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フェンリル騎士隊のたぐいまれなるモフモフ事情 ~異動先の上司が犬でした~  作者: 江本マシメサ


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狼魔女と戦うために その六

 ディートリヒ様はドアノブに前脚をかけ、器用に扉を開けようとする。扉はギイ……と重たい音を鳴らして開いた。

 入ってすぐに、地下へ繋がる階段が見えた。ここも、まっくらである。湿り気があって、微妙にかび臭い。

 魔石灯を取り出し、灯りを点けた。すると、辺りはいささか明るくなる。


「ずいぶんと、古い建物ですね」

「年季が入っているな」

「兄上、メロディアさん、足元には注意してくださいね」


 階段を下りていくと、扉に行きつく。ディートリヒ様が耳をぴくぴく動かし、中の様子を探っていた。


「兄上、どうです?」

「何か、老婆のような声で、呪文のような声が聞こえる」

「何人くらいいそうですか?」

「七、八名くらいだ」


 カルト集団の集まりなのか。気味が悪い。


「準備はいいですか? 中へ入りますよ」

「いつでもよい」

「私もです」

「では──」


 ギルバート様がドアノブを捻ったが、鍵がかかっているのか扉は開かなかった。

 チッと舌打ちしたのと同時に、ギルバート様が扉を渾身の力で蹴る。すると、扉はあっけなく開いた。というより、壊れた。

 中は薄暗い。小さな円卓がいくつか置かれ、その上に小さな火を点らせた蝋燭が置かれている。

 掃除が行き届いていないのか、ずいぶんと埃っぽかった。天井には、クモの巣が張っている。

 ディートリヒ様が言っていたように、中にいたのは七名ほど。黒い外套を纏っていて、手には杖のような長い棒を握っていた。

 突然やってきた私達を見て、人々は驚き警戒している。

 中心にいたのは、頭巾を深く被った女性。腰が曲がっているようなので、老婆なのだろう。呪文を唱えていたのは、きっと彼女だ。

 床には魔法陣が描かれ、宝石の付いた首飾りや耳飾り、指輪などが置かれていた。

 魔石が変質してなる宝石には、多くの魔力が含まれている。そのため、魔法を使う際の媒体として使うのだ。


「そういうことだと思っていました」

「おのれ、何をしようとしていた!」


 まずは、幻術を解かなければならない。私は日傘型の杖を床に叩きつけ、呪文を詠唱する。


「──幻影よ、虚像を晴らし、真実を映しだせ!」


 蜃気楼のように、ぐらりと景色が歪む。狼魔女の魔法は強力なのか、幻術は解けない。

 何度か杖で床を叩き、魔力量を増やす。すると、老婆の周囲にいる者達の姿が、歪んで消えた。代わりに、狼の姿となる。


「来るぞ!」


 幻術が解けた狼は、こちらに襲いかかってきた。牙を剥き飛びかかってくる狼から、ディートリヒ様は私を守ってくれる。体当たりし、首筋に容赦なく咬み付いていた。

 ギルバート様も剣を抜いて、次々と斬り伏せている。六頭いた狼は、あっという間に倒されてしまった。

 あとは、老婆の幻術を解くばかりである。

 相手が狼魔女かどうかの確認は、必ずしなければならない。もしかしたら、関係ない一般市民である可能性もあるのだ。

 手札となる狼がいなくなると、老婆とは思えない素早さでナイフを引き抜き、狼が牙を剥くように襲いかかってきた。

 ナイフの切っ先から、何かが滴っている。


「あ、あれは……」

「メロディア、どうした?」

「ナイフから、何かが滴っていたので」

「おそらく、毒だな。ギルバート、ナイフには毒が塗ってある! 気を付けろ!」

「了解しました」


 戦うといっても、防御しかできない。まずは、幻術を解かなければ。

 今度は、別の方法を試してみる。聖水を床に振りかけ、呪文を唱えた。


「聖なる霧よ、真実を、暴け──!」


 部屋の中に、濃い霧が漂った。途端に、老婆の姿が揺らぎ、真なる姿を現す。

 狼の耳を生やした、幼い少女──狼魔女で間違いない。

 ホッとしたのも束の間のこと。ディートリヒ様の叫びでハッとなる。


「メロディア、後ろだ‼」


 一瞬、気が抜けていたのだろう。背後から接近する存在に、まったく気づいていなかった。


「グルルルル‼」


 狼魔女は新たな手札おおかみを、呼び寄せていたのだ。

 今までの黒い狼と違い、灰色だった。それに、体が一回り大きい。

 ゾクリと、悪寒が走る。

 狼は大きな口を開き、私に咬み付こうとしていた。体が硬直して、動くことができない。目を閉じ、歯を食いしばって衝撃に備える。

 だが、痛みは襲ってこなかった。なぜだろうか?

 そっと目を開くと、ディートリヒ様の姿が見える。


「メロディア、怪我は、ないな?」

「は、はい」

「よかった」


 そう答えると、ディートリヒ様は体を揺らす。首筋に、狼が咬み付いていたのだ。


「グウウウウウ‼」

「小癪な奴め!」


 もう一度体を動かすと、狼は離れた。ディートリヒ様の首筋から、ポタリ、ポタリと血が滴る。

 狼は姿勢を低くし、ディートリヒ様に飛びかかろうとした。

 させるかと、持っていた魔石灯を投げつける。


「ギャウ!」


 魔石灯が当たった衝撃は僅かだが、魔石から発する光りに怯んでいるように見えた。

 その隙に、ディートリヒ様は狼に頭突きをする。

 続いて、ギルバート様が剣を狼へと振り下ろした。


「こいつ‼」

 ギルバート様は狼に深く剣を突き刺す。

「ギャウン!」


 狼は絶命した。同時に、狼魔女は姿を消す。

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