第25話 旅の行く先
俺はアリシアを誘拐した男達を始末した後『ライラの宿屋』へと戻って来た。
自国は昼少し前だったが食堂が混む前に、アリシアと共に食事をした後部屋へと戻った。
俺は部屋へと戻るとまずアリシアから昨日の誘拐事件について聞いた。
「アリシア、昨日の出来事を話してくれ」
アリシアは動揺する事なく話してくれたが、直ぐに目隠しをされた事で男達の詳細はわからないとの事だった。
俺はアリシアの話が終わった所で俺が男達から入手した品物をアリシアに見せる事にした。
「アリシア、これを見てくれ。この紋章はどこの国とか組織か分かるか?」
俺は銀色のプレートにはライオンのような4本脚の動物が左右で立ちながら向かいあっている紋章を見せた。
アリシアは紋章を見た瞬間に答えた。
「これはシンバーン国の紋章です」
「やはりか」
「じゃあ、やっぱりこれは」
「ああ、あの男達が持っていた物だ。そしてこれを読んでくれ」
俺は男達から奪った手紙を差し出した。
アリシアは俺から手紙を受け取ると手紙に目を通した。
「この手紙に寄りますと私を捉えたのであさイチにて国へ向かうとなっていますね」
「ああ、と言う事は、まだアリシアを捉えた事いや生きている事さえ、シンバーン国へは伝わっていないと言う事になる」
「それではまだ私達の国が考えた私の死亡策略は生きていると考えていいですか?」
「確かに今は伝わってはいないが、アリシアを襲った奴らが消えた事が伝わればいずれ分かる事だ」
アリシアは俺の言葉でしばしの思考に入るが俺はその思考を遮る。
「とりあえず早急にこの街から離れた方が安全は確保されると思うぞ」
「ですけど目的地であるマダン王国までの旅費が…」
俺はここで今考えている事を伝える。
「俺は当初この大陸の東への旅をしようと大森林に入ったんだ。そんな時にアリシアと出会った」
アリシアは申し訳そうにうつむく。
「これは前にも言ったが俺が助けたいと思って助けた訳で、決してお願いされた訳ではない。それで助けついでに旅の方向を少し変えてもいいかなと俺は考えている」
アリシアの顔が明るくなるが俺は言葉を続ける。
「ただ、俺はアリシアが言う魔女の弟子と言うのが本当に居ると言うか情報もなしに会えるのかと言う疑問がある。それともし会えたとしていきなり交渉出来るのかと言う不安が出て来る。そこで提案なんだけど、西の大陸ラーザニアにポイドンと言う街があるらしんだけど、そこに俺に戦い方を教えてくれた師匠がいるんだ。その師匠は結構物知りでもしかしたら魔女についても知っているんじゃないかと思うんだ。そこでだ、魔女の所に行く前に師匠の所に一緒に行かないか?」
俺の言葉でアリシアはしばし考え俺の言葉を理解したのか声を上げた。
「と言う事は私を手伝ってくれると言う事でいいの?」
「ああ、そう言ったんだが」
「うれしい!ありがとうタツヤ様!国に帰ったら絶対お礼はしますから!」
アリシアは突然俺の両手を握り喜びをあらわにした。
「アリシアとりあえず落ち着いて俺が考えた案を話すね」
アリシアは我に返ったのか俺の手を離して、少し頬を赤らめた。
「まず高速移動魔道装置ラファエルだけど、これは使用しない方向で考えている。理由は金がない事とシンバーン国に見張られている可能性が高いからだ。無策に危ない橋は渡らなくていいと思う」
俺が話すとアリシアは無言で頷いた。
「そして移動だけどここキールの街から南にある海辺の街シードルフへ行き、そこから船で西のラーザニア大陸へ渡ろうと考えている。当然だけど街での情報収集と旅費の確保は必須だ。どうかな?」
「はい、私はタツヤ様の判断に従いたいと思います。正直、ここまで来たのなら焦ってもしょうがない気がするので」
「よし、じゃあ話は決まりだな」
そこで俺はあの小屋で拾ったもう一つの物を思い出した。
「そう言えば、この剣もシンバーン国の奴らが持っていたんだけど高く売れるかな?」
俺はそう言いながら小屋で拾った紋章入りの剣をアイテムボックスから取り出しアリシアに見せた。
アリシアは剣を見た瞬間にそっと剣に触れてから俺の目を見つめた。
「申し訳ありませんタツヤ様。この剣は私が大森林で落とした私の剣です」
俺はアリシアの言葉で何か忘れていた事柄が繋がった気がした。
そう、たしか大森林でアリシアを助けた時にアリシアが構えていた剣だった気がした。そしてアリシアを助けた後に拾おうとして完全に忘れていた。
とすれば、シンバーン国の奴らは剣がある事でアリシアが居ると判断してこの街に来たのではないか。
そうなると、今回のアリシア誘拐事件の元凶は俺が剣を大森林に忘れた事に?
・・・。
俺は何も見ていない事にしよう。
「そうだったのか知らなかったよ。でもアリシアの剣が戻って来てよかったね」
俺は不都合な事は全てなかったことにして、俺にとっていい言葉のみを語った。
「ええ、本当に良かったです。この剣は王族の一員として与えられるライラ国伝統の剣なのですから」
アリシアは剣を抱きかかえながらそんな言葉を漏らした。
俺は安堵しながら、終わり良ければ全てよしと心の中で独り言を呟いた。
「タツヤ様、一つお聞きしたい事があります」
アリシアが突然真剣な目つきで俺に聞いて着て来た。
「なっ何かな?」
俺はドキドキしていた。
もしかして、昨日アリシアが俺の寝床に来た時にアリシアを抱き寄せた際に、偶然にあくまでも偶然に手がアリシアの胸に触れた事を言われるのか?この世界にもセクハラと言う言葉が存在するのか…俺はすぐさま言い訳を考える。そしていい言葉を思い出した。そう政治家の先生が良く使う言葉”記憶にございません”俺は心の中で勝利を確信しアリシアの質問を待った。
「タツヤ様は何処から物を出しているのですか?もしかして古の賢者が使った空間魔法が使えるのですか?」
俺は先ほどの頭の中で考えていたバカな自問自答を捨て、チラリと左手の人差し指にはめられた指輪を見た。
確か前にカインも似たような事を言っていたような…どうするべきか…もう少しアリシアの話を聞こうと思う。
「空間魔法か…アリシア、もう少し詳しく話してよ」
俺は少しとぼけるような言葉で返答する。
「はい、大昔に空間収納の魔法を操れる賢者様がいました。空間収納とは重力魔法と異空間魔法を組み合わせ発動する魔法だと言われています」
異空間魔法なんて初めて聞いたな。もう少し掘り下げさせよう。
「そうなんだ。でも俺は異空間魔法なんて使えないよ」
「それでは特殊な魔法の鞄をお持ちなんですか?」
「特殊とは?」
「賢者様は弟子たちにも異空間魔法を伝えようとしましたが、習得できる者はいませんでした。そこで賢者様は魔石を土台としてそこに重力魔法と空間魔法を施し、鞄の中へと設置しました。それが今でも流通している魔法の鞄なのですが、賢者様が作る魔法の鞄と言われるものは鞄ではなく指輪やネックレス等に魔石を埋め込み空間収納としたそうです」
俺はアリシアの話を聞きながら驚きを隠せなかった。
確かに物を入れると言う観念から考えれば入れ物を用意するのだが、別に物を直接そこに当ててしまえば入れ物なんて用意する必要がないからだ。これは発想の転換と言うか物事を良く理解しているともいえると思った。
だが逆に考えれば俺はこの発想はいろんな物に応用できるとも考えた。
と、思考にふけっていてはアリシアに申し訳ないので俺は返答をする。
「アリシアは良くそこに気づいたね」
俺は左手の甲をアリシアに向けながら笑顔で答える。
「俺はこの指輪にて物の出し入れをしているよ」
アリシアは俺の答えで目を大きく開き驚愕を隠せないでいた。
そして自分が口を開けて驚いている事に気づき、それを隠す為に「コホン」と咳払いをして口を開いた。
「タツヤ様は凄い物をお持ちですね。そしてそれを何処で手に入れたなんて事は気かないので安心して下さい」
アリシアはそこまで言うと少しだけ目を真剣な目つきにして話を続ける。
「ただ、一般的にそのような伝説的なアーティファクトを所有されている人はいません。ですので物の出し入れをする際は何か目隠し的な物をしたほうが、タツヤ様の身を守る事に繋がると思います」
うっ!俺はアリシアの指摘に何も言えなくなってしまった。
そう言えば肉屋で俺がハンティングベアを出した時に肉屋の主人は目を飛び出していたような気がする…。
まあ、やってしまった事はしょうがないのでこれからの事を考えよう。
「ありがとうアリシア。そこら辺も考えながら買い物でも行こう」
俺はアリシアのツッコミを回避する為に強引に話を打ち切ったのだった。
*
俺とアリシアは旅の準備をする為に最初に武器防具にやってきた。
理由はアリシアの防具が傷だらけでこの先の旅に影響が出ると思いやってきた。最初は購入を考えていたがアリシアが装備していた防具がかなりの性能らしいので修理と言う決断をした。修理の時間は明日の朝には仕上げてもらう事で了承してもらった。そして俺はアリシアと同様に頭から被れるフード付きのマントを購入した。フードは顔が隠せるのと日差しから体を守れると言う利点から購入した。ただこの世界の太陽と言うか光る惑星は地球と比べて紫外線?が、あまりないように思えるのだが、そこはあまり気にしない事にした。
その後は食料やアリシアの寝袋等の雑貨の購入をした。
そして俺達は偵察としてキールの街にある高速移動魔道装置ラファエルが見える位置まできた。
本当にシンバーン国の連中がラファエルを監視しているかの確認を。
俺はどんなのがシンバーン国の人か見分けがつかないので、そこはアリシアに確認をしてもらったがアリシアも判別がつかないと言う事で、俺達は偵察を諦めて足早にラファエルから離れた。
そして今日のやる事がなくなった俺達は街をブラブラしていると、雑貨を屋根からぶら下げた1台の屋台車を見つけた。
これは日本でもあるような移動式の販売車みたいなものだ。
ただ、引いているのは車ではなくカバみたいなおおきな動物だが。
俺は興味があったので少数が取り囲む屋台へと足を運んだ。
そしてそこで鞄を見つけた。
俺は鞄と言うかウエストポーチを見つけた瞬間に閃いた。
これはアイテムボックスを隠すのに有能だと。そう、疑似魔法の鞄だ。
だいたい魔法の鞄なんて開けて見るまでわからないので外側なんてなんでもいいと思ったからだ。
俺はこの案をアリシアに話すと俺の案をいいアイデアだとほめてくれた。
そして俺はアリシアから聞いた魔法の鞄がどのように作られているかを聞いた事で俺も自分で作ってみたいと考えた。
そして、俺は自分用のウエストポーチと肩から掛けるようのポーチを3つ購入した。
なぜ3つかと言うと一回で成功するとは思っていなかったからだ。
アリシアは俺が複数の鞄を購入している様子を不思議そうに見ていたが問いかける事はなかった。
そして俺達は買い物を済ませて宿屋へと帰宅したのだった。
次回は8月6日、金曜日




