腰とお尻をやわらかく受け止めて、まるで最高級のソファーみたいな座り心地だった。
「いかん……立ち上がるのが急に億劫になってきたのじゃ……。ここでそなたらとだらだらと喋って、疲れたらこのまま眠ってしまいたい気分じゃ……」
「はふぅ……それ、わかります……。はふぅ、はふぅぅ……ふぁぁぁぁ……」
わかる。とてもよくわかる。
今日は少しがんばりすぎたのかもしれない。こんなにがんばったのだから、残りの1日ここでダラダラと過ごしても許される。急にそんな気がしてきた……。
「はっ?!」
あわや堕落しかけたところで、俺は4人がけのイスから飛び上がった。
全てを受け止めるそのあまりの心地よさのせいで、危うく貴重な午後を無為に過ごすところだった。
「眠いです……。へへへ、スリスリ……」
「ベッドに行くのもだるいのじゃ……。ワシは、もうここで寝る……」
人を堕落させるイス。そんなフレーズが頭に浮かんだ。
「なら2人はそこで休んでるといいよ」
「すぅ、すぅ……」
「のぅ、ノア……」
「何?」
「寝顔を見たら、ワシは怒るぞ……」
「ここじゃ暗くてよく見えないよ」
そう言葉を返したのに、クラウジヤは無防備な寝顔をさらして寝息を立てていた。
きっと疲れが溜まっていたのだろう。特にクラウジヤはずっと放浪していたのだから、休息が必要だ。
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・平皿とフォーク
材料
土 ×4
金属 ×1
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パネルをクラフト画面に戻して、前から気になっていたやつを選んだ。
ちょうど土がたくさん余っていて、おあつらえ向きにテーブルとイスが完成したところだ。
土スロットに荒野の土を、金属スロットに倉庫から取ってきたアイアンインゴッドを入れて、OKボタンを押した。
「予想はしてたけど、36個って……。あ、これって白磁じゃないか……っ!」
インベントリから『平皿とフォーク』をテーブルに配置してみると、フォークはピカピカの銀色で、平皿は透けるように白い白磁でできていた。
3人分の皿とフォークをテーブルに重ねて、せっかくなので玉石の道を通って、ドワーフの家にも皿とフォークを4人分配置した。
どうしよう、それでもあと29セットもある……。
「せめて食器棚があればな……。あれ、もう夕方……?」
家を出て空を見上げると、青かったはずの西の空が淡い琥珀色に変わっていた。
夜がやってくる前に、暖炉を作らないといけないな……。
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荒野の土 ×69 /9999999
→ ×65(クラフトに)
石材 ×123 /9999999
石炭 ×20 /9999999
ミミズ ×40 /9999
芋(野生種) ×41 /9999
木綿生地 ×49 /9999
ハム ×48 /9999
干し魚 ×50 /9999
??????の魂 ×1 /?
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【倉庫・石の倉庫】容量:75キューブ
木材 ×2 /9999999
繊維 ×31 /9999999
アイアンインゴット ×100/9999
→ ×99(クラフトに)
小麦粉 ×200/9999
砂糖 ×50 /9999
精製塩 ×49 /9999
オリーブ油 ×22 /9999
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