39氷の女王とぼっち野郎とキャンプファイヤー
何とか間に合った!
とても疲れた
午後7時20分
黒兎は暇を潰し始めてふと思う。
(何分経ったっけ?)
体感では10分くらいたった気がする。
(今頃開始5分前くらいかな?)
そう思い携帯の時間を見ると午後7時20分を示している。まだ5分しか経っていないのに何だかとても長い時間を過ごしたみたいだ。どうしてだろう。
いや、別に、やっぱりキャンプファイヤーに行きたいとか、気になるとかじゃないんだからね!
という誰得なツンデレは置いておいて、黒兎がひとりぼっちになってから5分経ち、皆はとうに会場に向かってしまった。
黒兎は一度部屋の外に出てみる。
いつもはうるさい男子棟の廊下がとてもがらんとして、静まり返っている。
仮病を使ってサボった黒兎だったが、いざ暇になってみると行っとけばよかったかな?とか後悔するもんだなと思いつつも、この暇な時間をどう潰そうかと考える。
携帯で暇を潰すのは飽きたし、かと言って今更キャンプファイヤーに行くのも何だか気がひける。
みんなの前でキャンプファイヤーなんてクソ喰らえなんて言って仮病まで使ってサボったやつがなんだかんだ寂しくなって顔を出しに来たなんてなったらそれはもう、恥ずか死してしまう。
そんなことは黒兎のプライドが許すわけがなかった。
という小さな理由で何とかこの時間を、暇を潰さなくてはならない。
ということでスマホは充電して男子棟を宛もなくぶらぶらし始めた。
誰もいない男子棟を一通り見たあとロビーまで降りてみる。
ロビーには、施設の職員さんしかいなかった。
職員さんに「キャンプファイヤーの会場は……」と言われかけたので「トイレしに来ました」と咄嗟に適当なことを言って食堂の方に向かっていく。
食堂では調理のおばさん達がなんだか忙しなく片付けなどをしている。
そうやっていると後ろからありえないはずの声がする。
「あなたはここで何をやっているのかしら?」
「ふっふっふっ冬矢!?」
「それ以外にだれに見えると言うの?」
「その口の聞き方は冬矢で間違いないようだな」
「その認識の仕方は失礼じゃなくて?」
「いつも失礼なのはお前だろ?」
と一通りいつもの流れをした所で声をかけてきたのは雫であった。
黒兎の認識では雫はとっくの前に会場に行っていたと思っていたのでなかなかにびっくりしたのである。
「おいおい、何してんだ?」
「何をしてるかわからないの?」
「わからないから聞いてんだよ」
「あら。失礼。実は倉庫に忘れ物しちゃって鍵を借りに来たのよ」
「倉庫って洗剤取りに行ったやつか?」
「そうよ」
「なら俺もついて行くよ」
「どうして?ストーカー?気持ち悪いわ。訴えてくるわね」
「どうしてそうなるんだよ!まあ、俺も暇だし。だからついて行ってもいいだろ?」
「いいけど。変な事しないでよね。2人で暗い倉庫に……」
「いや!しないよ!?ってそんなこと言ったら俺たちいつも同じ家に住んでるだろうが」
「そうだったわね。私にはもう、純潔とは程遠い存在にされてしまったのよね。月影くんに」
「してねぇよ!」
そんなこんなで暇つぶしがてら雫の忘れ物を探すことになった。なんならそのまま雫とキャンプファイヤーに行けば心へのダメージも少なくなる気がするので、黒兎にとっては好都合だった。
カレー作りの時に洗剤を取りに行った倉庫に向かって歩いていく。
「忘れ物ってなんだ?」
「そう言えば言ってなかったわね。鍵を忘れたのよ」
「なんの鍵だよ」
「家の鍵よ」
「家の?……って俺の家の合鍵?」
「それ以外に何があるというの?」
「ふっざっけんなよ!なにしてくれちゃってんの?!見つからなかったらどう責任とんの?!やばいよ!家の鍵は冗談で済まないよ!しかもなんで鍵落とすの!?落とす要素なんてないでしょ!?」
「ごめんなさいね。うっかりしていたわ。大事なものは常に手に持っておきたい主義なのよ。だからポケットに入れていた鍵が落ちてしまったのね」
「うっかりじゃねぇよ!許されねぇよ!大事なものは常に手に持っておきたい主義なんじゃねぇのかよ!落としたら意味ないよ!」
「お願い。月影くん。ゆ・る・し・て」
「可愛く言っても無駄だよ!後、許してに心込めてないだろ!」
とまさかの忘れ物とは黒兎の家の合鍵の事であった。
もちろん絶対に見つけないといけないため全速力で倉庫に向かう。
倉庫に着けば借りた鍵を使って扉を開ける。
中は暗く持ってきた懐中電灯で照らして鍵を探す。
雫は大体の位置はわかっているという事だったので雫の記憶を頼りに探していく。
午後7時45分
「あったか?」
「あったわ。ありがとう。ごめんなさいね内緒にしていて。月影くんには迷惑かけたくなくて」
「まあ、次から気をつけろよ」
そんなこと言われれば許してやるしかなくなる。
雫も真剣に反省しているので黒兎は快く許すことにした。
「そうね。気をつけるわ。」
「おう」
すると……
「鍵空いてるじゃない。誰よ戸締りしてないのは」
ガチャン
嫌な音がする。
「おいおい」
「何かしら?月影くん」
「今のって」
「職員さんが鍵をかけたわね」
「中にいる俺たちは?」
「閉じ込められたわね。ちなみに鍵は外からしかあけられないわよ」
「おいおい、これなんてラブコメだ?」
「そうね。しいて言うなら氷の女王は家出しy」
「ああぁぁああああぁぁぁぁ!聞こえなーい」
「そんな声が出るならさっき大声を出したらよかったのじゃない?」
「なるほど」
冷静になっているように見えるが実際かなり焦っている。閉じ込められただけではなく、その相手が冬矢雫という人物だということも問題だ。
こんな美少女 (たぶん) と黒兎が一緒に忘れ物を取りに来たなんてしれたらそれはもう、言い訳を考えるのがめんどくさい。
「なんでこんなことに……」
「本当よ……ついてないわ」
「とりあえずここからでないと」
「その前にここでのラブコメ展開はあるのかしら?」
「ねぇよ。てか今日どうしたんだよ!なんか色々疲れてんの!?」
「疲れていると言えば疲れているわね。主に作しy」
「ああぁぁああああぁぁぁぁ聞こえなーい」
とりあえずここから出る方法を考えながら、どうにか助けを呼ぼうとする。
この際雫と忘れ物を取りに来たことは言い訳を考えればいいだけなのでひとまずここからでないといけない。
「なんか思いついたか?」
「この顔が思いついた顔に見えるかしら?」
「いや、さっきから表情変わってないよね?思いついたもクソもないよね?こういう時くらい表情だそうよ」
「表情が変わってないということはつまり?」
「思いついてない……?」
「正解よ。さすがよね。月影くんは。数週間一緒にいるだけあるわ」
「いや、なんのクイズだよ!ってか思いついてないのかよ!」
閉じ込められた状況でも、意外といつも通な2人であった。
すると……
午後8時20分
「誰かいるのか?」
外から声がする。
黒兎は大声で返す。
「いるー!ここだ!倉庫の中だ!」
「黒っち!?やっぱりか」
「ん?聡?」
「そうだよ。ここ開けるから待っとけ!」
ガチャン
扉が開く。扉の前では聡に咲良、陽と優心まで立っていた。
「なんでお前らが……」
「そんなことどうでもいいよ!それより……黒っちはそんな人気のない暗い密室で雫さんと2人。何してたのかなぁー?」
「なんもしてねぇよ!」
聡と咲良のカップルはあまりに遅い雫や、陽、優心を探しに行く途中に、怪我をして一度部屋に戻った後、会場に向かっていた時に出会い、その後、職員さんに男女2人が倉庫の鍵を借りて行ったと聞き急いで駆けつけたそうだ。
何だか聡達に色々質問されたが、綺麗に流していく。
午後8時30分
その後、会場に向かうがダンスは疎かキャンプファイヤー自体が終わってしまっていた。
キャンプファイヤーの伝説は結局、黒兎達は誰も踊ることはなかったのできっと結ばれることはないだろう。そう、黒兎達は思っている。
が、キャンプファイヤーの伝説は
キャンプファイヤーの時に一緒にいた2人は結ばれる。
誰も一緒に踊るなんてことは言っていないのだ。
最近忙しくて2日に一回投稿になりそうです。
すいません!
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