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555字の掌編

雪融け近いフキノトウ

作者:

「フキノトウの良さがわかるって大人だと思わない?」

「ん?」

 フキノトウの天麩羅を食べながら、同僚に問いかける。

「子どものころ本当に嫌いでリバースしたこともあるんだよね」

「そもそもフキノトウなんてそんな簡単に食べれるもん?」

 同僚はそっちに気を取られてしまい食べようとしていた鱚の天麩羅を箸で持ったまま固まった。私は女将さんに熱燗を頼んでから「うちすっごい田舎だから」と答えた。

 天つゆに散らばった大根おろしなのか天かすなのかわからないものを乗せて、天麩羅の盛り合わせをしゃくしゃくと食べ進める。

「フキノトウって確か雪の中から出てくるやつだよね?」

「出てくるっていうか、まあ、生えてくるね」

「それってすごく強いね」

 強い、か。子どもだった頃の私はそんなこと考えもしなかった。大人が美味しそうに食べることにただただ嫌悪していた。今思えば、何がそんなに気に食わなかったんだろう。

「私もフキノトウくらい強くなりたいもんだよ」

「食べられちゃうけどね」

「……今日は結婚詐欺に遭った私を励ましてくれる会じゃないの?」

 同僚は豪快に笑い飛ばし、私はお猪口をグイッと逆さまに飲み干した。

 寿退社を告げていた私は現在心底肩身が狭い。だから、実はこうやって笑い飛ばしてくれる同僚にはかなり救われている。

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