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終わりの女神は愛されたい  作者: のりおざどりる
第一章 終わりの女神と黒い狼
2/42

2 終わりの女神の転生1

転生から孤児院に拾われるまで

2018/12/22 行間とか編集

神話 原初と最初


 原初の女神 オルディナは、ただふわふわと浮いているのが煩わしくなった。

 オルディナが足を降ろし、そこが大地となった。

 オルディナは大地の果てが見たくなり歩いた。

 どこまでも歩き、自分が歩くほどに果てがなくなると気づいた。

 虚しくなり、歩くのを止め、そこが果てとなった。

 オルディナは声を出し話しというものがしたいと思った。

 しかし、自分しか存在しないことに気づき、悲しくて泣いた。それが海となった。

 オルディナは泣くのに飽きた。

 話し相手がいないなら作ればいいと思った。

 オルディナは対等な存在として最初の女神を作った。

 オルディナは最初の女神をルルフェナと名付けた。


------------------------------------------------------------------


 気がついてはじめに思ったのは、世界がぼんやりするなぁだった。

 視覚は水の中のように滲み。

 聴覚はエコーがかかったように聞き取れない。

 触覚は曖昧で身体全体をそこそこ分厚い膜で覆っているように鈍い。

 嗅覚はそもそも鼻が詰まっているようでわからない。

 この分だと味覚も似たような状態だろう。


 押し寄せてくる途方も無い不安。

 状況を整理しようにも、五感が不完全で情報収集が出来ない。

 というか自分が立っているのか寝ているのか座っているのかもわからない。

 多分寝ているのだろう。こんな状態で立ってバランスが保てるとは思えないし。


 とにかく身体の状態を確かめようと動く。

 手足はなんとか動く。バタバタと暴れるような感じでだが。声は


「ん、あっ……んぎゃあ」


 音が出た。声ではない。声帯も口も舌もうまく動かせない。

 この状態は……まさか!

 と、状況を整理しようとしたら急激に思考に靄がかかってきた。

 あ、あかん。これ寝る。耐えようとしたが、眠気を抑えるための刺激はなにもなく。私は意識を手放した。


**********************************


 シスター・ディアナは敬虔な女神教信者である。

 年は21歳、15歳で成人となるので立派な大人である。

 やや痩せぎすだが標準的な体型で特別美人というわけでも無く、あまり目立つ容姿では無い。

 その真っ黒な髪と瞳の色を除いてだが。

 真っ黒な髪と瞳は終わりの女神と同じ色とされ、忌避されている。

 実際ディアナも謂れなき迫害を受けてきたし、この目と髪を見た人はまず顔をしかめるのだ。

 故に、黒髪黒目は性格がひん曲がってしまいがちである。

 しかし、幸いなことにディアナは理解者に恵まれ、まっすぐな性格に育った。

 そして16の歳で理解者の一人である幼馴染の男性と結婚。翌年には子供にも恵まれた。

 貧しいながらも幸せな家庭を築いていたが、しかし、そんな幸せ長くは続かず、18の時に流行病で夫と子供を亡くし、今は孤児院で働いている。


 ディアナの朝は早い。

 日の出より早く起きて、まず火を起こす。

 火打石を使った火起こしは慣れが必要で、例え慣れたとしてもどうしても時間がかかってしまう。

 火がついた後も、消えてしまわないように十分に火が育つまで息を吹きかけ薪を足す。

 そうして火が十分に育ったらやっとお湯を沸かし始めることができる。


 近くの井戸から汲み上げた水を火にかけ、湯が沸くまでの間に身支度を整える。

 井戸の冷たい水で顔を洗い、口をゆすぎ、歯ブラシの枝で歯を磨く。

 髪を整え、ウィンプルの中に黒髪が見えないようにしまい込む。

 鏡を確認して、はみ出した髪がない事を念入りに確認する。


 身支度が整った時にちょうどお湯が沸くので、昨晩切って水に晒していた大量のオルト芋を投げ込む。

 あとは十分に湯がいてから葉物を入れて塩をふればオルト芋の塩煮込みの完成だ。


「ん?」


 何か孤児院の入り口の方から音が聞こえた気がする。

 孤児院はよく心無いいたずらの被害にあう。

 壁の落書きやゴミの不法投棄などだ。

 原因は……孤児院のシスターであるディアナが黒髪黒目だからだということを、ディアナはよく自覚していた。


 しかし、だからと言ってやられっ放しではない。

 ディアナは精神的にかなり強いのだ。

 それに放置して子供達に何かがあったら心配だ。


「とっ捕まえて、二度とそんな事出来ないようにしてやるわ」


 ふんすふんすと鼻息荒く孤児院の入り口へ向かう。

 武器として使うために箒を忘れずに持っていく。


「こらぁ!!!」


 バーン!と勢いよく扉を開け放ったディアナであったが、そこには誰も居なかった。

 あっれー?とキョロキョロと見渡すと足元からゴソゴソと音が聞こえてきた。

 見ればそこには籠があった。

 籠の中には沢山の布と


「ん、あっ……んぎゃあ」


 と、声を上げる赤ん坊がいた。

 キョトンとした目でしばらくじたじたと暴れていたが不意に赤ん坊は寝てしまった。


 捨て子だ。


 捨てた人物はディアナが来た時には既にいなかったようだ。

 捨て親を現行犯逮捕出来なかったことに舌打ちしつつ、ディアナは大事そうに赤ちゃんを抱き上げた。

 すぴすぴと鼻をならす赤ん坊はこの世に不満なんて無いような安らかな寝顔だ。

 まだ生まれて間もないのだろう、柔らかな肌はすべすべとしている。


「新しい私の子ね。よろしくね」


 ぷにぷにのほっぺを堪能しながらディアナは孤児院へ戻っていった。


次回も日曜日に更新!……したいなぁ

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