仲良し夫婦のとある休日
「月が綺麗ですね」から12年後の2人、もとい子ども達のお話になります。
「2人きりで映画を観るなんて久しぶりじゃない」
「あぁ、そうだな。最後に2人で行ったのは4年ぶりか」
「今日は付き合ってくれてありがとう。どうしても見たかったんだよね」
「それは俺も一緒だ。なんせ夫婦になって初めて一緒に観た映画の続編だし」
今楽しそうに話しているのは、結婚して15年目になる詩乃と颯真。彼らは付き合い当初から町公認の仲良しカップルもといバカップルとして皆から羨ましがられているが、それは今でも健在であった。
そんな仲良しの彼らが何故4年ぶりに2人で映画を観に行くことになったのか? それは複雑なことは一切なく、単にお互いに仕事が大きく異なるため同じ日に休みを取れることが少ないからだ。そして、2人には10歳の娘と5歳の息子がおり、夫婦だけで過ごす時間も簡単には取れないからだ。
だからこそ、お互いに休日が重なり、そして子ども達が学校と保育園にいると、久しぶりに2人だけの休日が数カ月振りにでき、また観に行きたい映画ができたと、ここまで条件が揃った故の久しぶりの映画デートのため、お互いに興奮しているのだった。
「あ、今日はカップルデーだって。安く観れちゃうね」
「カップルデーは水曜日のはずだけど……」
本日は火曜日なのでカップルデーには関係ないのに割引されていることに2人は戸惑いを覚えた。しかし、安く観られるなら別にいっかとカップル割引を使ってチケットを購入したのである。
「チケットは買ったし、ポップコーンやドリンクはどうする?」
「そりゃ勿論いる。ポップコーンの味は?」
「キャラメル」「塩」
「あぁ〜やっぱり割れたか〜」
「じゃあやっぱりハーフだな」
まあこの夫婦は大変仲が良いものの、実は好みはかなり違うところがあり、こうやって意見が割れることも珍しくない。今回は久しぶりに来たということで、それぞれ好きな味をチョイスしたようである。
「お二人は夫婦でしょうか? 大変仲良さそうですが」
「はい、そうですよ」
「ならば本日はカップル割引がございますので、50円引きさせていただきますね」
2人はフードにも割引がある日だとは知らなかったので不思議に思ったものの、こちらも少し得した気分になり上機嫌になる。そして何より2人はカップルという響きに酔いしれていたのだ。どうやら40歳を超えても周りから仲良しな夫婦と思われるのは嬉しいようである。
こうして2人は映画が始まる前から既に楽しんでいたのだが、始まった後は暫くすると指を絡ませて、付き合いたての恋人であるかのように映画を観ていた。
映画を見終わると、手を繋いだまま映画館を出て、そして今度は感想や考察を伝えあって白熱しながらも、保育園が近づくと静かに論争は終わり、仲良く息子のお迎えに向かったのだった。
「御幸さん、本日はお二人で来られたのですね。今、冴久くんを呼んできます」
彼は友人とミニカーで遊んでいたが、先生が呼びかけるとすぐに応じて、2人の元に駆け寄った。先生にお別れを告げた後、2人は今日はどうだったの息子に尋ねると楽しかったという返事が来たので、それは良かったと笑顔を見せて家に帰ってきたのだった。
家に帰ってきた1時間後、彼らの耳にただいまという声が聞こえてきた。そう娘が帰ってきたのである。3人はお帰りという言葉で出迎えると、彼女はニコニコした笑顔でこんなことを言ってきたのだ。
「お父さん、お母さん、おめでとう!!」
彼女がお祝いの言葉と共に渡してきたのは、1本のピンク色のトルコキキョウ。息子は勿論のこと、2人も同様に驚いていた。どうして祝われているのか分からないのだ。2人は理由を尋ねると、またニコニコしてこう答えてきた。
「澪ちゃんがね、今日は良い夫婦の日だって言っていたから」
彼女の言葉を聞いて、映画館で感じていた疑問が解決されることになった。今日は水曜日でもないのに、映画館でカップル割引をしていたのは、良い夫婦の日だからだというに納得が行く。
夫婦になった頃は、こうやってこの日をお互いに祝っていたものの、子どもが生まれてから忙しくなりこの日を祝うことが無くなっていたので、スッカリ忘れていたのだ。今日は先ほどまで気づかなかったものの、この日にデート出来たことを嬉しく感じていた。
しかし、2人はまさか娘からこんなサプライズが待ち受けているとは夢にも思わなかったので、やはり驚きは隠せなかったのである。
「ふうふってなあに?」
「夫婦って言うのはお父さんとお母さんのことを言うんだよ」
「へぇ〜そうなんだ。お父さん、お母さん、おめでとう」
彼は姉である彼女に夫婦の意味を聞いて納得したようで、彼女と同じくニコニコの笑顔を浮かべていた。すると、彼は彼女の手に重ねようと腕を伸ばして、彼女も良いよと言いながらお互いに包みを握る。そして、子ども2人が一緒にどうぞと彼らに渡してきたのだった。
彼女はお花は友人と何気なく一緒に買ってきてくれたのだろうが、永遠の愛という花言葉を持つトルコキキョウを選んでくれたのだ。2人とも永遠に枯れて欲しくないと思ってしまう。
そして彼は彼女の言葉を聞いて一緒に2人を祝ってくれたのだ。目に入れても痛くないほど可愛い子ども達にこんなことをされて嬉しくないわけがない。
2人は満面の笑みを浮かべて、詩乃は娘を頭を、颯真は息子の頭を撫でながら、同時にお花を受け取ってお礼を述べた。
「「文音、冴久、本当にありがとう!!」」
子ども達がこんなに素敵な日にしてくれたのだ。2人は彼らに対して何かお礼をしたいと思い考えたものの、特に良い方法が思いつかなくて、ありきたりなことしか言えなかった。
「今日は4人で外で食べに行こうか」
「そうだな……文音と冴久は何が食べたい?」
「何でも良いよ〜」
「ハンバーグたべたい〜」
「文音はハンバーグで良いか?」
「うん、文音も食べたい」
「じゃあ決まりね。今から行こう」
彼らは楽しみと言いながら先に外に出て車に向かっていた。彼らを追いかけるように2人も急いで向かう。
2人は今年の良い夫婦の日はまだまだ楽しめそうだと笑みを浮かべ、そしてその4つの笑顔が夕焼けの光で更に眩しく光った。
文章の繋ぎは上手くいきませんでしたが、個人的に書きたいものを詰め込めたので大満足です。
ご覧いただきありがとうございました。




