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終わりの女神は愛されたい  作者: のりおざどりる
第一章 終わりの女神と黒い狼
3/42

2 終わりの女神の転生2

日曜更新といったな。あれは嘘だ。

時間があって、続きが書けちゃったので投稿しちゃいます。

続きは日曜日に更新できたらいいなぁ

 はっ!?眠ってしまった!


 目が冷めた私は慌てて状況に変化がないか確認する。

 相変わらず五感の感度が鈍い。

 じたじたともがくようにして身体の状態を再度確かめる

 まず、やたらと頭が重い。あとめちゃくちゃ手足が短い。

 立ち上がろうとしても圧倒的に身体能力が足りてない感じ。

 まるで赤ちゃんになったようだ。


 そもそも私は死んだはずなのだ。

 勇者の剣に心臓を貫かれた激痛を、血が抜けていくことで感じる凍えるような寒さを、私は覚えている。

 うん、間違いなく死んだ。

 それに勇者の剣はフェンリルの牙だって言ってたし。


 神殺しの獣フェンリル。

 最も最初に死を世界にもたらしたモノ。

 まだ死の概念がなかった神話の世界。

 しかし、そんな世界にもかかわらず人を、生き物を、そして神をも殺した規格外の化物。

 それが神殺しの獣フェンリル。


 私が生まれるちょっと前に神と人の英雄の手によって倒されたけれど、その牙は死がないものを殺せる唯一の武器だったはずだ。

 だから、その牙でできた剣で心臓を貫かれた私は、間違いなく死んだはず!

 そう、死んだ。死んだはず……なんだけど、まるで赤ちゃんのような今のこの状態。これもしかして生まれ変わってる?

 ということは、もしかして、赤ちゃんのような状態じゃなくて、まさしく赤ちゃんそのままってこと!?

 そのことに気づいてしまった私はものすごい衝撃を受けた。

 だって、死にたくて死にたくて、だけど死ねなくて死ねなくて。

 やっとやっと勇者の剣によって死んだと思ったら、はい残念生まれ変わりましたってそんなのないよぉ!


「ふぇ……ふぇぇ……んぎゃおおおおおお」


 生まれ変わったことを自覚した瞬間、どうしようもないほどの悲しみが沸き起こった。

 赤ちゃんの身体で、そんな悲しみに堪えることなんてできず、みっともなく泣き叫ぶ私。

 思い出す。想い出す。前世の記憶を。自分が何者だったのかを。


 私は、終わりの女神。

 終わりのなかった平和で平穏な神話の世界に、終わりを、期限を、終焉を、死を定義した女神。

 ただ一人、自分にだけは終わりを定めることが出来なくて、終わりが定まった世界で唯一終わりのない存在となった自分。


 違うの!したくて、終わりを定めたんじゃないの!

 そういう女神として生まれただけなの!自分の力を制御すら出来なかった、愚かで無力な女神なの!

 いやだ、いやだ!もう、恨まれるのも憎まれるのも蔑まれるのも疎まれるのも!

 あの、お前のせいだと訴えかける目で見られるのも!もういやだ!

 殺してよ。もう一度殺してよ!今度こそ殺してよ!!


 溢れ出る感情に振り回されるままに泣き叫ぶ私は、浮遊感に襲われた。

 そう、まるで、誰かに抱き上げられたかのような浮遊感に。


「よしよし、怖い夢を見たんだね。大丈夫だよ。わたしがいるからね。よしよ~し、いいこいいこ」


 何が起きているのかわからなかった。

 ただ、持ち上げられて、ゆらゆらと優しくゆらされているのはわかった。


「いいこだね。泣いてもいいよ。わたしがそばに居てあげるから。」


 何を言っているのかわからなかった。いや、言葉はわかるけど、いったい何に向かってその言葉を言っているのかわからなかった。

 混乱して、泣き叫ぶことすら忘れて、その声の主を見る。抱きかかえられてるから、すごく近いその顔を。

 まじまじと見ていると、声の主は私の頭をなでた。

 その瞬間理解した。

 この言葉は、私に向かって言われているのだと。

 でも、どうして、いったいなにが目的なんだ。いや、騙されないぞ!そういう言葉を信じて前世ではどれだけ苦しんだか!

 心のバリケードを築き上げ、私を抱き上げてる人物を睨みつける。おととい来やがれ!


「あら、もう泣き止んだの。いいこね。大好きよ」


 その言葉を聞いた瞬間。心のバリケードが弾け飛んだ。

 そりゃもうものすごい勢いで弾け飛んだ。ぱっかーーーんって感じで。


 大好きよ。大好きよ。大好きよ。大好きよ。


 さっき聞いた言葉が脳内でリフレインしまくる。

 大好きよ。えっと、どんな意味だっけ。「好き」は確か「好き」って意味で「大」は大きいって意味で……

「好き」の強化版が「大好き」で、「好き」の最上位進化系といっても過言ではない言葉で……

 前世で言われた記憶のない言葉で、聞きたかった言葉で、言われるところを想像して悶絶したりしてて……


 え?その言葉を……言われた?


 誰が誰に?

 この人が……私に……?


 思わず、きょとんとした顔で抱きかかえてる人の顔をみてしまう。

 いや違う。きっと聞き間違いだ。

 赤ちゃんイヤーだから、よく聞こえないからそう聞こえただけだ。

 多分、「大好きよ」じゃなくて「大豆食べよ」とか言ったんだ。うん、大豆美味しいもんね。


 騙されないし、期待しない。

 もし違ってたらものすごく落ち込んじゃうもん。前世で学んだもん。


 だけど、だけどもし、本当に私に向かって「大好きよ」って言ったとしたら……

 え、もしそうだとしたら私どうなるの?

 この赤ちゃんボディはそんなパワーワードに耐えられるの?

 消し飛んだりしない?消し炭になったりしない?

 いやいやいや、大丈夫だ。そもそも言われてないから。言われることないから。

 何勘違いして勝手に焦ってるの私。私は終わりの女神。

 誰かから好きになられることなんて絶対にない


「あら、うふふ。可愛い顔ね。大好きよ。」


 支離滅裂な思考を繰り返していたら再度投げ込まれた爆弾発言。

 違う、絶対聞き間違いじゃない。だってめっちゃ集中してたもん。

 一言一句聞き逃さないようにめっちゃ集中してたもん。


 え、じゃあ、これ、まじ?


 わ、わ、わ……


 私もだいしゅきでしゅうううううううううううううううううううう!!!!!!!


 こうして、私こと、終わりの女神は現世に転生した。


ハイパースーパーチョロインの終わりの女神様の明日はどっちだ!

転生編はここまで、次回から孤児院編が始まります。

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