出会い
なんの考えもなく、始めた連載です。
読んで頂けると嬉しいです。
「あー、暇だなあ」
私の日常はあまりにも普通で、つまらない。なんか楽しいこと、おきないかなあ。
それから私は、車に轢かれた。死んだんだと思う。別に嬉しいこと。
正直、つまらない日常から消え去ることができてほっとしている。私が死んでも悲しむ人なんていないのだと、私はわかっている。
母親だってそう。父親も。私は誰も信じられない。あいつらは私のことなんて、なんとも思ってない。
はあ、死ぬことができて良かった。自殺は怖かったからさ、やめたんだ。だって首吊りとか、痛そうじゃん。なんか怖くてね。やめて正解だよ、ほんと。
これからどうなるんだろ、私。もうどうなってもいいけど。どうせなら、楽しいことしたいなあ。私がハマるくらい、楽しいこと。
目が覚めた。私は死んだはずなのに。目の前には、知らない人。
「あ、起きた?」
顔を覗かせながら、私に尋ねてくる。知らない男の顔だった。
「…ここはどこですか」
若い外見。ほんと、誰この人。ここはどこなのよ。
「あー、ここ?僕の家だよ」
は?、私は絶句した。死んだじゃなかったのか。よく見ると、ここは普通の家らしい。しかも、知らない男の人の。私、女なんですけど。バッチリ制服着てるし。
「あ、自己紹介がまだだったね。僕は天宮シグレだよ。よろしくね、深木エイちゃん」
なんで?、私はこの人に名乗った覚えはないのに。なんで私の名前を知ってるの?ありえない。ほんとに知らない人なのに。
「…なんで私の名前知ってるんですか」
私がそう尋ねると、この天宮さんという方はニコッと笑みを浮かべた。
「えー、それはねー。君が僕のパートナーに選ばれたからだよ」
パートナー…?、何それ。
「パートナーって、何のことですか」
また天宮さんは、笑った。
「うーんとね、生きた僕と死んだ君がパートナーを組んだってこと」
良かった、私は死んだらしい。って、そういうことが問題じゃない。問題は何のパートナーか、ということ。
「何においての、ですか」
今度は天宮さんの表情が、真面目になった。
「僕ね、何かを楽しみたいんだ。ずっと独りでさ、毎日つまらなくってね。誰かー、って呼んだら君が現れたんだ」
何それ、私と同じ。呼んだら現れたなんて、ありえない。そんなことが起こるなら私もやれば良かった、ってそうじゃない。
「意味わかんないって顔してるね」
そんなこと聞いて理解できるわけがないっての!
「わかるわけないじゃないですか!」
意味がわからない。ほんとに、どういうことなの?
「まあ、いいよ。これは君が成仏するためにしなければならないことって思ってくれていいから」
成仏…?私、成仏できないの?
「成仏できないって、なんですか」
「成仏できないなんて、僕は一言も言ってないよ。君が成仏するために、僕を楽しませろってこと。期限は7日間、ということでよろしく。エイちゃん♪」
は?、やっぱり意味が…。
「1週間、僕と一緒に暮らすんだよ。とは言っても、君は幽霊のようなものだから僕以外の人には、見えないけどね。まあでも、ちゃんと地面に足がつくし、実体もあって、触ることもできるんだから、なんにも困らないよ」
いっしゅうかん?この家で?暮らす?
なにそれ、全くわからない。実体あって、立てるのに、他の人には見えないって何?
なにそれ、楽しそう。
「はい、わかりました。これから1週間、よろしくお願いします」
気が付けば、そんなことを言っていた私。目の前には、ついさっき出会ったニコニコ笑う知らない人。
「ありがとー、よろしくね。改めて、僕はシグレ。シグレって呼んでくれていいから。僕を楽しませてよ、エイちゃん」
こうして、私とこの人は出会った。
ロスト、どうでしたでしょうか。
最初は短編の予定だったのですが、こんな感じになってしまいました。
おそらく不定期更新になると思われますが、よろしくお願いします。