・開拓2日目 石材で増築された土の家 2/2
新大陸は暖かい。汗ばむようなこの暖かさでまだ初春だそうだ。
しかしおかしなことに、この大陸では春夏秋冬が逆転している。船に乗り込む前は山々が紅葉に赤や橙色に染まっていたのに、こちらは春だそうだ。
「おはようございます、ノアちゃん」
「ぁ……あれ、俺、寝てた……?」
「はい♪ ノアちゃんの寝顔、とってもかわいかったです♪」
「今何時? あ、時計もないんだよな……」
「とけー?」
「君、時計は知らないんだな。時計は今の時間を教えてくれる機械だよ」
「時間? そんなの、お空とお星様を見ればわかりますよ?」
「……まあ確かに。いらないっちゃ、いらないな」
俺たちは涼しい土の家を出て、家の西側に回った。
ここは暖かい土地なので、石造りで増築するならば北か西がいいだろう。
「少し考えたんだけど」
「はいはい、なんですか―?」
「壁とかない方が爽やかかもね」
「はへ……? 屋根と、床だけってことですか?」
「いや、北と南には作る。だけど西側の壁だけ作らないっていうのはどう? 雨の日はもちろん塞ぐけど」
どうせ雨なんてろくに降らない。
おまけに俺たちは壁掛けたいまつすら持っていないので、四方を壁で覆った部屋を作ってもただ暗いだけだろう。
「そしてそこにテーブルとイスを置けば、外を眺めながら食事ができる。テーブルがあるなら、石ころで簡単なチェスをするのもいいな」
「ノアちゃん……。ノアちゃんって、本当に貴族様みたいですねー?」
「なんで信じないんだよ。だから貴族だったんだって、一応」
「だって、ノアちゃん、小さいし……」
「小さくても貴族は貴族だってのっ! とにかくこの方針でどう!?」
「もちろん、最高のアイデアなのです! やりましょう、ノアちゃん!」
そうと決まったら増築開始だ。
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石材 ×200 /9999999
→ ×100
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ピオニーと石材を半分に分けて、倉庫と同じ要領で床石から敷いていった。
面積は土の家より少し横長にしよう。床石を含めて、6×7×5の石材を使う。
そのうちの壁1面は既に築かれている家の土壁で、西側のもう1面は取っ払うので、石材はこの数で十分に足りる。
「楽しいですねー、とっても楽しいですねー、ノアちゃん!」
「ま、否定はしないよ」
「へそ曲がりー、へそ曲がりですねー、ノアちゃんはー♪」
「それも否定しない」
床石が終わると南北の壁をピオニーと手分けして積み上げた。
あれだけの時間をかけることになった石材の採掘とは正反対に、建設の方はトントン拍子で進んでいった。
こうして壁が完成すると、西側に一段だけ石材を敷いた。後は屋根だ。
「はいはいはいはいはいっ、やります、ピオニーがやらせていただきます!」
「ピオニーって、もしかして高いところが好きなの?」
「へ? あー、言われてみればそうかもしれませんね。そんなことより、早く階段作って下さい。残りの石も全文下さいね!」
「そっちこそ気を付けてね。……落ちても全く平気そうだけど」
石材を詰んで階段を作った。
けれどその石材に触れていると、そこに1本の光る線が走っていることに気づいた俺は、何気なしに石を押してみた。すると石が真っ二つに分離していた。
「ノアちゃん!? それ、どうやったですか!?」
「さあ? だけどこれを使えば、もっと登りやすい階段が作れるね」
ハーフサイズのキューブを使って、階段を40cmごとの段に改造した。
ピオニーが俺から残りの石材を受け取ると、軽い足取りでそこを駆け上って、なんの意味があるやらこっちにクルンと振り返って両手を上げた。
「ジャーンッ、上れちゃいました!」
「あ、ああ……?」
「ではしばしお待ちあれ! ちゃっちゃっちゃーっと、作っちゃいますよ、相棒!」
「お願い。ここから見ているよ」
彼女が次々と天井にキューブ状の石材を埋め込んで、屋根を完成させてゆくのを見守った。
なんだか見ているだけで、こっちまで気持ちがいい。童心に返って秘密基地遊びをしているかのようだ。
「やりました、完成です! あ、ノアちゃんも上ってくるといいですよ!」
「え。いや別に俺は高いところはそんなに……」
「いいからくるです!」
「……わかったよ」
持ち前の身軽さで駆け上がるように段を上って、天井のピオニーの隣に飛び込んだ。
するとまあ、これがなかなか乙な光景だった。それは13×6の石材と土で築かれた広い屋上から見える世界だ。
「どうですか? 素敵だと思いませんか、ノアちゃん?」
「うん、こういうのを見ると、必要もないのに2階まで造りたくなるね。……そうだ、いっそあの階段は残しておこうか?」
「いいですね、2階! 賛成です、ハシゴで上れるようにしましょう!」
「ハシゴか、それもいいね!」
俺たちはそれからしばらくの間、屋上の真ん中に座り込んでゆっくりとくつろいだ。
土台を含めて4mの高さから眺める荒野は、何もないけれど見晴らしだけは完璧だった。
ビルド&クラフトの力で削り取られたキューブ約200個分の大地だけ、土の質が異なるのか少し黒っぽい。
「ふふふ、ノアちゃんの加護、やっぱり面白いです。地面がカクカクに削れてますね」
「あの辺り、嫌に目立つね」
「もっとカクカクにしちゃいましょう!」
「カクカクか。もしそんな穴に雨水か何かがたまったら面白そうかもね」
「あっ、石切り場もちょっとだけ見えますよ!」
「あそこは石材が尽きるまで掘り尽くすしかないね。……少し、街に石を売るのが惜しくなってきたよ」
家具を作って、クラフトの畑も試作したいところなのに、俺たちはついついその眺めが気に入ってしまって、世界のあちこちを指差しては無垢な子供みたいに笑い合っていた。
どうやら俺はこの力とピオニーの無邪気さに引っ張られて、子供に戻りかけてしまっているようだ。
ピオニーの笑顔は、四角形の集合体のくせに明るくてかわいらしかった。
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荒野の土 ×31 /9999999
石材 ×0
→ ×25(増築の余剰分)
石炭 ×23 /9999999
砂利石 ×15 /9999999
錆鉄 ×10 /9999999
??????の魂 ×1 /?
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■ 家 テラス
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【恐縮なお願い】
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「楽しい!」
「続きはよ!」
「マイクラやってみたい!」
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