第15話 借金のゆくえ
少し時間を遡る。
それは大森林の訓練を終え、タツヤとキールの街で分かれた後の事。
カインとミーニャの二人でギルドへ達成報告の為キールの街を歩いていた。
「やっと終わったなミーニャ」
顔に少しの疲労を浮かべながら相棒のミーニャへと語り掛ける。
「ええ、でも優秀な子で助かったわね」
ミーニャも少しだが疲労を浮かべさせながら返答する。
「ああ、タツヤなら何とかやっていけるんじゃないか?」
「そうね、あなたと違ってとても真面目な子だからね」
「おいおい、ミーニャ。俺も真面目だぞ」
「どうゆう所が真面目か私に教えてよ」
ミーニャのツッコミにカインは頬を指先でかきながら答える。
「ギルドの依頼は必ず成功させるとか」
「それ、普通の事でしょ。それサボったらご飯食べれないじゃない」
「そっそうか、なら…日々訓練しているとか」
「はぁ…もういいわ、それより早くギルドに行って精算しましょ」
「そっそうだな」
そして二人は冒険者ギルド『ライド・ドール』へと入り、カインは指定された魔物の部位を提出し精算を行った。
「保証金を差し引いて金貨8枚か…結構渋い金額だな」
カインとミーニャは冒険者ギルドを後にし、移動の為に高速移動魔道装置ラファエルへ向かう道中カインが呟いた。
「あの依頼数と別途売却した魔物の数と質からいったら、まあまあの金額だと思うけど」
ミーニャは独自の見解をカインに示す。
「やっぱり魔物は食べるんじゃなくて持って来て売却した方が儲かったな」
「でも、食べないと生きていけないし、持ち込んだ食料より魔物の肉の方が魔力や体力回復率が大きいんだからしょうがなかったんじゃない?」
「まあ、今回新人タツヤがいたからしょうがないか」
その後しばしの沈黙がありミーニャが口を開いた。
「ところでカイン、この依頼の前に約束していた事覚えている?」
カインはミーニャの言葉で体がビクリとした。
とうとう、この話が来てしまったかと。忘れてくれないかなと密かに願っていた事は内緒だ。
「あっああ、当然覚えているぞ」
ミーニャがすぅーと目を細めて1枚の木の板をカインに手渡す。
「これは私があなたに貸したお金とその利子の金額よ」
カインは木の板と言うなの請求書を受け取りその内容を確認する。
「はぁ!なんじゃこりゃ!」
カインは請求書を見ながら叫ぶ。
「ちょっと街中で叫ばないでよ!私まで変な人だと思われるじゃない!」
カインはミーニャの毒舌にツッコミたかったがそれどころではない。
カインは少し冷や汗を流しながらミーニャに聞く。
「こっこれは何かの冗談じゃないのか?俺は最初ラファエルの移動費用等で金貨10枚を借りただけだよな?それがなんで金貨1000枚になってるんだよぉ!」
カインは少し涙目になりながらミーニャに聞く。
「だってカインは私に『いいぜ。全部ミーニャに任せる』って言った事覚えている?」
「なっなんとなく」
「だから、カインがこれから無駄遣いしないように、利子を倍で計算していったの…そしたら、なんと、あっという間に金貨1000枚を超えちゃったの。でもね流石にそれ以上は可哀そうだと思って切りよく1000枚にしてあげたって事よ」
ミーニャはさらりと悪魔のような言葉を発する。
「ミーニャどこの暗黒組織に金を借りても、1日で倍に膨れ上がる利息はないと思うけど…」
カインはいかにも真っ当な事を呟く。
「あら、聞こえなかったの?無駄遣いしないようにって言葉」
「なっなんだよ、無駄遣いって」
「このキールの街に来る前に滞在していたシラフの街覚えてる?あなたがカマキリマンって戦士に金貨50枚を掛けた街なんだけど」
「うっおっ覚えてる」
なんか、ヤバイ気がする…もしかしてだけど俺の行動バレてる?
「私ねあなたが夜な夜な出かけるので心配で心配でしょうがなかったの。それでね、あなたが何処にいるかを探知の魔法で見ていたの」
私が内緒でカインの装備に探知出来る魔石を埋め込んであるのは秘密。
カインは背中に冷や汗を感じるがそれでも冷静さを演じる。
「そしたら毎日行く場所があったの。私はあなたが闇の組織にでも勧誘されていないか心配でその店を調べたの」
カインは顔から少し汗が出ている事に自分で気づく。
「なんと!その店は布面積がとても少ない猫人族が経営する店でね、サービス内容がなんと!」
「わぁーーーー!!」
カインはミーニャの言葉を遮り大声を出し、周りの人を気にする事なく土下座を実行する。
「ちょっとやめてよカイン!私はあなたを責めているわけじゃないのよ」
そう言いながらもミーニャの目はとても冷たく細められている。
「ちっ違うんだミーニャ!闘技場で知り合った奴と飲みに行く事になり、俺は強引に連れて行かれただけなんだ!」
カインはとりあえず体のいい言い訳をする。
「あら、私の探知魔法によると一度もあなたは二人で店には行っていないんだけど」
ミーニャが言うもカインからは返答がなく固まっている。
ミーニャもそろそろ頃合いだと思い、最初から用意していた落としどころの言葉を掛ける。
「でも私の探知魔法も完璧じゃないからカインの言っている事が真実なんでしょ?」
カインは土下座から顔を上げミーニャを見つめる。
「あっあたり前だろ。俺はしょうがなく付き合っただけなんだ、信じてくれるだろ?」
カインは真剣な眼差しでミーニャを見つめる。
ミーニャはカインに見つめられる事で少し胸が熱くなりドキドキしてしまう。
そんなミーニャは悟られないように『コホン』と一つ咳をしてから話す。
「わかった。信じる。とりあえず人目があるから立ってもらえるかな」
カインはミーニャに言われてゆっくりと立ち上がる。
カインが立ち上がりミーニャの前に立つ。
「カインでもあなたが冒険に必用なお金を使い込んだ事は認めるわよね」
カインは頷く事しか出来ない。
「私もこんな事はいいたくないんだけど、あなたが真っ当にお金を管理出来るまで私が全て管理させてもらうってのはどうかしら?」
カインの顔は険しい。それも当然だ。ミーニャに財布のひもを握られては遊びにも行けないからだ。
カインが考えているとミーニャが言葉を続ける。
「あっでも当然、お小遣いって感じで自由に使えるお金はちゃんと渡すわよ」
ああ、やっと言えたわ。これが私のお金を貸した時から狙い。男は縛るだけでは逃げてしまうから、多少の自由を与えるような優しい言葉を掛けてあげる。
「そっそのお小遣いっていくらぐらいなのかな?」
カインが少し引きつった顔で聞いてくる。
「う~ん、そうねぇ」
ミーニャは顎に右手人差し指を当て考えるフリをするが、当然最初からミーニャの答えは決まっている。
「食べたり、飲んだりするくらいは出来る金額で1日銀貨1枚(1万円)ってとこかな」
確かに食べたり飲んだりするくらいなら十分におつりがくる金額だ。しかしカインが遊べる店に入るには全然足りない金額だ。だが、ここでゴネてもミーニャには太刀打ち出来ないので、カインは未来への希望を話す。
「ミーニャそれは理解したよ。でもずっとって事はないだろ?」
「ええ、もちろんよ」
「それでいつまでなんだ?」
カインはゴクリと唾を飲み込みミーニャの言葉を待つ。
「えっそんなの決まってるでしょ。借金の金貨1000枚支払いまでよ」
ミーニャのその言葉でこの話は完結した。
その後カインは遊ぶ暇もなく馬車馬のように働き、ミーニャの新しい服や宝石がほぼ毎日増えていき、それをカインに見せるファッションショーが毎夜開かれたのは言うまでもなかった。
次はどうやってカインを縛ろうか策略を練るミーニャだった。
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