・開拓3日目 荒れ地に水を求めて - ござ? -
止めてと言ったのにドット絵化させられた朝食で腹を満たして、遠征にあたってインベントリを整理してから、俺はピオニーと一緒に開拓地を北上した。
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荒野の土 ×158 /9999999
石材 ×25 /9999999
→ ×0(倉庫の裏に一時放棄)
石炭 ×23 /9999999
→ ×0(倉庫の裏に一時放棄)
砂利石 ×21 /9999999
→ ×0(開拓地の外に放棄)
錆鉄 ×15 /9999999
→ ×0(開拓地の外に放棄)
小さな壷 ×62 /9999
大きな壷 ×3 /9999
→ ×0(倉庫の裏に一時放棄)
武具の破片 ×5 /9999
→ ×0(倉庫に保管)
??????の魂 ×1 /?
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【倉庫・石の倉庫】
木材 ×2 /9999999
銅鉱石 ×8 /9999999
武具の破片×42 /9999
→ ×47
開拓物資 ×保存食は残り5、6日分
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ちなみにインベントリの整理により、7枠の余裕ができた。
遠征となると心許ないけれど、ピオニーを含めれば合計8枠だ。この枠を有効活用して、可能な限りの物資を集めて開拓地に戻ろう。
荒野の土の方は、あまりに所持数が多すぎて捨てるに捨てられなかった。
・
どこまで北上しても、畑どころか人家すらなかった。
前々からそんな気はしていたけれど、この近隣に俺のような開拓者は1人もいないのかもしれない。
資材になる物はというと、こちらもあまりかんばしくない。
枯れ木をいくつか回収して、インベントリにやっとこさ木材×1の表示が現れたくらいだ。
「ノアちゃんっ、見つけましたよっ、枯れ草です、枯れ草がありますよ!」
そんな中、ピオニーが資材を見つけたというので、遠くで手を振る彼女に駆け寄った。
これは牧草か何かだろうか。腰の高さくらいまである枯れ草が近辺に散髪的に生えていた。
「結構あるね」
「ノアちゃんのクラフトに、使えそうですかねー? ダメでも持って帰って、お布団の代わりにしちゃいましょう!」
「そうだね。チクチクしそうだけど、土の上で寝るよりはずっとよさそうだ。お手柄だよ、ピオニー」
「ふんすふんすっ、そうでしょそうでしょ! もっと褒めるがよいですよ!」
「すごいすごい、わーすごい」
「ふんすっふんすっ♪」
お調子者を横目に枯れ草へとクワを振り下ろしみた。
カサッとした感触が返ったかと思えば、枯れ草が根こそぎ地面から消えていた。案の定、その効果範囲は80×80cmの正方形だ。
それから期待を込めてインベントリを確認すると、ニヤリと笑みがこぼれた。
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繊維 ×0 /9999999
→ ×1 new!
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「やりましたね、ノアちゃん! 繊維、ずっと欲しかったやつですね!」
「うん、快適な寝床まであと一歩だね」
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・草のベッド
材料
繊維 ×1
葉や茎 ×20
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クラフトのタブを開いて確かめてみると、残るは『葉や茎』とやらが20だ。
井戸のクラフトのためにも、ここで根こそぎ調達しておきたい。
「草のベッド、楽しみですね。きっと、ノアちゃんが作るやつだからかわいいはずですよー」
「俺は家具にかわいい要素は求めていないはずなんだけど……」
「そこは、ノアちゃんがかわいいからだと思いますよー」
「ははは……そういうセリフは、せめて嫌味や冗談として言ってくれた方がマシだったかな」
「かわいいって言ったのに、なんでいつも怒るですか?」
「怒ってないよ、ただイラッとしただけ」
腹いせ混じりににクワを振り回して、俺は辺りから根こそぎ枯れた繊維を回収した。
見落としがないようピオニーが走り回ってくれたので、これで全部のはずだ。
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繊維 ×1 /9999999
→ ×29
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「お疲れさまです。後は葉っぱですね、葉っぱ!」
「そうだけど、それより先に水の確保だね。水が手に入らないとこのまま全滅だよ」
「きっと見つかりますよ、大丈夫です」
「そうかな」
「そうですよ、諦めないで前進しましょう!」
「……そうかもしれないね。根拠ゼロでそこまで言い切れるんだから、ピオニーは大したものだよ」
当初の予定では同じ開拓者の家を探して、水源についての情報提供を求めるはずだった。
俺たちは信じて荒野を前進した。けれど行けども行けどもやはり家も畑も何もない。
「あっ、葉っぱがありましたよ、ノアちゃん!」
ピオニーのところに駆け寄ると、荒れた大地に小さな草が4本だけ群生していた。
ちょっとだけ採集するのが可哀想だ。だけど俺たちの頑張りが開拓地という形で緑を蘇らせると信じて、クワを振り下ろした。
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草 ×0 /9999999
→ ×4 new!
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「よし、あと6つ集めれば俺の分のベッドができるね」
「え……えーーーっ?!」
「冗談だよ。最初のベッドは日ごろの感謝も込めて、ピオニーにあげる」
「ノアちゃん……。もー、ノアちゃんはまったくもー、ツンデレさんですね! ありがとう、ノアちゃん!」
「いえいえ。これで少しは元貴族だって信じる気になった?」
「はい、ノアちゃんはえらーい貴族様です! パチパチパチ!」
現金なやつ……。
しかしこの様子ならば、この辺りを集中的に探索した方がよさそうだ。
俺とピオニーはまた手分けをして、今夜の快適な安眠のために草を探し回った。この判断は正解で、俺たちは草のベッド1つ分の『草』をかき集めることに成功した。
「あの、ノアちゃん……」
「ん……なんか頬のドットがほんのり赤いね。どうかしたの?」
「あの……あのですね……。ノアちゃんさえ、よかったら、今夜……一緒のベッド使ってもいいですよ……」
「それは止めておくよ」
「えーっ、即答!? なんでー!?」
「寝返りでピオニーを敷物にしそうだから」
「わ、私はっ、ノアちゃんになら、敷物にされても、かまいませんよ……?」
「嬉しい申し出だけど止めておくよ」
インベントリを開いて、残りの必要数を確かめようとした。ところが――
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〈繊維系アイテム×25の収集を確認。〉
〈加護・ビルド&クラフトがランク4に成長しました。〉
〈以下のクラフトが開放されました。〉
・麻布
繊維 ×5
・ござ
麻布 ×2
・草紐
繊維 ×3
〈インベントリ枠が1枠拡張され、合計11になりました。〉
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「わぁっ、なんかランクアップしてますねっ、おめでとうございます、ノアちゃん!」
「ありがとう。……でも、麻布と草紐はともかく、ござってなんだろ?」
「そんなの、作ってみればわかりますよー? もっと集めて、ござさんも作っちゃいましょう!」
「……そういうシンプルな物の受け止め方は、積極的に見習うべきだろうね。よし、作っちゃおうか!」
「はい、作りましょう! がんばりましょう!」
麻布があれば家の入り口に設置して、扉の代わりにもできる。
俺たちは新たな繊維を求めて、再び北へと歩き出した。
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草 ×4 /9999999
→ ×32
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しかし残念だけど、草の姿がそれっきり途絶えてしまった。
どうやら今夜も俺は、土の上で寝ることになりそうだ。