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・開拓5日目(夜) 指先からオリーブオイル

「ニク……!」

「ニクッニクッ! ゴニョゴニョゴニョ……!」


「それとオリーブオイル」

「んなっ、なんなんじゃ貴様はーっ!?」


「その気になれば手から砂糖とか塩も出せるよ」


 ちょろいなコイツら。食べ物を見せると目の色が変わった。態度も一変した。

 俺たちは互いの事情も知らぬまま、それぞれ手分けをして晩ご飯を作って、やがて温かい夕飯でテーブルを囲んだ。


 1品目はハム、いんげん豆、ポテト、コーンを使ったトマトベースのスープで、2品目はオリーブオイルと塩で炒めた厚切りハムだ。

 後者はドワーフたちが自分のスキレットで焼いてくれたので、どうにかドット絵化だけは避けられた。


 テラスから花崗岩の美しいテーブルを運んだ。

 イスは2つしかないのでそのままにして、みんな立ち食いだ。


 こうして同じ食事を口に運ぶ頃には、俺たちはすっかり和解していた。


「住処、追ワレタ……」

「行クトコ、ナイ……」

「畑、謝ル……ゴメン」

「気にしないでよ。俺だって同じ立場なら、同じことをしたよ」


「アリガトウ、ノア」

「ノア、イイ女……」

「君らね……。だから俺は女でもドワーフでもないって言ってるでしょ……」


 10日ほど前、ヒューマンの軍隊が彼らドワーフの村を襲撃して、恥知らずにも豊かな土地を奪い取ったそうだ。

 こことの距離と軍の装備からして、うちの国の兵ではなさそうなのがせめてもの救いだった。


「ははははっ、ワシとしたことがとんだ勘違いじゃった! しかしこうして見ても、やはりドワーフの女に見えんのじゃ!」


 んなわけあるか……。

 もしかしてこいつら、体毛の濃さだけで男女を区別してるんじゃないだろうな……?


「クラウジヤ、失礼」

「我々、行クトコ、ナイ。ミンナ、空気読ミナサイ」


 客人のために分厚く切ったハムをかじった。

 料理というのは油が加わるだけで、何もかもが変わるのだと感動した。


「ほらほら、よく見て下さい。ノアちゃんはー、確かにかわいくてかわいいですけどー、ほら、おっぱいはないですよー?」

「お前はお前で、何を言ってるんだ……」


 つい話の流れでクラウジヤの胸に目を向けると、彼女は誇らしそうにその胸を突き出した。

 小柄で巨乳。なんかこう、俺たちヒューマンの視点から見ると、かなりマニアックなボディラインだ。


「クラウジヤ、ニョゴニョゴ……」

「う、うむ、わかっておる……。たがコイツを前にするとつい、いちいち必要もないのに張り合ってしまってじゃな……」

「それ、もしかしてこの後の話? いいよ、ここに住みたいなら好きにしてよ」


 クラウジヤのいかにも言いにくそうな表情から、なんの話かわかってしまったので先制してみた。


「ほ、本当かっ!?」

「いいよ。食べ物の恨みはあるけど、だけど実際問題――」


 温かいトマトスープを1口飲み干して、今回はピオニーの直情さを見習った。


「ここでピオニーと2人だけで暮らすのはとても寂しい。君たちがいたら、毎日が賑やかでいいだろうね」

「そうですねっ! 今日はみんなでご飯食べたら、いつもよりもずぅぅーっと美味しかったですっ! みんな一緒がいいと思いますよ、私も!」

「イイ、ノカ……?」


 ドワーフたちの中には、俺たちの返答に目を潤ませる者もいた。

 よくわかるとうなずく者や、やっと安住の地にたどり着いた安心のあまり、崩れるようにテーブルにもたれ掛かる者もいた。


「なんじゃ、いけ好かないやつかと思ったら案外素直じゃのう」

「コラッ、コラ、クラウジヤ!」


「すまん、ワシは生まれつき空気が読めんのじゃ」

「だろうね……」

「私、ノアちゃんを怒らせる人、初めて見たですよっ! いつものらーり、くらーりしてるノアちゃんを怒らせるなんて、クラウちゃんはしゅごい人ですねっ!」


「褒めてるのか、それ……?」


 ピオニーの言葉にクラウジヤはまるでお転婆な女の子みたいにえくぼを作って明るく笑った。

 かと思えばテーブル向かいの俺の方に振り返って、俺の手を一方的に取った。もしかして、彼女なりの握手のつもりなのだろうか……。


「ワシも寂しい。仲間と散り散りになって以来、寂しい気持ちを口に出すまいと堪えていた」

「クラウちゃん……」


「なのにそなたというやつは、まったく素直じゃのぅ!」

「いや、ぶっちゃけると都合のいい労働力が欲しいだけだよ」


「照れるな照れるな!」

「そうですよ! 人間素直が一番です!」


 クラウジヤは俺の手を離さない。

 迷いのない真っ直ぐな目で俺を見るので、視線に堪えられず俺は目をそらした。


「ノアッ、どうかワシらを仲間に入れてくれ! ワシも寂しいのはもう嫌じゃ! そなたが受け入れてくれると言うならば、ワシらはここでそなたを支えて生きよう!」

「じゃあそれで」


「うむ、借りた恩は必ず返す! ワシらになんなりと命じるがよい!」

「よろしくです、皆さん! 私も、かわいい皆さんを大歓迎しますよーっ」


 こうしてこの晩、名も無き開拓地にドワーフ族の民5名が加わった。

 人が集まればそれだけ欲の数も、種類も倍々に増えてゆく。明日からまた忙しくなりそうだった。


――――――――――――――――――――

〈人口累計3人を確認。〉

〈加護・ビルド&クラフトがランク5に成長しました。〉

〈人口累計6人を確認。〉

〈加護・ビルド&クラフトがランク6に成長しました。〉

〈以下のクラフトが開放されました。〉


・平皿とフォーク

  材料

   土   ×4

   金属  ×1


・クワ

  材料

   木材  ×2

   金属  ×1


・手斧

  材料

   木材  ×1

   金属  ×1


・アップグレード:特別な村人

   宝石  ×  2

   芋   ×  50


・アップグレード:標準的な村人

   宝石  ×  1

   肉   ×  2


〈パーク・オブジェクト置換えを獲得しました。〉

〈(既にキューブ化した対象と、インベントリ内のキューブをそれぞれ置き換えます。)〉

――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――

 アイアンインゴット  ×100/9999

 木綿生地       ×50 /9999

 小麦粉        ×200/9999

 ハム         ×50 /9999

          → ×49(晩餐に)

 干し魚        ×50 /9999

 砂糖         ×50 /9999

 精製塩        ×50 /9999

          → ×49(晩餐に)

 オリーブ油      ×23 /9999

          → ×22(晩餐に)

 ツルハシ       ×1

 ??????の魂   ×1  /?

――――――――――――――――――――――


 ピオニーのアップグレード。これはとても興味深い。

 芋を50も消費するところが、いかにもピオニーだった。

 もしかしたら、ピオニーは芋でできているのかもしれない。


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