4 終わりの女神のお手伝い1
週一更新といったな。コメントが嬉しくて筆が加速したから更新だ。
よほど忙しくなければ週一更新で、できれば週二更新目指してがんばります。
どうも皆様。セナです。
うっふっふ、セナなのです。
私の名前がセナとわかってからなんだかんだと4年の時が流れました。
私の年齢も数えで5歳となり、赤ちゃんから幼女へとグレードアップ。
走ったり、物を掴んだり、いろいろなことが出来るようになり、そしてとうとう、ディアナお母さんのお手伝いをさせてもらえるようになったのでした。
もちろんというか、当然の帰結というか、ディアナお母さんの役に立ちたい私はお手伝いの鬼となりました。
掃除洗濯料理に買い物。
手伝える手伝いはすべて手伝い、より役立つように勉強や運動に精を出す、それがここ最近の私の生活となりました。
その甲斐あってか、この年にして読み書きができ、難しい計算もできる神童として知れ渡ってしまいました。。
まぁ、計算はもともとできていましたし、読み書きも前世で使ってた文字を簡略化したものだったのですんなりとできただけなのですが。
運動についても近所の同年代の子ども達の中でもっとも運動神経が良いのが私です。
さすがに成人の15歳付近になると負けることのほうが多いけれど、10歳までならいい勝負ができていると自負してます。
そんなスーパー幼女な私をディアナお母さんはとても褒めてくれるし、たくさんたくさん「大好きよ」って言ってくれます。
そのたびに私はふんすふんすと鼻息を荒くするのでした。
「それじゃあお使いお願いね。買う物はこれを見てね。」
ディアナお母さんが私に木札を手渡す。
木札には炭で字が書かれている。服で擦ってしまわないように気をつけながら手提げ籠に木札をしまう。
それとディアナお母さんがお金を渡してくれる。
渡されたのは小銀貨が5枚。かなりの大金だ。
前世、女神だったときはお金というものを使ったことが無かったので、この概念を理解するのがなかなか大変だった。
物々交換の代わりにこのお金をつかう。
共通する価値を定めるというのはなるほど、確かに商いの発展では必須だったのだろう。
お金は大きく分けて銅貨、銀貨、金貨の3種類。そしてそれぞれの硬貨に小、中、大の大きさがある。
小が10で中、中が10で大。大が10で次の硬貨となる。
つまり、大金貨1枚 = 中金貨10枚 = 小金貨100枚 = 大銀貨1000枚 = 中銀貨10000枚 = 小銀貨100000枚 = 大銅貨1000000枚 = 中銅貨10000000枚 = 小銅貨100000000枚 となる。
キュラストの標準的な月収は大体大銀貨1枚前後ぐらいらしく、小銀貨5枚となると大体1日分の給料にあたる。
私のような幼女が持つには小銀貨5枚というのはとんでもない大金であり、そんな大金を任せられる私へのディアナお母さんの信頼をものすごく感じる。
「はい、任せてください。ディアナお母さん」
私はまたディアナお母さんの役に立てることと、信頼の厚さにふんすふんすと鼻息を荒くする。
ディアナお母さんと別れてから、すぐに手提げ籠を開け、木札を確認する。
買うのはたくさんのオルト芋と根菜、少しの葉野菜。薪に藁などだ。
もちろん一人で運べる量ではないので、孤児院に1台だけある牛車を使うことにする。
孤児院にいる牛は1匹だけだが、私にとても良くなついていて、おとなしく言うことを聞いてくれる。なので孤児院にいる多数の子供たちの中で唯一私だけ牛車を使うことが許されている。
ふんふんと鼻歌を歌いながら牛車をとりに向かう。
「セーねぇ!どこいくの!」
と、突然後ろから声をかけられる。
私のことを『セーねぇ』と呼ぶのは一人しかいない。振り返ると思ったとおりの人物がいた。
腰まで伸びた赤毛の髪、切れ目で意思の強さを感じる青い瞳。身長は私と同じぐらいの女の子。
「ベア、お買い物だよ。ディアナお母さんのお手伝いなの」
私はその女の子に答える。
女の子の名前はベア。私と同い年で、ほぼ同時期に孤児院に来た子どもだ。
詳しくは聞いていないのだけど、もともとは商人の一人娘で、商品を別の街に運ぶときに魔物に襲われ、両親が死んでしまい、孤児院につれてこられたらしい。
同い年なのになぜ姉呼びなのかというと、ディアナお母さんが忙しい時はお手伝いの一環として私がベアたちの面倒を見ていたからだ。
そのせいで、みんなの面倒を見るお姉さんという認識になっているらしい。同い年なのに、解せぬ。
「シスター・ディアナ!ディアナお母さんって呼んだらだめなんだよ!」
ベアが地団駄を踏む。私がディアナお母さんと呼ぶことが気に食わないらしい。
ディアナお母さんは私以外にディアナお母さんとは呼ばせない。シスター・ディアナと呼ぶように注意するのだ。
なぜかはよくわかっていないけれど、私だけはディアナお母さんと呼んでも怒られない。
ベアはそうやってディアナお母さんが私を特別扱いするのが嫌なのだろう。
とはいえ、ディアナお母さんはディアナお母さんなので、私はそう呼ぶことをやめる気はないのだけれど。
「でも、私はそう呼んでも怒られないよ。」
「うぅぅぅぅぅ!!」
ベアの地団駄が激しさを増す。すごい、穴が掘れそう。
「私はお買い物に行かなくちゃいけないからもう行くね。」
「あ!待って待って!あたしもいく!」
地団駄をやめたベアがぴょんぴょんと飛び跳ねながら主張する。
私はベアを連れて行くことについて考える。
ベアは聡明だ。私がいろいろなことを教えたのも関係して、とても数えで5歳の子どもとは思えない。
もちろん私と比較すると全然なのだが、それは比較対象が悪いので仕方がない。
性格は多少やんちゃだけれど、孤児院に迷惑をかけないようにしっかりと考えて行動できる子だ。わからないことをしっかり聞くし。
なのでお買い物に連れて行くのは何も問題はないように思う。
むしろ荷物を牛車に詰め込むのを手伝ったりしてくれそうだし、今後ベアが足し算と引き算が出来るようになって買い物のお手伝いをするために、お買い物についてくることはとても有用だ。
「孤児院のお手伝いは終わってる?」
「うん!掃除はもう終わったよ!」
ベアは優秀なのでお手伝いを任されている場合があるが、それももう終わっているようだ。ふむ、懸念事項は無しか。
「それじゃあ一緒に行こう。私は牛車の準備をしてくるから、ベアもお出かけできる格好に着替えておいで」
「うん!」
ててててっと走っていくベアを見送る。長い赤毛がふわふわと揺れるのが愛らしい。
ちなみに私はショートヘアだ。後ろで縛ってポニーテールにしている。これで帽子をかぶると髪をすっぽり帽子の中に収めることができるので私が黒髪だとぱっとみてわからなくなるのだ。
私的にはこの黒髪黒目はディアナお母さんと同じ色なのですごく自慢なのだが、一般的に黒髪黒目は忌避されることはわかってる。
終わりの女神ってやつの悪評のせいだ。はい、すみません。私のせいでした。
なので、孤児院の外に出るときはせめて髪を隠さないといけない。どんなトラブルに巻き込まれるかわからないからだ。
ちなみに、黒髪と黒目が揃って初めて忌避の対象となるので帽子で髪を隠してしまえば大体の場合問題がない。
帽子のつばが作る影のおかげで、目の色も紺色か黒色か見分けにくいしね。
ということで、手提げ籠からいつもの帽子を取り出してすっぽりとかぶってしまう。
後は牛さんを牛舎からだして車に繋げば準備万全だ。
牛さんを車にちょうどつなぎ終わったところにベアが戻ってくる。
さっきまで着ていたボロボロの服から、少しマシな服に変わっている。
5歳の子どもが着る服としては一般的なものだ。
服の背中には少し大きめに孤児院の紋章が刺繍してある。
これは孤児たちの自衛のためのものだ。
オルト女神教孤児院は国営だ。その刺繍が入った服を着た者に対して何かするのは国に弓を引く行為であるため、無用のトラブルが避けられるのだ。
「うん、大丈夫そう。牛車の準備もできたし行こうか。」
「うん!」
ベアの元気いっぱいの返事を聞きながら牛をひいていく。
さてさて、それではお買い物へ出発だ。
ということで、赤ちゃん期が終わり、幼少期に突入です。
セナも動き回れるようになり、物語が動き出す……予定です。