・開拓2日目 初めての家具、そして畑 1/3
南の空に浮かんでいたはずの太陽がもう西にあった。
「ちょっとゆっくりし過ぎたかもね。そろそろ作業に戻ろう」
「そうですかー? 休憩も大事ですよー?」
「そうだけど、ここにいても他にやることもないからね」
「えーー。もっと私とお喋りしましょうよー!」
「いや、ピオニーとは朝からずっと喋りまくってるような気がするんだけど……」
「寝てた間は喋ってませんよ?」
「そりゃそうだ」
屋根から飛び降りて、俺は石造りの部屋に入った。
反対側の土造りの部屋と比べてずっと明るく、壁が1つない分だけ風通しもよくてなかなか心地よい。
「次はイスとテーブルを作るですね! かわいいのお願いします!」
「それはちょっと難しいかもね」
俺はあのパネルを操作して、クラフトのタブから目当てのレシピを選択した。
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・シンプルなテーブルとイス
材料
建材 ×4
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「シンプルですか」
「きっと飾り気とかはないんじゃないかな。材質も多分、この壁と同じ玄武岩だね」
玄武岩の濃紺の色合いは、かわいいと表現するよりもどちらかというと重厚と言うべきだ。
このいかにも頑丈そうで、どっしりとした感じが良い。
「ふーん……。やっぱりこれって、任意の材料を選べるみたいだね」
「それは凄いですね! 色々試してみたいですね!」
「ま、今のところは他に材料の選択肢がない感じだけどね」
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荒野の土 ×31 /9999999
石材 ×25 /9999999
石炭 ×23 /9999999
砂利石 ×15 /9999999
錆鉄 ×10 /9999999
??????の魂 ×1 /?
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「ほら、石炭とか砂利とか土とか、嫌でしょ?」
「石炭は、お尻が真っ黒になっちゃいますね……。でも土とかは、私は嫌いじゃないですよ?」
「土の家具か。まあ面白くはあるね。きっと使いにくいだろうけど」
「そうですかー?」
「そうだよ」
そういうわけで俺はパネルを操作して、そこから石材を選択した。後は決定ボタンを押すだけだ。
「少し離れてて」
「はいなっ、私ワクワクしてきました!」
「俺もだよ。じゃ、いくよ」
決定ボタンを押すと、パネルがインベントリ画面に移動した。
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シンプルな石のテーブル×1 /9999 new!
シンプルな石のイス ×2 /9999 new!
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なるほど、1度こうしてインベントリに収まるのか。この重量がまとめで出てきたら危ないもんな。
続けて操作して、部屋の中央にテーブルを配置してみた。
「……あっ!?」
「玄武岩……じゃないな、これは」
「綺麗! 白くて綺麗でかわいいです! でかしたですよ、ノアちゃん!」
「……組成が変わったのか? これは花崗岩だ」
大理石ほどではないが、花崗岩は金持ちの好む綺麗な石材だ。
テーブルの表面を撫でてみると、想像していたよりもスベスベとした丁寧な仕上がりだった。
「イスも見たいです、早く早くっ!」
「わかったよ。しかしシンプルって割に、なかなかにこれは上等だね」
2つのイスをテーブルの南北に配置した。
物はというと、こちらも触り心地のいい花崗岩だ。角が丸く削られていて、よく見るとテーブルの方もそうだった。
「ふふふー、ではご飯にしましょうか、ノアちゃん」
「そうしたい気持ちはわかるけど、まだ夕方にもなってないよ」
ちゃっかりとピオニーがイスに腰掛けていた。
「ダメ……?」
「ダメ。……お、このイス、重いけどなかなか悪くないね」
そこで俺も向かいに腰を落ち着けてみたところ、そのテーブルとイスは俺から仕事のやる気を根こそぎ奪い取っていった。
ああ、これこそが文化的な生活だ。
右手を見やれば夕方前の麗らかな青空と入道雲が、山岳の彼方で色合い鮮やかに輝いている。
「シンプルだけど、丸くてスベスベでかわいいです。スリスリ……」
「そのペラペラボディでテーブルに頬ずりは止めて、夢に見そうだよ」
「えーっ、酷い言い方ですねっ! ノアちゃんだって、ホントはスリスリしたいんじゃないですかー?」
「まあね。でもいつか間違えて、その状態のピオニーを鍋敷にしそうだよ」
「ギャーッ、死んじゃいますよ、そんなことしたら!」
「……それより、クラフトで次は壷を作ってみるからちょっと見ててくれる?」
「あ、そんなのもありましたね! いいですねっ、そうしましょう、かわいいのがいいですよ!」
「はいはい」
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・大きな壷
材料
土 ×2
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まずは大きな壷から作ってみよう。
パネルを操作して、荒野の土をスロットに入れて、決定を押した。
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・小さな壷
材料
土 ×1
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さらに続けて操作して、小さな壷の方も4つくらい作ってみた。けれどこれは失敗だった。
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大きな壷 ×4 /9999 new!
小さな壷 ×64 /9999 new!
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作り過ぎた……。2人だけで壷を68個も所有してどうしたいんだ、俺は……。
どうやらクラフトの加護は、材料1セットあたり1個と限らないようだった。
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